• 作成日 : 2023年5月12日

会社形態の特徴を詳しく解説!それぞれの違いとメリット

個人事業主ではなく、会社として法人を設立する場合には、どのような種類があるのでしょうか?この記事では、会社の形態の種類やその比較をした上で、それぞれの会社形態の特徴などを解説します。

4つの会社形態(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)からの選択にあたっての考え方についても合わせてご紹介します。

会社の形態、新たに設立できる種類は4つ!

現在、設立できる会社の形態としては次の4種類があります。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合資会社
  • 合名会社

これらの基本的な違いは、主として出資者(株式会社では株主と言いますが、それ以外では「社員」と言います。従業員の意味ではありません)の構成が、「有限責任社員」か「無限責任社員」かです。

有限責任とは、出資者は会社が負った債務や損失についての責任が自己の出資額までに限定されるということです。つまり、出資者は出資額以上の責任はありません。

一方、無限責任とは、出資者は出資した資金以外にも、自己の資産を含めて無限に責任を負うことになるということです。

会社の形態の違い

会社の形態による違いは、株式会社とそれ以外では大きく異なります。株式会社に出資した人は、「株主」と呼ばれて経営者とは区別されます。これに対し、合同会社、合資会社、合名会社を「持分会社」と言い、持分会社に出資した人は「社員」と呼ばれます。

次の表は会社の形態別に出資者の状況等をまとめたものです。まず、出資者の位置づけが株式会社と持分会社では異なっていることに着目してください。

会社の形態最低出資者数出資者の名称出資者の責任決算公告意思決定機関
株式会社1名以上株主間接有限責任義務あり株主総会
及び取締役会
持分会社合同会社1名以上社員間接有限責任義務なし社員総会
及び代表社員
合資会社2名以上直接有限責任
直接無限責任
合名会社1名以上直接無限責任

株式会社は「所有と経営」が分離されています。すなわち、株式会社は株主から資金を調達して経営者が経営し、利益を株主に還元するしくみです。一方、持分会社では出資者(社員)が経営者でもあるため、「所有と経営」は分離されていません。

この「所有と経営」が分離されているか否かということは、株式会社と持分会社を考える上で基本的な違いとなります。それぞれの特徴について次項で見ていきましょう。

それぞれ特徴やメリットは?

株式会社では、「所有と経営」が分離しているので、出資をせずに経営のみを行うことも可能ですが、持分会社では「所有と経営」は分離されていません。

さらに、社員が会社の債務について直接弁済責任を負うのを「直接責任」、そうでないのを「間接責任」と言います。持分会社によって直接責任を負うのか、間接責任を負うのかが異なります。これらを踏まえた上で、それぞれの会社の種類の特徴を見ていきましょう。

株式会社

株主から資金を調達し、株主とは別の経営者が事業運営を行い、利益を再び出資者に配分する形態の会社を「株式会社」と言います。株式会社の株主は有限責任社員のみで構成されるため、会社が倒産しても、出資者である株主は皆、有限責任となります。

この有限責任であること以外に、株式会社のメリットとしては次の点が挙げられます。

  • 資本調達のしやすさ

    株主が増えることは、会社の資本を増やすことです。株式を公開して、株式市場で売買されることで、より多くの投資家から資金を調達することも可能となります。

  • 独立性

    法人格を有し、組織としての独立性が高いため、企業としての継続性も高くなります。

  • 企業イメージの高さ

    一般的に企業イメージが高いため、取引先からの信頼を得やすくなります。

しかし実際は、中小企業である株式会社が銀行などから融資を受ける場合、社長の個人的な保証を求められるケースがあります。したがって、会社として有限責任であったとしても、会社の債務を個人的に肩代わりする場合には、実質上は無限責任と言えます。

合同会社

Apple Japan合同会社、アマゾンジャパン合同会社、グーグル合同会社、Netflix合同会社など、誰もが知る会社が合同会社の形態をとっていることはよく知られています。

合同会社は、出資者全員が有限責任社員のみで構成されています。この点で合同会社は株式会社と似ています。合同会社は、社員と呼ばれる経営者の意思で会社を運営し、会社の利益配分も経営者間で自由に決められます。株式会社より設立しやすいことで、最近は設立数が増えています。

合同会社は、間接有限責任社員のみで構成される会社です。つまり合同会社が他の2つの持ち株会社と異なるのは、社員は会社の債権を直接弁済する責任を負わないことです。これは、合同会社のメリットの一つと言えるでしょう。

上記の他に持分会社の形態をとるメリットとしては次の点が挙げられます。そして、持分会社の中で最も会社数の多い合同会社はこれらのメリットを十分生かすことができます。

  • 意思決定の速さ
    株式会社のように重要事項を決議するために株主総会を招集する必要がありません。したがって、経営者のスピーディーな意思決定が可能となります。
  • 利益の分配比率が自由
    出資者は、たとえ出資比率が小さかったとしても、会社への貢献度に応じた利益を配当することが可能です。
  • 役員の任期なし
    持分会社には社員の任期はありません。例えば、退社するまで代表社員でいることが可能です。
  • 設立費用の低さ
    設立時だけの問題ですが、持分会社設立時には定款認証が不要であるため、設立費用が安価となります。

合資会社

合資会社は、直接有限責任社員と直接無限責任社員で構成される会社形態です。直接責任とは、前述のとおり、会社の債務について直接弁済責任を持つことです。合資会社の特徴は、無限に弁済する責任を持つ無限責任社員と、出資額を超えての責任を追わない有限責任社員の2種類で構成されているところです。

合資会社の設立時には、有限責任となる社員1名と無限責任となる社員1名の2名が最低でも必要です。社員が2名未満になった場合は、合名会社や合同会社に組織変更せざるを得ません。

合資会社は、小規模経営のことが多いのも特徴の一つですが、合同会社が創設されてからは合資会社の形態をとるメリットは特になくなったと言えます。

合名会社

合名会社は、直接無限責任社員のみから構成される会社です。直接無限責任社員は、会社の負債を完済するまでは、私財を投げ打ってでも弁済しなければなりません。この社員が会社の債務を直接負う形態としては、個人事業主にも通じます。

したがって、合名会社は複数の個人事業主が集まって成り立っている会社とも言えます。

志を同じくする個人が出資し合って、その出資者が皆経営者となるというイメージですので、あまり大きな規模では展開できません。

合名会社のメリットとしては、出資者と従業員の乖離がなく、自らの意思を経営にストレートに反映できるなどが挙げられます。

株式会社が多いのはなぜ?

令和5年1月における会社の登記の件数を見てみると次のようになります。

<令和5年1月における会社形態別登記件数>

会社種類件数
株式会社70,872件
合名会社84件
合資会社224件
合同会社8,996件

出典:e-Stat 登記統計/商業・法人(会社の登記の件数)(令和5年1月)を加工して作成

この期間だけでも登記された会社形態としては、株式会社が約9割を占めています。株式会社の特徴でも少し触れていますが、会社形態として株式会社が多い理由を見てみましょう。

  • 所有と経営の分離
    所有と分離することで経営の効率化や透明化が図られ、組織としてのまとまりが強くなる。
  • 間接有限責任(株主リスクの限定)
    株主は間接有限責任であるため、責任が出資額に限定される。このため資金調達が容易となり、大規模な投資を必要とする事業拡大がしやすい。
  • 株式譲渡のしやすさ
    株式会社における株式の譲渡については、譲渡制限付き株式を除き、原則自由である。持分会社における持分の譲渡には原則的に総社員の同意が必要であり、流動性に乏しいと言える。
  • 従業員のモチベーション維持
    ストックオプションなどの制度により、従業員に対して株式を配分できる。会社の業績とともに上昇するストックオプションの価値は、従業員の業務に対するモチベーションを高めることになる。

圧倒的な割合を占める株式会社は、何より社会的信用があることに加え、会社法の整備により会社が設立しやすくなったことも増え続けている理由でしょう。

会社をつくるならどれを選べば良い?

会社形態から言うと、今後設立するのであれば、株式会社か合同会社の形態を選択することになります。では、株式会社と合同会社どちらにするのが良いのでしょうか?

前述のように「所有と経営」が分離しているか否かで、基本的な考え方が大きく異なります。設立前の出資者の状況や設立後の運営を熟慮して決めることかと思います。

会社設立のコンセプトや出資の見通し、そして今後の運営方針が明らかになった時点で、中小企業診断士や経営コンサルタントなどの専門家に相談するのも良いでしょう。ただし、アドバイスをそのまま受け入れて後ほど後悔することのないよう、出資者・経営者間でよく話し合うことが重要です。

設立時には適切な会社形態を選ぼう

会社の形態により、その後の会社の運営が異なってきます。したがって、会社設立時には事業運営がしやすい会社形態を選択するのが良いでしょう。

しかし、設立時は最善の選択として選んだ会社形態でも、事業運営がしづらくなる場合もあります。株式会社から合同会社へ、または合同会社から株式会社への組織変更をする方法もあります。設立時においては選択しやすい方で始めるという考え方もあるでしょう。

まずは、小回りがきいて、意思決定がスピーディーな合同会社を選択するというのも一案です。

よくある質問

簡単に設立できる会社形態はなんですか?

合同会社の設立では、株式会社に比べると定款認証が不要ですので少し設立の手間が省けます。しかし、その後の事業運営のしやすさを考慮し、慎重に会社形態を選択しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

よく知られている合同会社にはどのような会社がありますか?

Apple Japan合同会社、アマゾンジャパン合同会社、Google合同会社、Netflix合同会社などは有名な合同会社です。 詳しくはこちらをご覧ください。


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