• 更新日 : 2021年6月11日

開業に必要な源泉所得税の「納期の特例」とは?申請書の書き方

個人事業主であっても、従業員に給料を支払う場合には、所得税の源泉徴収が必要になります。源泉徴収をしたら、定められた期限までに納税もしなければなりません。

本記事では、源泉所得税の納付手続きの負担を軽減できる「納期の特例」について解説します。個人事業主が特例を利用する場合を想定して、申請書の書き方や注意点を説明しますので、参考にしてください。

源泉所得税とは?

従業員を雇用した個人事業主は、従業員の所得税を源泉徴収し、税務署に納める義務があります。源泉徴収の仕組みや源泉所得税の納付方法を知っておきましょう。

個人事業主も従業員を雇うなら源泉徴収が必要

所得税には、申告所得税と源泉所得税の2種類があります。

申告所得税自分で税額を計算し、税務署に申告して納付するもの
源泉所得税給料や報酬を払う時に、払う側が所得税分をあらかじめ差し引いて納付するもの

給料や報酬から源泉所得税を差し引くことを源泉徴収と言います。個人事業主であっても、従業員を雇用して給料を支払う場合には、源泉徴収を行わなければなりません。

給料の源泉徴収をするのはいくらから?

所得税は年収103万円未満の場合にはかかりません。しかし、実際に所得税が課税されるかどうかは、1年終わってみないと分からないことが多いでしょう。

こうしたことから、源泉徴収については、毎月の給料が88,000円以上の場合に行うのがルールとなっています。所得税の過不足分は、年末に所得税額が確定した後、年末調整確定申告で精算することになります。

源泉所得税の計算方法

源泉徴収をする時には、給与所得の源泉徴収税額表」を使って税額を確認します。「給与所得の源泉徴収税額表」には月額表と日額表があり、月給制の場合には月額表、日給制または週給制の場合には日額表を使います。

源泉所得税の計算方法国税庁:給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

源泉所得税はいつまでに納付する?

給与支払い時に所得税を源泉徴収したら、原則として翌月の10日までに税務署に納税しなければなりません。翌月10日が土日祝日の場合には、休み明けの平日が期限です。もし期限までに納税しなかった場合には、延滞税等のペナルティが課されてしまいます。

源泉所得税の納付方法

源泉所得税の納付方法には、以下のような方法があります。

①納付書を使って金融機関で納付

所得税徴収高計算書」と書かれた納付書に必要事項を記入し、税務署または金融機関で支払います。

e-Taxで申告後納付

納付書を使わず、e-Taxにより必要事項を申告し、インターネットバンキング、ATM、またはクレジットカードにより支払います。

源泉所得税の納期の特例とは?

源泉所得税を毎月納税することは、それなりの手間がかかります。ですが源泉所得税の納期の特例を利用すれば、源泉所得税納付の手間を減らせるのです。

特例の内容

上にも書いたとおり、源泉所得税は給与を支払った翌月の10日までに納税するのが原則です。ですが源泉所得税の納期の特例は、一定の条件を満たした場合に、源泉所得税の納付を年2回にまで減らせる制度です。この特例を利用した場合の納税期限は、次のようになります。

源泉徴収の時期納税期限
1月から6月までに源泉徴収した所得税7月10日
7月から12月までに源泉徴収した所得税翌年1月20日

特例の対象

源泉所得税の納期の特例が利用できる条件は、「給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者」となっています。従業員が10人未満であれば、特例を利用して納税期限を変更することができます。

特例のメリット

源泉所得税の納期の特例を利用すれば、本来なら年12回あるはずの源泉所得税納付手続きを年2回にまで減らすことが可能です。源泉所得税の納付手続きを行う回数を減らすことにより、事務負担を軽減できます。また、納付回数を減らせば、期限に遅れるリスクも減ります。

特例を受ける方法

納期の特例を受けるには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」に必要事項を記入して、税務署に提出する必要があります。

特例の適用をやめる方法

従業員が10人以上になって納期の特例の条件に該当しなくなった場合には、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」の提出が必要です。

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の書き方と提出方法

納期の特例を受けるための申請書の書き方や提出方法について知っておきましょう。

申請書の入手方法

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、税務署でもらえるほか、国税庁のホームページからダウンロードもできます。国税庁の書式を見ながら、エクセル等を使ってパソコンで自作してもかまいません。

申請書の書き方と記入例

申請書 書き方 記入例

国税庁:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

①提出日・提出先

税務署に提出する日付と提出先の税務署(納税地を管轄する税務署)を記入します。

②申請者の情報

「住所又は本店の所在地」には納税地の住所、「氏名又は名称」には屋号がある場合には屋号(屋号がなければ空欄)、「代表者氏名」には事業主の氏名を記載します。

「法人番号」に、個人事業主は何も記載する必要はありません。個人番号は記載しないようにしましょう。

③給与支払事務所等の所在地

従業員に給与を支払う事務所の所在地の住所です。②に記入した住所と同一の場合には、記入する必要はありません。

④申請の日前6か月間の各月末の給与の支払を受ける者の人員及び各月の支給金額

申請日前6カ月以内に給与を支払っている場合にのみ記入します。例えば、2020年10月に従業員1人に12万円払った場合には、「(月区分)2020年10月、(支給人員)1人、(支給額)120,000円」と記入します。

⑤国税の滞納等の有無

もし国税の滞納等がある場合には記載します。なければ空欄でかまいません。

開業届にも記載が必要

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を開業届(「個人事業の開業・廃業等届出書」)と同時に出す場合には、開業届の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」の欄の「有」にチェックを入れておく必要があります。

開業届 記載国税庁:個人事業の開業・廃業等届出書

申請書を提出するタイミング

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」には提出期限はありません。しかし、いつ提出するかによって、適用開始時期が変わります。

納期の特例を適用できるのは、原則として申請書の提出日の翌月からになります。例えば、6月に申請書を提出した場合には7月分の給与から適用になるため、6月までに源泉徴収した分は通常どおり翌月10日の納税が必要です。

申請書の提出先

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出先は、納税地を管轄する税務署になります。

申請書の提出方法

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、税務署の窓口に持参するほか、郵送でも提出できます。また、e-Taxによりインターネット経由で提出することも可能になっています。

「納期の特例」を利用して事務負担を軽減しよう

従業員を雇用した場合には、給与の振込等の手間がかかるだけでなく、源泉徴収・納税の手続きもしなければなりません。源泉所得税納付の手間は、納期の特例を受けることにより軽減できます。

従業員が少ない個人事業主は、納期の特例を活用して、事務負担を最小限に抑えることをおすすめします。

よくある質問

そもそも源泉所得税とは?

給料や報酬から源泉所得税を差し引くことを源泉徴収と言います。詳しくはこちらをご覧ください。

源泉所得税の納期の特例とは?

源泉所得税の納期の特例は、一定の条件を満たした場合に、源泉所得税の納付を年2回にまで減らせる制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の書き方と提出方法は?

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、税務署でもらえるほか、国税庁のホームページからダウンロードもできます。詳しくはこちらをご覧ください。


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