- 更新日 : 2023年11月30日
貴金属買取業を開業するには?必要な資格や開業方法、費用を解説
起業するならなるべく元手をかけたくない、リスクはなるべく抑えたい。そう思われているなら貴金属買取業を開業するというのもひとつの選択肢になります。
この記事では貴金属買取業を開業するメリット・デメリットや開業方法、開業資金や年収の目安についてご紹介します。
目次
貴金属買取業とは?
貴金属買取業とは貴金属(金、プラチナ、銀など希少価値が高い金属やダイヤモンドなどの宝石)を一般の方から買い取るビジネスです。不要になった貴金属を査定して買い取って、それを貴金属専門の商社や販売店、リサイクル業者やフランチャイズ本部に販売します。貴金属の販売価格と買取金額の差額が利益となります。
貴金属買取のCMや看板、チラシを見たことがある方も多いかもしれません。今、非常に注目度が高いビジネスで、開業する人も増加傾向にあります。
ブランド買取店との違い
貴金属買取業と似たような業種としてブランド買取店というものがあります。貴金属買取店では貴金属製品、具体的には指輪やネックレス、ブレスレットなどのアクセサリー、時計、金箔(きんぱく)や金粉、コイン、金歯などが買い取りの対象です。これらをそのときの相場で買い取ります。
ブランド買取店はブランド物のアクセサリーやバッグ、財布、時計、衣類などが対象です。そのブランドの需要や相場、コンディションなどに応じて金額を査定して買い取ります。
そもそも貴金属買取業とブランド買取店では、取扱品目や買取査定額の算出方法が大きく異なるのです。とはいえ、両者は親和性が高いビジネスなので、貴金属買取業者がブランド品の買い取りも行うように兼業しているケースもあります。
質屋との違い
貴金属買取業と質屋。顧客は貴金属を持ち込むことでお金を受け取れるという点は共通しているものの、両者は似ているようで全く異なる業態です。
貴金属買取業者は顧客から貴金属を買い取り、その対価として買取代金を支払うという仕組みです。いったん貴金属を売却したら、顧客のもとに返却されることはありません。
質屋とは顧客が持ち込んだ貴金属やブランド品を担保としてお金を貸すという仕組みです。期限内に顧客がお金を返済すれば、担保として預かった物品は顧客に返却します。仮に顧客が期限までにお金を返済しなかった場合、預かった物品は質屋のものになります。
貴金属買取業を開業するメリット
貴金属買取業を開業する利点はさまざまあります。他の業種と比較して有利にビジネスがスタートできる可能性もありますので、ぜひ検討してみましょう。
開業資金が抑えられる
たとえば飲食店の場合はある程度の広さがある物件を調達し、内装工事を行い、キッチン設備や什器(じゅうき)、調理器具、食器などの調達をしなければなりません。1,000万円近く、あるいはそれ以上の開業資金がかかる場合もあります。このように、起業の際には多額の開業資金が必要になる場合があります。
貴金属買取業も店舗を構える必要はありますが、必要最小限のスペースさえ設ければ問題ありません。大掛かりな設備も不要であるため、比較的安い資金で開業することができます。
商品を仕入れる手間がかからない
一般的な小売店では日々の商品の仕入れも一苦労です。仕入れ先を見つけ、発注をして、大量の荷物を倉庫に保管したり店頭に並べたりする手間がかかります。買い付けに行かなければならないこともあるかもしれません。
貴金属買取業の場合は顧客がお店に商品を持ち込んでくれるため、商品を仕入れる手間も少なくて済みます。
将来性がある
今、貴金属の価格が高騰し続けています。たとえば金の場合、2023年10月にはグラムあたり10,000円を突破し過去最高に。2013年は4,500円程度だったので、この10年間で2倍以上に高騰しました。今後どのような価格変動があるかはわかりませんが、高値を更新し続けているため、「不要になった貴金属を売ろう」という機運も高まっています。
また、最近では「終活」や「断捨離」という考え方が定着しつつあります。それに伴って不要になった貴金属を売却する人が増えてきているのも追い風となっていると考えられます。
貴金属買取業を開業するデメリット
以上のように貴金属買取業を開業するメリットはさまざまありますが、デメリットも存在します。特に以下のことを意識して開業するかどうかを検討してみましょう。
専門知識やセンスが必要
貴金属を買い取る際には、それが「本物か偽物か」「どれくらいの価値があるのか」を正しく見極め、適正な価格をつけなければなりません。仮に偽物を買い取ってしまった場合、売却することが難しくなるため利益が得られなくなってしまいます。逆に価値があるものを安く査定してしまうと顧客からの信頼を失うことにもなりかねません。
各金属の特徴や市場価格、トレンドといった知識を頭に入れ、見た目や重量、質感などで真贋(しんがん)や価値を判断できるセンスを養う必要があります。
集客が難しい
貴金属買取業を開業して利益を得るためには、顧客から貴金属を持ち込んで売ってもらわなければはじまりません。貴金属価格の高騰や不用品を売却するというマインドの定着など追い風は吹いているものの、それでも集客は必須です。
特に近年では貴金属買取業者が増加傾向にあります。店舗の存在を知ってもらい、競合と比較したときの強みを感じてもらわないと、なかなか顧客は集まりません。
犯罪に巻き込まれるリスクがある
高価な貴金属を取り扱う貴金属買取店はどうしても犯罪者のターゲットになりやすいでしょう。最近ではジュエリーショップやブランドショップを狙った強盗事件や窃盗事件も多発しています。
また、他にも偽物を売りつけられるという詐欺被害に遭う、盗難品が持ち込まれるなどのリスクもあります。店舗のセキュリティ対策を万全にし、犯罪に巻き込まれないよう注意して業務を行うなど、自己防衛をしましょう。
貴金属買取業の開業方法
貴金属買取業を開業する方法としては「フランチャイズで開業する」と「個人で開業する」という大きく分けて2つのパターンがあります。それぞれの詳細やメリットについて見ていきましょう。
フランチャイズで開業する
フランチャイズとはフランチャイザー(フランチャイズ本部)と契約を締結し、そのフランチャイジーの商標やサービス、ノウハウなどを利用して経営をする方式であり、その対価としてロイヤリティーをフランチャイジーに支払う方式です。
フランチャイズで開業することで、大手企業や有名企業のブランドを使うことができる、開業・経営サポートを受けることができる、フランチャイジー(加盟店)同士の横のつながりができるなどのメリットがあります。また、貴金属買取業の場合はフランチャイズ本部が買取品を買い取ってくれるのも大きな利点です。
個人で開業する
フランチャイザーに頼ることなく自分で商標やサービスの内容を決め、自分の力やノウハウだけで開業する方法です。
加盟金やロイヤリティーを支払う必要がない、フランチャイズ本部の方針やルールに縛られることなく自由に経営できるというメリットがあります。
貴金属買取業の開業に必要な資格や手続き
貴金属買取業を開業するためにはいくつかの手続きが必要です。ここからは開業前に済ませておきたい手続きを3つご紹介します。
古物商免許の申請と許可
貴金属買取は古物営業にあたります。古物営業とは中古品の売買を行う事業のことで、これを行うためには「古物商許可」という許可が必要となります。
古物商許可申請は開業する事業所を管轄する警察署の生活安全課で行います。許可申請書のほか、個人事業主の場合は略歴書や住民票の写し、誓約書、身分証明書など、法人の場合は定款や登記事項証明書、略歴書、住民票の写しなどの提出書類をそろえなければなりません。また、手数料として19,000円を支払う必要があります。
許可申請後に審査があり犯罪歴がある人、未成年者、成年被後見人・被保佐人、公務員、暴力団関係者である場合、あるいは営業所が用意できない場合は許可が下りない可能性が高いのです。
手続きの仕方や必要書類については警視庁や警察本部、都道府県庁のホームページに記載されていますので調べてみましょう。
開業届の提出
個人事業主として開業する場合は所管する税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出しましょう。これによって確定申告の際に青色申告が可能となります。
青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除が受けられる、赤字を3年間繰り越せる、家族に支払う給与を経費として計上できるなど、さまざまな税務上の優遇措置を受けることができます。
宝石鑑定アドバイザーの資格も必要?
貴金属買取業に関わる資格として「宝石鑑定アドバイザー」というものがあります。これは民間資格で、取得すれば宝石やジュエリーの知識や鑑別の方法を身に付けており、売買のノウハウがあることを証明することができます。
貴金属買取業は古物商許可さえ取得すれば、他には特に免許や資格は必要ありませんが、資格を取得する過程で鑑定に必要な知識やスキルが学べ、取得したら顧客からの信頼性アップにつながるため、余裕があればぜひチャレンジしてみましょう。
貴金属買取業の開業資金
貴金属買取業の開業資金は、店舗の立地や物件の広さ、開業の方法(フランチャイズか、自分で開業するか)によっても異なります。
30㎡程の店舗を開業する場合、目安としてはおおむね500万円程度です。物件の調達費用で150万円、内装工事で280万円、什器や備品の調達費用で30万円、広告宣伝費で20万円、その他諸経費で20万円という内訳です。
前述のとおり、他のビジネスと比較して大がかりな店舗や設備が必要ないため、比較的安価で開業できる可能性があります。
貴金属買取業は儲かるのか?年収の目安
貴金属買取業者の平均年収についての統計データはありませんが、多くの貴金属買取フランチャイズ本部ではモデル収支を公開しています。ある本部では月間の売上が390万円、仕入れやロイヤリティーなどの経費を除いた利益は57万円というモデル収支を公開しており、年収に換算すると684万円となります。また、別の本部では月間の売上550万円、利益は85.2万円、年収に換算すると1,022万円となっています。
これらの貴金属買取フランチャイズ本部が公開しているモデル収支から、貴金属買取業の年収は600万~1,000万円が目安であると思われます。
もちろん、会社員のように給料が決まっていないので、売り上げが少なければ当然年収も少なくなってしまいます。逆にやればやった分だけ見返りが得られるので、年収は青天井です。実際に年収1,000万円以上稼いでいる方もいらっしゃいます。
貴金属買取業の開業に助成金・補助金はある?
開業する際には助成金や補助金を活用するのもおすすめです。助成金とは主に厚生労働省が雇用促進や職場改善、働き方の多様性を推進するために資金をサポートする制度です。補助金は経済産業省や地方自治体が経済発展や起業、事業拡大のサポートを目的として資金援助を行う制度です。いずれも返済する必要はありません。
貴金属買取業の開業に失敗しないために
成功すれば高収入が狙える貴金属買取業ですが、起業する以上失敗するリスクもつきまといます。ここからは失敗しないためのポイントを3つご紹介します。
事業計画をしっかりと立てる
ビジネスをはじめる際には事業計画が肝となります。見通しが甘いと開業してもすぐに資金がショートしてしまって廃業に追い込まれてしまうという事態にもなりかねません。逆に事業計画を綿密に立て、それに従って着々と進めていけば、成功する確率は高くなります。
事業の内容や目的、店舗の概要、必要となる開業資金、売り上げや経費、利益の見込みなどを事業計画書にまとめましょう。特に融資を受ける場合、助成金や補助金を申請する場合は、事業計画が必須です。
スモールスタートではじめる
せっかく起業するなら立派なお店を構えて人も雇って…と思われるかもしれません。しかし、いきなり大掛かりな店舗を開いてスタッフを雇用したとしても、お客様が来なければすぐに赤字になってしまいます。
まずはなるべくお金をかけず、小規模からはじめましょう。小さな物件を借りるか、立地が良ければ自宅を改装するといった方法でも店舗を設けることができます。しばらくはご自身やご家族で仕事を回して、売り上げが伸びたら徐々に拡大していくというやり方がおすすめです。
知識とスキルを磨く
貴金属買取業では買取品の価値を正しく見極める知識とスキルが必須です。繰り返しになりますが、各種貴金属の特徴や相場、真贋を見極めるポイントをしっかりと身に付けましょう。また、見た目や重さ、質感などでも真贋がわかるため、経験を積んで感覚を養うのも重要です。
もし余裕があるのであれば、開業する前に既存の貴金属買取店に就職したり鑑定士に弟子入りしたりするのもいいかもしれません。
まずはスモールスタートで貴金属買取業をはじめてみましょう
貴金属買取業は比較的開業資金が安く、小規模でもはじめやすいビジネスです。一方で、売り上げがあれば年収1,000万円超えのチャンスも十分にあります。
まずは事業計画を練りながら専門知識とスキルを磨き、スモールスタートで開業を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
開業してから事務所設立までの流れ
会社を設立して事業を立ち上げるときには、事務所を用意する他にも設立登記、届出など実にさまざまな手続きが必要になります。今回は、事務所を手に入れる方法から開業して事業を開始するまでに必要な手続き等について解説します。 形態別事務所のメリット・…
詳しくみるフリーランスの資金調達方法は?融資や助成金などの選び方を解説
フリーランスの資金調達方法には、日本政策金融公庫の融資や信用金庫からの融資など複数の選択肢があります。さまざまな資金調達方法の中から自分に合った方法を選択するにはどうすればよいのでしょうか。この記事では、フリーランスが利用できる主な資金調達…
詳しくみる旭川市の開業届の提出方法(ネット・郵送)税務署一覧まとめ!
旭川市で開業届を提出する際は、ご自身がお住まいの地域を管轄する旭川市内の税務署に提出する必要があります。 開業届は、事業所得や、不動産所得・山林所得が発生するような事業を開始をした方が、旭川市の税務署に提出しなければならない書類です。 青色…
詳しくみる開業届を提出後、開業したらやっておくべきことは?
事業をはじめるには、開業届だけでなく、事業の形態に合わせて、事業所や商品などの準備が必要です。また、商売を開始するための準備ももちろん重要ですが、開業届以外の書類上の手続き、書類以外の事業に間接的に関わる手続きも進めていく必要があります。 …
詳しくみるケアプランセンターを開業するには?必要な資格や要件を解説
ケアマネジャー(ケアマネ)として働いていて、独立を考えている人もいるでしょう。ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)を立ち上げる場合、どのような資格や準備などが必要になるのでしょうか。ケアプランセンターの開業や経営に関して知っておきたいポ…
詳しくみる経営コンサルタントとして起業・開業するには?資格や成功のコツを解説
経営コンサルタントとは、クライアントが抱える悩みに対して、専門知識を活かして解決手段や改善策を提案する仕事のことです。特別な資格は不要で、自宅でも開業できるため、個人での起業にもおすすめです。今回は、経営コンサルタントとして開業して成功した…
詳しくみる