- 作成日 : 2024年9月6日
家族で会社設立ガイド!メリット・注意点を解説
家族で会社を設立することは、絆を強めながら新たな事業チャンスを探る魅力的な方法です。しかし、スタートアップにおいてはメリットとともに注意すべき点もあります。
本記事では、家族を役員にするケースと従業員として雇うケースに分けて、それぞれのメリット・デメリットや会社設立の手続き、注意点を詳しく解説します。
目次
家族で会社設立する方法
家族で会社を設立する方法には、主に「家族を役員にするケース」と「従業員として雇うケース」があります。これらの方法は、経営の安定性や節税効果などさまざまなメリットをもたらす一方で、適切な運用も求められます。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
家族を役員にするケース
家族を役員にすることは、中小企業においてよく見られる方法です。この手法により、経営の安定性を確保し、信頼できる体制を築けます。家族を役員にする主な利点は、役員報酬を通じて所得を分散できる点です。
これにより、家計全体の税負担軽減が可能です。また、家族を役員として登用しても、社会保険や所得税の取り扱いは他の役員と変わりません。税務面での扱いが一貫しているため、予算の見通しが立てやすく、経営の透明性を高めることもできます。
家族を従業員として雇うケース
家族を従業員として雇用することで、給与支払いを通じて所得を分散し、節税効果を得ることが可能です。ただし、家族従業員は原則として雇用保険に加入できず、労災保険の対象外となるため注意が必要です。
給与は職務内容に応じた適正な額に設定し、高額すぎると税務署に否認されることがあります。同族会社では家族が「みなし役員」と認定される可能性もあり、役職や報酬の設定には慎重を期しましょう。税務調査では家族の雇用状況が厳しくチェックされるため、業務内容や報酬を明確に記録しておくことが大切です。
家族を役員にして会社設立する場合のメリット
家族経営で会社を設立する場合、家族を役員にするケースが多く見られます。これは、単に身内を優遇するためだけではなく、経営上・税務上のさまざまなメリットがあるためです。 では、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
所得税の節税
所得税は累進課税制度により、収入が多いほど税率が上昇します。したがって、高額な所得を得ている経営者一族が所得を分散させることで、税負担を軽減できる可能性があります。家族を役員にすると社会保険料の会社負担が増える面もありますが、節税効果や将来の年金額増加を考慮した場合、メリットのほうが大きいともいえるでしょう。
相続税・贈与税対策
家族を役員にすることは、相続税や贈与税対策として有効です。役員報酬として家族に資産を渡すことで、相続時に課税される財産の総額を減らせます。
相続税と贈与税は累進課税制度であり、財産が大きくなるほど課税率も高くなるため、一人の財産をそのまま贈与や相続するよりも、生前に役員報酬として分散して支給するほうが節税につながります。
社会保険への加入
家族を役員にすると、社会保険への加入が可能になります。特に厚生年金に加入できれば、将来的な年金受給額増加につながるでしょう。
ただし、非常勤役員の場合は原則として社会保険加入ができません。常勤と非常勤の区別は、勤務日数や報酬、監督権などの要素を総合的に判断して決定されます。
このように、家族役員の社会保険加入には留意点があるものの、適切に運用すれば将来的なメリットが期待できるでしょう。
事業承継の円滑化
家族を役員にすることで、事業承継を円滑に進められます。親族内での承継は、従業員や関係者からの理解を得やすく、信頼関係を築くのが容易です。早期に後継者教育を行うことで、企業理念や事業方針を深く理解させ、一貫した経営方針を維持できます。
さらに、資産の承継方法として相続・贈与・株式売買などの選択肢があり、柔軟な対応が可能です。また、事業承継税制を利用することにより、相続や贈与の際に税金の猶予や免除を受けられます。
家族を役員にして会社設立する場合のデメリット・注意点
メリットの多い家族を役員に迎える経営形態ですが、一方で、いくつかデメリットも存在します。適切に対処できなければ、会社経営に大きな支障をきたす可能性もあるため、事前に理解しておく必要があります。
役員報酬の固定化により業績悪化時は不利になる
役員報酬の固定化は、業績悪化時に不利な状況を生む可能性があります。役員報酬は原則として事業年度中の変更ができません。そのため、決算前に報酬を上げて節税を図ることもできません。
経営が著しく悪化した場合に限り、例外的に報酬変更が認められることもありますが、基本的には困難とされています。このため、経営が厳しくなった際には、柔軟な対応が難しくなることもあります。
経営スキルが環境変化に追いつけない
知識やスキルが不足している人材によって経営が行われた場合、会社は存続の危機に直面する可能性があります。ビジネス環境は絶えず変化しており、これに対応するには専門知識や経営能力を向上していかなければなりません。家族経営者がこの変化に適応できない場合、企業の競争力が低下し、存続が危うくなるおそれもあります。
経営の硬直化
経営の硬直化は、タイムリーな経営改革を阻害し、大きな損失や不祥事を招くおそれがあります。過去の成功体験にとらわれた経営者は、変化への対応が遅れがちです。保守的な経営は、新しい人材の流入を阻害し会社は活力を失い、業績の悪化につながる可能性もあるでしょう。このような事態を避けるためには、外部の意見を積極的に採り入れ、市場動向や技術革新に常に注目する必要があります。
家族間の不和
家族間で対立が生じると、「お家騒動」に発展する可能性があります。家族内の争いは、会社のイメージに悪影響を及ぼすため注意しなければなりません。また、意見の相違や対立が経営を滞らせ、社員を巻き込むことで会社全体に大きな影響を及ぼす場合もあります。このような事態を防ぐためには、家族間のコミュニケーションを密にし、役割分担や意思決定プロセスを明確にすることが重要です。
家族を従業員として雇って会社設立する場合のメリット
家族経営の場合、従業員として家族を雇用するケースも少なくありません。採用活動の手間やコストが削減できるなど、多くのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。
家族従業員の給与を経費として計上できる
会社を設立すると、配偶者や子、兄弟姉妹などの家族を従業員として雇い、事業を手伝ってもらうことが可能です。これにより、所得を分散し、所得税率を下げることで納める所得税を軽減できます。
さらに、家族の給与には給与所得控除が適用され、税負担をさらに抑えられます。一方で、個人事業主も事業専従者の届出を行えば親族を雇用できますが、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなるため、自由度を考えると会社設立が有利です。
コスト削減と効率化
家族を従業員として雇うことにより、家族従業員の給与を経費として計上できるため、所得税の負担を軽減できます。
さらに、家族が給与所得控除を受けることで、個々の税負担の抑制が可能です。社長一人の所得を家族に分散することで、全体の税額も抑えられ節税効果が期待できます。
また、家族を雇うことで採用活動にかかる手間やコストを省き、売上づくりに集中できる点も大きな利点です。
信頼関係に基づく業務遂行
家族を従業員として雇用することには、信頼関係に基づいた業務遂行ができる利点もあります。信頼できる家族と共に働くことで、業務のパフォーマンスも向上することでしょう。
特に創業期の多忙な時期には、家族と過ごす時間を有しつつ、仕事を進められます。また、経営陣が親族で構成されている場合、意思決定のスピードが速く、柔軟な対応が可能です。信頼関係がもたらす業務遂行の円滑さは、家族経営の大きな強みといえます。
経営理念の浸透
家族経営の大きなメリットは、経営理念が浸透しやすい環境です。経営者と家族従業員の接点が多いため、経営者の思想や理念が日常的に共有され、業務の一貫性や効率化が普通に図れます。
さらに、家族従業員は退職のリスクが低く、雇用の安定が確保されることで、人事面での安心感も高まります。このように、経営理念の浸透がもたらす効果は家族経営の強みです。
家族を従業員として雇って会社設立する場合のデメリット
家族を従業員として雇用する場合、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを軽視すると、後々大きなトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
コンプライアンスとガバナンスが弱くなる
家族経営には、コンプライアンスとガバナンスが弱まってしまうリスクも無視できません。ワンマン経営になりやすく、家族以外の従業員の意見が反映されにくくなることで社内の風通しが悪化し、ブラック企業化する可能性も考えられます。さらに、会社の資産やリソースが私物化されるリスクも高まり、経営が不健全化しやすい点にも注意が必要です。
非家族従業員のモチベーション低下
家族経営では、非家族従業員のモチベーション低下も懸念材料です。経営者が家族を重要ポストに任命し、意向に沿わない社員を排除すると、社内の信頼関係が損なわれる恐れもあります。
また、同じ成果を上げた場合でも家族社員が優遇されると、非家族社員の不満が増大するおそれもあります。さらに、昇進の機会が限られると感じた非家族社員は、意欲を失いがちです。放置しておくと企業全体の活力低下にもつながります。
人材の確保の問題
家族経営は、人材の確保が難しいという問題があります。具体的には、閉鎖的であるというイメージが原因となり、優秀な就職希望者を募集しにくい状況が生まれてしまうことです。
また、採用後も出世できる機会が限られたり、待遇に不公平を感じたりすることが多いため、一般の従業員が定着しにくくなることも少なくありません。
これらは、優秀な人材の確保や定着を困難にさせている要因の一つです。
みなし役員のリスク
家族を役員や従業員として雇う際には「みなし役員」のリスクに注意が必要です。税務上、役員報酬には厳しい制限があり、家族を役員として雇う場合、規定に従わなければ問題を生じる可能性があります。
さらに、家族を従業員として雇う場合、給与は労働に見合ったものでなければなりません。不当に高い給与は税務署から否認される恐れがあります。これらのリスクを理解し、適切に対処することが重要です。
家族で会社設立する際の手続き
家族で会社を設立する場合、役員や従業員として家族を迎え入れる際に必要な手続きがあります。ここでは、家族を「役員」にする場合と「従業員」にする場合に分けて、それぞれ必要な手続きを解説します。
家族を役員にするケースの手続き
家族を役員にする場合、社会保険や所得税関連の手続きは、他の役員と同様です。ただし、登記がない場合であっても、実態として「みなし役員」と判断される場合もあるため、事前に家族の立場を明確にしておく必要があります。また、家族を役員にする場合は、「事前確定届出給与」に関する手続きを税務署に行う必要があります。
家族を従業員として雇うケースの手続き
家族を従業員として雇用する場合、給与の支払い手続きは、家族以外の従業員と同様です。健康保険や厚生年金保険への加入義務があり、所得税の源泉徴収や住民税の天引きも通常通り行います。ただし、家族従業員は原則として雇用保険に加入できないため、雇用保険料の天引きは不要です。また、労災保険の対象外となる点にも注意が必要です。
家族の強みを生かしつつ、新たな事業チャレンジを始めよう
家族経営には、互いの信頼を基に事業展開できる利点があります。役員として迎える場合、税制優遇や円滑な事業承継が期待できますが、経営の硬直化や家族間の不和にも注意が必要です。従業員として雇用する場合、コスト削減や理念浸透のメリットがある一方、コンプライアンスや人材確保に課題が生じることも懸念されます。家族全員で将来ビジョンを共有し、各方法の特徴を十分に理解し、選択することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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