- 更新日 : 2023年8月10日
経営指導員とは?なる方法や経営支援員との違いも紹介
経営指導員とは、小規模事業者が抱えるさまざまな課題の解決のため、ともに考え、支援を行う人材です。地域の商工会や商工会議所が採用し、給与を支払います。経営指導員になるためには講習の修了が必要です。この記事では、経営指導員の概要や経営支援員との違い、年収、講習の概要、およびやりがいと大変さを紹介します。
目次
経営指導員とは?
経営指導員とは、小規模事業者が抱える課題をともに考え、支援を行う人材です。具体的には、金融や経理、経営などについてのアドバイスや経営計画策定の支援、国や県の小規模企業施策のコーディネート支援、地域振興の各種事業計画の立案などを行います。
経営指導員は「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)」に基づいており、商工会や商工会議所が採用し、給与を支払います。経営指導員になるためには地域の商工会・商工会議所に応募してから、基礎講習、行政事務講習、事業継続力講習の3つの講習を修了することが必要です。
経営指導員と経営支援員の違いは?
経営支援員とは、商工会・商工会議所に採用され、経営指導員のサポート役として文書や資料の作成などの事務処理や、小規模事業者に対する経理・税務の支援のための記帳などを行うする人です。商工会運営に関する経理・決算や、地域振興のためのイベント業務も行います。商工会・商工会議所によっては、採用を経営支援員に一本化し、経営指導員は経営支援員から登用するケースもあります。
経営指導員の募集状況
経営指導員は各地の商工会・商工会議所が採用します。2023年7月現在、それぞれの商工会・商工会議所のホームページにて新潟県商工会連合会や山梨県商工会連合会、島根県商工会連合会など、2024年4月1日採用予定の経営指導員の募集が行われています。他にも福岡県商工会連合会や山梨県商工会連合会、埼玉県商工会連合会などでは、経営支援員が募集されています。
経営指導員の年収はどれくらい?
上記の経営指導員の募集要項に記載の月給から、2カ月分の賞与が年2回あるとした場合の年収を計算すると、採用時の年齢や経験などにより、おおよそ【310万~350万円】の範囲です。給与以外に、通勤手当や残業手当などの各種手当がつきます。経営支援員の年収は経営指導員よりやや低く、おおよそ【270万~320万円】となります。
経営指導員になるために必要な講習(3つとも必須)
経営指導員になるためには、中小企業庁が自ら実施、あるいは中小企業庁長官が指定する3つの講習、①基礎講習、②行政事務講習、③事業継続力講習、を受講し、講習後に行われる試験に合格して修了する必要があります。ここでは、この3つの講習の概要を見てみましょう。
基礎講習
基礎講習は、中小企業の経営指導の基礎的内容と、対話と傾聴を通じた事業者の内発的動機づけを促すための支援能力を習熟することが目標です。具体的には以下の内容について学びます。
- 政策実行実務者として必要な中小企業政策の知識
- 政策実行実務者のポジション(中小企業政策の歴史的な流れや理念、実行体系、目標など)
- 中小企業・小規模事業者の状況(中小企業・小規模事業者の定義や占める割合、企業数や従業員数の推移、財務状況など)
- 企業のライフサイクルと経営指導(ライフサイクルの概念や経営指導の目的、資金の種類・活用方法、情報の収集・整理・処理方法など)
- 経営指導にあたって必要な経営法務の基礎的知識
- 民法:契約の基本的概念(民法・法律、債権・契約、契約の種類、契約書、民法と商法など)
- 経営体の組織(営利・非営利、許認可・認証法人、会社の種類など)
- 経営指導とコンプライアンス・適法なる事業実施(許認可事業の種類、経営指導と士業業務、独占禁止法、不公正な取引、景品表示法、消費者契約法、個人情報保護法、労働法制など)
参照:令和5年度法定経営指導員講習~中⼩企業診断基礎|中小企業庁
行政事務講習
行政事務講習は、以下の内容を習熟することが目標です。
- 行政の仕組みと基本的なルール
行政の行動規範、国民・住民との関係、行政処分・指導など - 地方自治
地方自治の本旨、地方公共団体制度、直接請求制度、自治立法など - 財政・公会計
財政民主主義、地方財政・予算の原則、予算の調整・執行と議会の関係、補助金、監査制度など
参照:令和5年度法定経営指導員講習~地⽅公共団体の⾏政事務に関する基礎的知識~|中小企業庁
事業継続力講習
事業継続力講習は、以下の内容を習熟することが目標です。
- 「事業継続力強化支援」の位置づけ
経営改善と経営発達、事業継続力強化支援の概要など - 災害が与える影響
自然災害のリスク、自然災害が経営資源・事業に与える影響など - 災害対策基本法とそれぞれの役割
防災・災害に関する法体系、災害対策基本法の概要など - 市町村と共同で取り組む意義と商⼯会・経営指導員の役割
地域社会と事業活動、災害の事前対策の重要性、経営指導員の役割など - 事業継続⼒強化⽀援について
事業継続⼒強化計画とは、実効性のある取り組みとは、など - リスクへの対策・具体的⼿法
リスクマネジメントについて、事業継続における⾃然災害と感染症の違いなど
参照:令和5年度法定経営指導員講習~事業継続⼒強化⽀援に関する基礎的知識|中小企業庁
経営指導員になるために必要な実務経験(いずれか1つ)
前述した小規模事業者支援法において、経営指導員の要件として以下が定められています。
第7条第1項第4 小規模事業者の経営に係る指導及び助言に関する三年以上の実務の経験を有する者
この「実務の経験」とは、具体的には以下の3つのいずれかに当てはまることを意味します。
組織における実務従事の経緯
経営発達支援計画または事業継続力強化支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所、または中小企業等経営強化法の認定経営革新等支援機関など、継続して小規模事業者の経営の指導・助言を行うことを行政庁が認定などをした実績のある組織において、小規模事業者の経営指導などに関する業務に、通算3年以上従事している。
法定事業計画の作成関与報告
法定の事業者向け計画(中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画、経営力向上計画など)の作成支援を、異なる3カ年度において各1件以上行っている。
中小企業診断士
中小企業診断士の初回登録日から、3年以上経過している。
経営指導員のやりがいと大変さ
経営指導員のやりがいと大変さを紹介します。
経営指導員の主な業務は、窓口や巡回での相談業務、および商工会・商工会議所の事業に関する業務です。相談業務の内容は多岐にわたり、融資などの金融相談、創業相談、補助金・助成金や経営改革などについての書類の作成支援、経営者の悩み相談などです。巡回時には1カ所で数時間の滞在になるケースもあります。商工会・商工会議所の事業とは、創業支援事業、経営革新支援事業、ビジネススクール事業、定例相談やセミナーなどです。
経営指導員のやりがい
中小企業庁が2016年に経営指導員6,378名に対して実施したWebアンケート調査の結果によれば、「経営指導の仕事の魅力」として以下の回答が得られています(複数回答)。
- 効果的な指導を行ったときに達成感が得られる(57.0%)
- 事業者から感謝される(47.1%)
- 経営者と直接話ができる(36.6%)
- 経営に直接的、間接的に関われる(30.4%)
- 地域を活性化できる(30.3%)
経営指導員の仕事は、経営者と直接話をしながら直接的・間接的に経営に関わることです。効果的な指導を行って経営が上向けば、経営者からは感謝され、自身も達成感が得られるだけでなく、地域の活性化にもつながります。大きなやりがいのある仕事だといえるでしょう。
経営指導員の大変さ
経営指導員の大変さとして大きいのは、継続的な勉強が必要なことでしょう。相談業務ではさまざまな相談が寄せられます。上述のアンケート調査で「増加傾向にある相談内容」「解決が難しくなっている相談内容」が重なるものとして挙げられているのは、以下のようなものです。
- 販路開拓(既存顧客ニーズの掘り起こしを含む)
- 市場調査、事業計画の策定や見直し
- 新しい商品・サービスの開発
- 事業承継
- 人材の確保(採用、定着率向上など)、育成(OJT、研修など)
- 既存の商品・サービスの磨き上げ
上の相談内容を見ると、いずれも一朝一夕で解決できるようなものではありません。これらの相談が増えているということから、経営指導員には経営に関する深くて幅広い知識が求められることがわかります。
経営指導員になって地域振興に貢献しよう
経営指導員は、小規模事業者が抱えるさまざまな課題の解決のため、小規模事業者とともに考え、支援を行います。継続的な勉強が必要な大変さはありますが、その分、大きなやりがいのある仕事です。経営指導員は実務経験の要件を満たし、3つの講座を修了すれば資格が得られます。経営指導員になって地域の振興に貢献しましょう。a
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