- 作成日 : 2024年12月19日
特例事業承継税制とは?要件や期限、手続きをわかりやすく解説
特例事業承継税制とは、中小企業が円滑な事業継承を進めるために設けられた特例措置のことで、一般措置とは適用条件や内容が異なっています。本記事では、特例事業承継税制の要件や期限、そして必要な手続きをわかりやすく解説します。
また、利用するにあたって押さえておきたい注意点もまとめて取り上げるため、これから事業の継承を控えている中小企業関係者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
特例事業承継税制とは?
特例事業承継税制とは、2018年度の税制改正によって創設された事業承継税制の特例措置で、中小企業の事業承継を円滑に実施することが制定の目的です。昨今は、中小企業において後継者不足、または未決定を原因とする事業承継の問題が深刻化しており、後継者が決まらないことで事業を畳むケースも少なくありません。
事実、2014年時点で380万社あった中小企業の数は、2021年には336万社まで減少しています。そのため、従来の事業承継税制よりも利用しやすい特例措置が設けられました。
参考:中小企業庁 中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します
特例事業承継税制の提出期限
特例事業承継税制には、提出期限が設けられています。具体的には、2018年4月1日から2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出しなければなりません。
申請窓口は都道府県ごとに異なっており、東京都の場合は産業労働局商工部経営支援課が窓口です。中⼩企業庁の公式サイトに情報が記載されているため、事前にチェックしておきましょう。
特例事業承継税制を利用するメリット
特例事業承継税制を利用することで、事業者側はさまざまメリットを享受できます。具体的なメリットと詳細情報は、以下のとおりです。
相続税および贈与税の負担軽減
特例事業承継税制を利用するメリットとして相続税、および贈与税の負担を軽減できる点が挙げられます。事業継承においては、経営権のみならず自社株式を後継者に引き継ぐケースが多いです。
このとき事業の経営が順調だと、自社株式の評価額が想像以上に高額となり、多額の贈与税、相続税が発生する可能性があります。予想外の支出が発生した結果、事業に影響が出てしまうと、事業継承自体に影響が出かねません。
しかし、特例が適用されれば相続税、贈与税の100%の猶予が認められ、免除を受けられます。
後継者候補同士の争いを回避できる
特例事業承継税制を利用すると、後継者候補の間で発生する争いを抑止する効果も期待できます。事業を継承するにあたってありがちなトラブルが、候補者同士の対立です。
事業を引き継ぐ資質を有しているのは、常に1人とは限りません。話し合いで円満に解決できれば問題ありませんが、対立が発生すると事業の経営そのものに深刻な影響を与える可能性があります。
特例措置は、一般措置と異なりそれぞれの状況に合わせた事業承継が可能です。最大3人までの制限こそありますが、複数人の後継者に承継するパターンも想定されており、要件を満たせば親族外承継にも適用できます。
特例事業承継税制を受けるための要件
特例事業承継税制にはいくつか要件が設けられており、すべての中小企業が利用できるとは限りません。以下は、中小企業が満たすべき要件の一覧と詳細情報です。
経営者の要件
経営者が満たすべき要件は、以下のとおりです。
- 会社の代表者である
- 相続、贈与の前に筆頭株主である
- 親族などで総議決権数の過半数を保有している
- 贈与によって代表を退任する
- 過去に特例措置を適⽤した贈与をしていない
対象となる贈与は1回限りであり、何度も特例は適用できません。また、代表を退任した経営者は、有給の役員として会社に残ることが可能です。
会社の要件
会社が満たすべき要件は、以下のとおりです。
- 中小企業である
- 従業員が1名以上である
- 非上場会社かつ風俗営業ではない
- 資産管理会社ではない
中小企業の定義は、業種分類によってさまざまです。自社が中小企業の条件を満たしているか気になる場合は、中小企業庁の公式サイトをチェックしてください。
相続人の要件
相続人が満たすべき要件は、以下のとおりです。
- 相続・贈与時に後継者と親族で自社株式の過半数以上を保有し、親族の中で筆頭主になること
- 会社の代表である
- 18歳以上で、贈与時まで役員を3年以上務めている(贈与の場合)
- 相続直前に役員であり、相続してから5ヶ月後に代表である(相続の場合)
後継者が1⼈の場合は相続、贈与の後に筆頭株主であること、後継者が複数の場合は各後継者が総議決権数の10%以上を保有していることも条件に含まれます。
特例事業承継税制の流れや手続き
特例事業承継税制を利用するにあたって、あらかじめ手続きの内容や流れを理解しておく必要があります。以下では、申請の作業手順や用意すべき書類について取り上げるため、順番にチェックしていきましょう。
申請に必要な書類
特例を適用するために必要な書類は、以下のとおりです。
- 特例承継計画
- 年次報告書
- 継続届出書
特例承継計画とは、株式などを承継するまでの期間における事業計画、および後継者が株式などを取得したあとの5年間の事業計画を記載した書類です。作成にあたって、認定経営革新等支援機関に所見を記載してもらう必要があります。また、作成自体は株式などの贈与が済んでからでも可能です。
年次報告書は、税制の要件を満たしていることを都道府県に示すための書類です。毎年の提出が義務付けられていますが、6年目以降は年次報告書の提出をする必要はなくなります。
代わりに3年に1回の頻度で税務署に提出する必要があるのが、継続届出書です。なお、年次報告書と継続届出書は、提出を怠ると猶予されていた相続税、贈与税の納税義務が発生します。
申請の流れ
申請の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 特例承継計画の作成
- 先代経営者の相続の発生
- 都道府県知事への認定申請
- 税務署への相続税の申告
一般措置の場合、承継計画を提出する必要はありません。しかし、特例措置の場合は必ず提出してください。
そして、先代経営者が後継者に自社株式の贈与を行う場合、贈与のときまでに代表者から降りておかなければなりません。認定申請は、相続開始から8ヶ月以内に本社のある都道府県庁で行いましょう。審査後に問題がなければ、認定書が交付されます。
相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内に所轄の税務署で行い、相続税の申告書には都道府県の認定書の写しを添付しなければなりません。忘れないように注意しましょう。
特例事業承継税制を利用する際の注意点
特例事業承継税制を利用するにあたって、いくつか押さえておきたい注意点があります。具体的な注意点は、以下のとおりです。
- 特例事業承継税制の制限
- 打ち切りリスク
- 継続的な報告の必要性
特例事業承継税制は、永久的に利用できるものではありません。特例が適用できるのは、2027年12月31日までの贈与、および相続です。活用を検討している場合は、できるだけ早く行動を起こしましょう。
また、特例事業承継税制は、適用後もさまざまな要件を満たさなければなりません。要件を満たせない場合は、特例が打ち切られるため注意してください。
また、要件を満たすだけでなく、都道府県知事、および税務署への継続的な報告も必要です。手間のかかる作業のため、スムーズに報告を行える仕組みを考えておくとよいでしょう。
事業承継税制(一般)と特例事業承継税制の違い
事業承継税制には、一般と特例の2種類が存在します。両者の基本的な違いは、以下のとおりです。
| 特例事業承継税制 | 事業承継税制(一般) | |
|---|---|---|
| 対象株数 | すべての株式 | 総株式の2/3まで |
| 猶予される税額の割合 | 贈与:100%
相続:100% |
贈与:100%
相続:80% |
| 適用期限 | 2018年1月1日から2027年12月31日まで | とくになし |
| 特例承継計画について | 提出が必要 | とくに提出する必要なし |
| 承継パターン | 最大3人まで | 1人まで |
| 経営環境変化に対応した免除 | あり | とくになし |
納税猶予割合をはじめ、各内容が異なっていることがわかります。優遇されている分、特例の方が条件は厳しいといえるでしょう。
特例事業承継税制を適切に活用するためには、制度の仕組みを理解することが大切
特例事業承継税制の適用には、相続税や贈与税の負担軽減をはじめ、さまざまなメリットが存在します。しかし、適用するための条件は複数あり、場合によっては特例の適用を剥奪される可能性もあります。
本記事で取り上げた適用条件や申請の流れ、必要書類などを参考に、適切な特例制度の利用を目指してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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