- 更新日 : 2024年10月9日
不動産業の会社設立で定款に記載する事業目的の書き方
不動産業で法人を設立する場合、法人設立登記が必要です。不動産業には、種々の形態がありますが、法人登記そのものについては共通事項もたくさんあります。
そこで、この記事では不動産業における法人設立の基礎ともいえる定款についてとりあげ、中でも「事業目的」の書き方にフォーカスしていきます。
目次
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不動産業で会社設立をするために必要な手続きとは?
総務省の「日本標準産業分類」によると、不動産業はサービス業に分類され、次の2つの区分となっています。
- 不動産取引業
建物・土地売買業、不動産代理業・仲介業 など - 不動産賃貸業・管理業
貸事務所業、土地賃貸業、貸家業、貸間業、駐車場業、不動産管理業 など
これら以外に、土地を取得し、新しい建物などを開発する不動産開発業もありますが、宅地造成や都市開発を含む不動産開発を事業とするものについては建設業に該当するため、この記事では不動産業には含まないこととします。
また、不動産に関する取引は多岐にわたることから、以下のような不動産に関連するサービス業もありますが、ここでは対象外としています。
- 不動産評価業、不動産投資業、ビルメンテナンス業、リフォーム関連業など
したがって、ここでは不動産取引業や不動産賃貸業などを中心に見ていきましょう。
不動産業で会社設立をするために必要な書類
まず、不動産取引業や不動産賃貸業において、会社設立をするためには法人の種類を決める必要があります。法人の種類は、一般には株式会社か合同会社かのどちらかとなります。法人の種類によっては、会社登記の要件が異なりますので注意が必要です。ここでは、株式会社を中心に解説していきます。
次に、登記に必要な「定款」を作成していきます。定款とは法人の基本的なルールをまとめたものであり、「会社の憲法」とも言われます。会社に出資する者は、定款に記載された目的を達成するために出資したのであり、会社は定款の事業目的以外の行為を自由にできるわけではありません。したがって、定款の作成は十分慎重に行うべきでしょう。
設立時の定款は「原始定款」と呼ばれます。株式会社の場合、原始定款は公証役場において公証人が正当な手続きによって作成された定款であることの証明が必要となります。これを「認証」と言います。そして、定款認証が終わると法人登記申請を行います。登記申請とは、法務局で行う手続きであり、申請書類に不備がなければ受理・記録されて完了します。
定款以外で、法人登記に必要な書類としては一般に次のようなものがあります。
登記申請が完了すると、法人として正式に認められます。登記簿を取り寄せて確認しておきましょう。
一人で定款作成から登記の完了までをしようとすると、かなり煩雑だと言えます。このようなときには、一つ解決方法として、「マネーフォワード クラウド会社設立」などのシステムを利用することをおすすめします。システムに入力することで最大11種の必要書類を作成できます。
定款に入れるべき情報とは
株式会社の定款に入れる情報には次の3種類があり、それぞれ会社法で規定されています。
- 絶対的記載事項(会社法 第27条)会社法上必ず記載すべき事項
①目的
②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
⑤発起人氏名又は名称及び住所
- 相対的記載事項(会社法 第28条)
定款に定めがない場合には効力を生じない事項 - 任意的記載事項(会社法 第29条)
絶対的記載事項、相対的記載事項以外で会社法の規定に違反しない事項
なお、上記④の「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」とは、資本金とする予定の額であるため、実際に払い込む額とは異なることもあります。株式会社では絶対的記載事項に入れておくべき項目として6番目に「発行可能株式総数(新しく発行することが可能な株式の上限)」があり、設立登記の時までに決める必要があります。
合同会社の絶対的記載事項については次のとおりです。
(イ) 商号
(ウ) 本店の所在地
(エ) 社員の氏名又は名称及び住所
(オ) 社員の全部を有限責任社員とする旨
(カ) 社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準
定款に絶対的記載事項の定めがなかったり、絶対的記載事項に虚偽の記載があったりする場合には、定款全体が無効になります。定款が無効になると会社設立ができませんので、よく確認しましょう。
不動産業の場合における事業目的の書き方例
先述のとおり、定款における事業目的は絶対的記載事項です。設立直後の法人はあまり多くの事業はなくても、ある程度の幅をもたせた目的を記載することや宅建業の免許を意識した記載について触れていきます。
定款の「事業目的」とは
定款における事業目的とは、その会社が「どのような事業を行うか」を記載したものです。そもそも会社が事業として行えるのは、定款の「事業目的」に記載された事業範囲だけであり、事業目的外の事業を行った場合には株主など会社の利害者から「無効」を主張される可能性もあります。
したがって、会社の事業目的は事業として行うものの他には、展開予定の事業に留めておく必要があります。よくあるケースとしては、事業目的の末項に「関連する一切の事業」などと少し事業に幅をもたせる場合があります。
不動産業の場合の「事業目的」の考え方
許認可が必要な事業については、事業目的にその内容が記載されている必要があります。
不動産の売買や仲介業をするには、個人・法人を問わず国土交通大臣または都道府県知事の「宅地建物取引業」の免許が必要となります(不動産賃貸業のみは免許不要)。この宅建業の免許申請には「定款」が必要であり、その事業目的には宅建業を営む旨の記載が必要となります。
このように定款の記載事項は、法的な問題に影響を与える可能性がありますので作成にあたってはご注意ください。
ケース別事業目的の書き方のポイント・記載例
ここでは、不動産取引業と不動産賃貸・管理業に分けて事業目的を解説するのがよいのですが、実際には不動産の取引も賃貸も事業範囲に入っている場合が少なくありません。したがって、よくある例を挙げておきます。
事業目的の例 | 不動産取引がメインとなるケース |
---|---|
宅地建物取引業 | |
不動産の売買、賃貸及びその仲介 | |
不動産の仲介・売買・賃貸・管理・宅地建物取引業 | |
不動産の売買、賃貸借管理及びこれに関する仲介業 |
事業目的の例 | 不動産賃貸業がメインとなるケース |
---|---|
不動産賃貸、管理、経営 | |
アパート、マンション、駐車場の経営 | |
不動産の賃貸・管理及びこれらの仲介 | |
駐車場の経営及び管理業務 |
一般的には「売買、賃貸、管理、交換、仲介」などを一文にまとめて目的として記載します。例えば、東急リバブル株式会社のホームページでは事業内容として次の3つを挙げています。
- 不動産仲介業(売買仲介および賃貸仲介)
- 不動産販売業(新築マンションの分譲・リノベーション事業等)
- 不動産販売受託業(新築マンション・建売等の販売代理)
引用:会社概要|東急リバブル
住友不動産販売株式会社では事業内容として次の4つを挙げています。
- 不動産の売買、賃貸の仲介業務
- 不動産の受託販売業務
- 不動産の賃貸業務
- 前各号に付帯関連する業務
さらに、三菱地所リアルエステートサービス株式会社は、ホームページにて事業内容を8つを挙げていますが、不動産に関連するものは以下の6つです。
- 不動産の売買、仲介及び鑑定
- 不動産の管理、貸借及び売買の受託
- 不動産の所有、管理及び貸借
- 駐車場の管理及び運営
- 駐車場の管理及び運営の受託
- 前各号に関連する業務の開発、販売、企画及びコンサルティング業務
引用:会社概要 | 企業情報 | 三菱地所リアルエステートサービス株式会社
事業目的を記載するにあたって、数に制限はありません。しかしあまり多く書きすぎると何がメインの会社かわからないため、記載例を見ると、主力となる不動産の取引について記載し、付帯業務についても付け加えるといったスタイルであることがわかります。
定款の事業目的を記載する際に気を付けるべきこと
ここまでで事業目的の記載時に気を付けることをまとめると次の3点です。
- 宅建業を営む旨の記載を入れること
- できるだけ簡素にわかりやすく記載すること
- 事業目的の末項に「関連する一切の事業」などを入れること
事業目的を記載する際に気を付けるべきこと
ここでは、定款作成から登記申請までの流れについて概要を確認したあと、法人としての資格や設立のポイントについて考えてみましょう。
定款作成から登記までの流れ(株式会社・合同会社)
株式会社と合同会社の一番の違いは、出資者と経営者の関係です。株式会社は「出資者≠経営者」という構図になりますが、合同会社では「出資者=経営者」の関係です。そのため、合同会社では定款作成後に「認証」が不要です。
会社の基本的なことについて出資者と経営者の間でトラブルが起こっても公証人という第三者に認められている定款があると、それに沿って解決できることが少なくありません。しかし、合同会社は「出資者=経営者」という関係であるため、定款を作れば、認証を受けなくても正式な定款になります。
<定款作成から法人登記までの流れ>
登記までの流れ | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
法人の基本情報の決定 | 商号、資本金の額、事業目的、決算期、発起人、設立時役員、発行株式数などの決定 | |
会社実印*の作成 | 設立時代表取締役の印 | 代表社員の印 |
定款認証 | 公証人との事前打合せ 定款認証の嘱託 | (認証不要) |
資本金の払込み | 発起人による資本金払込み | 社員による資本金払込み |
設立登記申請 | 申請情報、添付書類、登録免許税の準備 |
*オンライン申請の場合には実印の提出は任意となっています。
不動産業で会社設立をする場合に必要な資格
先述のとおり不動産の売買や賃貸の場合には、宅地建物取引業免許が必要になります。
認証名等 | 資格概要 |
---|---|
宅地建物取引業免許 | 宅地または建物の売買、交換、貸借の代理、貸借の媒介を業として行うものは国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受ける必要がある。 事務所等ごとに成年者である専任の宅地建物取引士の設置義務があります。 |
賃貸不動産経営管理士資格 | 管理戸数200戸以上となる賃貸住宅管理業者は、営業所ごとに賃貸不動産経営管理士を1名以上設置する義務があります。 (2021年6月に施行された「賃貸住宅管理業務を適正に関する法律」により実施) |
参考:宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索、業務管理者について | 国土交通省
その他、この記事で述べる不動産業のカテゴリー外にはなりますが不動産関連の資格には次のようなものがあります。
- 不動産鑑定士:不動産の適正な価額を評価・鑑定
- マンション管理士:管理組合や所有者などに対する助言や指導・援助等
- 管理業務主任者:マンションの管理業務を行うための資格
- 土地家屋調査士:土地・建物に関する調査や測量から不動産の登記申請代理等
不動産業で会社設立をする場合のポイント
不動産業は産業においても個人の生活においても基盤となる重要な産業です。建築費の高騰や都市部における人口集中、さらには低金利の継続が不動産の価格を押し上げている現実もあり、不動産業を営む法人数も増加傾向であり、好況と言えます。
しかしながら、超高齢化や人口減少、空き家問題などのマイナス要因も顕在化してくるため、ターゲットの価値観やライフスタイルの多様化に対応する必要があるでしょう。
したがって、社会変化にある程度対応できるよう、事業内容もフレキシブルに考えることが大切です。
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STEP1 | 書類作成 会社設立に必要な情報を入力し、定款を作成します。 (株式会社、合同会社の選択によりそれぞれに合った項目が表示されます。)
|
---|---|
STEP2 | 登記に関する手続き(必要な証明書をアップロードできます。) |
STEP3 | 会社設立後の手続き |
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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