• 更新日 : 2025年2月12日

開業届とは?書き方や必要書類、提出するメリットなどを徹底解説【記入例付】

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは、個人事業主が開業したことを税務署に知らせるための書類です。開業届は自分で作成することもできますが、無料の開業届ソフトを使うとより簡単に作成できます。

この記事では、個人事業主やフリーランスの方、副業をしている方に向けて、開業届の書き方や提出方法を、画像付きでわかりやすく解説します。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは?

開業届とは、個人事業主が開業したことを税務署に知らせるための書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。

個人事業主が開業すると、売上や経費が発生するため、自身で所得税を計算し、確定申告を行う必要があります。開業届を税務署に提出すると、「個人事業主として所得税を納めます」と税務署に知らせることになります。それ以降、税務署は確定申告に必要な情報を通知し、個人事業主がきちんと申告・納税しているか管理します。

開業届は誰が提出する?

開業届を提出するのは、事業を開始する本人です。

会社員の副業の場合、基本的には開業届を提出する必要はありません。ただし、事業所得が発生する場合は、開業届を提出したほうがよいでしょう。

なお、本業で開業届を提出する人と副業で開業届を提出する人で、書き方や提出先に違いはありません。

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開業届の提出期限は?

開業届は、事業を開始した日(開業日)から1カ月以内に、事業所を管轄する税務署へ提出します。開業日といっても、個人事業主の場合は事業を始めた日が曖昧なこともあるでしょう。開業日については決まったルールがあるわけではなく、本人が「開業した」と考える日が開業日となります。

したがって、実際は開業届の提出が遅れてしまうケースも多々あります。提出が遅れても特に罰則はありませんが、個人事業主として正しく納税や申告を行うために速やかに提出しましょう。

開業届の提出時に必要な書類

開業届に必要なもの、書類

開業届の提出時は、開業届とマイナンバーカードの2つがあれば問題ありません。

マイナンバーカードを持っていない場合は、通知カードやマイナンバーが記載された住民票の写しと、本人確認書類が必要になります。運転免許書やパスポートなどを用意しておきましょう。

また、確定申告で青色申告を選択する場合は、青色申告承認申請書も一緒に提出することをおすすめします。青色申告承認申請書を提出することで、最大65万円の青色申告特別控除などの特典を受けられます。税務署の窓口や国税庁のWebサイトからダウンロードできるため、開業届とセットで準備しましょう。

なお、開業届の提出時に印鑑は不要です。開業届に押印する必要もありません。税務署に開業届を持ち込んで直接提出する場合は、とっさの修正対応で訂正印を押すのに役立ちますが、基本的には不要と考えて問題ないでしょう。

開業届の作成方法は大きく2種類

開業届の作成方法には、「自分で作成する方法」と「開業届ソフトで作成する方法」の2種類があります。

開業届の作成方法

自分で作成する方法

自分で作成する場合は、税務署の窓口や国税庁のWebサイトから開業届をダウンロードして、手書きまたはパソコンで記入します。

手書きで作成する場合は、提出する開業届と控えの2枚を作成し保管する必要があるので注意しましょう。また、e-Taxを利用すれば、オンラインでの作成・提出も可能です。

開業届を提出する方法や控えについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

開業届ソフトで作成する方法

クラウド開業届

開業届ソフトとは、オンライン上で簡単に開業届が作成できるソフトのことです。

パソコンやスマホから必要事項を入力するだけで簡単に作成できることから、はじめて開業届を作成する方を中心に、多くの方に利用されています。

マネーフォワード クラウド開業届画像:マネーフォワード クラウド開業届(執筆時点の情報なので、実際の画面表示は異なる場合があります)

例えば、マネーフォワード クラウド開業届なら、ガイドに沿って入力を進めることで、最短5分で開業届が作成できます。もちろん利用料金は無料です。

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開業届の書き方

開業届の書き方を「自分で作成する場合」と「開業届ソフトで作成する場合」の2パターンに分けて紹介します。

自分で作成する場合

まずは、国税庁のWebサイトから開業届をダウンロードしましょう。

開業届と青色申告承認申請書の記入方法

出典:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」を加工して作成

① 提出先・提出日

開業届を提出する管轄の「税務署名」と「提出日」を記入します。提出先は、納税地を所轄する税務署です。所轄の税務署は、国税庁のWebサイトで確認できます。

参考:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁

② 納税地・住所

住所地・居所地・事業所のなかで、納税地に該当する項目を選択し、住所と電話番号を記入します。住所地・居所地・事業所の違いは、以下の通りです。

住所地・居所地・事業所の違い
  • 住所地:実際に住んでいる住民票と同じ場所
  • 居所地:住民票の住所地ではなく、一時的に住んでいる場所
  • 事業所:事務所や店舗として事業を行っている場所

自宅とは別に事務所や店舗を置いて事業を行う人も、一般的には住所地で届出をします。

③ 氏名・生年月日・個人番号

事業者の氏名と生年月日を記入します。また、マイナンバー(通知)カードに記載されている12桁のマイナンバー(個人番号)を記入します。

④ 職業・屋号

職業と屋号を記入します。職業は、プログラマーやWebデザイナーなど、具体的な職業名を記入してください。屋号がない場合は、空欄でもかまいません。

⑤ 届出の区分・所得の種類

「開業」を選択し、所得の種類は「事業所得」を選択します。ただし、不動産投資がメインの場合は「不動産所得」を選択しましょう。

⑥ 事務所等を新設した日

開業日を記入します。先に述べた通り、開業日は自由に設定できます。

⑦ 開業に伴う届出書の提出の有無

青色申告承認申請書も同時に提出する場合は、上段で「有」を選択します。下段は消費税課税事業であるかの確認です。

⑧ 事業の概要

カメラマンや飲食店、翻訳など、事業内容を簡潔に記入します。

⑨ 給与等の支払の状況

青色事業専従者がいる場合は「専従者」欄に、それ以外の従業員がいる場合は「使用人」欄に人数を記入します。

税額の有無とは、給与から源泉所得税を天引きする必要があるかどうかということです。具体的に、給与の月額が8万8,000円以上の場合は「有」を選択します。従業員が一人もいない場合はすべて空欄となります。

開業届ソフトで作成する場合

開業届ソフトの例

画像:マネーフォワード クラウド開業届(執筆時点の情報なので、実際の画面表示は異なる場合があります)

開業届ソフトで作成する場合は、上記のようなフォームに1つ1つ回答するだけで簡単に作成できます。

マネーフォワード クラウド開業届は無料で利用でき、ガイドや書き方の例も詳しく記載しているので、初めての方も安心して利用が可能です。

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開業届の提出方法

開業届の提出方法

開業届の提出方法は、「税務署窓口で提出する方法」「郵送で提出する方法」「e-Taxで提出する方法」の3種類があります。

上記に加え、マネーフォワード クラウド開業届では、スマホでの提出(電子申請)が可能なので、自宅から提出が可能です。(利用は完全無料です)

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税務署窓口で提出する方法

税務署窓口の受付日時は、基本的に平日8:30~17:00です。土・日・祝日は閉庁日となっています。時間外の場合は、税務署の時間外収受箱に投函することにより提出が可能です。

開業届と同時に提出する控えは、税務署窓口で提出した場合、受付印を押した上で返却されます。郵送の場合は返送用封筒を同封すれば、受付印を押されたものが返送されます。受付印のある控えは重要な書類となるので、なくさないようきちんと保管しましょう。

郵送で提出する方法

開業届は、郵送による提出も可能です。郵送で提出する場合は、開業届の控えに返信用封筒を同封し、返信先として自分の住所を明記しておきましょう。税務署で受理印を押した控えが返送されます。

e-Taxで提出する方法

e-Taxは、火曜日~金曜日は基本24時間、月・土・日・休祝日は8時30分~24時の間で利用できます。(休祝日やメンテナンス日などの例外があります)

e-Taxで提出した場合は、メッセージボックスに届く「データを受け付けました」という文言が記載されたメール文書が、受付印の代わりとなります。このメール文書を印刷し保管するようにしてください。

マネーフォワード クラウド開業届では、スマホでの電子申請が可能のため、自宅から簡単に開業届を提出できます。

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開業時に提出が必要な開業届以外の書類

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)以外にも、事業内容によっては別途提出が必要となる書類があります。ここでは、よく取り扱われる主な書類を中心に解説します。

青色申告承認申請書

個人事業主には、所得税の確定申告にあたって「青色申告」と「白色申告」の2つの制度があり、事業主はどちらかを選択することになります。

青色申告を選択すればその名の通り「青色申告事業者」となり、青色申告を行わない個人事業主は「白色申告事業者」となります。

青色申告とは、青色申告承認申請書を税務署に提出し、一定の要件を満たすことによって、税金面でさまざまな優遇措置を受けることができる制度です。

青色申告事業者になると、複式簿記を基礎とする厳密な会計帳簿を作成するなどの事務負担があるものの、以下のようなメリットがあります。

青色申告事業者になるメリット
  • 青色申告特別控除額として最大65万円を経費に計上できる
  • 配偶者など家族が従業員として働いている場合は、「青色事業専従者給与」として家族に支払う給与を経費に計上できる
  • 赤字による損失額を3年間繰り越すことができる

一般的には、開業届の提出と同時に青色申告承認申請書を提出することで、青色申告事業者となります。開業日から2カ月以内に青色申告承認申請書を提出しなければ、自動的に白色申告事業者となり、税金の優遇措置を受けることはできません。

また、開業届を提出せずに、青色申告承認申請書だけを提出することはできないようになっています。事業開始からすでに1カ月以上経過している方は、早めに提出しましょう。

青色申告承認申請書の書き方や提出方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

なお、マネーフォワード クラウド開業届では、所得税の青色申告承認申請書の作成も可能です。

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個人事業開始申告書

個人事業税の事業開始等申告書は、個人の事業を開始したことを都道府県税事務所へ届け出るための書類です。

開業届が国税である所得税に関する書類であるのに対し、個人事業税の事業開始等申告書は地方税である個人事業税に関する書類です(個人事業税は事業所得が290万円を超えた場合に課税対象となります)。

開業届と違い、都道府県によって名称や提出先、提出期限に違いがあります。例えば、東京都は事業開始日から15日以内を期限としていますが、大阪府では2月以内となっています。

個人事業開始申告書の書式は都道府県によって異なるので、詳しくは各都道府県のホームページおよび下記の記事もご覧ください。

各業種の許認可に関する書類

開業する業種によっては、以下のように必要な届出や免許などがある場合があります。

代表的な届出・許認可の例
  • 飲食店営業許可
  • 酒類の販売業免許の申請
  • 菓子製造業許可
  • 防火管理者選任届
  • 動物取扱責任者
  • 風俗営業許可
  • 旅館業営業許可
  • 宅地建物取引業

開業届と合わせて提出しましょう。

その他の書類

開業にあたり、従業員を雇用する場合や、 配偶者や親族に給料を払う場合は以下のような書類を必要に応じて提出します。

マネーフォワード クラウド開業届では、上記の書類も作成可能です。

国税庁のWebサイトには、新たに事業を開始した際の代表的な届出書などがまとまっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁

開業届を提出するメリット

開業届の提出が遅れたり、提出しなかったりしても、特に罰則はありません。事業を開始していても開業届を提出していない人がいるのも事実です。しかし、開業届を提出することで多くのメリットがあります。

青色申告の特典を受けられる

青色申告をするためには、開業届を出した上で、所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があります。青色申告を選択し、所定の手続きを行うと最大65万円の控除が受けられるなど、税制上のメリットが豊富です。

青色申告のメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

社会的信用が向上する

融資の審査やクレジットカードの申し込み、賃貸オフィスの契約時など、開業届の控えを求められるケースも珍しくありません。開業届を提出していれば、個人事業主として事業を行っていると証明できるため、社会的な信用力が高まります。

屋号付きの銀行口座を開設できる

屋号とは、「山田商店」や「オフィス田中」のように、個人事業主がビジネスで使用する名称のことです。今まで自分のフルネームの銀行口座を保有していた方も、開業届を提出すれば新たにビジネス用に屋号を使用した銀行口座を開設できます。

個人事業主が屋号付きの銀行口座を開設しておけば、ビジネスの支出とプライベートの支出を明確に分類できるため、確定申告や経費精算が便利になります。

また、報酬の振込先を個人名ではなく屋号付き口座に指定することで、対外的な信用獲得にもつながります。

小規模企業共済に加入できる

小規模企業共済とは、中小企業の経営者や個人事業主などの積立による退職金制度で、掛金に応じて給付を受け取れます。

個人事業主の場合、小規模企業共済への加入手続きでは、確定申告書の控えもしくは開業届の控えが必要です。

助成金や補助金を申請できる

国や自治体、公共団体などが実施している助成金や補助金の申請において、開業届の写しが必要となる場合があります。支援制度の活用を検討している方は、開業届を提出していないと申請そのものができないケースもあるため、早めに提出を済ませておくとよいでしょう。

開業届を提出するデメリット

開業届の提出には多くのメリットがありますが、状況によってはデメリットを感じる場面があるのも事実です。ここでは、代表的なデメリットについて紹介します。

配偶者の扶養から外れる可能性がある

開業届を提出して個人事業主になり、事業所得が一定額を超えると扶養から外れる可能性があります。扶養から外れると、健康保険や年金の保険料を自己負担する必要が生じるため、金銭的な負担が増加します。

また、配偶者が青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けている場合や、白色申告者の事業専従者になっている場合は扶養控除の対象外です。その分、生計を一にする配偶者を青色申告者や白色申告者の専従者にすれば、支払った給与が必要経費として認められます。

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

失業手当(失業保険)を受けられない

会社員であれば、退職後に条件を満たすことで失業手当(雇用保険の失業給付)を受けられる可能性があります。しかし、開業届を提出して個人事業主となると「就職していない状態」には当てはまらないため、失業手当の受給資格を失うことがあります。

確定申告が必要となる

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた全所得金額とそれに対する所得税等の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続きのことです。

会社員の場合、所得が一定額を超えていない限り確定申告は不要ですが、開業届を提出して個人事業主になると、基本的には確定申告が必要です。さらに、青色申告を選択した場合は、貸借対照表損益計算書といった書類の作成が必要となるため、白色申告と比べて手間が増えます。

開業届は出さない方がいい?

開業届を提出しなくても、罰則が科される訳ではありません。そのため、あえて開業届を出さない方もいるようです。

ただし、所得税法では、事業所得、不動産所得、山林所得を生じる事業を開始したときには、その事実があった日から1カ月以内に開業届を提出しなければならない旨が定められています。

また、青色申告や社会的信用の向上などのメリットを得られなくなるため、本当に出さなくてよいかは慎重に検討する必要があります。

開業後の確定申告について知っておこう

個人事業主として開業した後は、所得税や消費税などの税金の手続きが発生します。特に確定申告は毎年必ず行う必要があるため、スムーズに進めるには基本的なルールや注意点を理解しておくことが重要です。ここでは、確定申告の概要と押さえておきたいポイントを解説します。

確定申告の期限

確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得と税額を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告・納税する手続きです。

3月15日までに確定申告ができなければ、期限後申告となってしまいます。納付も遅れた場合には遅れた日数分の延滞税(年利最高14.6%)がかかり、無申告加算税(最高20%)が上乗せされる場合もあるので注意しましょう。

日々の取引は会計ソフトに入力しましょう

確定申告をスムーズに行うためには、日頃から帳簿管理や経理処理をしっかり行うことが大切です。月単位や週単位など、決まったサイクルで記帳する習慣を身に付けると、申告時の負担が大幅に減らせます。

日々の取引を会計ソフトに入力することで、金額を自動で集計し、確定申告書に反映させることができます。無料で使えるクラウド会計ソフトもありますが、できれば便利な機能の多い有料のクラウド会計ソフトの購入をおすすめします。

確定申告ソフトを使えば青色申告も簡単になるため、開業届の提出時に導入を検討しましょう。

領収書や請求書の保管も忘れずに

青色申告の場合、確定申告書を作成する領収書類については7年間、請求書類については5年間の保管が求められます。税務署からこれらの証拠書類の提出を求められた場合、応じる必要がありますので、きちんと保管するようにしましょう。

開業届を提出して個人事業主としてスタートしましょう

この記事では、開業届の書き方や提出方法、開業後の確定申告などについて解説しました。

個人事業主として仕事をするためには、事業に関する知識やスキル以外に、開業にともなう手続き方法なども知っておかなければなりません。この記事の解説をしっかり理解し、スムーズな開業を目指しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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