- 作成日 : 2025年2月12日
中古車販売の開業に必要な資格・許認可ガイド!申請方法や費用を解説
中古車販売の開業には、古物商の許可が必要です。許可の取得には必要書類を揃え、管轄の警察署で手続きを行います。取得までに40日程度の日数がかかるため、余裕をもって準備しましょう。古物商の許可以外でも、行う業務内容により必要な資格・許認可があります。
本記事では、中古車販売の設立で必要な許認可について解説します。
目次
中古車販売に必要な資格や許認可は?
中古車販売業を始める際は、古物商の許可が必要です。まずは、そもそも中古車販売業とは何かについてみていきましょう。
中古車販売業とは
中古車販売業とは、中古車を専門に販売する業種です。中古車を仕入れ、年代やグレード、状態によって値付けをします。そのほか、仕入れた中古車や販売した商品の整備や点検、アフターメンテナンスなども仕事のひとつです。
また、来店客や問い合わせなどに対応して営業や販売を行い、見積書の作成や法的な書類の作成なども行います。
古物商(自動車商)の許可が必要
中古車販売業に特別な資格は必要ありませんが、古物商許可申請による古物商許可証の取得が必要です。
古物商許可とは、古物(中古品)の売買や交換、レンタルなどの古物営業を行うために必要な許可のことです。中古車販売をはじめ、リサイクルショップやネット通販など、幅広い取引に適用されます。
古物商許可申請は、店舗の所在地を管轄する警察署で手続きを行います。許可を受けずに中古品の販売を行なった場合は無許可営業となり、罰則が科せられるため注意が必要です。
中古車販売の古物商許可を取得する方法
中古車販売の古物商許可申請は、以下の手順で行います。
- 書類を準備する
- 管轄の警察署に申請する
- 審査が行われる
- 審査期間は土日を除く40日程度
- 古物商許可証が交付される
手続きの流れをみていきましょう。
書類を準備する
古物商許可申請では、まず必要書類を準備します。個人か法人かで必要書類は異なるため、どのような書類が必要かを確認しておきましょう。
申請者 | 必要書類 |
---|---|
個人 |
|
法人 |
|
提出書類は、作成から3ヶ月以内のものを提出します。用意した申請書が無効にならないよう、書類を揃えたら早めに手続きを行いましょう。
管轄の警察署に申請する
書類を用意したら、店舗の所在地を管轄する警察署で申請手続きを行います。事前の予約は特に必要ありませんが、担当者に書類を確認してもらうためにも、事前に連絡して提出の予約をしておくと安心です。また、申請時に手数料の納付が必要になる場合もあるため、問い合わせておきましょう。
提出書類は、基本的に正本と副本の2通の提出を求められます。そのため、提出用と自分の保管用で、原本のほかコピーを2通用意しておきましょう。
審査が行われる
申請書類の審査期間は、土日祝日を除く40日程度です。審査でチェックされるポイントは、申請者が「欠格要件」にあたらないか、古物を管理できるかという点です。
欠格事由とは、主に以下の内容に該当する場合です。
- 成年被後見人、被保佐人または破産手続開始の決定を受けた者で、復権していない
- 犯罪歴がある
- 暴力団関係者
- 過去に古物営業法違反をして古物商許可を取り消されたことがある
- 未成年者
- 住居不定
- 心身の故障により古物商または古物市場主の業務を適正に実施できない
このほかにも多くの欠格事由が定められており、審査ではこれらに該当しないかを厳しくチェックされます。
また、審査では営業所についても詳細な確認が行われ、営業所としての実態があるか、古物の管理に適しているかどうかが審査されます。
古物商許可証が交付される
審査が完了して許可が下りたら、古物商許可証が交付されます。警察から連絡が来るため、日程を調整し、許可証を管轄の警察署まで受け取りに行きましょう。
受け取りの際には法人代表者印や身分証明書、筆記用具など必要なものがあるため、必ず確認して持参するようにしてください。代理人が行く場合は、本人の委任状も必要です。
古物商許可が下りないケース
古物商許可が下りないケースは、欠格事由に該当する場合です。営業所に実態がない場合も、許可が降りない可能性が高いでしょう。また、許可を受けても、以下のような場合は許可が取り消しになる可能性があります。
- 偽りや不正な手段で許可を受けた
- 許可を受けてから6ヶ月以内に営業を開始しない、または引き続き6ヶ月以上営業を休止している
- 3ヶ月以上所在不明となった
中古車販売の古物商許可以外に役立つ許可や資格
中古車販売業を営むために古物商許可以外の許可や資格は必要ありませんが、取得していれば役立つ許可・資格はあります。
ここでは、中古車販売で取得しておくと便利な許可・資格を紹介します。
自動車引取業の登録(廃車の引き取り)
中古車販売で廃車を引き取る場合、自動車引取業の登録が必要です。登録の有効期間は5年であり、5年ごとに更新しなければなりません。
自動車引取業の登録は、都道府県知事等に書類を提出して申請を行い、自動車リサイクルシステムへの登録も同時に行います。
引き取った廃車は、中古車として販売することはできません。廃車として引き取った車はフロン類回収業者や解体業者へ引渡し、使用済自動車引取証明書を発行します。廃車を解体後に永久抹消登録と自動車重量税還付の手続きが可能になったら、車の最終所有者に通知が必要です。
フロン回収業の許可(フロンの回収)
引き取った車のフロン回収を自社で行いたい場合は、フロン回収業の許可が必要です。正式名称は「第一種フロン類充填回収業者」です。
フロン回収業は自動車からフロン類を引き取ってリサイクルを行うもので、自社で行うことで、他社に依頼する際にかかるコストを削減できます。
フロン回収業の許可は、営業所所在地のある都道府県知事に申請します。許可の有効期限は5年で、5年ごとの更新が必要です。
自動車解体業の許可(解体や部品取り)
引き取った車の自動車解体を自社で行う場合、自動車リサイクル法に基づく自動車解体業の許可が必要です。自動車解体業の許可を取得することで、引き取った車を自社で解体し、スクラップにできます。
許可を取得するためには、営業所がある所在地の都道府県知事に必要書類を提出し、許可を受けなければなりません。
許可を得るためには、施設の基準と申請者の能力の基準を満たす必要があります。施設の基準は、法に定められた施設の要件を満たすことです。申請者の能力の基準では、標準作業書を常備できること、解体業を継続できるだけの資金力があることが求められます。
自動車解体業の許可の有効期限は5年であり、5年ごとの更新が必要です。
回送運行の許可(車検切れの車で走行)
中古車の買取で車検の切れた車や抹消済みの車、または一度も登録を受けたことのない自動車を引き取るためには、回送運行の許可が必要です。
これらの車は本来、公道を走ることはできません。しかし、一定の目的がある場合、一時的に運転できる「臨時運行許可制度」が設けられています。
ただし、許可は1台の自動車につき1回の運行に限られているため、特例として、自動車の販売等の事業者が業務を遂行する場合に限り、1回の許可で複数の自動車に使用できる「回送運行許可制度」を利用できます。
回送運行の許可を受けるためには、営業所の所在地を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所に申請書の提出が必要です。 定められた許可基準を満たしているか審査が行われ、許可が下りるという流れです。
「中古自動車販売士」の資格
中古車販売士とは、顧客が安心して中古車を購入できるよう、車両の状態を正しく評価し、必要な情報を適切に提供できるスキルを高める民間資格です。中古車販売士の資格がなくても中古車販売業はできますが、販売士の資格があることで販売員の能力を高め、顧客満足度の向上を図れます。
中古車販売士の在籍する販売店は「販売士在籍販売店」として登録され、専用バナーやのぼり、ポスターなどを掲げることができます。在籍販売店の証明書も表示できるため、「安心なお店」の目印となり、集客が期待できるでしょう。
中古車販売士の資格は、「一般社団法人 日本中古自動車販売協会連合会」が実施する研修を受講し、修了試験に合格することで取得できます。初年度は2年間、以降は3年間の有効期限が設けられ、資格を更新するためには更新研修を受けなければなりません。
新車と中古車販売での資格や許認可の違い
中古車販売では古物商許可の取得が必要ですが、新車販売の場合は特別な資格・許認可は必要ありません。
ただし、新車はメーカーから直接仕入れるのではなく、正規ディーラーから仕入れることになるため、仕入れ先の確保が必要です。
ディーラーは消費者に向けた新車販売がメインであり、新車販売店への卸しを制限することもあります。一般消費者に直接販売するほうが利益になることや、在庫切れを起こして一般消費者に提供できなくなることを避けたいためです。
そのため、安定した仕入れ先を見つけることが重要になるでしょう。
中古車販売会社を設立するには?
中古車販売会社の設立方法は、古物商許可の取得など、中古車販売に特有の手続きが必要です。
ここでは、設立の流れや会社設立に必要な資金について解説します。
設立の流れ
中古車販売会社の設立は、以下の手順で行います。
- 古物商許可を取得する
- オークション会員に登録する
- 保険の代理店に登録する
中古車販売では仕入れ先の確保が重要であり、仕入れのルートを複数確保するため、中古車販売業者向けのオークションの会員登録も検討しましょう。
自動車の購入では自賠責保険の加入も必要になるため、自賠責保険の代理店として登録しておけば、顧客の利便性を高められます。
ただし、保険の代理店として登録を受けるためには、試験を受けて保険募集人資格を取得しなければなりません。さらに、保険会社と代理店委託契約を締結した上で、財務局への登録が必要になります。
会社設立では、定款の作成や法人登記も必要です。一般的な会社設立の流れについては、以下の記事で詳しく説明しています。
中古車販売の法人設立に必要な資金
中古車販売では、中古車の仕入れや店舗の用意に初期費用がかかります。一般的な展示場タイプの店舗を構える場合、中古車の陳列に広いスペースが必要になり、商品の仕入れに車を10台程度揃えるだけでも1,000万円以上の資金がかかります。
そのため、物件の取得や設備、仕入れの資金を合計すると、初期費用だけでも2,000万円程度が必要です。
さらに、設立当初は、事業が軌道に乗るまでの運転資金も必要になるでしょう。
中古車販売の会社設立に役立つひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、中古車販売の会社設立に役立つひな形やテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
中古車販売の許可手続きを確認しよう
中古車販売業を開業するためには、古物商許可の取得が必要です。さらに、事業の範囲を広げるためには、自動車引取業の登録や自動車解体業の許可などが必要になるでしょう。販売員が中古車販売士の資格を取得すれば、顧客へのアピールになります。
古物商許可の取得には時間がかかるため、早めに申請を行い、事業をスムーズに進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
起業したい女性の実態は?何をすると良い?創業時の注意点なども解説
最近、起業という働き方が注目されています。やりたいことを実現できる、自由に時間を使える、収入がアップするチャンスがあるなど、自分で事業を立ち上げることでさまざまなメリットを得ることができます。 この記事では起業に興味をお持ちの女性の方のため…
詳しくみる起業するなら知っておくべき法律は?弁護士に相談できる?
起業をするうえで法律の知識は必須です。法律を知らないと気付かないうちに違法行為をしてしまったり、重大なトラブルに巻き込まれたりといった事態にもなりかねません。一方で、法律を知っておけば、問題が発生したときにもスムーズに対応することができます…
詳しくみる夫婦で起業するメリット・デメリットは?おすすめの仕事や注意点も解説!
この記事では、夫婦で起業をするメリットやデメリット、おすすめの仕事内容や起業する方法や注意点など、夫婦で起業をしたいときに気になる情報をまとめています。 夫婦での企業には、家族で過ごす時間が増やせるなどのメリットがある反面、収入がなくなるリ…
詳しくみる開発には許認可が必要?要件や手続きの流れのまとめ
土地開発を行う際には、都市計画法に基づく許可が必要なケースがあります。無秩序な開発を防ぎ、計画的な都市環境の形成を目的とした制度であり、許可が必要になる条件は地域や開発規模によって異なるため、許認可が必要かどうか悩むこともあるかもしれません…
詳しくみる人材紹介会社を起業する方法は?必要な資金や準備について解説!
「起業を検討しているが、どの業界がよいのかわからない」という方におすすめなのが、「人材紹介会社」の開業です。その際に心配なのが、どのような準備が必要なのかという点ではないでしょうか。 そこで、今回は人材紹介会社開業について詳しく紹介します。…
詳しくみる35歳から起業を考えるのは遅い?アイデアの出し方や成功のコツを紹介
35歳から起業を考えるのは遅くありません。中には、40歳を超えてから起業にチャレンジする方もいます。35歳で起業する場合、どのようなポイントを押さえておくべきなのでしょうか。 本記事では、35歳で起業するメリット・デメリットのほか、アイデア…
詳しくみる