- 作成日 : 2022年4月22日
会社設立後の経理業務はどうすべき?税理士や会計ソフトの活用方法も解説!
会社を設立すると、資本金(または出資金)の払い込みをはじめ、直接事業に関わる取引から、間接的に事業に関わる取引まで、さまざまな取引が発生します。さらに、会社は毎期、決算によって生じた経営成績や毎期末の財政状況を報告する義務と、一会計期間において発生した所得を申告し、法人税を納める義務などを果たさなければなりません。
このような義務を履行するためにも、会社設立と同時に経理業務をスタートする必要があります。この記事では、会社設立後の経理業務で知っておくべきこと、税理士に依頼すべきかどうかなどを詳しく解説していきます。
目次
会社設立後の経理業務はどうすべき?
会社を設立したら、毎期末に財務諸表を作成して株主に開示する義務、財務諸表をもとに法人税などの税務申告を行って税金を納める義務があります。このような義務を果たすためにも、日々の取引を会計的に記録する経理業務が欠かせません。
会社設立後の経理業務で考えておきたいのが、以下の2点です。
- 誰が経理業務を行うか
- どのように経理業務を行うか
まず、誰が経理業務を行うかです。小規模でのスタートであれば経営者自らが経理業務を行うこともありますが、本業もある分、負担が大きくなってしまいます。簿記の知識がない場合は、一から基礎を学んで経理を行う必要がありますので、経理も本業もとなると厳しいでしょう。経営者が経理業務を行わないときは、簿記の資格や経理の経験がある人材を雇用して経理担当者を置く方法、記帳代行など外部に委託(アウトソーシング)する方法が考えられます。
次に、どのように経理業務を行うかです。主に、伝票作成など紙媒体で行う方法、表計算ソフトなどを利用する方法、会計ソフトを利用する方法が考えられます。取引が少ないうちは表計算ソフトなどでも対応できますが、作業負担や作業効率、処理のしやすさを考えると、会計ソフトを利用するのが現実的でしょう。
そもそも経理とは?
会社設立後は経理業務をスタートする必要があると説明しましたが、そもそも「経理」とは何なのでしょうか。
経理は、日々の取引の流れを記録し、財務諸表を作成するのに必要な決算を行う仕事のことを指します。取引の記録の仕方にはルールがあり、会計基準などに従って、処理を行わなくてはなりません。
経理の具体的な内容、会計や財務との違いは、以下の記事を参照ください。
会社設立後の経理業務にはどんなものがある?
経理とは何かを説明しましたが、具体的に経理業務に含まれる業務には何があるのでしょうか。日次業務、月次業務、年次業務に分けて、会社設立後に必要な経理業務を紹介します。
経理の日次業務
経理の日次業務は、日々発生するような経理をいいます。基本的な業務は、現金や預金の入出金の管理、現金残高の確認、仮払金の処理、従業員などが立て替えた経費の精算などです。加えて、日々の取引を帳票に記録します。
中でも毎日のように発生する作業が、現金や預金の入出金管理と伝票や帳簿への記帳です。現金管理では特殊仕訳帳である現金出納帳を、預金管理では預金出納帳を作成して、帳簿上の残高と実際の残高が一致しているか確認します。さらに、取引金額に誤りがないか、請求書などと見比べて、入出金の詳細を確認する作業が必要です。
伝票や帳簿への記入では、入出金をともなう取引のほか、入出金をともなわない取引についても会計基準などのルールに従って記帳していきます。
経理の月次業務
経理の月次業務は、月に一度発生するような業務のことです。買掛金の支払い、売掛金の入金確認と消し込み、取引先への請求書や領収書発行、従業員の給与計算と支払い、社会保険料や源泉徴収税の納付などがあります。
経理の年次業務
経理の年次業務は、年に一度発生する業務を指します。主なものは、実地棚卸、償却資産の実査、年次決算のための決算書類の作成、法人税や消費税などの税務申告や納税、従業員の年末調整です。賞与を支給している会社は年1~3回ほど賞与の計算も発生します。
中でも重要なのは、年次決算です。年次決算とは、当期の会計期間における実績を集計して、財務諸表を作成することです。財務諸表作成のためには事業年度末時点での資産状況などを確定しなければなりませんので、未処理事項の確認、帳簿残高の修正、未払金や前払金の確認など、さまざまな作業が必要です。必要な作業や確認を終えた後、決算整理仕訳を行い、財務諸表を作成します。
財務諸表作成後は、財務諸表をもとに法人の所得などを計算して、取締役会や定時株主総会で決算報告の承認を受けた後、法人税や消費税などの税務申告をする必要があります。税務申告時には中間納付分を除いた確定税額の納付も必要です。
経理の年間スケジュールは以下の記事で紹介していますので、こちらもご覧ください。
会社設立後の経理業務に必要な知識は?
会社設立後、日々の経理業務を問題なくこなすには、日々の取引を会計処理のルールに従って仕訳するための知識(簿記の知識)が必要です。さらに、年次決算においては、財務諸表を作成する知識や財務諸表の情報を読み取る知識が必要になるでしょう。
- 簿記検定試験と経理業務
- そのほかの資格
経理業務に関わる知識を測る資格としてよく知られているのが、日本商工会議所主催の「日商簿記検定試験」です。似たような資格に、全国経理教育協会の主催する「全経簿記能力検定」、全国商業高等学校主催の「全商簿記実務検定試験」があります。
いずれの検定試験も簿記の知識や能力を測るものですので、経理業務を行う意味ではどの検定試験を受けても問題ありません。日々の経理を問題なく行えるようにするには、少なくとも基礎レベルである「日商簿記検定試験3級(全経や全商であれば2級)」程度の知識は身につけておきたいものです。
また、製造業であれば原価計算、建設業であれば建設業特有の会計処理が必要になります。原価計算の知識を測るなら、日商簿記検定試験の原価計算初級、または日商簿記検定試験の2級以上、建設業なら建設業振興基金主催の「建設業経理検定」が能力を測る目安になるでしょう。
法人経理の実務では、消費税の絡む会計処理が必要になります。税理士試験の中にも消費税法の試験はありますが、税理士を目指す人向けのもので難易度が高いため、全経経理教育協会主催の「消費税法能力検定」などを参考に、消費税に関するスキルを身につけると良いでしょう。
また、財務分野での知識を高めるなら経済産業省経理・財務人材育成事業の「FASS検定」、将来的に国際市場での事業拡大を考えるなら東京商工会議所主催の「BATIC(国際会計検定)」などの資格試験もあります。
会社設立後の経理業務は税理士に依頼すべき?
会社設立後、経理業務を税理士に依頼するパターンとしては、以下の3つのパターンが考えられます。
- 法人税や消費税などの税務申告のみを依頼する
- 記帳代行と税務申告を依頼する
- 税務顧問契約を結ぶ
1のケースは、日々の記帳や財務諸表の作成を社内で行い、法人税の確定申告など税務申告のみを税理士に依頼するケースです。1~3のパターンの中では税理士に支払う報酬を1番低く抑えることができます。
2のケースは、記帳代行のサービスを提供している税理士事務所に、日々の記帳代行と税務申告を依頼するパターンです。記帳代行については、税理士事務所ではなく専門でサービスを提供している業者への依頼もできます。2のケースは、日々の経理業務からすべて外部に委託することになるため、社内での経理業務の負担を大幅に軽減できるでしょう。
3のケースは、税理士と税務顧問契約を結び、顧問税理士になってもらうパターンです。顧問税理士として契約を行うと、税務申告だけでなく、会計面や税務面でのアドバイス、税務調査の対応など、充実したサポートが受けられます。ただし、税務申告の報酬などとは別に、継続的に顧問料を支払う必要があります。
以上が、経理業務を税理士に依頼するパターンですが、税務申告は必ずしも税理士が行わなければならないという決まりはありません。税理士を通さずに経理業務を行い、税務申告することもできます。
しかし、税務面での知識が十分にないと、正確に申告ができないリスクがありますし、申告には問題がなくても、特別措置法や税額控除などの存在を知らず、税金を多く支払ってしまうことも考えられます。誤って所得などを少なく申告すると、追徴課税が課されることもありますし、申告の誤りをきっかけに税務調査が行われることもありますので、少なくとも税務申告に関しては、税務の専門家である税理士に依頼した方が安心です。
法人決算の流れや法人決算を税理士に依頼するメリット・デメリットは、こちらの記事も参照ください。
以下の記事では、税理士に依頼した方が良いか判断基準になる知識量と作業時間、税理士費用についても紹介しています。
クラウド会計ソフトなら経理初心者でも簡単に仕訳ができる!
コストを抑えつつ効率良く経理業務を自社で行うなら、クラウド会計ソフトがおすすめです。
「マネーフォワード クラウド会計」なら、クラウド勤怠やクラウド経費、クラウド請求書などのシリーズ製品と合わせて使うことで仕訳入力の自動化が図れます。銀行口座やクレジットカード、POSシステムなどとの連携によるデータの自動取得もできますので、データ入力の作業時間を大幅にカットできるだけでなく、仕訳漏れ防止にも役立つでしょう。自動取得データの仕訳の提案機能、登録した仕訳を学習して過去の仕訳から自動提案する機能もありますので、経理初心者にも扱いやすくおすすめです。
また、「マネーフォワード クラウド会計」のようなクラウド型の会計ソフトなら、顧問税理士とアカウントを共有して、必要に応じてアドバイスをもらうことも可能になります。
経理業務を代行してもらう方法もありますが、コストやリアルタイムでの会計情報の取得を考えるなら、クラウド会計ソフトで日々の経理業務を行い、税務申告や税務アドバイスなどのサポートは税理士に依頼するのがおすすめです。
会社設立後の経理業務では会計ソフトを活用しましょう!
会社を設立したら、事業のことだけでなく、経理業務についても考えていかなくてはなりません。日々の記帳を代行してもらう方法もありますが、コスト面やリアルタイムで会計情報を取得することを考えると、代行では思うようにいかない部分もあるでしょう。
会社設立後の経理業務を円滑に、かつ効率良く進めるなら、税理士ともアカウント共有できるクラウド会計ソフトの活用がおすすめです。
よくある質問
会社設立後の経理はどうする?
会社設立後にスムーズに経理業務を行えるようにするためにも、誰が経理業務を担うか、どのように経理業務を行うかを決めておく必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
経理に必要な知識は?
日々の経理業務をそつなくこなすには、少なくとも日商簿記検定試験3級レベルの簿記の知識はあった方が良いでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
設立後の経理は税理士に依頼すべき?
税務申告を考えると税理士に依頼した方が安心です。経理業務全般ではなく、税務申告のみなど一部を依頼することもできます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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