• 作成日 : 2024年10月31日

建築士の事業計画書の書き方は?テンプレートをもとに記入例やポイントを解説

事業計画書とは、これから事業を始める方が計画や見通しをまとめるための重要な書類です。建築士として独立し事務所を開く場合も、事業計画書の作成は欠かせません。

この記事では、建築士事務所の開業を考えている方のために、事業計画書の書き方や具体的な記入例、資金調達方法、押さえておくべきポイントをご紹介します。

建築士の開業に必要な事業計画書とは

事業計画書とは、代表者の経歴や事業に対する想い、提供するサービス・商品の内容や取引・雇用関係、売上や経費の見通しなどを記した書類です。何事も計画が大切ですが、特に事業を展開する場合、一歩間違えれば倒産をしてしまうリスクもあるので、まずはしっかりと事業計画を決めておきましょう。

また、融資を受けたり、助成金や補助金を活用して開業資金を調達したりする場合、審査があって事業計画書の提出を求められます。

建築士の事業計画書の書き方・記入例

建築士といったステータスの高い国家資格を持っていても、初めて起業する際には、事業計画書の作成に戸惑うこともあるでしょう。ここでは、事業計画書に盛り込むべき内容や書き方、記入例をご紹介します。

創業動機・目的

まずは創業する業種と開業予定期、創業動機・目的について記載します。業種に関しては「一級建築士の場合は「建築設計業(一級建築士事務所)」と記載すればよいでしょう。なお、創業予定期は、創業を予定している年月を記載します。

創業動機・目的については代表者の想いを記載する重要な項目です。建築士になろうと思ったきっかけ、開業してやりたいこと、独立開業をしようと判断した理由などを記載しましょう。

業種 建築設計業(一級建築士事務所)開業予定期 ○年○月
1.創業動機・目的
学生の頃から独立して事務所を立ち上げることを目標とし、一級建築士事務所としての経験・実績を積んできた。○○設計事務所の理解・協力も得られ、開業後も仕事を回してもらえることとなり、資金準備などの目途も経ったため本格的に立ち上げることにした。

職歴・事業実績

代表者の方のこれまでの経歴を記載します。履歴書の職歴・学歴欄のように、年次と「●●に就職」というように経歴を書けば問題ありません。また、いつ建築士に認定されたのかも記載しましょう。

2.職歴・事業実績(勤務先・役職・経験年数・資格など)
年次具体的内容
○年○月○○大学卒業
○年○月~○○設計事務所に入社
○年○月~一級建築士に認定。

取扱商品・サービス

事務所のサービス内容や販売戦略、競合や市場の状況について記載します。取扱商品やサービスは「建築物の設計および工事監理」と書けば十分です。セールスポイントや販売ターゲットについては、「どこに・誰に・どうアプローチするか」を簡潔にまとめましょう。競合や市場については、地域の市場状況や競合の動向を簡潔に記載します。

3.取扱商品・サービス
取扱商品・

サービスの内容

建築物の設計および工事監理
セールスポイント

販売ターゲット・戦略

  • ○○県内を中心に顧客を獲得していく。
  • ○○設計事務所と、関係性のある○○建築からの発注は確保できており、立ち上げ段階から一定程度の売上は見込める。
  • AI技術を用いた効果的、効率的な設計を軸に営業をかける。
競合・市場などの分析
  • 市場は停滞しており、競争は激しくなっている。
  • 最先端の技術やシステムを導入できるかどうかで大きな差がつくケースも見られる。

取引先・取引関係

販売先や仕入先、外注先の名称とシェア、掛取引の割合、回収・支払条件について記載します。販売先に関しては法人(工務店やハウスメーカーなど)と一般個人の2パターンが想定されるため、それぞれ分けて記載しましょう。また、従業員を雇う場合は人件費の条件について記入します。

4.取引先・取引関係

取引先名シェア掛取引の割合回収・支払の条件
販売先法人(建築業者)90%100% 末 日〆 翌月末 日回収
一般個人10%100% 末 日〆 翌月末 日回収
   日〆    日回収
仕入先   日〆    日支払
   日〆    日支払
   日〆    日支払
外注先   日〆    日支払
   日〆    日支払
   日〆    日支払

人件費の支払

 末 日〆 翌月20 日支払

(ボーナスの支給月   月、  月)

従業員

常勤役員や3カ月以上継続して雇用している従業員の人数を記入します。家族従業員やパート従業員がいる場合も、その人数の記入を忘れないようにしましょう。

5.従業員

常勤役員の人数
(法人のみ)
従業員数
(3カ月以上継続雇用者)
2人(うち家族従業員)    1人

(うちパート従業員)    1人

借入の状況

代表者が金融機関から借入れをしている場合、借入先の名称とその種類、借入残高、年間返済額について記載します。なお、事業に関するものだけではなくプライベートの借入れ状況についても明らかにしておきましょう。

6.借入の状況(法人の場合、代表者の借入)

借入先名借入残高年間返済額
○○銀行○○支店□事業☑住宅□車□教育□カード□その他2,600万円 150万円
□事業□住宅□車□教育□カード□その他万円万円
□事業□住宅□車□教育□カード□その他万円万円

必要な資金と調達方法

必要な資金(設備資金・初期費用と運転資金)の内訳と見積先、金額と、資金の調達方法と調達金額について記載します。合計額を下部に記載しますが、必要な資金と調達する資金はなるべく乖離がないよう算出しましょう。

7.必要な資金と調達方法

必要な資金

見積先金額調達の方法金額
設備資金

店舗、工場、機械、車両など(内訳)

  • 内装工事費
  • 備品費
  • システム導入費
○○社

○○社

○○社

400万円

300  

50  

50  

自己資金200万円
親、兄弟、知人、友人からの借入万円
日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入300万円
他の金融機関からの借入(内訳・返済方法)万円
運転資金

商品仕入、経費支払資金など(内訳)

100万円

50

50

合計

500万円合計500万円

事業の見通し

売上高や売上原価、経費、利益の見通しについて、開業直後と1年後(もしくは軌道に乗った後)でそれぞれ記載します。また、この見通しを立てた根拠についても明らかにしておきましょう。

8.事業の見通し(月平均)

創業当初

1年後または軌道に乗った後( 年 月頃)

見通しに関する根拠を記入する

売上高①114万円134.5万円

(収支計画)

<創業当初>

  • 売上高

現在の○○設計事務所における設計士1人あたりの個別売上高を算出。初年度における月間売上高114万円。

② 原価率 0%

③ 経費

人件費:家族従業員5万円、パート従業員12万円

家賃:自宅をオフィスに改装のため、0万円

支払利息:300万円×年2.0%÷12ヵ月=0,5万円

その他:光熱費、消耗品費など 5万円

<創業1年後>

① 売上高

○○社に損益計算のシミュレーションを依頼。年間増加率は18%と予測されるため、114万円×118%=134.5万円

② 原価率 創業当初の割合を維持

③ 経費

その他:2万円増加

売上原価②
(仕入高)
0万円0万円
経費人件費17万円17万円
家賃0万円0万円
支払利息0.5万円0.5万円
その他5万円7万円
合計③22.5万円24.5万円
利益①-②-③91.5万円110万円

建築士の事業計画書に使える無料テンプレート

マネーフォワード クラウドは、建築士向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。

建築士が設計事務所を開設するときの資金調達方法

建築士が設計事務所を開業する際の資金調達方法として、まずは融資が挙げられます。銀行や信用金庫などの金融機関からの借入れは、一般的な資金調達方法です。

さらに、日本政策金融公庫の創業融資を利用する方法もあります。事業実績がなくても申し込みやすく、利息が低い点や、一定の要件を満たせば無担保・無保証人で利用可能です。他にも国や自治体の補助金・助成金制度を活用する方法もあります。融資と異なり返済の必要がないため、開業直後には特に有利に働く可能性が見込まれるでしょう。

建築士の資金調達を成功させる事業計画書のポイント

金融機関や日本政策金融公庫から融資を受ける際には、いずれも審査が必要です。最後に、資金調達を成功させるための事業計画書のポイントについて見ていきましょう。

経費の無駄がないかをチェックする

建築士事務所の開業には、工務店やリフォーム業者と比べて比較的低コストで始められる場合もあります。しかし、開業には一定の費用が必要です。特に開業直後は売上が安定せず、コストがかさみ、赤字になる可能性もあります。そこで、経費の無駄を極力省くことが重要です。例えば、設計業務は自宅でも対応できるので、まずは自宅を事務所として活用し、スタッフを雇うようになったら新たな物件を探す方法もあります。

根拠は明確に

融資の審査で特に重視されるのは、事業計画が現実的かどうかです。「売上はこれくらい」「経費はこれくらいで済むだろう」といった曖昧な計算ではなく、具体的な根拠を示すことが求められます。また、建築士は人気商売でもあります。開業後に稼げる見込みがあるか、どのような建物を設計できるのか、そしてどのように自分を売り出すのかという戦略も明確に記載しましょう。

建築士として独立開業するなら事業計画書を作成しよう内容

経験を積み、さらに国家資格を取得して、建築士として独立開業を目指す方も多いでしょう。まず大切なのは、事業計画書をしっかり作成することです。

建築士という高いステータスを持つ国家資格があっても、計画なしでは安定的な経営は難しいでしょう。資金調達を考えている方はもちろん、自己資金で開業する場合も、事業計画の作成に入念に取り組むことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事