• 更新日 : 2023年8月29日

寄附金控除を一から解説!フリーランスになったら活用したい寄附金控除

独立・開業することによって税金との関わり方は会社員とは大きく変わります。毎年必要となる確定申告を「ただ面倒なだけ」と思ってはいませんか?

フリーランスという立場だからこそ、様々な優遇制度を利用して、上手に節税したいですよね。

たとえば、寄附金控除。これは、寄附を通じて世の中の役に立つだけではなく、自分自身も税制面で優遇されるという制度です。今回は寄附金控除の仕組みについて詳しく知って、節税にチャレンジしてみましょう。

寄附金控除とは

【解説】寄附金控除

寄附金控除とは、個人が特定団体に寄附をした場合に所得税や住民税の控除を受けられる制度のことです。すべての寄附金が対象となるわけではありませんが、決められた条件さえ満たしていれば、所得額や税額に関する控除を受けることができます。

なぜ優遇されるの?

では、どうして寄附をすると優遇してもらえるのでしょうか。それは、公益性の高い団体への寄附には、社会貢献活動としての意味合いが強くあるためです。そのため、特定の寄附金については、寄附金相当額に対して課税される税金を免除してもらうことが可能です。

長い間、日本では欧米諸国ほど市民の寄附活動が熱心ではありませんでした。そのため、こうした優遇制度を充実させることで、より気軽に寄附しやすい世の中にしようというのが、この寄附金控除の目的となります。

寄附金控除を受けるには

手続き方法

寄附金控除を受けるための手続きは、いたってシンプルです。確定申告書の所定の欄に寄附先の名称・住所・寄附金額を記入すれば、あとは通常の確定申告と変わりません。ただし、他の各種控除と同様、寄附金控除を受けようとする際にも、証明書の添付が必要です。

寄附金控除を受ける場合は、領収書が証明書代わりになります。ほとんどの公益団体では、寄附をすれば特に請求しなくても、領収書がもらえるはずです。また、口座振り込みであれば利用明細や振り込み用紙の控えなども証明書として利用可能です。

注意点

注意点は「街頭の募金箱」などへの寄附です。通常、こうした寄附では領収書がもらえないため、当然、控除を受けることができません。

個人で寄附をする場合

控除額の計算

さて、それでは「控除額」はどのように計算されるのでしょうか?
所得税の寄附金控除には「所得控除」と「税額控除」があり、寄附先によって所得控除のみが適用される場合と、いずれか有利な方を選べる場合のものがあります。

所得控除では「その年の特定寄附金の合計額 − 2,000円」が総所得金額から控除されます。一方、税額控除では下記のように寄附先によって所得税額から控除する金額を計算します。

(税額控除は、政党等または認定NPO法人等若しくは公益社団法人等への寄附に限られます。)

(1) 政党等寄附金特別控除は次の算式で計算します。

(その年中に支出した政党等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×30%=(政党等寄附金特別控除額)
◎100円未満の端数切捨て

(2) 認定NPO法人等寄附金特別控除は次の算式で計算します。

(その年中に支出した認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×40%=(認定NPO法人等寄附金特別控除額)
◎100円未満の端数切捨て

(3) 公益社団法人等寄附金特別控除は次の算式で計算します。

(その年中に支出した公益社団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)の額の合計額-2千円)×40%=(公益社団法人等寄附金特別控除額)
◎100円未満の端数切捨て

注1:(1)~(3)の寄附金の額の合計額は原則として所得金額の40%相当額が限度です。

注2:(1)の特別控除額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。(2)及び(3)の特別控除額の合計額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。

注3:上記1及び2の算式中の2千円は、寄附金控除と寄附金特別控除(税額控除)とを合わせた金額です。(出典:国税庁HP)

たとえば所得税の税率10%の人が10万円の寄附をしたとすれば、所得控除による減税額が9,800円なのに対し、税額控除による減税額は39,200円になります。

一方、所得税の税率45%の人が、10万円の寄附をしたとすれば、所得控除による減税額が44,100円で、税額控除による減税額は39,200円になります。

したがって、高所得者ほど所得控除の方が得になり、低所得者ほど税額控除の方が得になります。じっくり計算した上で選択するようにするとよいでしょう。

法人で寄附をする場合

控除額の計算

制度としての寄附金控除は個人にのみ適用されるものですが、法人の寄附に対しても優遇措置はあります

まず、一般の寄附金については「(資本金等の額 × 当期の月数/12 × 0.25% + 所得の金額 × 2.5%) ÷ 4」までを損金として計上することができます。これに加えて、特定の公益団体に対する寄附金であれば、さらに「(資本金等の額 × 当期の月数/12 × 0.375% + 所得の金額 × 6.25%) ÷ 2」までの金額を損金に算入可能です。

たとえば資本金等2,000万円、所得金額1,400万円の法人であれば、一般寄附金10万円 + 特定寄附金47.5万円となり、合計57.5万円までの寄附金を損金算入することができます。

そのほか、国や地方公共団体に対する寄附金であれば全額が損金に算入されます。

寄附金控除の対象となる寄附先は?

もともと寄附金控除というのは、社会貢献活動を促進しようという目的の制度です。そのため、寄附金控除の対象となる特定寄附金は、公益性の高い団体への寄附に限られています。

具体的には、以下の団体が当てはまります。

・公益社団法人
・公益財団法人
・独立行政法人
・学校法人
・社会福祉法人
・更生保護法人
・認定NPO など

一方、ほとんどの宗教法人や外国の各種団体に対する寄附は、控除の対象とはなりませんので注意が必要です。

認定NPOとは

上記で紹介した各団体のうち、「認定NPO」という言葉にはあまり馴染みがない人も多いかもしれません。

これは所轄庁の長または国税庁長官が認定を与えるもので、その活動目的や活動内容に高い公益性があると認められたNPO法人(非営利活動法人)のことです。認定NPOになると、寄附金に関する扱いが各種公益団体と同様に見なされます。

内閣府が運営しているNPO法人ポータルサイトでは、認定NPOの一覧が公開されていますので、寄附先を選ぶ際のヒントになるでしょう。

参考:内閣府 NPO ホームページ

ふるさと納税にも適用される寄附金控除

意外と知られていませんが、2008年からスタートしたふるさと納税制度も、実は寄附金控除の一種です。

これは、従来現住所のある地方公共団体にしか納められなかった住民税を、自分の故郷など愛着のある地方公共団体に納められるようにした制度のことです。特産品をもらえるなどの特典もあって人気ですが、厳密には、これは納税ではなく地方公共団体への寄附という扱いになります。

寄附金相当額をあとから控除するという仕組みですので、確定申告の際には寄附金控除への記入を忘れないようにしましょう。

まとめ

寄附の恩恵はちゃんと自分にも返ってくるもの。それを形にした制度が「寄附金控除」です。

はじめは目先の控除が目的でも構いません。寄附先には様々な団体があり、調べていくうちに自分自身の考え方や視野が広がるでしょう。

今回の記事を手本にして、ぜひ「寄附金控除」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


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