• 作成日 : 2023年6月2日

起業したらすぐに社会保険の手続きを!加入するものや届出方法を解説

起業したらすぐに社会保険の手続きを!加入するものや届出方法を解説

法人を設立し、銀行口座を開設し、事務所の賃貸借契約を締結し、従業員を採用する。満を持して準備してきた起業がいよいよ実現、喜びいっぱいのスタートです。喜ばしい雰囲気の中、忘れられがちなのが社会保険の加入手続き。特に小規模で開始するスタートアップ企業においては、手続きせずに放置してしまうケースも。

本記事では、起業したら加入しなければならない社会保険につき、その概要や届出方法などの基本について解説します。

会社を設立したら社会保険の加入は義務

会社を設立したら社会保険に加入しなければならないのでしょうか。答えはイエスです。役員や従業員の人数に関わりなく、一定以上の報酬や給与が役員や従業員に対して支給される場合には社会保険に加入する必要があります。

また、個人事業主は健康保険や厚生年金保険に加入する義務は原則ありませんが(個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入する必要があります)、従業員を5名以上雇用していると健康保険と厚生年金保険に加入する義務が生じます。

必要な保険は5種類

会社を設立したら加入しなければならない社会保険には5種類あります。健康保険、介護保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険です。

健康保険は、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入するケースがほとんどです。また、ソフトウェア開発や人材派遣業といった同業種の企業が集まって設立した「組合健保」に加入するケースもあります。なお、健康保険と厚生年金保険は、会社の本店所在地を管轄する年金事務所で加入の手続きを行います。また、電子申請も利用可能です。

1人で創業しても一部の保険は加入必須

一人で創業するいわゆる「1人起業」の場合、社会保険の加入は必要でしょうか。「1人起業」で会社を設立して社員は社長である自分一人しかいない場合でも、役員報酬がゼロの場合を除き、健康保険、介護保険(年齢40歳以上の場合)、厚生年金保険への加入が必要です。

一方、労災保険と雇用保険については、いずれも加入資格者は労働者であるため、労働者ではない社長は加入することができません。

未加入の場合はペナルティも

会社設立後に社会保険に加入しなかった場合、何らかのペナルティが科せられるのでしょうか。まず、健康保険、厚生年金の加入義務があるのに加入していない事業所は、6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金を科される恐れがあります。

また、雇用保険に加入していない場合にも、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金を科される恐れがあります。さらに、未加入が発覚し、強制加入となった場合、過去2年までさかのぼって保険料を徴収されます。

健康保険・厚生年金保険の手続き

「1人起業」で起業して会社を設立した場合でも健康保険、介護保険(年齢40歳以上)、厚生年金保険へ加入する必要があることを上述しました。では、実際にそれらに加入するには、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。健康保険・厚生年金保険の制度の概要とともに解説します。

制度の概要

「健康保険」は、病気やケガなどの治療や、出産・死亡時の保障などのコストを負担するための医療保険です。健康保険の適用事務所で働く勤労者を被保険者とし、全国健康保険協会(協会けんぽ)および組合健保を保険者としています。保険料は加入者本人に加え、事業主も折半で負担しています。

「厚生年金保険」は、厚生年金保険の適用事務所で働く勤労者を被保険者とした公的年金制度です。健康保険と同様、保険料は加入者本人に加え、事業主も折半で負担しています。

必要書類と提出先

健康保険と厚生年金保険に加入するには、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を、会社本店の所在地を管轄する年金事務所へ提出する必要があります。また、書類提出日からさかのぼって90日以内に交付された法人登記簿謄本の原本を同時に提示する必要があります。

ただし、強制適用事業所以外の事業所は「任意適用申請書」を提出して、管轄の年金事務所長の許可を受けることが必要となります。また、法人番号指定通知書を事前取得しておく方がよいでしょう。

会社設立時から従業員を雇用している場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を別途提出し、従業員を健康保険・厚生年金保険に加入させます。また、従業員の家族を被扶養者にする場合は、「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出します。

提出方法は電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参のいずれかを選べます。

提出期限

「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」の提出期限は、会社設立の日から5日以内です。「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出期限は、雇用開始の日から5日以内です。

なお、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」は、従業員自身に記入してもらう必要があるため、時間に余裕を持たせるために、雇用開始前に従業員に手渡すなどするとよいでしょう。また、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」には基礎年金番号かマイナンバーの記入が必要です。

労災保険の手続き

原則として一人でも労働者を使用する事業は、業種や規模を問わず、すべてに労災保険が適用されます。労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」を指し、労働者であればアルバイトやパートタイマーなどの雇用形態は関係ありません。よって、起業時に1人でも労働者を雇用する場合、労災保険が適用されます。

制度の概要

労災保険とは、労働者が仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。労災保険の正式名称は労働者災害補償保険で、略して労災と呼ばれています。

ケガや病気を対象とした社会保険としては健康保険が挙げられますが、労災保険の対象は業務上および通勤途上に発生した事案のみとなります。労災保険の補償対象となると、健康保険のような治療費の自己負担が必要なく、さらに休業時の手当も手厚い内容となっています。

なお、労災保険の保険料は、健康保険や厚生年金保険と違い、全額を事業主が負担します。

必要書類と提出先

労働者を1人でも雇うと労災保険の強制適用事業者となるので、労災保険に加入する必要が生じます。労災保険に加入するには、「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を、会社の本店所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。また、添付書類として「会社登記簿謄本」や「従業員の賃金台帳」などを提示する必要があります。

「労働保険概算保険料申告書」には概算保険料を記入しますが、概算保険料は保険年度の初日(4月1日)から年度末(3月31日)までに雇用する従業員の賃金総額の見込額に保険料率を乗じて計算します。前払いで保険料を納めておき、翌年度に精算する手続きを毎年繰り返します。

提出期限

「労働保険 保険関係成立届」および「労働保険概算保険料申告書」の提出期限は、従業員の雇用開始日の翌日から10日以内です。また、「労働保険概算保険料申告書」で申告された概算保険料は、保険関係成立の日から50日以内に納付する必要があります。

なお、労災保険の加入手続きは、専門家でなくても事業者本人で行うことが可能です。しかし、専門家に手続きを依頼する場合は、社会保険労務士に依頼しなければならないと法律で定められているので注意してください。

雇用保険の手続き

「1人起業」で起業し、従業員を一人も雇わない場合、雇用保険の加入は必要ありません。しかし、従業員を1人でも雇った場合には雇用保険の適用事業者となり、雇用保険に加入する必要が生じます。雇用保険は「労働者を守るための保険」であり、雇用保険は労働者の生活を守り、維持するためのセーフティーネットだからです。

制度の概要

雇用保険とは、「労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して失業給付等を支給」する仕組みです。雇用保険は政府が管轄する強制保険制度であり、労働者を雇用する事業は原則として強制的に適用されます。なお、労働者とは、「所定労働時間が週20時間以上あり、31日以上引き続き雇用される見込みがある人」をいいます。

雇用保険では、失業者に対する「失業給付等の支給」に加えて、「技能習得手当の支給」「疾病手当の支給」「就業促進手当の支給」「教育訓練給付金の支給」「育児休業給付金の支給」なども行っています。

事業主が全額負担する労災保険料とは違い、雇用保険料は事業主と労働者がそれぞれ負担しています(負担割合は業種などにより異なります)。

必要書類と提出先

雇用保険の加入手続きをするには、まずは労災保険の加入手続きを完了させる必要があります。雇用保険の加入手続きには、労働基準監督署で交付される「労働保険 保険関係成立届」の控えの提出が必要になるからです。

加入手続きは会社本店の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険適用事業所設置届」と、雇用保険に加入する人全員分の「雇用保険被保険者資格取得届」を提出して行います。また、「労働保険 保険関係成立届」の控え、会社登記簿謄本(発行3カ月以内の原本)、「法人税確定申告書別表一」「労働者名簿」「出勤簿またはタイムカード」「労働者賃金台帳」「パートタイマーの雇用契約書または雇入通知書」の提示が必要になります。

提出期限

「1人起業」で起業して、従業員を1人も雇わない場合は雇用保険の加入は必要ありませんが、従業員を1人でも雇用した際には雇用保険の加入が必要になります。加入手続きの期限は、雇用した日の属する月の翌月10日までです。公共職業安定所での手続きが済むと、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付され、従業員の雇用保険加入手続きが終了となります。

なお、雇用保険の加入を怠った企業には、雇用保険法83条1号により「懲役6カ月以下もしくは罰金30万円が科せられる」可能性があるので注意してください。

起業時は届け出る書類も大量!提出忘れに十分注意を

以上、起業したら加入しなければならない社会保険につき、その概要や届出方法などの基本について解説しました。健康保険や厚生年金保険などの医療保険は年金事務所、労災保険は労働基準監督署、雇用保険は公共職業安定所と、それぞれ書類を提出するなどして加入手続きを行う必要があります。

意図的に手続きをしなかったり、うっかり提出を忘れたりすると、ペナルティが科せられる可能性が生じます。起業したら社会保険の加入手続きを確実に行ってください。

よくある質問

パートの社員は保険がいらないのでは?

パートの社員であっても、労災保険は加入が必須です。また、雇用保険についても、「所定労働時間が週20時間以上ある」などの一定の条件を満たす場合は加入が必須になります。詳しくはこちらをご覧ください。

社員を雇う予定がなければ労災保険は未加入で問題ない?

社員を雇う予定がなければ労災保険は未加入で問題ありません。また、雇用保険についても、社員を雇う予定がなければ未加入で問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。


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