• 作成日 : 2024年7月31日

個人事業主の開業届ガイド!提出メリット5選

個人事業主の開業届については、個人事業主が事業を開始した場合には法律によって「提出しなければならない」とされており、出しても出さなくてもよいものではありません。では、個人事業主が開業届を提出するメリットとしては何が挙げられるのでしょうか?この記事では開業届について、基本的なことから解説していきます。

そもそも開業届とは?

開業届の正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。まずは、開業届の性格について考えてみましょう。

開業届と個人事業主の関係性

国内において新たに不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき事業を開始し、事務所等を設けたときは所得税法第229条(開業等の届出)により、必要な事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

参考:所得税法(第229条) | e-Gov法令検索

したがって、個人事業主として活動していても、国外の場合や不動産所得、事業所得または山林所得以外のときには、開業届の提出は不要です。ただし通常、個人事業主は、事業、不動産、山林のいずれかの所得を得るために開業するため、開業届は必須のものとなります。

開業届は出さなくてもいい?どんな人が出す必要がある?

開業届の提出は義務ですが、提出しない場合でも、罰則にあたるものはありません。しかし、開業届を提出しないと不便なことも出てきます。

実際、開業してから最初の確定申告をするまでは、「事業をしている」根拠を示すものを得にくい状況にあります。例えば、屋号つきの銀行口座を作成したり、開業後に補助金や助成金の申請をしたりするには開業届の控えが必要です。また、開業届がないと開業日が確認できず、対外的にも事業歴が不明確になります。

したがって、国内で個人事業主が新たに不動産所得、事業所得または山林所得を生ずる事業を開始した場合には開業届を提出する必要があります。

開業届を出したら必ず確定申告が必要?

開業届と確定申告は必ずしもセットではありません。

個人事業主となっていても、事業がうまくいかず赤字になることもあります。赤字であることが帳簿で確認できる場合、所得税の確定申告をしないという選択も可能です。なぜなら、確定申告が必要となるのは基本的に「所得税額がある人」だからです。

参考:確定申告が必要な方|国税庁

赤字であっても青色欠損金等の特典を受ける場合等は確定申告をしますが、事業が赤字の場合や所得がゼロとなる場合には、所得税についての確定申告は不要です。

個人事業主が開業届を出すメリット

開業届を提出することによって、後の事業にとってメリットとなる点を5点挙げて、解説します。

屋号つきの銀行口座作成に利用できる

開業届を提出すると、事業取引で使用するために用いる屋号つきの銀行口座を開設できるようになります。個人事業主は個人名義の口座を使用することもありますが、店の名前などわかりやすい名称が入った口座を作成することが可能です。なお、開設の際に開業届の控えが求められます。

個人事業主としての証明に利用できる

開業届の控えは、事業開始直後の個人事業主であることの証明になります。例えば、子どもの保育園入園手続きでの就労証明書や、住宅ローンの審査において収入を証明する書類の一つとして使用できます。

また、助成金や補助金などの申請時の書類としても利用可能です。

小規模企業共済制度加入時に利用できる

個人事業主のための退職金制度として利用されるのが、小規模企業共済制度です。中小企業基盤整備機構が運営し、掛金全額が所得控除の対象となります。事業を始めたばかりのときは、加入の際に開業届の控えが添付書類となります。

参考:小規模企業共済 制度のしおり(P3)|中小企業基盤整備機構

ビジネスカード作成に利用できる

会計のDX化の一環として、経費計上を銀行引落やカード決済にすることがあります。個人名義のカードを個人事業に使用しても問題はありませんが、カードについても事業用のものを作成すると便利です。

個人事業主でも作成できるビジネスカードは多数あり、申し込みにあたって開業届の控えは個人事業主の本人確認書類の補完資料になります。

後続手続きの基本にできる

開業手続きには種々ありますが、開業届を基本として他の手続きを進めることができます。青色申告に係る届出や源泉税に係る届出に消費税と、各手続きを後から単発的に提出すると管理が煩雑です。

少なくとも開業届に記載された書類についてまとめて手続きをすると、後々わかりやすいという利点があります。

個人事業主が開業届を出す際の注意点

開業届の提出にあたって注意すべき点を見てみましょう。

職業によって税率が変わる?

開業届は開業の旨を税務署に報告するものであり、税率そのものとは関係ありません。職業・業種によって税率が変わるものとしては「事業税」がありますが、それは確定申告をしてからです。開業届を提出するにあたって、税率の心配は無用です。

扶養から外れるケースがある

所得税の扶養家族になっている場合は、年間の合計所得が48万円を超えると扶養控除を受けられなくなります。個人事業主として独立するためには、年間の所得をもっと増やして所得税を支払う意気込みが欲しいものです。

失業保険をもらえなくなる

個人事業主として開業したからには、失業の状態ではなくなっています。失業保険を受給しているのであれば、開業の旨をハローワークに連絡しましょう。再就職手当が受給できる可能性もあります。

個人事業主は開業届と一緒に「青色申告承認申請書」も出したほうがいい?

開業届には、青色申告承認申請書の提出有無について記載する欄があります。青色申告について大まかに解説します。

青色申告承認申請書とは?

いわゆる青色申告を行うために必要な書類が、青色申告承認申請書です。青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の繰越しなどの税制上の優遇を受けられるため、節税に役立ちます。

会計帳簿の作成は白色申告でも必要なため、事業を始めるのであれば青色申告をおすすめします。

参考:
No.2070 青色申告制度|国税庁A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁

開業届と「個人事業税の事業開始等申告書」の違い

所得税は国に納める「国税」です。この他、地方に納める「地方税」の中には、法定業種に対して課税される「個人事業税」があります。

事業を開始した場合、地方税の開業届にあたる「事業開始等申告書(書名は都道府県によって異なる)」を都道府県税事務所に提出します。法定業種によって税率が異なり、賦課課税方式によって納付書が送付されるしくみです。お住まいの都道府県サイトで「個人事業税」と検索してみてください。

参考:個人事業税 | 東京都主税局

開業届は個人事業主としての基本

個人事業主は、所得税や消費税などの申告だけでなく、従業員を雇用した場合はさらに申請や届出などの手続きが増えます。開業届は、一連の手続きの基本となりますので、事業を開始したら期限までに提出しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事