- 更新日 : 2021年12月30日
会社設立による7つの節税メリット
個人事業主として始めた事業が軌道に乗ってきたら、会社設立を視野に事業の拡大と節税を考えるタイミングです。とはいえ、どんな条件で会社設立に踏み切った方がよいのか、どんな効果が望めるのかを知らなければ、労力も費用も無駄になってしまいます。
会社設立によるメリットを、節税という点から見てみましょう。
目次
1.役員報酬で節税
個人事業主の場合は、総収入金額(売上高など)から必要経費を差し引いた金額が「事業所得」として課税されます。一方で会社設立を行えば、会社から「役員への報酬」として支払い、結果、「給与所得」として、税金を納めることになります。支払われた役員報酬には所得税が課税されますが、事業所得の 65 万円青色申告特別控除ではなく、給与所得控除(65~220万円)が適用されます。
会社を設立して役員報酬の形で受け取った方が有利となり、節税をすることができます。
2.所得を家族と分散して節税
会社設立を行えば、家族にも役員報酬または給与として支払い、所得を分散することが容易になります。所得税は「累進課税」といって所得が高いと税率も累進的に高くなります。したがって、所得を分散することで所得税率が下がり、節税することが可能になります。その上、上述の給与所得控除(65~220 万円)を家族にも適用できるため、所得分散効果はさらに大きくなります。
個人事業主の場合も、家族(配偶者や親族で納税者と同一生計で暮らしている者)を「事業専従者」として給与を支払うことはできます。しかし、金額上限や、事業就労実態、人数、同一生計、配偶者控除や扶養控除の適用、などに制限が多く、会社設立の方が、比較的自由度が高く節税しやすいのです。
3.退職金を支給することで節税
会社設立を行えば、5年以上勤務した役員に対しては、退職金を支払った場合、「退職所得」として有利な税制の適用が可能となります。
退職金支給額から退職所得控除を差し引ける上に、その半分に対してのみ課税され、さらに他の所得と分離して課税されるため上述の「累進税率」が緩和されるという、トリプル節税が可能です。
個人事業主の場合は、退職所得の適用はありません。ただし、金額に上限はありますが「小規模企業共済」制度を活用すれば、個人事業主でも退職所得としての有利な税制の適用は可能です。
4.欠損金を長く繰越控除できる
事業で収入より経費が多い「赤字」になった場合、この赤字となった分を翌期以降に繰り越すことが出来ます。
事業開始時には赤字になるケースは多いのですが、次期以降に利益が出ても、差し引けるわけですから、大きな節税になります。
これは、「青色申告」という制度を利用しなければなりませんが、個人事業主が 3年間の繰り越しであるのに対して、会社設立をしていれば9年間の繰り越しが認められます。
平成 28年度の税制改正により、平成30年4月1日以降に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。会社設立を行う方が圧倒的に長く節税することができることになります。
5.保険を活用することで節税
個人事業主が加入する保険は個人を対象としたものであるため、これが経費として認められることはほとんどありません。
生命保険料控除はどんなに支払っても、適用限度額は年12万円しかありません。一方で会社設立をしていれば、保険商品によっては、全額または半額損金算入が可能で、利益を繰り延べることが出来ます。利益の繰り延べですので、解約時や満期時には課税されるのですが、前述の役員退職金と組み合わせることで、大きな節税も可能です。将来の法人税率の低下傾向のことも併せると、有利な節税方法となります。
6.消費税の納税義務免除の適用を受けることができる
個人事業主であっても、年間課税売上高が 1,000万円を超えた場合は、課税事業者となり、2年後の申告で消費税を納めなければなりません。
課税事業者になる年の前年に「法人成り」の形で会社設立をすると、会社設立直後の半年間の売上または給与などの支払総額が 1,000万円を超えるなどの要件に該当しなければ、会社設立1期目及び2期目も原則として消費税の課税が免除され、結果最大4年間免税事業者になれます。
7.法人税率と所得税率の差。会社設立で節税効果を感じる分かれ目は?
所得税率は最高 55%になりますが、法人税率は 30%程度です。会社設立で節税効果を感じる分かれ目はどのあたりにあるでしょう。個人事業主が会社設立によって税率差による節税の恩恵にあずかれるのは、一般に個人事業主の課税所得が 330万円を超えてくるところです。個人の所得税率+住民税率が法人税を上回りますので、前述の、法人設立による様々な節税効果を考えなくても、法人設立が
有利となります。
個人の所得税・住民税は、課税所得330万円を超えると税率が 20%(所得税率 10%+住民税率 10%)から、30%(所得税率 20%+住民税率 10%)に上がります。
現在中小法人の法人税実効税率は、所得金額が 400万円以下ですと 21%程度です。個人事業主は、課税所得が330万円を超えてくるところで、将来的に売上が伸びる可能性があれば、法人設立も視野に入れて将来の事業計画を考えてゆく時期になります。
よくある質問
会社設立で節税する方法は?
役員報酬の支給、所得を家族と分散、退職金の支給、欠損金の繰越控除、保険の活用、消費税の納税義務免除の適用によって節税できます。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主が会社設立によって節税効果を感じる分かれ目は?
個人事業主が会社設立によって税率差による節税の恩恵にあずかれるのは、一般に個人事業主の課税所得が330万円を超えてくるところです。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税率と所得税率の差はどれくらい?
所得税率は最高55%になりますが、法人税率は30%程度です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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