- 更新日 : 2024年9月6日
独立資金を作るには?開業費用の平均額や内訳、資金の調達方法について解説
独立資金を作るためにはどのような方法があるでしょうか?自己資金や親族・友人などからの借入などの調達方法もありますが、もっとも一般的な方法は融資です。とはいえ簡単に資金が得られるとは限りませんので、自己資金の蓄えや綿密な事業計画の策定が重要になってきます。
ここで独立資金を作る方法や融資の申請をするために知っておきたいことを解説していますので、独立開業を考えているのであればぜひ参考にしてください。
目次
独立資金を作るには?
資金調達にはさまざまな方法がありますが、主なものとして次の5つが挙げられます。
- 自己資金を充てる
- 親族から借りる
- 融資を受ける
- 補助金・助成金を活用する
- 出資者を募る
それぞれの調達方法、特徴について見ていきます。
自己資金を充てる
独立資金の準備を進めるときは、まず「自己資金」を確保するようにしてください。
これまで貯めてきた預貯金や、不要な資産を売却して得たお金のことで、自己資金であれば今後誰にも返済する必要がなく、どんな用途でも使うことができます。さらに、自己資金を多く備えていることが、融資先からの信用力アップにもつながります。
例えば金融機関から融資を受けるとき、「必要資金2,000万円に対して自己資金が0円の人」と「必要資金2,000万円に対して自己資金が1,000万円ある人」とでは、後者の方が当然高く評価されます。
ただし、個人の生活資金などを事業に充てることで、普段の生活に支障をきたすおそれもあります。そのため最低限の生活はできるよう、ある程度のお金は残しておくようにしましょう。
親族から借りる
独立資金の調達方法の1つに「親族からの借入」もあります。
通常、借入と聞くと銀行や貸金業者をイメージするかもしれませんが、身近な家族を頼って資金を集めるケースも珍しくありません。
親族からの借入だと、一般的な融資と違って厳格な手続きや審査が必要なく、スムーズに資金を調達できます。また、金利が発生しない、もしくは低金利で借りられることが多いのも魅力です。さらには返済期間や返済方法に関しても優遇してくれる可能性があり、資金繰りの負担を軽減することが期待できます。
しかしながら、返済が滞ることで親族間の関係性に亀裂が生じる危険性があるため、たとえ仲のよい親族間であっても慎重に判断しなくてはなりません。
融資を受ける
銀行や政府系金融機関からの「融資」は、独立資金を準備する方法として一般的です。
融資であればまとまった資金を調達できる可能性が高く、うまくいけば一度に数百万円、数千万円もの資金を調達できます。
ただし、それはその金額に見合った返済能力があると評価された場合です。厳格な審査を受け、事業者としての力量が測られますので、一切の実績がなく、能力も実務経験もないのなら、大金を集めることは難しいでしょう。
補助金・助成金を活用する
国や地方自治体などが提供する「補助金・助成金を活用する」という方法もあります。
これらは返済不要なお金で、今後の事業活動に対する負担が小さいという利点を持っています。また、公的機関から認められたという事実が対外的な評価にもつながり、他社との取引やさらなる資金調達によい影響をもたらすことでしょう。
しかしながら、補助金や助成金は後払いとなる場合が多いため、独立資金がほとんどない状態で最初に補助金や助成金を頼って開業することは難しいでしょう。
出資者を募る
事業内容に共感・期待してくれる個人や企業がいるとき、その方々から「出資を募る」方法もあります。
出資金については返済不要なケースもあります。特にクラウドファンディングがその一例です。
さらに出資者を募るメリットとして、その出資者から人脈を広げたりノウハウを共有してもらえたりすることが挙げられます。
一方で、出資者に対してのリターンも考えなくてはなりません。「出資により事業が計画通りに進むと、出資者にどんなメリットがあるのか」この点がしっかりとアピールできないと出資金を得られないでしょう。また、個人的な知名度も重要になってきます。
独立資金の平均額はどのぐらい?
「独立のためにいくらの資金が必要になるのか」、これを具体的に算出しておかないと資金調達は進められません。重要なのは、ご自身の始めようとしている事業内容を個別に見ることですが、ここでは参考のため平均的な額をご紹介します。
日本政策金融公庫による実態調査のデータを参照すると、開業費用の平均値は1,027万円。ただ、分布に着目すると割合が多いのは「250万円未満」と「250~500万円未満」であり、中央値は550万円です。
その一方で、「1,000~2,000万円未満」や「2,000万円以上」の開業費用を要している割合は減少傾向にあると示されており、2,000万円を超える資金調達は比較的レアなケースであるといえるでしょう。
なお、資金調達先としてもっとも採用されているのは「金融機関などからの借入」で、約65%を占めています。その他の調達先も含めて次のように整理できます。
《資金調達先の割合》
- 金融機関などからの借入・・・約65%
- 自己資金・・・約24%
- 配偶者・親・兄弟・親戚からの借入や出資・・・約4%
- 友人・知人などからの借入や出資・・・約3%
- その他・・・約4%
独立に必要な資金の内訳
独立開業に必要な資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。それぞれの内訳は業種や規模によっても違いますが、ここでは開業費用の平均値に近い1,100万円を基に、いくつかのパターンで内訳例をご紹介します。
例1 飲食店開業 | |||
---|---|---|---|
店舗内装工事費 食器・備品購入費 調理機器購入費 | 300 100 200 | 従業員給与(3か月分) 食材費(3か月分) 賃料(3か月分) | 200 100 100 100 |
設備資金 | 600万円 | 運転資金 | 500万円 |
例2 美容室開業 | |||
---|---|---|---|
店舗内装工事費 美容機器購入費 シャンプー台など備品購入費 | 400 50 250 | 従業員給与(3か月分) 材料費(3か月分) 賃料(3か月分) 広告宣伝費 | 150 50 100 100 |
設備資金 | 700万円 | 運転資金 | 400万円 |
例3 IT系企業創業 | |||
---|---|---|---|
PC購入費 オフィス家具購入費 | 200 100 | 従業員給与(3か月分) オフィス賃料(3か月分) 広告宣伝費 | 550 150 100 |
設備資金 | 300万円 | 運転資金 | 800万円 |
上記以外にも、例えば「税理士や司法書士への報酬」「ホームページ制作費」などに関しても必要がないか、考慮しておきましょう。
独立のための融資を申請するには?
融資申請には、一般的に以下の手続きが必要です。
- 金融機関を選ぶ
→ 日本政策金融公庫、地方銀行、メガバンクなど、さまざまな金融機関がある。それぞれの融資条件や審査基準を比較検討し、自分に合った金融機関を選ぶ。 - 融資相談
→ 事前に金融機関に相談して必要書類などを確認しておく。 - 申請書類の準備
→ 事業計画書や履歴書、確定申告書など、必要な書類を準備する。 - 融資申請
→ 必要書類を提出して融資の申込み。 - 審査
→ 金融機関による審査が行われる。 - 融資実行
→ 審査に通ることができれば、融資が実行される。
重要なのは「審査に通るかどうか」です。
成功率を上げるには、「具体性のある事業計画を策定し、根拠とともに計画書にまとめること」が重要です。事業計画書は審査においてもっとも重要といわれる提出資料であり、当該事業者の返済能力の高さ、将来性、事業継続性などを判定するためにチェックされます。
事業計画書の作成方法がわからず悩むこともあるかもしれません。そんなときは専門家を頼ることをおすすめします。また、0から作り始めるのは大変なので、こちらのページにある事業計画書のテンプレートも利用するとよいでしょう。
https://biz.moneyforward.com/establish/templates/47/
独立資金に活用できる融資制度の例
独立資金に活用できる融資制度の代表例として、日本政策金融公庫の融資制度と自治体別に運用されている融資制度が挙げられます。この2つについても紹介しておきます。
日本政策金融公庫の融資制度
民間の金融機関だと、まだ事業を本格的にスタートしていない段階で融資を受けるのは難易度が高い印象です。アピールにつながるだけの実績がまだありません。
一方の日本政策金融公庫の融資制度なら「これから独立する方」や「独立して間もない方」を対象とした制度も設けられており、実績の乏しい方でも必要資金を集められる可能性があります。
そして、日本政策金融公庫の融資制度であれば原則として無担保・無保証人による融資が受けられ、利率も引き下げてもらえます。さらに、設備資金なら20年以内、運転資金なら原則10年以内、と比較的長期での返済も受け入れてもらえます。
制度の内容としては例えば「新規開業資金」の利用が考えられます。もし独立を考えているのが女性・若者・シニアであればさらに優遇措置が受けられますので、一度チェックしてみてください。
自治体の融資制度
各地方自治体でも独自の融資制度を設けています。各エリアで抱える課題や地域特性を踏まえて設計された制度となっており、常に誰でも利用できるとは限りません。
しかしながら、開業予定地で運用されている融資制度の対象に入っているときは、積極的に利用を考えてみるとよいでしょう。例えば、ある商店街への出店をするときに使える制度、地域内での雇用を拡大するときに使える制度など、いろんなパターンが考えられます。
地域密着型の事業の場合でも対象者となる可能性が高いため、一度調べてみることをおすすめします。
自己資金なしで独立資金の融資を受ける注意点
融資を受けるなら自己資金も準備してください。もし自己資金がない、あるいは少額しか準備できなかったという場合、次に掲げる点に注意しましょう。
審査に通るのが難しくなる
自己資金がないと審査に通るのが難しくなります。
条件として明示されているケースとそうでないケースがありますが、通常、融資にあたって必要資金の1~3割以上は自己資金でカバーできていないといけません。
自己資金以外の点で非常に高い評価を受けることができればまだ審査に通る可能性は残りますが、0円だと審査で落ちる可能性が高いでしょう。
条件が悪くなる
自己資金なしで融資が受けられるとしても、条件が通常より悪くなってしまう可能性があります。
例えば次のような負担が生まれてしまいます。
- 金利が高くなる
- 融資限度額が低くなる
- 保証人や担保が必要になる
自己資金で必要資金の大半をカバーすることは難しくても、少しでも多く確保しようとする姿勢が大事です。融資の審査に通るためにも、条件をよくするためにも、独立準備を進めている間に自己資金を貯めておくようにしましょう。
独立資金を確保してよいスタートを切ろう
独立資金を作るには、自己資金と事業計画書を準備したうえで融資の申請を行うとよいでしょう。一般的にも融資を活用することは多く、事業者にとって融資は資金調達の中でも特に重要な手法であるといえます。
実際、開業費用のうち6~7割程度は融資によりカバーしているという統計データが示されていますので、独立資金を準備するときは「どうすれば融資を成功させられるだろうか」とまずは戦略を立ててみてはいかがでしょうか。
税理士コメント
独立開業は、その人の人生の中でも大きなイベントとなります。
したがって、開業の準備は計画的に行う必要があります。その中でも、独立のための資金を調達するのは中心的なことになります。独立後の事業の収支に不安があるのは誰しもですが、少しでも自己資金が多いと安心です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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