• 更新日 : 2022年4月6日

個人事業税とは?計算方法や仕訳、勘定科目、控除まで解説

個人事業税とは「前年度の所得が290万円を超えた場合に、都道府県へ支払う税金」と考えることが一般的です。個人事業税は全額を経費にできるため、正しい仕訳・計上を忘れないようにしましょう。当記事では個人事業税の概要や課税対象になる業種、計算式、仕訳例・勘定科目を解説します。

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個人事業税とは

個人事業税とは、住民税や固定資産税と同じく「地方税」に分類される事業税の1種です。地方税の中でも、都道府県が課税主体である都道府県税に分類されます(市町村区への納付は市町村税)。例えば、東京都で事業を行っている場合は東京都、福岡県で事業を行っている場合は福岡県への納付になります。

所得税や消費税など国に納める「国税」とは別の税金です。そのため、税務署や国税局ではなく、都道府県税事務所が主な問い合わせ先になります。

個人事業税を課税される対象者は、原則として「都道府県内で法定業種に当てはまる事業を営み、290万円超の所得を得た個人」というイメージです。課税対象になる所得は、事業所得、不動産所得、場合によっては雑所得が該当します。

なぜ個人事業税を徴収するのか、その理由は「個人事業者は収益を伴う事業を展開する上で、さまざまな行政サービスを利用していると考えられることから、その利用に関する行政経費の一部を負担する」ものとされています。行政サービスとは公道の利用、そのほかの手続きの案内・代行や公共施設の利用などをイメージするとよいでしょう。

なお、法人に課せられる事業税は「法人事業税」と呼び、税率や納税対象者が個人事業税とは異なるものになります。

個人事業主でなくても個人事業税はかかる

個人事業税の課税対象は、個人事業主に限定されるわけではありません。もし「開業届を出さずに、個人事業主にならなければ課税されない」「事業所得ではなく雑所得であれば課税対象にならないのでは」と考えている場合は、誤った認識のため注意しましょう。

例えば、開業届を提出していない副業サラリーマンであっても、ある年に確定申告を行った場合、税務署は都道府県税事務所へ所得金額や事業実態などの情報を伝えます。ここで申告内容が個人事業税の対象であることが判明すると、副業サラリーマンであっても個人事業税を支払わなければなりません。

個人事業税の納付時期・納付方法・申告方法

個人事業税の納付時期は、原則として8月末日と11月末日の2回に分けられます(合計が1万円の場合は、第1期である8月中に一括納付する都道府県もあり)。

また、納期限は世情や都道府県によって変わることがあるため、都道府県の公式ページや都道府県税事務所で一度確認してみましょう。

通常、納税通知書が送られてくるのは1回目の納期限の月である8月あたりが多いです。

ただし、所得税の修正申告によって個人事業税の金額が変わったり、年度途中で事業を廃止したりした場合は、この限りではありません。改めて送られてくる納税通知書に書かれた納期限までに納付を行います。年度途中の事業廃止の場合は、事業を廃止した日から1ヶ月以内が一般的です(死亡による事業廃止は4ヶ月以内)。

納税通知書がきた後は、以下の方法で納付を行います。

  • 納付書を金融機関や都道府県税事務所の窓口、コンビニなどへ持っていき現金で支払う
  • 口座振替を行う
  • クレジットカード納付を行う
  • スマートフォン決済を行う
  • 地方税共通納税システムeLTAXを使って電子納税を行う
  • など

なお、個人事業税の納付額は所得税のように、事業者が自分で計算したものを申告する必要はありません。住民税の納付額を市町村区が計算してくれるように、都道府県税事務所が前年の確定申告の内容をもとに計算し、その金額を納税通知書に記載して送ってくれます。

ただし、所得税の確定申告書、または住民税の申告書を提出していない場合は、別途で申告手続きが必要です。原則として翌年度の3月15日までに「個人事業税申告書」を、都道府県税事務所へ提出する必要があります。

確定申告の方法を知りたいときは、以下の記事にてわかりやすく解説しています。

個人事業主が納めるべきほかの税金や負担金について

個人事業主は個人事業税以外にも、さまざまな税金やその他の負担金を支払う必要があります。代表的なものは次のとおりです。

  • 所得税
  • 消費税(免税事業者を除く)
  • 住民税
  • 国民健康保険
  • 国民年金保険料
  • 固定資産税や都市計画税(不動産や事業用の償却資産を所有している場合に限る)
  • 印紙税
  • など

もし個人事業主から法人成りした場合は、法人事業税や法人住民税、厚生年金保険料などの別の税金の負担義務を負います。

「個人事業開始申告書」の提出について

個人事業主として個人事業を始めたいときは、所轄の税務署に事業開始を申告するための「開業届」だけでなく、都道府県に事業開始を申告するための「個人事業開始申告書」の提出を行います。

事業開始(廃止)等申告書-記載例

出典:事業開始(廃止)等申告書 記載例|東京都税局

開業届が所得税関係の手続きと見るなら、個人事業開始申告書は個人事業税関係の手続きといえるでしょう。

提出期限は都道府県によって異なります。原則としてはおおよそ「事業を開始してから15日~2ヶ月以内」です。

しかしながら、個人事業開始申告書も開業届と同じく、期日までに提出しなくてもペナルティはありません。ただし、前述のとおり開業した事実や所得額などの情報は都道府県税事務所へ伝わるため、個人事業税の納付義務は発生します。

個人事業開始申告書の詳細や書き方については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

個人事業税の対象業種(法定業種について)

個人事業税を支払う義務を負う対象業種は、地方税法第72条に定められている70種類の法定業種に該当するものです。第1種事業~第3種事業に区分されており、それぞれ税率も異なります。

結論からいえば、ほとんどの事業が法定業種に該当するものと考えられます。実際に法定業種70種類をみていきましょう。

個人事業税の対象業種(法定業種について)

出典:東京都主税局

ただし、上記の第1種業者のうち「不動産貸付業(アパートや土地のオーナー)」と「駐車場業」については、家屋の面積や数、総面積、駐車可能台数などを条件にした認定基準を満たした場合のみ、その業を行っているものと見なされ、課税対象になります。

具体的な認定基準については、東京都主税局といった都道府県の公式サイトを確認してみてください。

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個人事業税の計算方法

個人事業税は自分で計算する必要はありませんが、自分で計算して概算を出せれば、資金繰りのスケジュール組みやキャッシュフローの分析のときに重宝します。

個人事業税の計算式は次のとおりです。

個人事業税={所得(収入-必要経費)-個人事業税の計算で適用できる各種控除}×法定業種ごとに定められた税率

個人事業税の計算では例え青色申告事業者であっても、最大65万円控除である青色申告特別控除を適用できません。同様に基礎控除といった所得控除も適用外になります。

個人事業税の計算でも適用できる控除制度は次のとおりです。

控除の種類概要
事業主控除すべての者が適用できる年間290万円分の控除
白色申告事業者の個人事業税の専業専従者給与控除額配偶者86万円、それ以外は1人50万円までの範囲で控除
青色申告事業者の個人事業税の専業専従給与控除額青色専従者への適切な給与支払額の全額
損失の繰越控除事業所得の赤字を繰り越して控除とした金額(最大3年間繰越)
被災事業用資産の損失の繰越控除白色申告事業者で震災や風水害などで生じた事業用資産の損失金額(最大3年間繰越)
譲渡損失の控除と繰越控除事業用に供する資産の譲渡によって生じた損失額の控除(青色申告事業者は最大3年間繰越)

具体的な計算例をみていきましょう。「収入500万円」「必要経費100万円」「事業税控除のみ適用」「第1事業(税率5%)」で計算します。

(500万円-100万円-290万円)×5%=5万5,000円

個人事業税の仕訳と勘定科目(経費計上について)

個人事業税は、所得税法上の必要経費として計上できます。「地方税だから所得税関係の経費にできないのでは」と思われるかもしれませんが、個人事業税の支払いは「一定規模以上の事業を行う上で必ず発生する支出=事業継続のために必要な支出」と判断されるためです。

経費計上して節税につなげるためにも、支払った個人事業税についても正しく仕訳を行いましょう。個人事業税は「租税公課」という勘定科目で処理します。仕訳例は次のとおりです。

<個人事業税を支払った日に仕訳を行う場合>

借方
貸方
租税公課
27,500
現金
27,500

個人事業税のほかに租税公課として経費計上できるのものには、所有する固定資産にかかる固定資産税や都市計画税、自動車税などが挙げられます。

ただし、自宅や愛車などプライベートと共用で使っている固定資産にかかるものについては、家事按分による合理的な計算のもと、事業用として供している部分のみを算出して計上します。

個人事業税が控除または課税対象外とされるされるケース

個人事業税は青色申告特別控除やそのほかの所得控除を利用できないものの、事業主控除という特別な控除を適用できます。所得290万円を超えない限りは、原則として個人事業税は課税されません。

また、前述の法定業種に該当しない働き方をしている個人事業主も、課税対象外になる可能性があります。以下より詳細をみていきます。

事業主控除やそのほかの繰越控除を適用する場合

事業主控除の290万円控除や、そのほかの繰越控除を適用した結果、所得額がゼロになった場合は個人事業税がかからなくなります。とくに事業主控除の影響は大きく、原則として290万円以下の所得になる個人事業主には、個人事業税は課せられないという認識で問題ありません。

ただし、事業主控除の金額は、事業を行っていた期間が1年未満だった場合、月割に応じた額に減少して適用されます。例えば、7月1日から事業を開始したときは、7~12月の6ヶ月分の145万円しか控除されません。

事業主控除の月割額は次のとおりです。

事業を行っていた期間
事業主控除
1ヶ月
24万2,000円
2ヶ月
48万4,000円
3ヶ月
72万5,000円
4ヶ月
96万7,000円
5ヶ月
120万9,000円
6ヶ月
145万円
7ヶ月
169万2,000円
8ヶ月
193万4,000円
9ヶ月
217万5,000円
10ヶ月
241万7,000円
11ヶ月
265万9,000円
12ヶ月
290万円

また、損失の繰越損失や譲渡損失の控除などを適用した後、所得額がゼロになった場合も課税対象外です。事業主控除を適用した後の所得が100万円であっても、ほかの控除額が100万円以上であれば個人事業税は発生しません。

法定業種以外の業種に該当する場合

70種類も定められている法定業種ですが、当然ながら世の中には法定業種に該当しない仕事も存在します。該当しない業種で得た所得に関しては、個人事業税が非課税になります。具体的には次の業種です。

  • ライター・文筆業(作家やシナリオライターなど)
  • 通訳業、翻訳業
  • 画家
  • 漫画家
  • 音楽家
  • 作詞家、作曲家
  • スポーツ選手
  • 農業(自分で栽培する場合)、林業
  • 保険営業等の外務員
  • システムエンジニア・プログラマー
  • など

ただし、あくまで判断主体は都道府県税事務所です。都道府県税事務所が法定業種に含まれると判断された場合には、上記の業種であっても個人事業税を納める必要があります。

例えば、ライター業として届出していても、業務にデザインの作業が入っていたり、広告関係の業務を兼任していたりすると法定業種として判断される可能性が高くなります。また、クライアントとの契約内容が請負契約になると、請負業として課税対象になるかもしれません。

とはいえ、判断基準は都道府県ごとや契約内容次第で変わります。事前に確認したいときは都道府県税事務所への相談をおすすめします。

各種減免を受ける場合

個人事業税もほかの税金と同じく、条件を満たせば使える減免制度があります。都道府県によっても違いはありますが、代表的なものは次のとおりです。

  • 災害によって資産に損害を受けた場合
  • 生活保護法によって生活扶助を受けている場合
  • 納税者または扶養親族等が障害者である場合
  • など

都道府県ごとの方法に従って申請しましょう。例えば東京都や大阪府であれば「個人事業税減免申請書」の記載と提出が必要です。

所得290万円を超える個人事業主は個人事業税を意識しよう!

個人事業税とは、法定業種に該当する事業を営む個人が都道府県へ支払う地方税です。事業主控除290万円があるため、原則として所得290万円以上にならない限りは支払う必要がありません。もし所得が290万円を超えそうなときは、来年度に個人事業税分の支出が出ると意識しておきましょう。

なお、個人事業税の支払いは経費計上できます。租税公課で仕訳を行い、正しく記帳するようにしてください。

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よくある質問

個人事業税とは?

個人が営む事業のうち、法定業種に該当する事業の所得にかかる地方税です。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業税の計算式は?

「個人事業税={所得(収入-必要経費)-各種控除}×税率」です。青色申告特別控除や所得控除は適用できません。 詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業税の仕訳で使われる勘定科目は?

固定資産税や自動車税と同じく「租税公課(公租公課)」を用いるのが一般的です。なお個人事業税は全額を経費計上できます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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