• 更新日 : 2023年8月22日

社会保険とは?種類や扶養・パートの加入条件、内訳も解説!

社会保険とは?種類や扶養・パートの加入条件、内訳も解説!

社会保険とは、広義には【健康保険、介護保険、厚生年金保険雇用保険、労災保険】の5種類を指します。一方で、狭義では【健康保険、厚生年金保険、介護保険】の3種類の総称として使用されることもあります。

当記事では、社会保険の基礎知識から、社会保険の種類や保険料の計算方法などについて、正社員・パート・アルバイトの方など働き手の方や、企業の労務担当者の方の両方向けに分かりやすく解説します。

社会保険とは?

社会保険とは?

「社会保険」とは、様々な使われ方をする言葉です。文脈に応じて何を指しているかが異なることを、あらかじめ把握しておきましょう。

広義の社会保険

広義の社会保険は、【健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険】の5種類を指します。

国は、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネットとして「社会保障制度」を用意しており、その社会保障制度の構成要素の1つが「社会保険」です。

社会保険(年金・医療・介護)

国民が病気、けが、出産、死亡、老齢、障害、失業など生活の困難をもたらすいろいろな事故(保険事故)に遭遇した場合に一定の給付を行い、その生活の安定を図ることを目的とした強制加入の保険制度

引用:厚生労働省「社会保障とはなにか」

社会保障制度と社会保険

病気やケガ、労働災害、失業、高齢化などの誰にでも起こりうるリスクに対して、社会全体で備えることを社会保険といいます。加入条件に該当する人が被保険者となって保険料を支払い、要件を満たす受給者になると保険給付を受けることができます。

会社として雇用する労働者に適用する社会保険には、健康保険(40歳以上の被保険者は介護保険も含める)、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4種類(40歳以上の場合は5種類)があります。

このうち雇用保険と労災保険は「労働保険」と呼ばれ、「社会保険」は健康保険と厚生年金保険のみを指す言葉として用いられます。

内容をはっきりとさせる必要がある場合には、健康保険(40歳以上の被保険者は介護保険も含める)と厚生年金保険を「狭義の社会保険」、健康保険(40歳以上の被保険者は介護保険も含める)、厚生年金保険、雇用保険、労災保険のことを「広義の社会保険」として区別しています。

狭義の社会保険

前述の通り、狭義の社会保険としては、【健康保険、介護保険、厚生年金保険】の3種類を指します。

この記事では以降、狭義の社会保険について説明します。

社会保険の種類

社会保険の種類

会社で従業員について手続きなどが必要とされる社会保険は、健康保険(40歳以上の被保険者は介護保険も含める)と厚生年金保険です。入社時には被保険者資格の取得手続き、退職時には被保険者資格の喪失手続きをしなくてはなりません。健康保険料と厚生年金保険料の算定や被保険者負担分の徴収、会社負担分の支払い、納付も会社が行います。

①健康保険

健康保険は、被保険者やその家族が病気やケガをした場合に治療や療養を受けられるようにする制度のことをいいます。

協会けんぽや健康保険組合の被保険者となり、保険料を支払うことで健康保険が使えるようになります。健康保険が使えると病気やケガで病院にかかった際、窓口での支払いが自己負担分のみで済むようになります。健康保険が使えない場合は、かかった費用の全額を支払わなければなりません。

②介護保険

介護保険は、介護が必要となる人が少ない負担額で介護サービスを受けられるよう、社会全体で支える仕組みです。介護保険料は、介護保険制度で徴収される保険料を指し、介護保険の財源は、国や市区町村の予算と、40歳以上の国民が支払う介護保険料から成り立っています。

③厚生年金保険

厚生年金保険は、従業員の将来や障害などの備えとなる公的年金制度です。健康保険と同じように被保険者となって保険料を支払うことで、老齢になったときに受け取れる年金額を増やしたり、障害を負った場合に厚生年金保険から年金を受給をしたりできるようにします。

社会保険と「国民健康保険」の違い

会社員や公務員は勤め先で社会保険に加入しますが、勤め人ではない自営業者などは同じようにはできません。自営業者などが加入する公的医療保険が、国民健康保険です。

国民健康保険は市区町村を単位として運用されていて、自営業者をはじめとして学生、職業に就いていない人など、会社員や公務員など勤め先で健康保険に加入していない人全員に加入義務があります。
保険料は全額が被保険者負担となること、扶養という概念がないことが、国民健康保険の特徴で、会社員や公務員が入る健康保険との大きな違いです。

社会保険と「雇用保険」の違い

雇用保険は、失業して給料が得られなくなった労働者に対して給付を行う保険制度です。
失業者に対する給付をはじめとして育児休業給付、介護休業給付など、労働者の生活の安定や雇用の安定、就業機会の拡大などを目的に、さまざまな給付を行っています。

1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがあることを加入条件としている点が、健康保険、厚生年金保険とは異なります。

社会保険の加入条件①事業所の場合

社会保険が適用になるのは、適用事業所と呼ばれる事業所とその事業所の中で加入要件を満たした被保険者になります。

適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。

強制適用事業所

株式会社、合同会社などの法人(事業主のみの場合を含む)の事業所、従業員が常時5人以上いる個人の事業所も農林漁業やサービス業の一部を除いて強制適用事業所となります。

事業主や従業員の意思に関係なく、加入する必要があります。

任意適用事業所

強制適用事業所以外の事業所でも、適用事業所になることに社員の半数以上が同意し、会社が適用事業所の申請を行い、認可を受ければ適用事業所になることが可能です。この事業所を任意適用事業所といいます。

社会保険は事業所単位で加入します。そのため、適用事業所になった場合は、社会保険への加入を希望しない従業員も含めて適用することと なります。

社会保険の加入条件②従業員、パート・アルバイトの場合

前述した、社会保険に加入している会社などの適用事業所に、常時雇用されている70歳未満の人は原則として被保険者になります。

加入条件は以下の通りで、すべてに当てはまる従業員が対象になります。

従業員の社会保険加入条件
  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金が8.8万円以上
  3. 雇用期間の見込みが2カ月超であること
  4. 学生ではない
  5. 従業員数101人以上の企業(2024年10月からは、従業員数51人以上の企業)

引用:パート・アルバイトの皆様へ|厚生労働省

「週の所定労働時間が20時間以上」について

労働時間は、社会保険への加入を判断する上で、賃金と並んでポイントとなる基準の1つです。特定適用事業所で働くパート・アルバイトのうち、次の労働時間で働く従業員が、社会保険への加入対象者となります。

  • 週の所定労働時間(1週間あたりの決まった労働時間)が20時間以上

「決まった労働時間」とは、あらかじめ定められている労働時間のことです。雇用契約書や労働条件通知書に記載されている、所定労働時間を指しています。残業時間は含まれません。

社会保険の扶養が外れる条件は?

年間の給与所得が130万円を超えてしまうと、社会保険の扶養から外れ、社会保険への加入と保険料の支払いが必要になります。

アルバイトやパート、学生の方は、念頭に置いておきましょう。

これはいわゆる、扶養から外れて社会保険の加入義務が生じる「130万円の壁」と呼ばれますが、本人の所得に対して所得税が課税される「103万円の壁」など、「○○万円の壁」と使われる用語は他にもあります。

詳しくは、下記の記事もご参考ください。

社会保険の加入は義務?

社会保険への加入は加入条件に該当している全員に課されている義務なので、パート・アルバイトといった短時間勤務の労働者でも条件を満たせば、健康保険、厚生年金保険に加入することになります。加入するか・加入しないかを選択することは認められていません。

しかし健康保険・厚生年金保険へ加入すると、保険料を負担する必要があります。健康保険料、厚生年金保険料が給料から差し引かれ、手取りが減少します。配偶者の扶養家族のままであれば、自分自身が保険料を負担する必要はなく、手取りが減ってしまうことはありません。

社会保険に加入するメリットはある?

配偶者の扶養から外れて社会保険に自ら加入した場合のメリットには、以下のようなものがあります。

  • 老後に受け取る年金額が増える
  • 障害厚生年金や遺族厚生年金が受け取れる
  • 傷病手当金や出産手当金が受け取れる

社会保険料の計算方法と内訳

社会保険料の額を計算するにあたっては、標準報酬月額、標準賞与額、保険料率などに関する情報が必要になります。健康保険料(介護保険料)、厚生年金保険料は会社と被保険者が半額ずつ納付します。保険料の計算にあたっては「標準報酬月額」「標準賞与額」を使用します。

それでは、各保険料の計算方法について見ていきましょう。

健康保険料の計算方法

健康保険料は以下の算出式で計算して納付します。

給与から納付する健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率

[例]
東京都の協会けんぽに加入している標準報酬月額 50万円の人の場合
東京都の健康保険料率は9.81%なので、500,000円 × 9.81% = 49,050円
健康保険料は労使折半なので、事業主負担分は49,050円 ÷ 2 = 24,525円

賞与から納付する健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率

[例]
東京都の協会けんぽに加入している賞与額 560,250円の人の場合
標準賞与額は 560,000円(千円未満切り捨て)
東京都の健康保険料率は9.81%なので、560,000円 × 9.81% = 54,936円
健康保険料は労使折半なので、事業主負担分は54,936円 ÷ 2 = 27,468円

介護保険料の計算方法

介護保険料は40歳以上65歳未満の被保険者に保険料の納付が発生します。納付は健康  保険料に上乗せされて行われます。65歳以上の社員の方は給与からの控除ではなく、  居住している市区町村に納付する必要があります。
介護保険料は以下の算出式で計算して納付します。

給与から納付する介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率

[例]
東京都の協会けんぽに加入している標準報酬月額 50万円の人の場合
介護保険料率は1.64%なので、500,000円 × 1.64% = 8,200円
介護保険料も労使折半なので、事業主負担分は8,200円 ÷ 2 = 4,100円

賞与から納付する介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率

[例]
東京都の協会けんぽに加入している賞与額 560,250円の人の場合
標準賞与額は 560,000円(千円未満切り捨て)
介護保険料率は1.64%なので、560,000円 × 1.64% = 9,184円
介護保険料は労使折半なので、事業主負担分は9,184円 ÷ 2 = 4,592円

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は以下の算出式で計算して納付します。

給与から納付する厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率

[例]
東京都の協会けんぽに加入している標準報酬月額 50万円の人の場合
厚生年金保険料率は18.3%なので、500,000円 × 18.3% = 91,500円
厚生年金保険料は労使折半なので、事業主負担分は91,500円 ÷ 2 = 45,750円

賞与から納付する厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率

[例]
東京都の協会けんぽに加入している賞与額 560,250円の人の場合
標準賞与額は 560,000円(千円未満切り捨て)
厚生年金保険料率は18.3%なので、560,000円 × 18.3% = 102,480円
厚生年金保険料は労使折半なので、事業主負担分は102,480円 ÷ 2 = 51,240円

社会保険への加入手続き方法

●従業員の場合

被保険者となる従業員に扶養している家族・親族がいる場合、従業員は「健康保険・厚生年金被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。

なお、扶養している家族・親族がいない場合には書類を準備する必要はありません。

●事業主の場合

法人を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするときには「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を作成して届け出を行います。

また、従業員が入社したとき、契約変更により社会保険の加入要件を満たしたときには、会社は従業員の社会保険加入手続きを行わなければなりません。

社会保険の申請手続きの流れ
  1. 届け出を行う用紙を準備する
  2. 従業員・会社がそれぞれ必要な書類を準備し、用紙に記入する
  3. 期限までに定められた方法で提出する

従業員・事業主ともに、詳しくは下記の記事をご参考ください。

退職時の健康保険の任意継続制度とは

会社を退職すると健康保険の被保険者資格を喪失します。別の会社に入社する場合は、その会社で健康保険被保険者資格を取得しますが、そうでない場合は国民健康保険に加入しなければなりません。

しかし、退職する従業員の希望により、国民健康保険被保険者資格を取得せず、健康保険被保険者資格を継続させることができます。この制度を健康保険の任意継続といいます。

【参考記事】

社会保険未加入時の罰則

社会保険は、条件によりますが従業員を雇っているほとんどの事業所に加入義務があるものです。未加入のままでいると罰則もあります。

社会保険未加入時の罰則例
  1. 6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金
  2. 過去2年間に遡及して保険料を徴収
  3. 延滞金が発生する
  4. ハローワークに求人を出せない

社会保険未加入時の罰則については、詳しくは下記の記事をご参考ください。

社会保険の適用拡大とは

狭義の社会保険である健康保険、厚生年金保険などは適用拡大により、2022年10月から加入条件が変わり、加入できる被保険者の範囲が広がりました。
なお、従業員数に関しての適用拡大は次のように、企業規模別に段階的に行われています。

  • 2016年10月~:従業員数501人以上の企業
  • 2022年10月~:従業員数101人以上の企業
  • 2024年10月~:従業員数51人以上の企業

厚生労働省の「社会保険適用拡大 特設サイト」には、事業主の方、パート・アルバイトの方、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの方に向けて、法改正について詳しく紹介されているので、併せて参考にしてみてください。

社会保険の種類や加入条件などを確認しましょう

社会保険の適用拡大により、今まで加入対象にならなかったパートやアルバイトなどの短時間労働者も、要件を満たせば社会保険への加入が義務化されました。適用対象者がさらに増えますので、従業員からの問い合わせも増加するさらに増えることが予想されます。

社会保険の種類や加入条件などについて再確認を行い、人事労務担当者として正しい回答ができるようにしておきましょう。

よくある質問

社会保険とは?

広義では健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5種類、狭義では健康保険、厚生年金保険の2種類の公的保険制度のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険の加入は義務ですか?

社会保険への加入は義務であるため、加入条件に当てはまる人は必ず加入しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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