• 作成日 : 2025年10月24日

年収2000万円の節税策は?会社員・個人事業主別に対策を解説

年収2000万円という高水準の収入があるにもかかわらず、手取り額が期待より少ないと感じている方は少なくありません。

本記事では、会社員・個人事業主それぞれの立場で活用できる節税制度を整理し、合法的かつ効果的に手取りを最大化する方法を解説します。

年収2000万円とは?

この記事で扱う「年収」とは、所得税や社会保険料の計算に関わる収入の総額を意味しますが、会社員と個人事業主とではその定義と扱い方が異なります。

会社員の場合

会社員にとっての年収とは、給与明細における「総支給額(額面)」の1年間の合計を指します。これは基本給、残業代、各種手当、賞与などを含んだ金額で、税金や社会保険料が差し引かれる前の「支給総額」です。所得税計算の際には、この年収から給与所得控除を差し引いて「給与所得」を算出し、そこから基礎控除や各種所得控除を反映させて課税所得が決定されます。つまり、「年収=課税対象額」ではなく、控除を経て税額が決まる仕組みです。

個人事業主の場合

この記事では「事業所得=売上−経費」が2000万円であることを想定しています。この事業所得から、青色申告特別控除や基礎控除、小規模企業共済等掛金控除などを差し引き、課税所得が算出されます。

年収2000万円だと手取りはいくら?

年収2000万円のような高所得層では、所得税・住民税・社会保険料の負担が大きく、取りは大幅に減少します。以下では、給与所得者と個人事業主のケースに分けて手取りの実態を見ていきます。

給与所得者の手取りは約1300万円

年収2000万円の場合のモデル試算では、独身・標準報酬上限・協会けんぽ加入を前提にすると、所得税と住民税でおよそ500〜550万円、社会保険料で約160〜180万円が差し引かれ、手取りは概ね1,250〜1,300万円程度となります。

2025年の税制改正により、基礎控除は58万円へ引き上げられましたが、高所得者には特例加算が適用されず影響は限定的です。また、配偶者控除は適用対象外となるため、控除の選択肢が狭く、税負担は依然として重い状態が続きます。さらに、年収2000万円を超えると年末調整の対象外となり、確定申告が必須となります。

個人事業主も同様に手取りは1300万円前後

事業所得が2000万円の個人事業主の場合、所得税と住民税でおよそ500〜550万円、国民年金・国民健康保険料で100〜150万円程度がかかり、手取りはおおよそ1,250〜1,300万円前後となります(自治体や扶養状況により変動します)。

ただし、個人事業主は経費の計上や青色申告控除(最大65万円)を活用できるため、同じ収入規模でも給与所得者より課税所得を抑えることが可能です。2025年の基礎控除引き上げも適用されるため、若干の負担軽減が期待できます。

また、所得が増えるほど所得税率(最大45%)は高くなりますが、法人税率は原則23.2%のため、利益が大きければ法人化による節税効果も視野に入れるべきでしょう。

年収2000万円の会社員が節税するには?

年収2000万円クラスの会社員は、多くの控除制度の対象外となるため、節税の選択肢が限られがちです。それでも、制度を的確に活用すれば、税負担を軽減し、手取りを増やすことは可能です。

所得控除制度を最大限活用する

課税所得を減らすことが、会社員にとって基本的な節税手段です。

まず、iDeCoは2025年の年金制度改正により、第2号被保険者(会社員等)の拠出上限が月額6万2,000円に引き上げられる予定です。(制度は成立済みですが、施行日は政令で定められる見込みです。)

掛金の全額が所得控除の対象となるため、税率30〜40%の所得層であれば、年間15〜25万円程度の節税効果が期待できます。原則60歳まで引き出せない制約はありますが、受取時には退職所得控除なども適用され、将来の節税にもつながります。

ふるさと納税の控除上限額は住民税所得割額の20%を基準に算出されます。年収2000万円・独身を想定するとおよそ50〜70万円前後が上限の目安です。寄附金のうち2,000円を除いた金額が所得税・住民税から控除されるため、実質負担は少なく、実用的な節税策といえます。

その他、生命保険料控除医療費控除も利用可能ですが、年間の節税額は数万円程度にとどまることが多く、効果は限定的です。

生命保険料控除は、年間支払保険料に応じて最大で所得税12万円・住民税7万円の控除が受けられる制度です。ただし、年間保険料が多くても控除額には上限があるため、税率が高くても節税効果は合計で数万円程度にとどまることが一般的です。

医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超える場合に適用できます。超過分が所得控除の対象となるため、高額な治療や介護が発生した年には一定の節税効果が見込めます。たとえば医療費が年間30万円かかった場合、20万円が控除対象となり、税率40%なら約8万円の軽減になります。

住宅ローン控除住宅借入金等特別控除)は、適用初年度の年末時点での住宅ローン残高の0.7%(最大21万円)を所得税から控除できる制度ですが、新規適用の要件として「合計所得金額が2,000万円以下」であることが条件です。制度を利用したい場合は、所得見込みを事前に確認し、適用基準を満たすかを慎重に検討する必要があります。

運用益が非課税になる制度を活かす

NISAやiDeCoを活用することで、運用益に対する課税を回避できます。

2024年に刷新された新NISA制度では、非課税保有期間が無期限化され、年間投資上限額は最大360万円、生涯投資限度額は1,800万円に拡大されました。余裕資金を長期運用に回すことで、大きな節税と資産形成の両立が可能です。

iDeCoの運用益も非課税で再投資され、さらに受取時の税制優遇もあるため、掛金控除との二重の節税効果があります。iDeCoの加入可能年齢は、2025年の年金制度改正で70歳未満に延長されることが決定しました。施行は成立から3年以内に順次実施予定で、具体的な開始日は政令で定められます。

なお、NISA枠を超えた資産運用では、特定口座の配当を総合課税にして配当控除を利用することも可能ですが、所得税率が高いと逆に負担が増える可能性もあるため、慎重なシミュレーションが必要です。

不動産投資で損益通算を行う

不動産投資によって生じた赤字を給与所得と相殺する「損益通算」は、高所得者にとって有効な節税手段です。

減価償却費や利息を含めて年間300万円の不動産所得の赤字が出た場合、課税所得をその分減らすことができ、税率43〜45%の所得層であれば、最大135万円前後の税額が軽減されます。

ただし、実態の伴わない節税目的の投資に対しては、税務当局の監視が強まっているため、収益性や資産価値を慎重に見極める必要があります。自宅購入による住宅ローン控除が適用されない場合でも、賃貸物件による損益通算は年収制限なく利用可能である点もメリットです。

年収2000万円の個人事業主が節税するには?

年収2000万円規模の収入が個人事業主にあると、経費や控除を自由に使えるため節税の幅が広がります。ここでは、主な節税手段を紹介します。

青色申告特別控除と経費計上で課税所得を圧縮する

青色申告をしている個人事業主が使える青色申告特別控除は、要件を満たせば最大65万円です。これを満額利用すれば、所得2000万円から65万円がそのまま控除されることになります。税率が40%前後の枠にいる方であれば、控除分だけで年間約26万円前後の税金軽減になる可能性があります。

加えて、事業に関わる支出を可能な限り経費にすることが有効です。家賃・光熱費・通信費の事業按分、消耗品・研修・資格取得費、旅費交通費などを適切に記録し、30万円未満の減価償却資産の特例などを使って、一括で経費計上できるものはその年に費用にすることで、課税所得をさらに抑えられます。

青色申告なら、赤字(損失)が出た年にはその損失を最長3年間繰り越して、その後の黒字年と相殺する「純損失の繰越控除」が可能です。事業収益が変動する業種の場合、この繰越控除を前提に利益計画を立てることが税負担を平準化する上で役立ちます。

小規模企業共済や iDeCo で将来に備えつつ節税する

事業を継続するなら、将来の備えとセットで節税できる制度が使えます。

小規模企業共済の掛金は月額1,000円から7万円まで設定可能で、年間最大84万円まで所得控除対象となります。年収2000万円クラスで税率が高いなら、この掛金を最大に設定すると、所得税・住民税で合計で30万円前後の節税が見込めます。

iDeCoの掛金上限も改正が進んでおり、自営業者などの第1号被保険者では現行月額6万8,000円(年816,000円)が上限ですが、見直し案が成立しており月額7万5,000円(年900,000円)に引き上げられる予定です。加えて、加入可能年齢が70歳未満に延長される見込みとなっており、掛金拠出期間が長くできるようになります。

家族に給与を支払って所得を分散する

所得が大きいと税率区分が高くなるため、所得を家族にシフトさせることで税負担を下げる戦略は今も有効です。

青色事業専従者給与制度を利用すれば、生計を共にする配偶者または親族に対して実態ある仕事をしてもらうことで、その給与を経費として計上できます。たとえば配偶者に年間200万円を専従者給与として支払えば、所得2000万円の人本人の所得がその分減少し、本人の所得税率が高い分だけ税金の軽減が大きくなります。

ただし、専従者給与を支払う場合には、事前の届出が必要かつ職務内容・勤務実態が本当にあること、支払額が妥当であることが求められます。また、扶養控除や配偶者控除との関係で、家族の所得状況を見極めた上でバランスを取ることが大切です。

事業所得が年2000万円前後の場合、法人化すると節税できる?

年2000万円ほどの事業所得がある個人事業主は、所得税や住民税の累進課税により最大55%近い税率が適用されるため、税負担が大きくなります。こうした高所得層にとって、法人化(法人成り)は実効税率の引き下げや経費の幅拡大といった観点から、節税効果が期待できます。

税率の引き下げ効果が大きい

個人の最高税率が55%近くになるのに対し、中小法人の実効税率は通常23.2%、地方税などを含めても30〜31%前後に抑えられます。2025年12月施行の制度見直し後も、中小法人であれば最大でも31.52%程度にとどまる見込みです。そのため、同じ利益額でも法人の方が納税額が抑えられる傾向にあります。

給与所得控除が利用可能になる

法人化すれば、自分に役員報酬を支払い、その報酬に給与所得控除を適用できます。たとえば、年2000万円の報酬であれば最大195万円程度の控除が見込まれ、個人事業主では使えない“見做し経費”が追加される形になります。これにより、課税所得の圧縮が可能になります。

経費の幅と損失繰越の期間が広がる

法人では役員退職金、社宅、福利厚生費、一定条件の生命保険料などを経費にできるほか、欠損金の繰越控除も最大10年間まで認められます。個人の3年と比べて大幅に長く、利益変動のある業種にとっては有利です。

節税のために法人化する際の注意点

法人化には節税メリットがありますが、同時に負担や制約も伴います。ここでは代表的な注意点を紹介します。

社会保険料の負担が大きくなる

個人事業主時代は国民年金と国民健康保険への加入で済みましたが、法人化すると役員報酬に対して厚生年金保険と健康保険の加入が義務になります。報酬に対する保険料率は、厚生年金保険料率は18.3%で固定、健康保険料率は地域や組合により9〜10%台で異なります。年収2000万円相当の役員報酬では標準報酬月額上限の適用により、年間の社会保険料負担が100万円以上増えるケースがあります。

維持コストと事務負担が発生する

法人化すると、設立費用・毎年の決算申告・法人住民税の均等割といった固定コストが発生します。さらに、帳簿作成や決算報告などの業務が増え、会計処理を税理士に依頼する場合は顧問料がかかることもあります。こうした負担が、節税額を上回ることもあるため、事前の試算が不可欠です。

利益処分時の二重課税リスクがある

法人の利益は、そのままでは個人の手取りになりません。役員報酬で受け取れば個人課税対象となり、配当で分配すれば法人税を払った後に配当課税(約20%)が追加でかかるため、「二重課税」の構造になります。ただし、役員報酬と配当を適切に分けることで、税負担を調整することは可能です。

高年収でも賢く節税して手取り収入を最大化しよう

年収2000万円の高所得者は、所得税・住民税・社会保険料により手取りが大きく削られますが、制度を活用すれば合法的に税負担を減らすことが可能です。会社員はiDeCoやふるさと納税などの控除を活用し、余裕資金はNISAで非課税運用を行いましょう。個人事業主は青色申告や経費計上、小規模企業共済やiDeCoで控除を最大化できます。事業が拡大すれば法人化も視野に入れ、税率低減や所得分散による節税効果を検討すると良いでしょう。


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