- 更新日 : 2024年6月18日
法人の年間経理スケジュール
会社設立後に初めて経理作業を始める場合、いつ何を行えばいいのか、まったくわからないという方もいるのではないでしょうか。経理部門が行う仕事には、大きく分けて「日次業務」、「月次業務」及び「年次業務」があります。
今回は、3月決算の中小企業(従業員10人未満)を例に、1年間の経理スケジュールをわかりやすく解説していきます。初めて経理をするという方は、まずは経理業務の全体像をイメージすることから始めてみてください。
経理の日次業務
「日次業務」には、現金預金の入出金管理、現金の残高管理、立替経費の精算、伝票の整理・記帳などの業務をいいます。一般に経理の仕事といえば、これらの仕事をイメージするのではないでしょうか。
経理の月次業務
「月次業務」には、得意先への請求書発行や代金の回収、給与の支払い、仕入先への代金の支払いなどがあります。一般的には、得意先や仕入先に対して、締め日を設けて、1カ月~3カ月分をまとめて処理するといった形です。また、資金繰り管理や月次決算も経理部門の重要な仕事となります。
経理の年次業務
経理の仕事でもっとも重要なのが、決算作業です。1年に1回、決算整理や決算書の作成、確定申告書の作成、納税など必ずやらなければならない業務となります。また、株主総会の準備や運営、社会保険・労働保険関係の事務、年末調整、給与支払報告書のとりまとめなど、年1回時期によって重要な業務が訪れるので、年間スケジュールで確認していきましょう。
経理年間スケジュール
1月
- 固定資産税の償却資産に関する申告
毎年、1月1日時点で保有している償却資産の内容を、1月31日までに都道府県税事務所に届け出ます。償却資産とは、土地・建物以外の事業用資産のことです。例えば、パソコンや応接セット、コピー機、工場の機械などが該当します。償却資産は土地や建物とともに、固定資産税が課されます。
- 源泉所得税の納付
従業員から7月~12月に源泉徴収した所得税を、半年分まとめて1月20日までに納付します。本来は、毎月の源泉所得税を翌月10日までに納付しなければなりませんが、従業員数が常時10人に満たない会社の場合は、7月と1月に半年分をまとめて納付することができます。
法定調書とは、源泉徴収票や不動産の使用料といった支払調書のことです。これを1月末までに税務署に提出します。また、従業員に支払った年間給与額を給与支払報告書として各市区町村へ提出します。
国税庁 法定調書の提出期限等について
2月
- 固定資産税(都市計画税)(第4期分)を納付
固定資産税の納付期限は各市区町村が独自に決めることができるため、市区町村によって異なります。自分の会社が支払わなければならない固定資産税の納付期限がいつなのか、必ず納税通知書で確認してください。固定資産税は年間納付額を4回に分割して納付するのが一般的です。
3月
- 実地棚卸
決算日当日または決算日直前に在庫の現物を棚卸し、残高を明らかにします。実地棚卸は、4月に行う決算整理のために重要な手続きです。
4月
- 決算整理
3月決算の会社では、年初である4月は決算作業に忙しくなります。3月末に棚卸で明らかにした在庫と帳簿残高とを確認し、差額があれば調整します。また、年度中の取引の中で、不明な入出金があれば、その原因を突き止めて正しい会計処理を行います。そして減価償却費の計上や勘定科目が適切か、など経理処理全体を見直します。
- 財務諸表の作成
決算整理の内容を元に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など決算書と呼ばれる書類を作成します。市販の会計ソフトやクラウド会計を使用している場合は、日々の取引記帳を行うことで自動的に決算書が作成される仕組みになっています。
- 固定資産税(都市計画税)(第1期分)を納付
納付期限は各市区町村で異なる場合があります。
5月
期末から2カ月以内に確定申告書を作成・提出し、同時に納税しなければなりません。法人税、消費税は税務署に、法人事業税は各都道府県税事務所、法人住民税は各市町村へ提出します。
国税庁 申告と納税
- 株主総会の準備
株主総会が6月に開催されるため、それ向けて準備しましょう。開催の1週間前までに、株主宛に開催通知を送ります。必要に応じて決算説明資料等の準備も行います。
6月
- 株主総会の開催
会社法の規定に基づき、株主総会が開催されます。株主に対して売上高、利益、前年比などの決算数値を報告します。
- 個人住民税の納付
納期の特例の適用を受けている場合 、6月10日までに社長や従業員から徴収した個人住民税の納付を行います。
7月
- 源泉所得税の納付
納期の特例の適用を受けている場合、1月から6月に徴収した源泉所得税をまとめて7月10日までに納付します。
国税庁 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 固定資産税(都市計画税)(第2期分)を納付
納付期限は各市区町村で異なる場合があります。
- 健康保険・厚生年金保険の定時決定
7月10日までに、4月から6月までの各従業員の社会保険料合計額を日本年金機構に提出します。これを元に、9月以降の保険料が決まります。
日本年金機構算定基礎届の提出
8月・9月・10月
1年の内でもっとも落ちつく時期といえます。有給休暇等を利用してリフレッシュ期間にあてるようにしましょう。
11月
- 法人税、法人事業税、法人住民税の中間申告と納付
事業年度開始から6カ月を、経過した日から2カ月以内に中間納付として、直前期の納税額に応じて法人税等の前払いを行います。直前期の納税額のおおよそ半分を中間納付として支払い、決算期末の確定申告にも前払い分として考慮されます。仮に、当期の上半期で大きく赤字になったという場合は、仮決算を行い、納税額を少なくすることもできます。
- 消費税の中間申告と納付
直前期の消費税額が48万円超400万円以下の会社は、消費税の中間申告と納付を行います。法人税等と同様、一般的には直前期に納めた消費税額のおおよそ半額を納付します。
国税庁 中間申告の方法
12月
- 年末調整
1月~12月に従業員から徴収した所得税を、年間所得に基づき再計算し、徴収しすぎた場合は還付、不足分がある場合は追加で徴収します。生命保険料や住宅ローン、扶養人数の変更などを加味して調整します。
- 固定資産税(都市計画税)(第3期分)を納付
納付期限は各市区町村で異なる場合があります。
- 従業員の住民税の納付
納期の特例の適用を受けている場合、10日までに従業員の住民税を納付します。
年間スケジュールのひな形・テンプレート
会社内の各部署の年間スケジュールを作成しておくと、組織全体の予定や連携すべき内容がわかり大変便利です。
以下より、テンプレートを無料ダウンロードいただけますので、自社に合わせてカスタマイズしてご活用ください。
まとめ
法人の経理業務では、日々の経理業務や、経理の年間スケジュールをしっかり把握して、余裕をもって準備を行い、確実に月次業務を行っていきましょう。今回紹介した業務をスムーズに行うためには、日々の取引記録を正確に行うということが重要です。
取引記録がずさんだと、スケジュール通りにいかないどころか、想定外のトラブルに見舞われることもあります。日々の記帳から決算書類作成までトータルでカバーできるクラウド会計を使って、効率的に行うことをおすすめいたします。
よくある質問
経理の日次業務にはどんなものがあるの?
「日次業務」には、現金預金の入出金管理、現金の残高管理、立替経費の精算、伝票の整理・記帳などの業務があります。詳しくはこちらをご覧ください。
経理の月次業務にはどんなものがあるの?
「月次業務」には、得意先への請求書発行や代金の回収、給与の支払い、仕入先への代金の支払いなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
経理の年次業務にはどんなものがあるの?
決算整理や決算書の作成、確定申告書の作成、納税などの決算業務が年次業務として挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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