• 作成日 : 2025年9月16日

仮想通貨の節税方法は?個人・法人別に税金対策を解説

仮想通貨取引によって利益が出た場合、税金の負担が想像以上に重くなることがあります。日本では仮想通貨の利益は雑所得として扱われ、他の所得と合算されて課税されるため、高額になるほど税率も上がります。さらに、損失の繰越や他の所得との損益通算ができない点も、税務上の不利な特徴です。

本記事では、現行制度の課題をふまえた上で、個人が取れる節税対策から法人化の活用方法、そして税制改正の動向などを解説します。

仮想通貨の利益にかかる税とは

仮想通貨取引で得た利益には、高い税率が適用されることがあります。税制上は雑所得として扱われ、給与や他の所得と合算されて課税されるため、利益が増えるほど税負担も大きくなります。ここでは仮想通貨の課税区分と税率、損失繰越の制限について解説します。

雑所得として総合課税の対象になる

日本の税制では、仮想通貨の売却益や交換益は「雑所得」に分類され、総合課税の対象となります。総合課税とは、他の所得(給与、不動産、事業など)と合算して課税される方式で、税率は所得に応じて上昇する累進課税です。所得税の税率は5%から始まり、最高で45%に達します。ここに住民税(一律10%)と復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されるため、合計で最大約55%という高い水準の税率が適用される可能性があります。

株式やFXと異なり申告分離課税は適用されない

仮想通貨の課税方式は、株式や投資信託、FXのような「申告分離課税」とは異なります。これらは一律約20.315%の税率が適用されますが、仮想通貨はあくまでも雑所得扱いのため、収入が多い人ほど税率が不利になります。所得が高くなると税負担が大きくなりやすく、他の金融商品に比べて仮想通貨は税制面で劣後していると言えます。

損失繰越や損益通算ができない

現行制度では、仮想通貨取引で発生した損失を翌年以降に繰り越すことは原則として認められていません。また、他の所得と損益通算をすることもできず、たとえ前年に大きな損失を出していても、翌年に得た利益には課税が生じます。このため、仮想通貨の損益に関しては単年度での課税計算となり、税務上の柔軟性が低いのが実情です。

このように、仮想通貨の課税制度は現時点では厳しいものとなっており、利益が出た場合の税負担は非常に重くなります。そのため、どのように税負担を軽減するか、すなわち節税戦略を立てることが重要になります。

仮想通貨取引でできる節税対策

仮想通貨取引で得た利益には高い税率が適用されますが、法の範囲内で税負担を軽減できる方法も存在します。ここでは、個人が実践できる手法を解説します。

仮想通貨の経費を活用

仮想通貨取引の利益は「収入-必要経費」により算出されるため、経費を正しく計上することで課税所得を減らすことができます。経費として認められるのは、仮想通貨の取得費や取引手数料、インターネット通信費の一部、取引記録管理のツール利用料など、取引に直接関連する費用に限られます。これらの支出は漏れなく領収書などで証拠を残し、確定申告時に正確に申請する必要があります。

ただし、趣味目的の出費や私的利用に関連する費用は経費として認められません。たとえば仮想通貨の勉強に購入した書籍やオンラインセミナーの費用は、その仮想通貨取引で利益を得るために直接必要であったと客観的に証明できない場合には否認される可能性があります。誤って経費計上した場合には税務調査で指摘され、追徴課税の対象にもなり得るため、慎重に判断することが求められます。

含み損益の調整と損益通算の活用

仮想通貨取引では、売却のタイミングを調整することで課税所得を抑える戦略も有効です。たとえば年末時点で含み益のある通貨は売却を翌年に持ち越すことで、その年の課税対象から除外することができます。一方、同年内に他の通貨で大きな利益が出ている場合には、含み損のある通貨を年内に売却することで損失を確定し、他の利益と相殺(損益通算)することができます。

仮想通貨は雑所得に分類されるため、同じ「雑所得」に分類される他の所得(例: 副業の原稿料など)との間で損益通算が可能です。損益通算を活用することで、実際に支払う税金を大幅に減らすことができる場合があります。また、利益確定を複数年に分散させれば、累進課税による高税率の適用を回避できる可能性もあります。たとえば年100万円の利益を2年に分けて確定すれば、単年度で200万円確定した場合よりも税率が抑えられることがあります。

ただし、相場の変動によって含み損が急に解消されるリスクや、不利な価格での売却になる可能性もあるため、あくまでも合理的な取引判断を優先しつつ、節税面も加味した対応が望まれます。

青色申告や控除制度の活用

仮想通貨取引が事業的な規模に達している場合は、税務署に開業届を提出して個人事業主となり、青色申告の承認を受けることでさらなる節税が期待できます。青色申告を行えば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるほか、仮想通貨取引に関する経費の範囲も広がります。たとえば、自宅の家賃の一部やパソコン、電気代なども事業に関連する範囲で按分して経費計上できる可能性があります。

さらに、青色申告では赤字が出た年の損失を最大3年間繰り越せる制度も利用できます。個人の雑所得では通常損失繰越が認められていませんが、事業所得として認定されれば、翌年以降の利益と相殺して納税額を抑えることが可能です。規模の大きい個人トレーダーにとっては大きな節税メリットになります。

加えて、仮想通貨で得た利益が多い年には、各種控除制度を最大限に活用することが効果的です。たとえばふるさと納税は、一定額までの寄附を行うことで所得税や住民税の軽減につながる上に返礼品も受け取れる制度です。ほかにも医療費控除生命保険料控除小規模企業共済やiDeCoの掛金控除なども活用すれば、総合課税対象となる仮想通貨所得の圧縮に貢献します。

仮想通貨取引で確定申告が必要になるケース

仮想通貨取引で利益が出た場合、課税対象となるかどうかはその人の所得状況や立場によって異なります。確定申告が必要かどうかを判断するためには、会社員か個人事業主かで考えることが重要です。ここでは、それぞれの場合に分けて解説します。

会社員の場合

会社員など給与所得者の場合、副収入として得た仮想通貨の利益が年間20万円を超えると確定申告が必要です。この「20万円ルール」は、年末調整が完了している給与所得者を対象とした特例であり、仮想通貨以外にも原則としてすべての雑所得に適用されます。仮想通貨の売却や交換により、1年間で20万円を超える利益が発生した場合には、その分について所得税を申告・納税しなければなりません。

一方で、仮想通貨の利益が20万円以下にとどまり、他に申告義務がある所得がなければ、確定申告は不要です。ただし、給与収入が2,000万円を超える高所得者や、2か所以上から給与を受けている場合は別途申告義務が発生する可能性があります。このような場合には、たとえ仮想通貨の利益が少額でも確定申告が必要になることがあるため注意が必要です。

個人事業主の場合

個人事業主やフリーランスとして活動している場合には、仮想通貨の利益額に関係なく確定申告が基本的に必要です。仮想通貨の取引が主な収入であるか否かにかかわらず、雑所得も他の所得と合算して申告しなければなりません。たとえ仮想通貨の利益が数万円であっても、他の収入との合計で課税所得が発生する場合には申告対象になります。

また、確定申告を怠った場合には、無申告加算税や延滞税などの追徴課税が課されるリスクもあります。そのため、仮想通貨の取引履歴や損益の計算を日頃から正確に管理し、期限内に適切な申告を行うことが重要です。年末に慌てないためにも、専用の損益計算ツールや会計ソフトを利用して日々の取引を整理しておくと良いでしょう。

仮想通貨投資の法人化による節税メリット

仮想通貨取引で高額かつ継続的な利益が出るようになると、法人を設立して取引を行うことで大きな節税効果が得られる可能性があります。個人では所得が増えるごとに税率が上がる累進課税が適用されるのに対し、法人税は一定の税率で頭打ちになるため、利益規模によっては法人の方が有利になります。

法人化で軽減される税率

個人の仮想通貨所得は最大55%程度の税率がかかる一方、法人の場合は中小企業であれば課税所得800万円以下の部分に15%、それを超える部分には23.2%の法人税が適用されます。実効税率を含めても30〜35%程度に収まるため、所得が増えるほど個人との税負担の差は拡大します。たとえば課税所得1,000万円で比較すると、法人の方が10%以上税率を抑えられるケースもあり、一般には800万円を超える利益が法人化の検討ラインとされています。

損失繰越や損益通算の柔軟性

法人では赤字(欠損金)を最大10年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺できます。個人の雑所得では繰越控除が認められていないため、この点でも法人の方が有利です。また、法人は事業全体で損益を合算できるため、本業と仮想通貨の損益を通算して課税所得を調整できます。個人では雑所得内での通算に限られるため、損益通算の柔軟性も法人が上回ります。

経費計上の幅が広がる

法人では仮想通貨関連の費用だけでなく、家賃、通信費、人件費、役員報酬交際費など幅広い支出を経費計上できます。役員報酬を設定すれば法人側で経費となると同時に、個人では給与所得控除を活用でき、双方での節税効果が見込めます。

仮想通貨投資で法人化する際の注意点

仮想通貨取引において法人化は節税効果の高い手段ですが、一方でコストや事務負担といったデメリットも存在します。ここでは、法人化にあたって知っておくべき注意点を解説します。

設立・維持にコストがかかる

法人を設立するには初期費用が発生します。株式会社の場合、定款認証や登録免許税などを含めて約25万円前後、合同会社でも10万円前後の設立費用が必要です。一度設立すれば、利益が出ていなくても毎年最低7万円程度の法人住民税(均等割)の支払いが義務づけられます。また、帳簿作成や決算書・申告書の作成が必須となるため、税理士などの専門家への依頼費用も考慮しなければなりません。

さらに、オフィスを構える場合には家賃などの固定費が生じ、法人であれば原則として厚生年金・健康保険といった社会保険への加入義務も発生します。安定した利益がない段階で法人化すると、こうした固定費が経営の負担となりやすくなります。

手続きや運営が煩雑

法人化には設立時の各種手続きや、設立後の管理業務も伴います。法人設立時には定款の作成、法人登記、税務署や都道府県への各種届出が必要です。設立後は毎年の決算・税務申告・事業報告書作成など、個人事業主では発生しない煩雑な事務が日常業務に加わります。

また、仮想通貨関連の事業で法人化する場合、銀行口座の開設や融資を受ける際に慎重な審査を受けるケースもあります。特に暗号資産関連とみなされると、金融機関によっては口座開設自体を断られることもあります。さらに、法人の解散や廃業時にも解散登記や清算事務などの費用と手間がかかります。

仮想通貨投資の法人化に適したタイミング

法人化の判断基準としてよく挙げられるのが「年間の課税所得が800万円を超えるかどうか」です。税率や控除などの面で法人化による節税メリットがコストを上回る目安として有効ですが、それだけでは判断できない場合もあります。たとえば、仮想通貨取引を今後も事業として拡大していく見込みがあるか、法人としての社会的信用が必要かといった将来的な視点も重要です。

反対に、利益が安定しない、もしくは事業として継続性が見込めない場合には、法人化せずに個人のままでいた方が税務・コスト両面で合理的な選択となることもあります。法人化は節税効果と経費・運営負担のバランスを見極めた上で判断すべき選択です。

法人化を検討する際には、税理士などの専門家に相談し、収益見通しをもとに試算を行うことが推奨されます。

仮想通貨税制をめぐる動向

仮想通貨を取り巻く税制は大きな変革期を迎えています。今後の節税戦略を立てるうえでも、最新の動向を把握しておくことが重要です。

申告分離課税の導入が検討されている

現行制度では、仮想通貨の利益は雑所得として総合課税され、最大で約55%という非常に高い税率が課されます。これに対し、株式やFXのように一律20%程度の申告分離課税を仮想通貨にも適用すべきという要望が高まっています。2023年12月に公表された「令和6年度税制改正大綱」において「申告分離課税導入の検討」が盛り込まれ、2025年度以降に制度設計が進む見通しとなりました。

これが実現すれば、仮想通貨による利益が一定の税率で安定的に課税され、累進課税の負担から解放されることになります。また、同時に損失繰越控除(最大3年間)も導入される可能性が高く、翌年以降の利益と損失を通算できるようになると期待されています。

法人向けの税制改正も進行中

法人が暗号資産を保有する際の税制も見直されています。従来は、期末時点の時価で資産を評価し、たとえ売却していなくても含み益に対して課税される仕組みでした。これが企業の資金繰りを圧迫し、結果として事業拠点を海外に移す動きにもつながっていました。

しかし、2023年の税制改正でまず自社発行のトークンについて、2024年には一定要件を満たす第三者発行のトークンについても期末評価課税の対象外となる制度が導入されました。これにより、法人が暗号資産をより柔軟に保有できる環境が整いつつあります。

さらに、暗号資産間の交換時に課税を繰り延べる制度や、仮想通貨による寄附に関する非課税制度なども検討されており、企業にとっての運用負担は今後さらに軽減される方向に進んでいます。

仮想通貨の税金に備え、正しい知識と対策を実践しよう

仮想通貨取引には高い税率や損失繰越の制限といった課題があり、適切な節税対策が重要です。経費計上や損益通算、青色申告の活用など、個人で実行できる対策を押さえておくことで、納税負担を大きく軽減できます。利益が一定規模を超える場合には、法人化による節税も有力な手段となります。今後は申告分離課税の導入など税制見直しの動きも進んでおり、制度変更への備えも必要です。税務の基本を理解し、自分に合った節税方法を実践していきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事