• 作成日 : 2022年10月2日

合同会社の設立方法は?手続きの流れや必要書類を解説!

合同会社の設立方法は?手続きの流れや必要書類を解説!

会社の種類は株式会社以外にもあります。その筆頭が「合同会社」です。株式会社ほど広く知られてはいませんが、合同会社として設立することにも利点があります。そこで、この記事では合同会社とはどのような会社なのか、その設立方法や手続きの流れ、合同会社であることのメリット・デメリットについて解説していきます。

広告
会社設立サービスを使えば、設立に必要な書類を3ステップで簡単に制作できる!マネーフォワード クラウド会社設立を無料で始める >>
広告

そもそも合同会社とは?

合同会社は合資会社や合名会社と同じ持分会社の1種です。しかし、古くから法律上その存在が認められていた合資会社・合名会社と異なり、合同会社は会社法で2006年に設けられた比較的新しい会社の種類と言えます。

従来の持分会社と比較して、“社員の責任”という点で大きな違いがあります。
合名会社ではすべての社員が無限責任社員、合資会社は無限責任社員と有限責任社員が混在しています。これに対し、合同会社はすべての社員が有限責任社員です。他の持分会社における無限責任社員のように、社員個人の財産にまで責任の範囲が及びません。出資の範囲で責任を負い、会社が債務を弁済できない事態に陥っても原則として個人への請求を受けることはありません。

合同会社と株式会社の違いは?

社員の責任に関しては株式会社と同じ性質を持ちます。しかし、両者は似た形態の会社というわけではなく、下表のように多くの違いがあります。

合同会社と株式会社の違い

出資者の立場法律上、「社員」とは会社に対する出資者という意味で会社の構成員のことであり、この点、合同会社と株式会社に違いはない。しかし、実際に経営を担う合同会社の社員と違って株式会社の社員は常に経営に携わるわけではない
つまり、前者は会社の所有と経営が一致しているのに対し、後者は会社の所有と経営が分離されている
社員の議決権合同会社では原則として社員の議決権は出資比率に関係なく平等。そのため、社員の人数が多いと意思決定が困難になる
株式会社では出資比率に応じて議決権が異なるため、1人あたりの権限に大きな差が出やすい。そのため、大きな出資をした者の意見が通りやすく、一方で出資率の小さな社員の意見は通りにくくなる
役員の任期合同会社には役員の任期がない
株式会社では取締役の任期は原則2年。最長でも10年。再任することはできるが、その都度登記手続が必要になるなど手間とコストがかかる
資金調達の手段株式会社の場合、株式を使った大規模な資金調達が可能。証券取引所に株式を上場させることでさらにその効果を高めることができる
決算公告合同会社には決算公告の義務がない
株式会社には決算公告の義務があり、貸借対照表等を取引関係のない人にも知られるうえ、手間やコストがかかる
認知度株式会社のほうが周知されており、比較的世間からの信頼を得やすい。しかしながら、近年は合同会社の設立も増え、徐々に認知度が高まってきている
設立費用株式会社では、定款の認証に3~5万円(資本金等の額が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、その他の場合は5万円)の手数料がかかる。また、設立登記の登録免許税は最低額が15万円に設定されている。現物出資をする場合、検査役による調査や税理士等の専門家の証明を得るためのコストが発生することもある
合同会社では定款の認証が不要。また、設立登記の登録免許税は最低額が6万円であり、現物出資に係る調査等も不要である。そのため比較的低コストで設立できる

合同会社から株式会社に組織変更はできる?

合同会社と株式会社、それぞれに良い点がありますが、会社を立ち上げるならいずれかを選択しなければなりません。
しかし、一度選択した会社の形態を後から変更することが一切できないわけではありません。合同会社から株式会社に組織変更することは可能です。

組織変更にあたっては手続きが必要です。
組織変更に係る計画を策定し、この組織変更計画書について社員全員の同意を得なくてはなりません。

また、株式会社ならではの定めを設ける必要があります。発行可能株式総数、取締役、発行株式数などです。

続いて債権者保護手続を行います。債権者に個別に通知を出し、官報にも掲載。債権者から異議申し立てがなければ組織変更が可能となります。

最後に変更登記の申請を行います。組織変更の効力が発生した日から2週間以内に「合同会社の解散登記」および「株式会社の設立登記」を行い、株式会社への変更が完了します。

有名企業が合同会社を設立した事例は?

合同会社は株式会社に比べて認知度や対外的信頼といった点で劣ると言われることもありますが、今では多くの有名企業も合同会社として活動しています。

例えば、iPhoneなどを販売するAppleの日本法人「Apple Japan合同会社」があります。他にも世界最大の検索エンジンやWeb広告事業などを手がけるGoogleの日本法人、さらに大手ECサイトを運営するAmazonの日本法人なども合同会社です。

広告

合同会社の設立手続きの流れ・必要書類は?

合同会社を設立するには、大きく分けて以下3つのステップがあります。

  1. 定款の作成
  2. 出資の履行
  3. 設立登記

各ステップでの具体的な手続き、必要書類等について紹介していきます。

定款の作成

定款は、株式会社であろうと合同会社であろうと変わらず非常に重要な存在です。会社の根本原則であり、その内容により会社の在り方が変わってきます。そもそも会社が合同会社という形態として定まるのも、定款への記載によるものです。

定款に記載すべき事項

定款の記載事項には、絶対に記載しなければならない「絶対的記載事項」、定款に定めなければ効力が生じない「相対的記載事項」、それ以外の「任意的記載事項」の3つがあります。

絶対的記載事項以下の事項は記載が必須
・目的(会社の事業目的)
・商号(会社の名称)
・本店の所在地(会社の所在地を最小行政区画まで記載)
・社員の氏名又は名称及び住所
・社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準
・社員の全部を有限責任社員とする旨(社員全員が有限責任社員である旨記載することで合同会社となる)
相対的記載事項相対的記載事項の例
・持分譲渡に関する要件
・業務を執行する社員の指名又は選任方法
・社員又は業務執行社員が2人以上ある場合における業務の決定方法
・合同会社を代表する社員の指名又は互選の規定
・存続期間又は解散の事由 など
任意的記載事項任意的記載事項の例
・業務執行社員の員数
・業務執行社員の報酬
・事業年度 など

社員になろうとする者全員による署名または記名押印

定款の内容が定まれば、作成した定款に社員全員の署名または記名押印を行いましょう。作成した定款について公証人の認証を受ける必要はありません。

なお、定款への署名や記名押印に代わり、電子署名を付して電子定款として作成することも認められています。この場合、印紙税が不要です。電子証明書の取得、電子署名の付与が必要になるなど、はじめは煩雑に感じるかもしれませんが、専門家に依頼すればスムーズに進めることができます。また、今後は電子取引の機会も増えてくると思われますので、設立段階で環境を整えておくことが推奨されます。

出資の履行

社員になるなら、定款を作成した後、設立登記までに出資金のすべてについて払込みをしなければなりません。払込みを証する書面の作成においては、出資金が払込まれた口座の通帳の表紙と表紙裏(支店名や口座番号、口座名義人が記載されたページ)のコピーを取りましょう。

設立登記の申請

会社は、本店の所在地にて設立登記をすることで成立します。そのため、設立登記の申請手続きは省くことができません。

登記すべき事項

登記はどの会社形態であっても必要ですが、登記事項は会社形態によって異なります。合同会社を設立するのであれば、以下の事項を登記しなければなりません。

  • 目的
  • 商号
  • 本店、支店の所在地
  • 資本金の額
  • 業務執行社員の氏名(または名称)
  • 代表社員の氏名(または名称)、住所

また、代表社員が法人であるなら当該社員の職務を行う者の氏名・住所、会社の存続期間や解散事由の定めを置いているならその定め、公告方法の定めを置いているならその定めについても登記が必要です。同じ合同会社でも、定款で定めた内容に応じて必要な登記事項が変わってくる点に注意しましょう。

必要書類を法務局(登記所)に提出

登記申請のため必要書類を法務局(登記所)に提出することになりますが、これに先んじて会社の印鑑を作っておきましょう。登記に際して会社の印鑑を届け出ることになるため、社名を決めたら実印(代表者印)・銀行印・角印を準備しておくようお勧めします。

登記申請にあたっては、まず「登記申請書」を作成します。
登記申請書には申請人の商号や代表者の氏名・住所などを記載し、申請人の代表者またはその代理人が記名押印をしなければなりません。書面申請のケースでは、印鑑届書に所要事項を記載し届出印を押印するほか、会社代表者の個人印の押印、および個人印に係る印鑑証明書の添付が必要です。

主な添付書類は以下の通りです。

  • 定款
  • 業務を執行する社員の一致を証する書面
  • 出資の払込み、給付を証する書面
  • 代理人が登記申請をするなら、その権限を証する書面
  • 資本金の額が法令に則って計上されたことを証する書面(出資財産が金銭のみなら不要)

合同会社の設立にかかる費用は?

合同会社では、定款に関しては印紙代の4万円(電子定款なら不要)、設立登記に関しては登録免許税として最低6万円の費用が必要です。なお、登録免許税については“資本金の額×0.7%”で計算されますので、資本金が1,000万円であるなら7万円、3,000万円であるなら21万円かかることになります。

合同会社の設立は自分でできる?

合同会社のみならず、会社の設立は自分(創業者)自身で行うことも可能です。専門家に任せなければできない手続きはありません。ただし、会社設立に関連する法務や税務の知識、登記に関する知識などが必要になります。多くの手続きに際して発生する書類作成も不備なく進めていかなければなりません。そのため、専門家の力を借りつつ設立手続きを進めるのが一般的です。

合同会社設立時の資金調達方法は?

株式会社では、株式の発行により資金調達をすることができます。将来的には、株式の上場をすることでさらに大きな資金調達ができるようになります。他方、合同会社ではこういった手段を取ることができません。そこで、以下のような資金調達方法を検討すると良いでしょう。

補助金・助成金の利用

合同会社でも可能な資金調達方法として、補助金・助成金の利用が挙げられます。
国が実施しているもの、各自治体が実施しているものなどさまざまです。「キャリアアップ助成金」や「小規模事業者持続化補助金」、その他、会社を設立するエリアで利用できる制度がないかどうか一度確認してみると良いでしょう。
なお、助成金などについては基本的に後払いになるため注意が必要です。

融資の利用

事業を始めるため、先に資金が欲しいという場合には融資を受けることになります。
銀行や信用金庫などから融資を受けることが想定されますが、事業実績のない段階では大きな額を借り入れることは難しいと言えます。そこで、日本政策金融公庫が行っている事業で利用できるものがないかどうか確認してみましょう。

民間の金融機関と異なり、日本政策金融公庫は起業家や中小企業の支援を目的とする組織であり、設立段階においても融資のハードルは比較的低く設定されています。例えば、新たに事業を始める人向けのものとして「新創業融資制度」があります。原則として担保や保証人を付する必要がなく、最大3,000万円(うち運転資金は1,500万円)の借り入れが可能です。

合同会社設立後に必要な手続きは?

合同会社設立後も、やらなければならない手続きが色々とあります。税金関係、社会保険関係、労働保険関係などの手続きです。

税金関係の手続き

税金関係の手続きとしては、「法人設立届出書」の提出、「給与支払事務所等の開設届出書」の提出などが挙げられます。

法人設立届出書は税務署に提出します。また、給与支払事務所等の開設の届出は、給与の支払いを要する場合に所轄税務署長に対して届け出る手続きで、給与の支払いを取り扱う事務所の開設・移転・廃止がある度に行う必要があります。提出期限は、開設等の事実があった日から1ヶ月以内とされています。

さらに、給与の支払いを行う場合には源泉所得税関係の届出も必要ですし、資本金の額または出資の額が1,000万円以上であれば消費税関係の手続きも必要になります。

社会保険関係の手続き

常時従業員を雇う場合は、社会保険関係の手続きとして、年金事務所に健康保険や厚生年金保険の加入に係る届出を行わなければなりません。

また、日本年金機構への「新規適用届」の提出も必要です。提出時期は事実の発生から5日以内、窓口への持参や郵送のほか、電子申請による提出も可能です。

労働保険関係の手続き

労働保険関係として、労災保険と雇用保険に係る手続きも行う必要があります。

労災保険は、業務中あるいは通勤途中に従業員が怪我をしたときなどに保険給付を行う制度です。
会社設立後の労災保険加入にあたっては、会社所在地を管轄する労働基準監督署への届出が必要です。「労働保険関係成立届」、「労働保険概算保険料申告書」、その他、会社の登記簿謄本や従業員の賃金台帳も一緒に提出します。

また、雇用保険は、従業員が失業したときに加入期間・収入等に応じて必要な給付を行う制度です。
ハローワークに、「雇用保険適用事業所設置届」と、加入者全員分の「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。「雇用保険被保険者資格取得届 」は、従業員を雇入れた日の属する月の翌月10日までに提出する必要があります。

合同会社設立のメリットは?

さまざまな会社形態がある中で、合同会社を選択するメリットについて、以下で解説していきます。

設立費用やランニングコストが安い

上述の通り、合同会社は株式会社よりも設立費用が少なく済みます。資金に余裕がない状態で設立するのであれば大きなメリットと言えるでしょう。

設立段階のみならず、ランニングコストも低く抑えられます。
例えば、株式会社では毎年決算を公告しなければならず、官報への掲載にあたり費用が6万円ほどかかりますが、合同会社にはその必要がありません。

また、株式会社では役員の再任や変更をする度に登記費用が発生しますが、合同会社では役員の任期がないため、定期的な登記費用の負担も必要ありません。
さらに、株式会社では株主総会の開催にも費用がかかりますが、合同会社ならこれも不要です。

法人の節税メリットを受けられる

合同会社に限った話ではありませんが、法人になることで節税のメリットが得られます。これは、所得税は所得が多くなるのに従い、段階的に高くなる超過累進税率を採用しているのに対し、法人税は原則、税率が一定であることによります。こうした計算方法の違いから、ある程度の規模になると法人のほうが節税には有利だと言えます。
自分だけですべての税制を理解し、節税を目指すのは難しいため、詳しくは税理士に相談してみると良いでしょう。

個人が出資した範囲で有限責任を負う

合同会社は合名会社や合資会社と異なり、社員が無限責任を負いません。株式会社と同じく、社員は出資額の範囲で責任を負います。そのため、会社に負債があるときのリスクが他の持分会社ほど大きくならず、積極的な企業活動が行いやすくなります。

決算公告の義務がない

合同会社には決算公告の義務が課されていないため、手間とコストがかからず済みます。
しかし、合併や吸収分割・新設分割、組織変更、資本金の額の減少、剰余金額を超える持分の払戻しなどがあるときには官報に掲載しなければなりません。

役員任期の更新が不要

株式会社では役員任期は原則2年、最大でも10年までです。
合同会社では特に手続きを要することなく、同じ人が退社まで役員を継続することが可能です。しかしながら、合同会社でも定款で役員任期を定め、一定期間で役員を変更するような運営をすることもできます。

合同会社設立のデメリットは?

合同会社を設立するデメリットについても挙げていきます。

株式会社と比べて信用度が高くない

デメリットの1つは、「株式会社に比べて信用度が高くない」ということです。会社法により新たに設けられた会社形態であるという背景もあり、合同会社は株式会社よりも一般に馴染みが薄いと言えます。会社の仕組み上、信用度が劣るというわけではありませんが、認知度の差が信用度に影響してしまう可能性は否めません。

資金調達の方法が限定される

株式会社では株式を活用した資金調達ができます。流通性があり、会社の知名度が高ければ大規模な資金調達も可能となるでしょう。これに対して、合同会社はその性質上、株式を使った資金調達ができないため、選択肢が少なくなります。

合同会社の設立手順は株式会社よりも簡単!

合同会社の設立は株式会社の設立に比べて低コストで、手順も簡単です。最近では世間一般にも周知されつつあり、有名企業も合同会社になる例が出てきています。株式会社として設立する特段の理由がなければ、合同会社も選択肢に入れると良いでしょう。

広告

「マネーフォワード クラウド会社設立」で会社設立をもっとラクに

広告
合同会社マイティワン代表 下田 高嗣 様

マネーフォワード クラウド会社設立の導入事例

サクサクと迷うこともなく簡単に最後まで進めることができ、申し込みから2週間足らずで法人化することができました。会社設立した後も色々なサービスを利用できるのが良いですね。

合同会社マイティワン代表 下田 高嗣 様

右矢印アイコン もっと読む

よくある質問

合同会社はどうやって設立するのですか?

定款の作成、出資の履行、設立登記により合同会社が成立します。詳しくはこちらをご覧ください。

合同会社を設立するメリットは何ですか?

株式会社よりも設立費用やランニングコストが安く、他の持分会社と違い社員の責任の範囲が限定されているというメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

合同会社を設立するデメリットは何ですか?

株式会社に比べると信用度が高くない、資金調達の方法が限定されるというデメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

合同会社の関連記事

会社設立手続きの関連記事

新着記事