- 更新日 : 2025年4月23日
決算月はいつにする?会社設立時の決算月の決め方・変更方法を解説!
日本では決算月を3月と定めている会社が多いですが、これは国や市区町村の会計年度にならったものです。会社の決算月について、いつ何月にしなければならないという決まりがあるわけではありません。
決算月は、会社の内実に応じて無理のないように決めることが大切です。資本金が1,000万円未満の会社であれば、決算期を調整することで消費税の免税期間をコントロールして節税できます。会社設立時に決算月を決めるポイントや、設立後に決算月を変える方法について解説します。
目次
そもそも決算月(決算期)とは?

決算月とは、法人の財産や損益の計算の基礎となる事業年度の最後の月を指しています。法人は設立から1年以内であれば、自由に決算期を決めることが可能です。
法人によって、4月1日から翌年の3月31日までを事業年度とみなしているところや、1月1日から12月31日までと区切っている会社などに分かれます。
会社を設立したら、決算期の期末日時点で、会社の経営状態や財務状況を示す決算手続きを行う必要があります。決算手続きで必要な作業は「決算書の作成」「各種税金の申告・納税」「決算書の保存」等です。
決算書は言わば事業年度中の会社の成績表や健康診断書のような存在で、決算時点における経営状況を正しく認識・報告・公開するために必要な書類です。
法人税法上、1年に一度は本決算を実施する必要があります。加えて半年に一度の中間決算や、四半期ごとの四半期決算を実施している会社も少なくありません。
中間決算や四半期決算をやるかどうかは任意で決定できます。ただし融資を受けている銀行や取引先から報告書の提出を求められる可能性もあります。
会社の現状をより正確に把握するために役立つ反面、決算手続きの手間が増えることがデメリットです。
会社設立時に決算月を決めるポイントは?
会社を設立するときは、決算月を決めなければなりません。決算期間が1年を超えなければ、決算月は何月であってもよいことになっています。自由に決められるとなると、かえって迷ってしまいますが、決算月を決めるにはポイントがいくつかあります。
何となく3月にするのは避ける
多くの会社の決算月が3月であることから、「わが社も3月でいいか」と決算月を3月にすることはおすすめできません。
決算月が3月である会社が多いため、公認会計士や税理士は、4月から5月にかけて繁忙期を迎えることになります。このようなときに、決算チェックや会計監査、法人税の申告を依頼すると、十分に対応してもらえない可能性があります。これは公認会計士や税理士が忙しいから手を抜くのではなく、マンパワーにも限度があるというのが実情です。
マンパワーという点では、決算月を1月にすることもおすすめできません。2月から3月にかけては、所得税の確定申告の時期と重なり、税理士の繁忙期にあたります。さらに、社長個人の確定申告が必要となれば、会社の決算と社長個人の確定申告を同時に進めることになります。先ほどご紹介した決算月の分布で1月が少ないのは、このような事情があるとも推測できます。
親会社や取引先に決算月を合わせなければならないなど、特別の理由がない限り、1月や3月を決算月にするのは避けたほうがよいでしょう。
資金繰りから逆算する
資金繰りの状況から逆算して決算月を決めるのも一つの方法です。
決算月を3月に指定すると、決算月の2か月後には法人税や消費税などを申告して納税しなければなりません。納税期限が資金繰りの苦しい時期と重なってしまえば、納税に支障をきたします。そうならないように、資金が少なくなる月の2か月前を決算月にするのは避けます。
資金が少なくなる月とは、売上の入金が少ない月、仕入や経費の支払いが多い月、従業員にボーナスを支払う月などです。あくまでも、実際に入出金がある月として考えます。売上や仕入を計上した月ではないので要注意です。
消費税の免税期間を考慮する
資本金が1,000万円未満の会社であれば、開業の最初の2年間は消費税の納税が免除されます。
ここで気をつけたいのは、免除されるのは2年間ではなく、2年度であるという点です。仮に最初の事業年度が3か月だけであれば、1年3か月で2年度が経過します。納税免除のメリットを最大限に受けるためには、開業日から決算月をできる限り離すことです。そうすれば、最大で丸2年間納税が免除されます。
開業時の資本金が1,000万円未満であって、消費税を納税する可能性がある場合は、納税免除のメリットを視野に入れて決算月を決めるのも一つの考え方です。なお、消費税にかかわる規定にはさまざまな例外があります。納税免除のメリットから決算月を考える場合は、あらかじめ税理士に相談することをおすすめします。
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会社設立後に決算月を変える方法は?
既存の会社でも決算月を変えることはできます。決算月を変更する手続きの概要をご紹介します。
1.株主総会で定款の変更を決議する
会社の決算月は、定款に記載されています。決算月を変更するには、株主総会で定款の変更を決議します。
定款の変更には特別決議が必要で、議決権で数えて過半数の株主が出席し、出席した株主のうち議決権で数えて3分の2以上の賛同を得なければなりません。ただし、会社によっては異なる規定をしている場合があります。
2.税務署へ届け出る
株主総会で決議されれば、税務署に「異動事項に関する届出」をします。添付書類は定められていませんが、定款の写しを添付しておくとよいでしょう。
決算月をいつにするかが会社設立後の節税にも影響!
会社を設立したら1年以内に決算月を決めなくてはならず、決算では決算書の作成や税金の申告・納税といった作業が伴います。
以上ご紹介してきたとおり、決算月は3月など特定の月にとらわれずに自由に決めることができます。これから会社を設立するときは、繁忙期を避け、資金繰りを考慮して決算月を決めるとよいでしょう。また、既存の会社であっても、株主総会の決議によって決算月を変えられます。ぜひ参考にしてみてください。
よくある質問
決算月(決算期)とは?
事業年度の区切りとなるタイミングのこと。決算月には決算書の作成や税務申告などを行います。詳しくはこちらをご覧ください。
決算月を決めるポイントは?
資金繰りが苦しい時期を避け、かつ消費税の免税期間をフルに活用することを考えて決めると良いでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
会社設立後に決算月を変更する手続きは?
株主総会で決議を取り、定款の変更について許可をもらいます。その後、税務署に「異動事項に関する届出」を提出し、手続きは完了です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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