• 作成日 : 2025年3月7日

不用品回収業の個人事業主として開業するには?必要な許可や確定申告も解説

不用品回収業を個人事業主として開業すると、古物商許可などが場合によって必要です。また、税務署に対して開業届の提出なども必要です。個人事業主として不用品回収業を始める際の手続きや許可なしで開業した場合の罰則、開業後の確定申告の手続きについて解説します。

不用品回収業の個人事業主として開業する方法

個人事業主として不用品回収業を開業するには手続きが必要です。開業までに必要な手続きについて紹介します。

不用品回収業に必要な許可を得る

法律上、規定のある事業については、許可を取得しなければ開業できません。不用品回収業を事業とする場合、開業前に古物商許可などの関連する許可を行政機関から取得しておく必要があります。関連する許可については後述します。

不用品回収業の開業届を提出する

開業届とは、税務署に事業を開始したことを知らせる手続きのことです。新たに事業所得、不動産所得、山林所得に該当する事業を開始した場合、開業の日から1カ月以内に管轄の税務署に「個人事業の開業・開業等届出書」を提出します。税務署への開業届のほか、都道府県や市町村に対しても「事業開始等申告書」の届出が必要です。

不用品回収業で開業するために必要な許可

個人事業主が不用品回収業を開業するにあたり、必要になる可能性がある許可を紹介します。

古物商許可

古物営業法の規定により、古物営業を行う場合は都道府県公安委員会による許可(古物商許可)を得なければならないとされています。

古物営業とは、古物の売買や交換、委託による売買や交換、古物市場の経営、古物売買のあっせんなどを事業として行うことです。古物営業法に定める古物とは、使用された物品や使用されていない物品のうち使用のために手入れや取引されるものをいいます。

不用品回収で、顧客から中古品を買い取ったり、または買い取った中古品を販売したりする場合は、古物商許可の取得が必要です。古物商許可は、事業所の所在地を管轄する警察署で申請します。

一般廃棄物収集運搬許可

一般廃棄物収集運搬業は、一般廃棄物を運搬したり、一時的に保管したりする事業をいいます。一般廃棄物とは、産業廃棄物に分類されない家庭ごみなどのことです。事業として一般廃棄物を運搬する場合は許可が必要となります。

一般廃棄物収集運搬許可は、市町村で新規取得します。ただし、既存の業者で一般廃棄物が適正に処理されている現状から、新規に許可を受け付けていない市町村もあるため、注意しましょう。家電リサイクル法に規定される物品の収集運搬など、条件付きで許可申請を受け付けている市町村においては、条件付きでの申請が可能です。

なお、中古品など、一般的な不用品回収においては、一般廃棄物収集運搬業の許可がなくても開業できます。あくまで、粗大ごみや生ごみなどの一般廃棄物に分類されるものを取り扱う場合に必要な許可です。

産業廃棄物収集運搬許可

産業廃棄物収集運搬許可は、産業廃棄物を回収する場合に必要になる可能性がある許可です。許可の取得は各都道府県で行います。

産業廃棄物に区分されるのは、法令で定める事業活動で発生する20種類の廃棄物です。産業廃棄物には、廃プラスチック類、金属くず、ガラス・コンクリート・陶磁器くず、紙くず、木くず、繊維くずなどが含まれます。産業廃棄物のうち、危険性の高いものは特別管理産業廃棄物に指定されており、通常の産業廃棄物よりも厳密な管理が求められます。

不用品回収業を無許可で行なった場合の罰則

古物商許可が必要な営業を無許可で行なった場合、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。

一般廃棄物収集運搬許可や産業廃棄物収集運搬許可が必要な事業において無許可で営業した場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下(法人は3億円以下)の罰金が科されます。

不用品回収業の個人事業主の平均月収

個人事業主が不用品回収業を営む場合の平均月収は、どの程度の規模で、どのような不用品を中心に回収するかなどで異なってきます。平均給与月収は20万円~40万円程度であるため、この辺りが目安になってくるでしょう。なお、不用品回収業は、引っ越しシーズンなどの繁忙期と閑散期で収入が大きく変動しやすい特徴があります。

不用品回収業の個人事業主が儲かるといわれる理由

不用品回収業は儲かるといわれることがあります。回収業で集めた不用品をさまざまな形で収益化できることが理由です。

まず、廃棄が難しい大型家電などは回収料として引き取りの際に料金を受け取ることができます。また、回収した不用品は再販売したり、修理や加工をして販売したりすることが可能です。再販売が難しい商品については、分解して部品を販売したり、リサイクルに回したりして収益化できます。海外に販売網がある場合は、海外でニーズのある商品を輸出して収益を得る方法もあります。

不用品回収業の個人事業主が注意すべきポイント

個人事業主が不用品回収業を営む際に意識すべきポイントを解説します。

不用品回収業の許可があることを明示する

不用品回収の事業内容によっては、許可が必要となります。例えば、古物商許可については、行商や競り売りをする場合は許可証を携帯すること、行商などで取引相手から許可証の提示を求められた場合は提示することが法律で定められています。不用品回収業の健全な経営のためには、不用品回収業に関する許可を有していることを相手にわかるように明示しておくことが大切です。

毎年必ず確定申告を行う

不用品回収業で得た所得(収入から必要経費を差し引いた金額)などを計算した結果、納めるべき所得税額がある場合は確定申告が必要です。確定申告書の提出期限までに必要書類を作成し、管轄の税務署に確定申告書を提出するようにしましょう。

なお、不用品回収業が赤字の場合、納める税金がないことで確定申告が不要になることもあります。しかし、青色申告を選択している場合は、翌年以降3年間は赤字の繰り越しが可能です。赤字の場合であっても確定申告はした方がよいでしょう。

確定申告については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

不用品回収業の個人事業主の確定申告手続き

不用品回収業を営む個人事業主の確定申告の手続きについて解説します。

不用品回収業の確定申告書の書き方

不用品回収業を個人事業主として行う場合、該当する所得は事業所得にあたると考えられます。確定申告時に事業所得を申告する場合に作成が必要になるのが、「収支内訳書」または「所得税青色申告決算書」です。白色申告の場合は「収支内訳書」を、青色申告の場合は「所得税青色申告決算書」を作成します。収入内訳書は、年間の事業所得の収入と費用の内訳がわかる書類です。所得税青色申告決算書は、年間の収入と費用の内訳(損益計算書)に加え、決算日時点の財務状況を示す書類(貸借対照表)のことです。

1.収支内訳書または青色申告決算書を作成する

収支内訳書または青色申告決算書を作成するには、不用品回収業で得た年間の収入や必要経費などがわかる書類が必要です。それぞれの書類には各勘定科目の年間の合計額を記載することになるため、会計ソフトなどを利用して日々の取引を記帳しておきます。

不用品回収業での収入は、顧客から支払いを受けた回収料や不用品を再販売する際の売上などが該当します。不用品回収業で計上できる必要経費は後述の通りです。不用品の買取額や回収のために要した燃料費などが該当します。プライベートで使用したガソリン代などは必要経費にはできないため、按分計算で私用分は除いて計算するようにします。

収支内訳書・青色申告決算書の様式はこちら

2.確定申告書を作成する

事業所得の内訳である収支内訳書または青色申告決算書を作成した後は、確定申告書の作成を進めていきます。確定申告書には、第一表と第二表があります。第一表は、すべての所得金額所得控除、所得税額などが一目でわかる確定申告書の表紙のような書類です。第二表には所得控除に関する内訳などを記載します。

第一表の各種所得項目のうち、事業所得の収入金額と所得金額には、収支内訳書または青色申告決算書で算出した金額を転記します。その他の所得や所得控除、税額控除などは該当する場合は記載して確定申告書を作成していきましょう。

確定申告書第一表・第二表の様式はこちら

確定申告書の第一表や第二表の書き方についてはこちらで詳細をご確認ください。

不用品回収業の確定申告書の提出方法

確定申告書の提出方法には3パターンあります。

確定申告書の提出方法
  1. 税務署の受付窓口に提出する
  2. 税務署に郵送で提出する
  3. 電子申告で提出する

従来の方法としてよく利用されているのが、窓口に直接提出する方法や郵送で提出する方法です。確定申告書を手書きで作成するか、またはパソコンで作成した確定申告書を印刷して提出します。郵送で提出する場合は、郵便局で押印される通信日付印が提出日となります。確定申告の提出は通信日付印が期限内であれば認められるため、日付が提出期限以降にならないように注意しましょう。

電子申告は、インターネットを利用して確定申告書を提出する方法です。確定申告書等作成コーナーやe-Taxソフト、電子申告対応の確定申告ソフトなどから申告できます。

不用品回収業の確定申告書の提出期限

確定申告書の提出期限は、不動産回収業に限らず、例年3月15日までです。前年度の1月1日から12月31日までの所得金額と所得税額を提出期限までに申告します。

不用品回収業の確定申告書の添付書類

個人事業主が不用品回収業を営む場合、事業所得に該当すると考えられることから、先述した収支内訳書または青色申告決算書を確定申告書に添付して提出する必要があります。また、税務署の窓口で提出する場合は本人確認書類の提示、郵送で提出する場合は本人確認書類のコピーの添付が必要です。

不用品回収業の個人事業主が確定申告で経費にできる費用

不用品回収業を営む個人事業主が、確定申告の際に必要経費にできる主なものとして、以下のような項目があります。

勘定科目説明
仕入不用品を販売のために買い取った場合の買取額は仕入価額に計上できます。
車両運搬具
減価償却費
不用品回収のために購入したトラックなどの車両は資産に計上し、減価償却を通じて耐用年数に応じて費用化していきます。
車両費不用品回収で利用する車両の維持費やガソリン代などを処理するための科目です。ガソリン代は「燃料費」などに区分して仕訳することもあります。
地代家賃不用品販売のために店舗を借りたり、倉庫を借りたりした場合に発生する費用です。
水道光熱費店舗営業で発生した水道光熱費を計上できます。
給料賃金スタッフとして従業員を雇用した場合は、給料の支払いが必要です。
広告宣伝費Web広告やチラシを作成する場合に必要になる費用です。

不用品回収の開業後は確定申告が必要

不用品回収業を個人事業主として開業する場合、取引内容に応じて古物商許可などが必要になります。無許可で営業すると罰則の対象となるため、許可が必要な取引を十分に確認したうえで事業を開始しましょう。また、事業開始後は、基本的に毎年確定申告の手続きが必要になります。確定申告は1年間の取引内容が対象になるため、確定申告ソフトなどを活用して効率よく申告できるように準備しておきましょう。


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