- 更新日 : 2025年10月31日
年収500万円で法人化は不要?後悔しない目安や節税を解説
年収500万円の場合には法人化は不要といえます。一般的に法人化する課税所得の目安は800万~900万円のためです。
本記事では年収500万円の方が法人化した方が良いのか、法人化するとどうなるかについて解説します。あわせて、年収500万~年収1,000万円の個人と法人の手取りも比較するため、ぜひ参考にしてください。
目次
年収500万円で法人化は不要?
年収500万円の場合には、法人化は不要といえます。法人化を検討する際に目安となるのは、一般的に年収ではなく課税所得(利益)です。利益の目安としては、課税所得800万〜900万円あたりが個人事業主から法人化する目安とされています。
年収500万円の法人化にメリットはある?
サラリーマンの副業などで、給与所得以外の課税所得金額が、年間500万~600万円を超える場合には、会社設立による節税メリットが出てきます。課せられる税額が500万~600万円の間で法人のほうが少なくなるためです。
あくまで、課税所得(利益)をベースに考えることが重要です。
年収500万円の個人と法人でかかる税金
年収500万円の場合に個人と法人でかかる税金について解説します。
<個人事業主の場合の税金>
<法人の場合の税金>
法人化した場合は、消費税の納税義務が最長2年間免除されます。
※資本金1,000万円を超えて法人成りをした場合は免除期間はなし
年収500万円で法人化するとどうなる?
法人化することによる変化について解説します。代表的な変化には、以下のようなものが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法人化に伴う設立費用
法人の設立にあたっては、さまざまな費用がかかります。会社を設立するためには、定款作成や会社登記などが必要です。
たとえば、登録免許税だけでも株式会社の場合には15万円程度、合同会社でも6万円前後を支払う必要があります。
さらに、資本金も必要です。法律上では1円以上の資本金があれば会社設立はできますが、会社の信用などを考えた場合には数百万円程度の資本金が理想といえます。
経理や事務作業
法人化すると、経理や事務作業が個人事業主の場合と比べて煩雑になります。たとえ一人会社だったとしても、多くの作業が必要です。
対策として、経理を雇ったり税理士に依頼したりすることも検討するとよいでしょう。
融資や経費の幅
法人化することで、融資や経費の幅が広がる点はメリットです。個人事業主のときよりも社会的信用度が上がるため融資の選択の幅が広がります。
企業や金融機関によっては、個人事業主との取引を不可としているところもあるため、法人化によって社会的信用度を高めることは、事業拡大のチャンスといえるでしょう。
また、法人化することで経費計上できる項目も増加します。具体的には、以下のような費用を経費として計上可能です。
- 経営者の給与・賞与・退職金
- 生命保険料や社会保険料(生命保険料は法人が契約者の場合)
- 福利厚生費用
- 健康診断費用
- 住宅費(社宅制度を利用した場合) など
社会保険への加入
法人化した場合、社会保険へ加入しなければなりません。たとえ一人会社であっても社会保険料(健康保険と厚生年金保険)の会社負担が生じることは、あらかじめ理解しておきましょう。
なお、社会保険料は会社と個人で折半する仕組みです。
従業員を1人雇った場合
法人化して従業員を雇った場合には、以下のような手続きや作業が発生します。
- 労働契約の締結
- 社会保険への加入
- 法定帳簿の作成・保存
法人化することだけで経理や事務作業が増えますが、従業員の雇用でも作業が増えることは理解しておきましょう。
年収500万円~年収1,000万円の個人と法人の手取りを比較
ここでは、年収500万~年収1,000万円の個人と法人の手取りについて紹介します。
<条件>
各年収での手取り(概算)を見ていきましょう。
年収500万円の手取り
年収500万円のときの個人と法人の手取り(概算)は、以下の表のとおりです。
<個人>
| 税金・手取り | 計算式 |
|---|---|
| 所得税 | (500-120) × 20%-42.75=33.25万円 |
| 住民税 | (500-120) × 10%=38万円 |
| 個人事業税 | (500-290) × 5%=10.5万円 |
| 手取り(概算) | 約418万円 |
<法人>
| 税金・手取り | 計算式 | |
|---|---|---|
| 法人税 | 500万円 × 15%=75万円 | |
| 法人住民税 | 12.25万円 | |
| 法人税割 | 75万円 × 7%= 5.25万円 | |
| 均等割 | 2万円 + 5万円 = 7万円 | |
| 法人事業税 | 19.3万円 | |
| 年400万円以下 | 400万円 × 3.5% = 14万円 | |
| 年400万超~800万円 | 100万円 × 5.3% = 5.3万円 | |
| 手取り(概算) | 約393万円 |
年収600万円の手取り
年収600万円のときの個人と法人の手取り(概算)は、以下の表のとおりです。
<個人>
| 税金・手取り | 計算式 |
|---|---|
| 所得税 | (600-120) × 20%-42.75=53.25万円 |
| 住民税 | (600-120) × 10%=48万円 |
| 個人事業税 | (500-290) × 5%=10.5万円 |
| 手取り(概算) | 約488万円 |
<法人>
| 税金・手取り | 計算式 | |
|---|---|---|
| 法人税 | 600万円 × 15% = 90万円 | |
| 法人住民税 | 13.3万円 | |
| 法人税割 | 90万円 × 7% = 6.3万円 | |
| 均等割 | 2万円 + 5万円 = 7万円 | |
| 法人事業税 | 24.6万円 | |
| 年400万円以下 | 400万円 × 3.5% = 14万円 | |
| 年400万円超~800万円 | 200万円 × 5.3% = 10.6万円 | |
| 手取り(概算) | 約472万円 |
年収700万円の手取り
年収700万円のときの個人と法人の手取り(概算)は、以下の表のとおりです。
<個人>
| 税金・手取り | 計算式 |
|---|---|
| 所得税 | (700-120)× 20%-42.75=73.25万円 |
| 住民税 | (700-120) × 10%=58万円 |
| 個人事業税 | (700-290) × 5%=20.5万円 |
| 手取り(概算) | 約548万円 |
<法人>
| 税金・手取り | 計算式 | |
|---|---|---|
| 法人税 | 700万円 × 15% = 105万円 | |
| 法人住民税 | 14.35万円 | |
| 法人税割 | 105万円 × 7% = 7.35万円 | |
| 均等割 | 2万円 + 5万円 = 7万円 | |
| 法人事業税 | 29.9万円 | |
| 年400万円以下 | 400万円 × 3.5% = 14万円 | |
| 年400万円超~800万円 | 300万円 × 5.3% = 15.9万円 | |
| 手取り(概算) | 約551万円 |
年収800万円の手取り
年収800万円のときの個人と法人の手取り(概算)は、以下の表のとおりです。
<個人>
| 税金・手取り | 計算式 |
|---|---|
| 所得税 | (800-120) × 20%-42.75=93.25万円 |
| 住民税 | (800-120) × 10%=68万円 |
| 個人事業税 | (800-290) × 5%=25.5万円 |
| 手取り(概算) | 約613万円 |
<法人>
| 税金・手取り | 計算式 | |
|---|---|---|
| 法人税 | 800万円 × 15% = 120万円 | |
| 法人住民税 | 15.4万円 | |
| 法人税割 | 120万円 × 7% = 8.4万円 | |
| 均等割 | 2万円 + 5万円 = 7万円 | |
| 法人事業税 | 35.2万円 | |
| 年400万円以下 | 400万円 × 3.5% = 14万円 | |
| 年400万円超~800万円 | 400万円 × 5.3% = 21.2万円 | |
| 手取り(概算) | 約629万円 |
年収900万円の手取り
年収900万円のときの個人と法人の手取り(概算)は、以下の表のとおりです。
<個人>
| 税金・手取り | 計算式 |
|---|---|
| 所得税 | (900-120) ×23%-63.6=115.8万円 |
| 住民税 | (900-120) × 10%=78万円 |
| 個人事業税 | (900-290) × 5%=30.5万円 |
| 手取り(概算) | 約676万円 |
<法人>
| 税金・手取り | 計算式 | |
|---|---|---|
| 法人税 | 143.2万円 | |
| 年800万円以下 | 800万円 × 15% = 120万円 | |
| 年800万円超 | 100万円 × 23.2% = 23.2万円 | |
| 法人住民税 | 17.02万円 | |
| 法人税割 | 143.2万円 × 7% = 10.02万円 | |
| 均等割 | 2万円 + 5万円 = 7万円 | |
| 法人事業税 | 42.2万円 | |
| 年400万円以下 | 400万円 × 3.5% = 14万円 | |
| 年400万円超~800万円 | 400万円 × 5.3% = 21.2万円 | |
| 年800万円超 | 100万円 × 7% = 7万円 | |
| 手取り(概算) | 約698万円 |
年収1,000万円の手取り
年収1,000万円のときの個人と法人の手取り(概算)は、以下の表のとおりです。
<個人>
| 税金・手取り | 計算式 |
|---|---|
| 所得税 | (1,000-120) ×23%-63.6=138.8万円 |
| 住民税 | (1,000-120) × 10%=88万円 |
| 個人事業税 | (1,000-290) × 5%=35.5万円 |
| 手取り(概算) | 約738万円 |
<法人>
| 税金・手取り | 計算式 | |
|---|---|---|
| 法人税 | 166.4万円 | |
| 年800万円以下 | 800万円 × 15% = 120万円 | |
| 年800万円超 | 200万円 × 23.2% = 46.4万円 | |
| 法人住民税 | 18.65万円 | |
| 法人税割 | 166.4万円 × 7% = 11.65万円 | |
| 均等割 | 2万円 + 5万円 = 7万円 | |
| 法人事業税 | 49.2万円 | |
| 年400万円以下 | 400万円 × 3.5% = 14万円 | |
| 年400万円超~800万円 | 400万円 × 5.3% = 21.2万円 | |
| 年800万円超 | 200万円 × 7% = 14万円 | |
| 手取り(概算) | 約766万円 |
年収500万円で法人化しないで節税をする方法
法人化しないで節税をする方法について解説します。主な方法は、以下の4つです。
- 青色申告特別控除を使う
- 経費の見直し
- 所得控除の活用
- iDeCoや小規模企業共済への加入
確定申告をする際に青色申告を利用すれば、節税になります。また、iDeCoや小規模企業共済に加入することでも課税所得金額から掛け金を全額控除できるため、節税につながるでしょう。
そのほか、寄附金控除や医療費控除などの所得控除を活用する方法やそもそもの経費を見直す方法も有効です。
年収500万円で法人化する流れや手続き
法人化する流れについて解説します。法人化する流れは、以下のとおりです。
- 法人の形態を決める(株式会社・合同会社)
- 定款を作成し認証を受ける
- 法人登記を行う
- 銀行口座を開設する
- 個人事業の廃業手続き
- 法人設立届出書を提出する
会社設立後の手続き
会社設立後、税務署で法人税等に関する届出を行いましょう。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
そのほか、各事業所で行う作業には、以下のようなものが挙げられます。
詳しい会社設立の流れ・作り方については、以下の記事が参考になります。あわせて、チェックしてみてください。
法人化に役立つひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、法人化や法人登記に役立つひな形・テンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
法人化した経営者は手続きをどう感じた?
年収500万円前後で法人化を検討する際、多くの方が気になるのが実際の手続きの大変さです。法人化の流れは理解できても、実際にどの程度の負担があるのか、経験者の声から見ていきましょう。
3分の2の経営者が法人化手続きに困難を感じている
マネーフォワード クラウドで実施した調査によると、会社設立の準備や手続きについて「大変だった」または「少し大変だった」と感じた回答者が64.7%に上り、3分の2近くの人が何らかの困難を感じていたことが分かります。
特に設立間もない企業ほど「大変だった」と感じる割合が高く、設立1年以内の企業では75.9%、設立2~3年以内の企業では82.9%と最も高い数値を示しています。
年収500万円での法人化判断への示唆
この調査結果は、年収500万円で法人化を検討している方にとって重要な示唆を含んでいます。法人化には定款作成や登記申請などの複雑な手続きが必要で、多くの経営者が負担を感じている現実があります。
年収500万円では法人化による節税メリットが限定的であることを考慮すると、手続きの大変さと得られるメリットを慎重に比較検討することが重要です。課税所得が800万円に達するまでは、青色申告特別控除などの個人事業主としての節税対策を優先し、将来的な法人化に向けて準備を進めることが現実的な選択といえるでしょう。
出典:マネーフォワード クラウド、先輩起業家が一番困ったことは?【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)
年収500万の場合は法人化以外の手で節税する方法を考えよう
年収500万円では、法人化によるメリットを得られません。そのため、年収500万の場合は法人化以外の手で節税する方法を検討するようにしましょう。
法人化によってメリットが得られるのは、課税所得800万〜900万円あたりの方です。あくまで年収ではなく課税所得(利益)が目安となることは理解しておきましょう。
年収500万円で法人化しないで節税をする方法としては、青色申告特別控除の利用や経費の見直し、所得控除の活用などが挙げられます。本記事で紹介した内容を参考に、節税に努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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