- 作成日 : 2025年8月19日
サラリーマン(会社員)が今すぐできる節税方法は?得する控除や制度を解説
サラリーマン(会社員)は会社での年末調整だけでなく、自ら税制を理解し活用することで、税負担を減らすことが可能です。基本的な所得控除はもちろん、ふるさと納税やiDeCo、新NISA、副業の経費処理など、応用的な制度まで幅広く存在します。これらはすべて法律に基づいた正当な手段であり、工夫次第で手取りを増やすことも可能です。
本記事では、控除制度やそれ以外の節税方法をあわせて紹介します。
※本記事では、「サラリーマン」と検索された方を想定しているため、「サラリーマン」という表現を使用していますが、性別を限定する意図はございません。
サラリーマンができる控除を活用した節税方法
サラリーマンであっても、一定の税制を正しく活用することで所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。年末調整や確定申告を通じて適用される控除制度の中には、誰でも利用できるものが複数あります。ここでは、基本に立ち返り、サラリーマンが押さえておきたい節税方法を紹介します。
配偶者控除・扶養控除で課税所得を減らす
家族を扶養しているサラリーマンは、「配偶者控除」や「扶養控除」を活用することで所得税・住民税の軽減が可能です。
これらの控除は、年末調整時の「扶養控除等申告書」、「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」等で正しく家族の現況を申告することが大切です。
たとえば、配偶者の年間所得が48万円以下(給与収入なら103万円以下)であれば、納税者本人の所得から最大38万円の配偶者控除が適用されます。この「103万円の壁」は配偶者がパートなどで働く際に意識されやすい基準であり、超えると控除額が減額されます。
また、子どもや親を扶養している場合にも扶養控除が適用されます。16歳以上の子どもや親は1人あたり38万円、19歳から22歳の大学生などは1人あたり63万円の控除が受けられます。なお、これらの金額については令和7年11月までは上記のとおりですが、令和7年12月以降の年末調整や確定申告においては取り扱いが変わります。
下記を参考に、どのように変わるのかをよく確認しておくことが大切です。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
医療費控除やセルフメディケーション税制を申請する
年間の医療費が多額になった年には、「医療費控除」によって税負担を軽減することが可能です。世帯単位で支払った医療費が10万円(または総所得が200万円未満の場合は所得の5%)を超えた場合、その超過分を所得から控除できます。高額な手術費用や入院費用のほか、通院にかかる交通費なども対象となります。申請には確定申告が必要で、医療費控除の明細書の作成が求められます。
また、病院にかからず薬局でスイッチOTC医薬品(以前は処方薬だった市販薬)を購入している場合には、「セルフメディケーション税制」の利用も可能です。ただし、医療費控除との選択適用となっています。健康診断や予防接種を受けていれば、年間1万2千円を超えるOTC薬品購入額について、上限8万8千円まで控除対象となります。医療費控除との併用はできませんが、医療費が10万円未満のケースではこちらが有効な節税策となります。
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁、
No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】|国税庁
住宅ローン控除で長期的な減税効果を得る
マイホームを購入するために住宅ローンを利用した場合、『住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)』が適用されます。これは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%(上限あり)を所得税から直接控除できる制度です。たとえば年末のローン残高が3,000万円ある場合、最大で21万円がその年の所得税から控除されます。制度内容は多岐に亘り、かつ、入居年や住宅の性能によって異なるため、国税庁の最新情報を確認しましょう。
初年度は必ず確定申告が必要となり、2年目以降は勤務先の年末調整で手続き可能です。マイホームを取得した方は、この控除を忘れずに活用し、長期的な節税につなげましょう。
住宅ローン控除は「税額控除」であり、その額が直接税額から控除されるため、他の所得控除よりもより節税効果が高いものです。
生命保険料控除・地震保険料控除で保険料を節税対象にする
保険に加入しているサラリーマンは、毎年支払っている保険料を通じて節税ができます。「生命保険料控除」では、一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険の3つの区分ごとに、最大4万円まで(旧制度*では5万円まで)の控除が適用されます。つまり、3区分すべてで要件を満たせば最大12万円(旧制度では15万円)の所得控除となります。
*旧制度とは、2011年12月31日以前に締結した保険契約等に係る保険料のことを言います。
また、地震保険に加入している場合は、支払った保険料に応じて最大5万円まで控除される「地震保険料控除」もあります。これらの控除を受けるには、毎年秋ごろに保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」を勤務先に提出する必要があります。年末調整の際に「保険料控除申告書」とともに証明書を添付すれば、勤務先で自動的に控除処理が行われます。申告忘れや証明書の紛失がないよう、保険関係の書類は大切に保管しておきましょう。
なお、年末調整が電子化され、控除証明書もデータで取得する場合は、保険会社や各団体サイトから電子的控除証明書データを取得して自社の申請システムにアップロードします。
参考:No.1140 生命保険料控除|国税庁、No.1145 地震保険料控除|国税庁
サラリーマンができる節税の裏ワザ
基本的な控除制度に加えて、サラリーマンでも知っておくことで節税効果を高められる「裏ワザ的な制度」がいくつかあります。これらは法的に認められているものの、意外と知られていないものも多く、うまく活用すれば家計に大きな差が生まれます。ここでは、ふるさと納税、iDeCo、新NISA、副業や経費の扱いなど、実践的かつ合法的なテクニックを紹介します。
ふるさと納税は返礼品付き
ふるさと納税は、サラリーマンでも簡単に実践できます。
ふるさと納税を行っても本来の税負担額は変わらず、寄付額―2,000円の自己負担が翌年の住民税・所得税から控除される仕組みです。よって、税金の前払いと言えます。
しかし、地域の特産品等を返礼品として受け取ることで、「実質的に得をした」という実感が得られます。使い道が選べる寄付先への応援を通じて、地方活性化にも貢献できます。自分の興味ある自治体に「投資」しながら返礼品を楽しむことができる制度と言えます。
控除の対象となる上限額は年収や家族構成により異なりますが、多くのサラリーマンにとって無理のない範囲での寄付が可能です。手続きは簡単で、寄付先が5自治体以内であればワンストップ特例制度を利用することで確定申告も不要になります。
ふるさと納税の『ワンストップ特例制度』は、確定申告が不要な給与所得者向けの制度です。そのため、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などで確定申告を行う場合は、ワンストップ特例は利用できません。その代わり、確定申告の際に、医療費控除などと合わせてふるさと納税の寄付金控除も申告することで、両方の控除を適用できます。
2023年には寄付総額が1兆円を突破し、利用者も1,000万人を超えるなど、年々注目度が高まっています。利用率はまだ全納税者の2割未満であるため、活用していない方は控除上限額を確認したうえで検討するとよいでしょう。
iDeCo、企業型DCは掛金全額が所得控除に
個人型確定拠出年金、通称iDeCoは、節税しながら老後資金を準備できる制度です。
サラリーマンの場合には、会社が確定拠出年金制度を導入している場合には、企業型確定拠出年金(企業型DC)となります。会社が制度を導入していなくても、金融機関などに個人型確定拠出年金(iDeCo)を申し込めば制度に加入することができます。
iDeCoに積み立てた掛金は、その年の拠出額全額が所得控除の対象となるため、所得税と住民税を軽減する効果があります。たとえば年間24万円を積み立てた場合、課税所得が24万円減ることになり、年収に応じて数万円単位の税負担が軽くなります。
さらに、運用で得た利益もすべて非課税で再投資できるため、通常の金融商品に比べて効率的に資産形成が行えます。ただし、原則60歳まで引き出せないため、長期的な視点での活用が求められます。掛金の上限額は会社員かどうか、企業年金の有無によって変わりますが、上限の範囲で最大限活用することで、現在と将来の税金を同時に抑えることが可能です。
サラリーマンがiDeCoに加入している場合には、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送られてきますので、「給与所得者の保険料控除申告書」と一緒に年末調整の際に会社に提出します。
新NISAで運用益を非課税にする
NISA(少額投資非課税制度)は、投資によって得られる利益を非課税にできる制度です。2024年から制度が改正され「新NISA」がスタートし、非課税投資枠が大幅に拡充されました。新NISAでは年間360万円、通算で1,800万円までの投資元本に対して、運用益が非課税となります。株式や投資信託の配当や譲渡益には通常約20%の税金がかかりますが、NISA口座内であればそれらがゼロになります。
この制度は非課税であるため所得控除にはならないものの、投資期間にわたって税負担を大幅に減らす効果が期待できるため、節税の観点でも非常に有効です。普段から積立投資などを行っている方は、課税口座と比較して非課税口座を活用するだけで大きな差がつくことがあります。サラリーマンでも始めやすい制度のため、資産運用に興味がある方は検討してみましょう。
参考:NISAを知る|金融庁
特定支出控除で仕事関連の支出を経費扱いに
「サラリーマンは経費が使えない」といわれがちですが、一定の条件下であれば「特定支出控除」を利用することが可能です。この制度では、自費で支払った通勤費、研修費、資格取得費、書籍代、スーツ代、接待交際費などが給与所得控除額の1/2を超えた場合に、超過分を所得から控除できる仕組みです。(ただし、一般的なスーツ代や交際費が認められるハードルは高く、適用できるケースは限定的です。)
たとえば年収500万円の人の給与所得控除が150万円だとすると、その半分=75万円を超える業務関連費用がある場合、超過分が特定支出控除として申告できます。この制度の難点は適用条件が厳しく、会社の証明書類が必要な点ですが、該当する支出がある年には申請を検討する価値があります。手続きは煩雑でも、数万円〜十数万円の税金が戻る可能性もあるため、詳細を把握したうえで使える場面を見逃さないようにしましょう。
副業収入は経費・青色申告特別控除で節税可能
副業での所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。副業の種類にもよりますが、たとえばWebライター、EC販売、農業などの場合、必要経費としてパソコン代、インターネット通信費、取材や移動の交通費などが認められます。経費計上により、課税対象となる所得が圧縮されるため、結果として税負担が減ります。
さらに、個人事業として青色申告を選択し、複式簿記で記帳したうえで、確定申告をe-Taxで行うか電子帳簿保存の要件を満たせば、最大65万円の『青色申告特別控除』が適用可能です。e-Tax等を利用しない場合(紙で申告)、控除額は55万円となります。簡易な帳簿付けの場合は10万円の控除となります。
この控除は大きく、たとえば副業所得が80万円でも、控除によって15万円に圧縮され、税金がほとんどかからないというケースもあります。
また副業の所得が、継続性・反復性があり帳簿書類の保存があるなど「事業所得」として認められた場合、赤字が出た際にはその損失を給与所得と相殺する「損益通算」が可能です。これにより本業の所得税が還付されることがあります。ただし、「雑所得」に分類される副業で生じた赤字は、損益通算の対象外となるため注意が必要です。
ただし、副業については会社の就業規則の確認が必要です。副業禁止規定や申告義務がある場合には、会社に迷惑がかからないよう注意しましょう。
参考:No.2072 青色申告特別控除|国税庁、No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合|国税庁、No.1500 雑所得|国税庁
クレジットカード納税でポイントを節税代わりに
所得税や住民税、自動車税、固定資産税など、一部の税金はクレジットカードで支払い可能です。カード払いでは所定の決済手数料がかかることもありますが、それ以上にポイント還元率が高いカードを使用すれば、実質的な節税につながります。たとえば1%の還元率があるカードで10万円の税金を支払えば、1,000円分のポイントを獲得でき、手数料よりポイントが上回れば実質値引き効果となります。
ただし、納付先によって手数料率が異なるため、必ず還元率とのバランスを確認してください。また、カード納税は支払いの反映に時間がかかる場合もあるため、納付期限前に余裕を持って手続きを行うことが大切です。給与から天引きされる税金には適用できませんが、自分で納付する住民税や自動車税などには利用可能です。毎年確実に発生するこれらの支払いにカードを活用することで、コツコツとポイントが貯められます。
サラリーマンの節税対策の注意点
節税に取り組む際には、いくつか注意すべき点があります。制度を誤って利用したり、過剰に意識しすぎたりすると、本来の目的を見失いかねません。ここでは、正しく節税を行うための注意点を解説します。
必要以上の支出が逆効果になる可能性がある
節税のために控除対象となる支出を意識すること自体は良いことですが、節税額を得ることが目的化し、本来不要な出費までしてしまうと本末転倒になります。たとえば、所得控除を得るために無理に高額な保険商品に加入したり、実際には必要ない医療費や経費を発生させたりする行動は、節税というよりも浪費に近いものです。
控除額よりも支出額が大きければ、節税の恩恵よりも出費の方が上回り、結果的に手元に残るお金が減ってしまうこともあります。節税策は、支出を抑えながら税金を減らすための手段です。メリットとコストを冷静に比較し、本当に必要な範囲で活用する姿勢が大切です。
申告や提出の期限を守らないと効果が得られない
多くの節税制度は、年末調整や確定申告といった手続きを通じて初めて適用されます。そのため、申告の期限を逃すと控除の権利そのものを失ってしまう場合があります。たとえば、生命保険料控除を受けるには、会社に控除証明書を年末調整の締切までに提出する必要があります。
確定申告が必要な医療費控除や住宅ローン控除の初年度申請も、原則として毎年3月15日までに手続きを済ませなければなりません。もし申告を忘れても、還付申告であれば5年以内であれば対応が可能です。ただし、5年を過ぎると権利自体が消滅します。カレンダーやリマインダーなどを使い、手続きのタイミングをしっかり管理しておくことが大切です。
勤務先の就業規則や法律を守って節税する
副業や経費計上などの節税テクニックを実践する際には、税法上の合法性だけでなく、勤務先の就業規則や社会常識にも配慮が必要です。たとえば、副業による経費計上を検討している場合でも、そもそも会社が副業を禁止しているケースや、事前に届け出が必要なケースがあります。そうしたルールを無視して節税に走ると、職場での信頼を失うおそれがあります。
また、実際に使っていないものを経費として申告したり、条件に合わない控除を無理に適用したりすることは、税務調査の対象になる可能性もあります。節税は、あくまで「合法かつ適切な方法」で行うことが前提です。判断が難しい場面では、税理士などの専門家に相談し、ルールに基づいた対策をとりましょう。
節税方法を使い分けて、賢く実践しよう
サラリーマンの節税対策には、年末調整や確定申告を通じて活用できる基本的な控除に加え、ふるさと納税やiDeCo、新NISAなどの制度も豊富に用意されています。これらはすべて合法的な仕組みであり、正しく使えば税負担を減らし、手取りを増やすことが可能です。節税を成功させるためには、自分に合った制度を選び、制度の内容と申告時期をしっかり把握したうえで、無理のない範囲で継続的に取り入れていく姿勢が大切です。
また、忘れてはならないのが「税制改正」の確認です。令和7年税制改正では「給与所得控除額」や「基礎控除」の見直しもあったので、よく確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
屋号の決め方のポイント
店をもつ、となったときに最初に考えるのは、その店の名前「屋号」です。店の「顔」として見られるものにもなりますので、どんな名前にするのか、よく考えてよりよい名前をつけたいものです。ただし、好きな名前をつければよい、というものでもありません。 …
詳しくみる登記すべき事項とは?株式会社設立時の書き方や記入例、注意点を解説
事業を興すときに、将来的な発展を見据えて株式会社にしたいが、登記のための手続きなどが面倒なのでは、と心配な方もいるでしょう。 この記事では株式会社設立の不可欠な「登記」につき、登記しなければならない事項や申請書の書き方およびテンプレート、登…
詳しくみる有限会社における法人登記とは?確認方法や変更に必要な手続きを解説
有限会社における法人登記は、会社の重要事項を法務局に届け出て公示し、取引の安全と円滑化を図るための制度です。 本記事では、有限会社の法人登記に関する基本的な知識から、確認方法、変更手続きまでを詳しく解説します。 有限会社における法人登記とは…
詳しくみる会社設立代行は自分で手続きするより安い?0円のサービスについても解説!
初めて会社設立を行うとなると、「必要最低限決めておくことに不足はないか」「定款に問題はないか」「会社設立の手順は合っているか」など、不安に思う点が多々出てくるかと思います。会社設立の不安や手間を考えたら、創業者が自ら手続きを行うのではなく、…
詳しくみる合同会社と株式会社の違い【簡単に】税金や経費の違いはある?
「会社」といえば「株式会社」が一般的なイメージですが、いざ自分で会社設立となった場合、調べてみると「合同会社」という選択肢があることに初めて気づく方もいるのではないでしょうか。 この記事では、株式会社と合同会社の違い、それぞれのメリット・デ…
詳しくみる渋谷区で会社設立をお得に依頼する方法!書類準備をラクにするには?
渋谷区での会社設立をはじめ、日本で株式会社や合同会社を設立する際は、主に【①無料の会社設立サービスを利用して自分で進める、②専門家である税理士や司法書士に依頼する、または③法務局のサイトを参照しながら自分で手続きを行う】という3つの主な方法…
詳しくみる