- 作成日 : 2025年10月21日
個人事業主から法人化に必要な書類は?全リストと手続きの流れを解説
個人事業主から法人化を考えたとき、多くの方が書類準備の複雑さに戸惑うのではないでしょうか。具体的にどんな書類が必要で、どの順番で、どこへ提出すればよいのか、わかりにくい点も多いでしょう。
この記事では、法人化に必要な書類の全リストから、株式会社・合同会社それぞれの具体的な入手方法、書き方のポイント、提出までの流れをチェックリスト形式でわかりやすく解説します。一人でも迷わず法人化の手続きを進められるようになれると幸いです。
目次
法人化に必要な書類は全部で何種類ある?
法人化の手続きは、大きく分けて「法務局への登記申請」と「設立後の公的機関への届出」の2段階です。それぞれの段階で必要となる書類を一覧で確認し、まずは全体像をはっきりさせましょう。とくに登記申請の書類は、必ず提出するものと、会社の設計(機関設計)によって必要になるものが存在します。
会社設立(登記申請)で法務局へ提出する書類リスト
会社を設立するための登記申請では、設立する会社形態に応じた書類一式を法務局へ提出します。ここでは株式会社と合同会社、それぞれについて「必ず用意する書類」と「必要に応じて用意する書類」に分けて解説します。
株式会社(KK)設立:必ず用意する書類
株式会社は、株式を発行して資金調達を行い、出資者である株主と経営を行う取締役が分離されているのが特徴です。そのため、社会的な信用度が高く、大規模な事業展開や上場を目指す場合に適しています。その分、設立には厳格な手続きが求められます。
書類名 | 概要 |
---|---|
設立登記申請書 | 申請の表紙となる書類。会社の基本情報を記載。 |
登録免許税の納付(紙=収入印紙/オンライン=電子納付等) | 株式会社は「資本金×0.7%」の最低15万円。紙申請は収入印紙を貼付台紙に貼付、オンライン申請は電子納付等で支払います。 |
定款 | 会社の基本ルール。株式会社は公証役場で認証が必要(電子定款なら印紙4万円不要)。 |
取締役(および代表取締役)の就任承諾書 | 就任の意思を示す書類。代表取締役については実印押印・印鑑証明書の添付が必要になるのが一般的です。 |
印鑑証明書 | 代表取締役等、実印押印を要する書類の提出者分を添付。 |
資本金の払込みを証明する書面 | 通帳コピー等を合綴して作成。定款日以降の入金であることがポイント。 |
印鑑届書(代表者印の登録) | 会社の実印を法務局に登録(登録すると印鑑証明書が取得可能)。 |
「登記すべき事項」を保存した電磁的記録(CD-R等) | 書面申請の場合に添付。オンライン申請ではデータ送信で代替します。 |
株式会社(KK)設立:必要に応じて用意する書類
会社の機関設計や定款の記載内容によって、追加で必要になる可能性がある書類です。
書類名 | 概要 |
---|---|
発起人の決定書 | 定款で本店所在地を番地まで定めていない場合に必要。 |
代表取締役の就任承諾書 | 取締役が複数名おり、代表取締役を選定した場合に必要。 |
監査役の就任承諾書 | 会社に監査役を設置する場合に必要。 |
合同会社(GK)設立:必ず用意する書類
合同会社は、出資者(社員)=経営者となるのが大きな特徴です。そのため、意思決定が迅速で、定款によって利益配分などを自由に決められるなど、経営の自由度が高いメリットがあります。設立費用も株式会社より安く抑えられるため、小規模な事業や個人事業主からの法人成り(法人化)に適した形態といえるでしょう。一方で、株式会社に比べると知名度や社会的信用度がやや低いという側面もあります。
書類名 | 概要 |
---|---|
合同会社設立登記申請書 | 申請の表紙となる書類。 |
登録免許税の納付(紙=収入印紙/オンライン=電子納付等) | 合同会社は最低6万円。紙は収入印紙/オンラインは電子納付等。 |
定款 | 会社の基本ルールを定めた書類。公証役場の認証は不要。 |
代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証明する書面 | 定款で詳細を定めていない場合に使用。 |
代表社員の就任承諾書 | 代表社員の就任の意思を示す書類(実印押印・印鑑証明書が求められるのが一般的)。 |
印鑑証明書 | 代表社員となる人の個人の印鑑証明書。 |
払込証明書 | 資本金の入金を証明。発起人名義ごとに入金履歴がわかるように。 |
資本金の額の計上に関する代表社員の証明書 | 資本金の計上について代表社員が証明する書類。 |
印鑑届書(代表者印の登録) | 会社の実印を法務局に登録(登録すると印鑑証明書が取得可能)。 |
合同会社(GK)設立:必要に応じて用意する書類
書類名 | 概要 |
---|---|
委任状 | 司法書士などの代理人に登記申請を依頼する場合に必要。 |
会社設立後に税務署などへ提出する書類リスト
法務局での登記完了後、事業運営のために公的機関へ届け出る書類です。それぞれ提出先や目的が異なります。
提出書類名 | 主な提出先 | 概要 |
---|---|---|
法人設立届出書 | 税務署、都道府県、市町村 | 会社設立を知らせる基本届。税務署は設立等の日後2か月以内。自治体は各条例に従う。 |
青色申告の承認申請書 | 税務署 | 青色申告を選ぶ場合。設立日から3か月経過日と最初の事業年度末日のいずれか早い日の前日まで。 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 役員報酬・給与の源泉徴収開始。開設の日から1か月以内。 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 常時使用する従業員が10人未満の事業所は、承認後給与等の源泉所得税を年2回(1月・7月)にまとめて納付可能。 |
健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 年金事務所 | 法人は代表者のみでも原則加入(強制適用)。設立後速やかに。 |
労働保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 従業員を雇用したら提出。成立の事実があった日から10日以内(原則)。 |
雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 従業員の雇用保険加入手続。設置後10日以内(原則)。 |
法人化の書類はどの順番で準備すればいい?
法人化の書類準備は、会社設立の流れに沿って、適切なタイミングで書類を準備することで、スムーズに手続きを進めることができます。ここでは会社設立の5つのステップにそって、書類準備の順番を解説します。この流れを理解することが、法人成りへの第一歩です。
STEP1:会社の基本事項を決める
まず、設立する会社の骨格となる基本事項を決定します。ここで決めた内容は、後の定款作成や登記申請の基礎となるため、慎重に検討しましょう。
決めるべき主な事項は以下のとおりです。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 発起人(株式会社)または社員(合同会社)の構成
- 役員の構成
- 事業年度
とくに商号は、登記実務上、同一本店所在地に同一商号は原則受理されません。法務局のオンライン検索等で類似商号の調査を事前に行いましょう。事業目的は、将来見込む事業も視野に入れて記載しておくのがおすすめです。
STEP2:定款を作成し認証を受ける
会社の基本事項が決まったら、それらを基に会社のルールブックである「定款」を作成します。定款は法人化における最重要書類の一つです。
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に持ち込み、認証を受ける必要があります。この認証手続きには手数料がかかります。
株式会社は、作成した定款を公証役場で認証してもらいます。定款認証手数料は資本金等の額で段階制(100万円未満=3万円/100万~300万円未満=4万円/300万以上=5万円)になります。また、一定の小規模要件を満たす場合は1万5千円に軽減されます。電子定款では印紙代4万円が不要になります。
一方、合同会社の場合は定款の作成は必要ですが、公証役場での認証は不要です。この点が、合同会社の設立費用が安くすむ理由の一つです。
STEP3:資本金を払い込む
定款の作成(株式会社の場合は認証後)が完了したら、資本金を払い込みます。この段階ではまだ法人口座は開設できないため、発起人(株式会社)または社員(合同会社)の代表者個人の銀行口座に、定められた資本金を振り込みます。
このとき、誰がいくら振り込んだかが通帳に記録されるように、各出資者の名前で振り込むのがポイントです。全員分の振込が完了したら、その通帳のコピーなどを基に「資本金の払込みを証明する書面」を作成します。
STEP4:登記書類を作成する
資本金の払込みまで終えたら、法務局へ提出する登記申請書類一式を作成します。前述した書類リスト(設立登記申請書、取締役の就任承諾書 等)を基に、法務局ウェブサイトの雛形を参考に整えていきます。
書類の作成にあたっては、日付の整合性に注意が必要です。たとえば、資本金の払込み日は、定款作成日以降でなければなりません。一つひとつの書類を丁寧に作成し、全体を揃えましょう。
STEP5:法務局へ登記申請を行う
すべての書類が整ったら、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記の申請を行います。申請方法は、法務局の窓口へ持参するほか、郵送やオンラインでの申請も可能です。
申請日が会社の設立日となります。書類に不備がなければ、申請から約1週間から10日ほどで登記が完了し、会社の履歴事項全部証明書や印鑑証明書が取得できるようになります。
法人化の各書類はどこで入手しどう書く?
法人化で中心となる、法務局へ提出する登記書類の入手方法と書き方のポイントを、書類ごとに解説します。とくに間違いやすい点や注意点をふまえて準備を進めましょう。多くの書類は法務局ウェブサイトの様式(ひな形)をダウンロード可能です。
設立登記申請書
会社設立を申請する際の表紙です。商号/本店所在地/登記すべき事項/課税標準金額/登録免許税額/添付書類一覧などを記載します。登録免許税は、株式会社:最低15万円、合同会社:最低6万円。なお、納付方法につき、書面申請は「収入印紙を貼付台紙に貼付」、オンライン申請は電子納付が利用できます。
定款
会社の根本規則です。事業目的、商号、本店所在地といった絶対的記載事項のほか、役員任期・公告方法など相対的記載事項、株主総会の招集時期など任意的記載事項を記載します。株式会社の場合は公証役場で認証を受ける必要がありますが、電子定款を利用すれば紙原本に課税される印紙税4万円が不要になります。
資本金の払込みを証明する書面
資本金が正しく払い込まれたことを証明する書類です。表紙として払込証明書を作成し、以下の通帳コピー等を綴じます。
- 銀行名、支店名、口座番号、口座名義人がわかるページ
- 資本金の入金履歴が記帳されているページ
各ページをコピーし、順番に綴じて製本します。
資本金の払込みは、定款作成(株式会社は認証)日以後であることが重要です。なお、残高証明書等で代替可のケースもあります。現物出資がある場合は財産引継書等の別添が必要です。
取締役の就任承諾書
設立時の取締役が、その役職に就くことを承諾した意思を示す書類です。取締役全員分が必要です。本人が署名(または記名押印)します。合同会社は代表社員の就任承諾書等、形態に応じた書面を用意します。
印鑑証明書
就任承諾書に押印した印鑑が本人のものであることを証明するために、取締役全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)を添付します。市区町村役場で取得できます。合同会社の場合は、代表社員となる人の印鑑証明書が必要です。
印鑑届書(会社の実印登録)
設立する会社の実印(代表者印)を法務局に登録するための書類です。あらかじめ1.0cm以上3.0cm以内の正方形に収まる会社代表印を作成しておき、この届書に押印して提出します。この届出により、会社の印鑑証明書が発行できるようになります。
法人化の登記後に提出する書類とは?
法務局での登記が完了したら、法人化の手続きは終わりではありません。税務署や年金事務所など、事業を運営するために必要な届出があります。提出先ごとに必要な書類を確認しておきましょう。これらの手続きは、会社設立後、すみやかに行う必要があります。
税務署への届出書類
会社の納税地を管轄する税務署へ、以下の書類を提出します。
- 法人設立届出書:会社設立後2ヶ月以内に提出します。
- 青色申告の承認申請書:設立日から3ヶ月以内または最初の事業年度終了日のいずれか早い日までに提出が必要です。
- 給与支払事務所等の開設届出書:役員報酬や給与の源泉徴収を行う場合に提出します。開設から1ヶ月以内に提出します。
都道府県税事務所・市町村役場への届出書類
本店所在地のある都道府県税事務所や市町村役場にも法人設立届出書の提出が必要です。提出期限は自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。定款のコピーや履歴事項全部証明書の添付を求められることがあります。
年金事務所への届出書類
法人は原則として健康保険・厚生年金の強制適用事業所です。報酬を受ける役員(社長が1人のみでも)や従業員がいる場合は、社会保険への加入が必要になります。手続きは次のとおりです。
健康保険・厚生年金保険 新規適用届は、会社が適用事業所になった日から原則5日以内に、管轄の年金事務所へ提出します(保険者が協会けんぽの場合)。健康保険組合へ加入する場合は、組合の案内に従って手続きします。
被保険者資格取得届(健康保険・厚生年金)は、報酬を受ける役員・従業員ごとに、資格取得日から原則5日以内に提出します。被扶養者(異動)届は、被扶養配偶者・子などがいる場合に併せて提出します。
労働基準監督署・ハローワークへの届出書類
労働者を一人でも雇用した時点で、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きが必要です。提出先と期限は次のとおりです。
- 労災保険(労働基準監督署)
事業に労働者を使用し始めた日(保険関係成立日)の翌日から10日以内に、「労働保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を提出します。従業員がいない場合でも、事業主・役員等は条件により特別加入が可能です。 - 雇用保険(ハローワーク)
事業所として適用を受けるため、「雇用保険適用事業所設置届」を設置日の翌日から10日以内に提出します。 併せて、要件を満たす従業員ごとに「雇用保険 被保険者資格取得届」を雇入れ日の翌日から10日以内に提出します。
法人化の書類準備の費用は?
書類の準備には、登録免許税や定款の認証手数料といった法定費用がかかります。また、書類の不備で手続きが遅れるケースも少なくありません。ここでは、書類準備にかかる費用の内訳と、初心者が陥りがちな失敗例を紹介します。
会社設立形態別の費用一覧
法人化にかかる法定費用は、株式会社と合同会社で異なります。
費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款認証手数料 | 3万/4万/5万円(資本金等の額で段階制) ※一定の小規模要件で1.5万円に軽減あり | 0円 |
定款印紙代 | 4万円(電子定款なら0円) | 4万円(電子定款なら0円) |
登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
合計(紙定款) | 約24万円 | 約10万円 |
合計(電子定款) | 約20万円 | 約6万円 |
このほかに、会社の実印作成費用や、司法書士などの専門家に依頼する場合はその報酬が別途かかります。
書類準備で時間を無駄にしないための注意点
書類準備でよくある失敗は、ケアレスミスによるものが多いです。
- 日付の矛盾:定款作成日より前に資本金を払い込んでしまうなど。
- 印鑑の押し間違い:実印を押すべき箇所に認印を押してしまうなど。
- 類似商号の未調査:登記申請の段階で類似商号があり、商号変更を余儀なくされる。
これらのミスは、申請のやり直しにつながり、時間と労力を大きく消費します。各ステップで日付や押印の種類を確認し、慎重に作業を進めることが大切です。
オンライン申請(電子定款)で費用を抑える方法
費用を抑える方法として、電子定款の活用があります。紙の定款では必要な4万円の収入印紙が、電子定款では不要になります。また、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、一部の手続きをオンラインで完結させることもできます。ただし、ICカードリーダライタの準備などが必要なため、自分で行うか専門家に依頼するかは、手間とコストを比較して検討するとよいでしょう。
個人事業主との手続きの大きな違いは?
個人事業主から法人化する場合、手続きは単なる「届出」から「登記」に変わります。法人成り特有のポイントを理解しておきましょう。
1. 「届出」ではなく「登記」が必要になる
個人事業主は、税務署に開業届を提出すれば原則として事業を開始できます(ただし、建設業・飲食業・古物商などの許認可業種は事前許可が必須)。一方、法人化では法務局に設立登記を申請し、登記が完了した時点で会社が成立します。この登記手続きのために、これまで解説してきた多くの公式書類が必要になるわけです。
2. 会社のルールブック「定款」の作成が必須
個人事業主には、事業のルールを定めた公的な書類はありません。 法人化すると、会社の憲法ともいえる定款(ていかん)の作成が必須です。事業目的、商号(会社名)、役員の構成など、会社の根本的なルールを定め、そのルールに従って運営していくことになります。個人事業主の時よりも、事業運営の形式が厳格になるといえるでしょう。
3. 個人と法人のお財布を分ける「資本金」の証明
法人では、個人と会社の資金を明確に区分します。発起設立の場合、定款作成(株式会社は認証)日以後に発起人名義の個人口座へ資本金を振込し、通帳コピー等で「払込みを証明する書面」を作成します。このプロセスで、誰がいくら拠出したかが第三者にも明確になります。
4. 「会社の実印」の登録
法人は、会社としての実印である代表者印を作成し、法務局に印鑑届書を提出して登録します。これ以降、会社の重要な契約などにはこの代表者印が使われます。個人としての立場と、法人の代表としての立場が、印鑑によっても明確に区別されるのです。ただし、電子契約の普及により、押印を要しない取引も増えています。
法人化に伴う個人事業の廃業手続きと確定申告
法人化は、一般に個人事業主としての活動を終了して会社形態へ移行するケースを指しますが、個人事業を並行して継続することも可能です。ここでは「個人事業を廃業して法人へ移る」前提で、必要な手続きと申告の流れを整理します。これらは法人設立後の諸手続きと並行して進める重要な作業です。
個人事業の廃業に関する届出
法人成りによって個人事業を廃止した場合、関連する公的機関へ廃業の届出が必要です。提出を忘れると、事業継続とみなされて不要な税負担が生じることもあるため注意しましょう。
提出書類名 | 提出先 | 提出期限の目安 |
---|---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 廃業から1ヶ月以内 |
所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 税務署 | 廃業した年の翌年3月15日まで |
事業廃止届出書(消費税) | 税務署 | 速やかに(課税事業者だった場合) |
給与支払事務所等の廃止届出書 | 税務署 | 速やかに(源泉徴収を行っていた場合) |
事業廃止(休止)届 | 都道府県税事務所・市町村 | 自治体による(廃業後10日以内など) |
とくに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」は、青色申告をしていた場合に必ず提出が必要です。また、消費税の課税事業者であった場合は「事業廃止届出書」を忘れずに提出しましょう。
併せて、国民健康保険・国民年金の資格喪失/切替手続き(法人での健康保険・厚生年金)も忘れずにしましょう。必要書類や期限は自治体・年金事務所で確認してください。
法人化した年の確定申告
年の途中で法人成りした場合、その年に行った個人事業主としての活動分について、翌年に確定申告を行う必要があります。
確定申告の対象となるのは、その年の1月1日から法人を設立した日の前日までに得た事業所得です。個人事業主として活動していた期間の売上と経費を正確に計算し、所得を算出して申告します。たとえば9月1日に法人を設立した場合、1月1日から8月31日までの事業所得が申告対象です。
個人事業主として使用していた資産を法人に引き継ぐ場合、その年の減価償却費は、個人事業主として事業を行っていた月数分のみを月割りで計上します。また、社会保険料控除・生命保険料控除は、個人で負担・支払った分を個人の確定申告で控除します。設立後は会社の給与からの天引き分につき、法人側で年末調整を行うのが原則です。
法人化の書類準備は流れを理解すれば自分で進められる
法人化に必要な書類について、登記申請から設立後の届出まで網羅的に解説しました。書類の種類が多く複雑に感じるかもしれませんが、手続き全体の流れと、各ステップでやるべきことを理解すれば、一つひとつの作業は決して難しくありません。株式会社と合同会社の違いをふまえ、自身の事業計画に合った形態を選びましょう。
本記事のチェックリストや手順を参考に、まずは会社の基本事項を決めることから始めてみてはいかがでしょうか。書類の準備を計画的に進めることが、スムーズな法人化につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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