• 作成日 : 2025年8月29日

家族従業者とは?範囲や事業専従者との違い、給与・社会保険などの取り扱いを解説

個人事業主や会社の経営者にとって、家族のサポートは事業を推進する上で大きな力となります。しかし、家族の給与の扱いや社会保険の手続きは一般の従業員と異なる点が多く、複雑に感じるかもしれません。

この記事では、家族従業者の定義から、事業専従者との違い、給与の取り扱い、社会保険の加入条件、具体的な手続きに至るまでわかりやすく解説します。

家族従業者とは

家族従業者とは、個人事業主や法人の代表者と「生計を同一にする」配偶者や親族で、その事業に従事している人を指します。

単に「家族が事業を手伝っている」というだけでなく、税法や社会保険の制度上、以下の要件を満たす必要があります。

家族従業者の範囲

「生計を同一にする」とは、必ずしも同居していることを意味しません。同じ財布で生活している状態を指し、例えば、勤務や就学の都合で別居していても、常に生活費や学資金、療養費などの送金が行われている場合は「生計を同一にする」と認められます。

また親族とは、6親等以内の血族および3親等以内の姻族を指します。したがって、配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹などが該当します。

別居している家族であっても、生計を同一にしていれば家族従業者の範囲に含まれます。例えば、単身赴任中の事業主が実家にいる配偶者に経理業務を依頼し、生活費を送金しているようなケースです。この場合、配偶者は生計を同一にする親族として扱われ、青色事業専従者給与の支払いや事業専従者控除の対象となります。重要なのは同居の有無ではなく、生活の財源が共通であるという実態です。

家族従業者と事業専従者の違い

家族従業者と似た言葉に事業専従者があります。この二つは、特に個人事業主の税金の計算において、明確に使い分けられます。

  • 家族従業者
    事業を手伝う「生計を同一にする親族」全般を指す広い言葉です。
  • 事業専従者
    個人事業主の事業に専ら従事する家族従業者のことを指す税法上の用語です。確定申告の方法(青色申告白色申告か)によって、さらに呼び方や扱いが変わります。
申告方法家族への給与・控除の扱い呼ばれ方
青色申告届出をすれば、支払った給与を全額経費にできる青色事業専従者
白色申告給与は経費にできないが、一定額の所得控除が受けられる事業専従者


家族従業者の給与と税金の関係

家族に給与を支払うことは、生活を支えるだけでなく、節税にもつながる可能性があります。

家族従業者への給与は経費にできる?

家族従業者への給与を経費として計上できるかどうかは、個人事業主の確定申告の方法に依存します。

  • 青色申告の場合
    「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に税務署へ提出し、その届出書に記載した金額の範囲内で、仕事内容に見合った適正な給与であれば全額を経費にできます。
  • 白色申告の場合
    給与を経費として計上することはできません。その代わり、事業専従者の続柄に応じて一定額を控除できる「事業専従者控除」が適用されます。控除額は、配偶者で最高86万円、配偶者以外の親族で最高50万円です。

家族従業者の社会保険・労働保険

家族を従業員として迎える際、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)への加入は非常に重要なポイントです。

保険の種類個人事業主の場合法人の場合
雇用保険原則、加入できない。但し他の従業員と同じ労働条件等の扱いの要件を満たす場合は可原則、加入できない。但し他の従業員と同じ労働条件等の扱いの要件を満たす場合は可
労災保険原則、加入できない。但し他の従業員と同じ労働条件等の扱いの要件を満たす場合は可原則、加入できない。但し他の従業員と同じ労働条件等の扱いの要件を満たす場合は可
健康保険・

厚生年金保険

国民健康保険・国民年金に加入(強制適用事業所を除く)加入

雇用保険

個人、法人問わず家族従業者は、原則として雇用保険の被保険者になりません。これは、事業主と労働者の関係が曖昧で、利益を共にする関係と見なされるためです。

ただし、「指揮命令系統が明確であること」「他の従業員と同じ勤務時間・賃金などの就労実態があること」「役員等の経営的立場ではないこと」などの条件を満たす場合は加入できます。

労災保険

労災保険は本来、労働者を保護するための制度のため、家族従業者は対象外です。ただし、雇用保険と同様に、指揮命令系統が明確であること」「他の従業員と同じ勤務時間・賃金などの就労実態があること」「役員等の経営的立場ではないこと」などの条件を満たす場合は加入できます。

健康保険・厚生年金保険

法人の場合、健康保険、厚生年金保険の対象です。なお、パートタイマーやアルバイトであった場合でも、1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上かつ、1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上の条件を満たす場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する義務があります。不明な点は年金事務所や社会保険労務士に確認しましょう。

家族を従業員にする手続き

実際に家族を従業員として迎えるための具体的な手続きを、個人事業主と法人に分けて解説します。

個人事業主の場合

青色申告で家族に給与を支払い、経費にするためには以下の手続きが必要です。

  1. 青色事業専従者給与に関する届出書を提出
    所轄の税務署へ、定められた期限内に提出します。
  2. 源泉徴収年末調整
    給与の支払いを始めたら、事業主は源泉徴収義務者となります。毎月の給与から所得税を天引き(源泉徴収)し、年末には年末調整を行う必要があります。

法人の場合

法人が家族を雇用する手続きは、基本的に一般の従業員を雇用する場合と同じです。

  1. 労働条件の明示と雇用契約の締結
    家族従業者であっても、労働基準法に基づき労働条件(労働時間、賃金、業務内容、休日など)を文書で明示し、雇用契約書により締結します。
  2. 社会保険への加入手続き
    健康保険および厚生年金保険については、所轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。
  3. 雇用保険の手続き
    所轄のハローワーク(雇用保険)に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
  4. 給与支払・源泉徴収
    毎月の給与支払い時に家族従業員分の源泉所得税を天引きします。

家族を役員として迎える場合は、定款変更や役員登記、役員報酬の決定(株主総会決議)なども必要になります。

家族従業者の保育園利用に関する注意点

子育て中の親が家族従業者として働く場合、子どもの保育園入園のために自治体へ「就労証明書」を提出する必要があります。

事業主である配偶者や親が証明書を発行しますが、自治体によっては、客観的な就労実態を示すために、勤怠記録などの書類提出を求められる場合があります。無給であったり勤務実態が曖昧だったりすると、入園の優先順位に影響が出る可能性もあるため、事前に自治体の窓口に確認することが重要です。

家族従業員を正しく理解して事業に活かそう

家族の協力を得ることは、事業の成長にとって何よりの支えとなります。その力を最大限に引き出すためには、関連する税務や社会保険の制度を正しく理解し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。

税務上のメリットを確実に享受し、社会保険、労働保険上の取扱いをしっかりと理解することで、経営者は安心して事業に集中できる環境を整えられます。本記事を参考に、ご自身の事業形態に合った最適な形を検討し、不明な点があれば税理士や社会保険労務士といった専門家にも相談してみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事