• 更新日 : 2025年7月31日

起業のやり方は?手順や必要な手続き、まず何から始めるべきかを解説!

起業するには、どのような手順で進めるのでしょうか?この記事では、起業したいと考える方に開業までの流れをわかりやすく解説しています。

まわりを見渡せば、経営ノウハウの無料相談や、創業支援のサービス、マーケティングサービスなどが溢れていますが、まずは全体の流れを押さえておきましょう。

目次

そもそも起業とは

起業とは、一般に自分でビジネスを始めることを指しますが、そのためには「個人事業主」となるか、「法人を設立」するか選択することになります。ちなみに英語ではいくつか表現の仕方がありますが、代表的なものに「starting a business」があります。

また、起業家とは新しいビジネスや事業を自ら企画し、立ち上げ、リスクを負いながら経営を行う者を指します。起業によって社会に「新たな価値やサービス」を提供することを目指す人です。

したがって、新たに事業を始め個人事業主となること、及び、新たに法人を設立し代表者となることが起業することとなります。

一方、「フリーランスとして独立する」という表現もよく目にします。厚生労働省のガイドラインによると、フリーランスの定義は次のとおりです。

実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者
(引用:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ|厚生労働省

また、2024年11月にスタートしたフリーランス法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の説明では、フリーランスを「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」としています。

引用:2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイト

ここでいう自営業主は個人事業主であり、一人社長は法人の代表者です。よって、フリーランスは個人事業主も法人の代表者も含まれる「働き方」を示す言葉と言えます。

なお、個人事業主とフリーランスとの違いについての詳細は、以下の記事をご参照ください。

起業の仕方

起業の方法には、個人事業主になる方法と法人を設立する方法があります。

メリットデメリット
個人事業主
    • 手続きが比較的簡便
    • 税金の計算が法人よりも簡便
  • 法人に比べて信用が低く、
    取引に支障が出ることがある
法人設立
  • 社会的信用が高い
  • 個人よりも多くの節税対策が可能
  • 設立の手続きが煩雑
  • 経理・税務は専門知識が必要

個人事業主として起業するメリット・デメリット

起業方法に個人事業主を選ぶメリットとして、手続きは法人に比べると簡便なことが挙げられます。個人事業主として起業するためには税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出すれば、最低限の設立手続きは完了です。

もうひとつのメリットとして、税金の計算が法人より簡便なことが挙げられます。個人事業主の税金は所得税の確定申告にて納めることとなりますが、確定申告の方法のひとつである青色申告は条件を満たすことで、最高65万円の青色申告特別控除が受けられるためぜひ狙いたいところです。

ただし、この特別控除を受けるためには原則として複式簿記で記帳し、損益計算書だけでなく貸借対照表の添付が必要となります。「マネーフォワード クラウド確定申告」のような金融機関との連携機能がついたクラウド型確定申告ソフトを使用すれば確定申告もスムーズに行えるでしょう。

個人事業主のデメリットは社会的信用が法人に比べると低いことが挙げられます。クライアントによっては法人のみを取引対象とするところもあるため注意が必要です。

法人設立するメリット・デメリット

法人は一定の社会的信用が得られる点が大きなメリットです。社会的信用に起因するクライアントとの取引の垣根が低くなり、銀行からの借入審査も個人事業主に比べてスムーズに進むケースが増えます。

また、金銭的なメリットとして赤字を最長10年間繰り越せる点があります。個人事業主の場合は最長3年間の繰り越しですから、法人のほうが節税の面で考えると圧倒的に有利だと言えます。

法人設立にはデメリットもあり、ひとつは設立手続きがとても煩雑なことが挙げられます。
税務署への届出書類だけでもさまざまな書類が考えられます。

    • 法人設立届出書
    • 青色申告承認申請書(任意)
    • 源泉所得税関係の届出書等(従業員を雇う場合)
    • 消費税関係の届出書(設立時から課税事業者やインボイス事業者となる場合)

なお法人設立届出書には定款の写しや登記事項証明書などの添付書類が求められ、必要に応じて各種届出書の提出をしなければなりません。手続きは個人事業主に比べると煩雑だと言えるでしょう。

もうひとつのデメリットは、法人は税務が非常に煩雑なことです。個人の確定申告とは異なり、法人の税務や経理は大変複雑な業務となります。本業と並行してこれらの業務を行うことは困難だと考えるのが自然でしょう。

実際のところ起業方法として法人設立を選ぶ方の多くはすべての手続きや税務を自力で行っているわけではなく、起業を支援するサービスや司法書士や税理士、行政書士などの専門家を利用しています。これから法人設立を目指す方はぜひ活用してください。

個人事業から法人へのステップアップがおすすめ

起業にあたって簡便な手続きで始めたいのであれば、個人事業としてスタートし、事業が軌道に乗ってきたところで会社組織を立ち上げることをおすすめします。

個人事業から会社組織に変更することを「法人成り」といいます。法人成りのタイミングは個々人の判断によるものの、納税額の面から考えると一定の目安が存在します。個人事業主は所得税を納めますが、会社組織の事業主は、会社の所得については法人税を納め、事業主個人の所得については所得税を納めます。所得税と法人税の税率構造が異なるため、所得が一定額を超えた場合には、所得を法人と個人に分散させることで、トータルの納税額を低くできます。

一般に、売上から経費を引いた後の利益が500万円を超えると法人成りする方が有利であるとされていますが、金額は個別のケースによって上下します。

起業するにはまず何から始める?

次に、起業するために必要な準備について解説します。

事業アイデアを見つけて検証する

事業アイデアの発見と検証は、起業成功の土台となる最重要ステップです。まず、現実に売れている商品・サービスを分析し、消費者の潜在的なニーズを探ります。現時点のトレンドを意識し、社会が求めている価値を明らかにすることは重要です。

自分の経験やスキルをベースとしてアイデアを構築します。前職等で感じた課題や顧客からの要望なども盛り込み、現実的かつ具体的な形で考案しましょう。

アイデアが枯れてきたら顧客等にインタビューをして、実際のニーズを確認しましょう。

また、起業したいけどアイデアがない場合には、アイデアが湧くまで調査したり、体験をしたりして起業イメージが湧くような努力を続けましょう。事業に対する思い入れがない場合は、結果も伴いません。

事業計画書を作成する

事業計画書とは、「起業の設計図」です。その後の資金調達や経営判断の基盤となります。まずコンセプトを明確化し、6W2H(When、Where、Who、Whom、Why、What、How、How much)の視点を意識した商品やサービスについて詳細に記載しましょう。

また、市場分析や競合調査では、統計データを活用して市場規模やトレンドを把握し、競合他社とどこで差別化をするか、そのポイントを明確にします。

販売戦略においては、具体的な集客方法や販売チャネルを決め、財務計画では売上予測・費用計画・資金繰りをできれば5年先まで具体的に作成しましょう。

計画時点でのリスク分析も重要項目であり、想定される課題とその対策を事前に検討しておくことで、実際の経営で生じる問題に迅速に対応することができます。

事業計画は一度作成したら終わりではなく、継続的にブラッシュアップしましょう。

起業資金を準備する

個人起業における最大の課題の一つが資金調達とも言えます。自己資金として開業に必要な資金の3分の1から2分の1を目安に準備し、計画的な貯蓄を心掛けましょう。

後述する日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、7,200万円まで融資可能で、個人起業家にとって最も利用しやすい制度です。金利も比較的低く、創業前でも事業計画が確かであれば融資を受けられます。

地方自治体の制度融資も地域密着型で利用しやすいので、利子補給や保証料補助を探しましょう。補助金・助成金は返済不要の公的支援で、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」などを積極的に活用しましょう。

クラウドファンディングも資金調達だけでなく、市場ニーズの検証を同時に行える有効な手段と言えます。事前購入型であれば、実際の需要を確認しつつ、資金調達ができるため、リスクを抑えた起業も可能になります。

参考:
新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫
ものづくり補助金総合サイト|中小企業基盤整備機構
IT導入補助金2025|中小企業基盤整備機構

起業するための手続きは?

起業にあたっての手続きについて、個人と法人に分けて見ていきましょう。

【個人事業主の場合】税務署に開業届を提出

個人が事業を始めた場合、まず税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。開業届は事業開始日から1か月以内に所轄税務署へ提出することとなっています。提出方法としては、税務署窓口への持参、郵送、またはe-Tax(電子申請)が利用可能です。

開業届の提出時には以下の書類等が必要です。

    • 開業届(正式名称:「個人事業の開業・廃業等届出書」)
    • マイナンバーカード
    • マイナンバーカードがない場合は、運転免許証などの本人確認書類

さらに、青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」、インボイス発行事業者となる場合には、その登録申請も同時に提出できます。

自分の事業においてはどの手続きをすべきなのか、予め税務署に問い合わせておきましょう。

参考:
A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁

【法人の場合】①定款の作成及び認証

定款とは、会社の目的、名称、所在地、事業内容、資本金など、会社運営の基本的なルールを定めた書類です。法人設立時には必ず作成しなければなりません。

株式会社であれば、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要があります。認証手数料は資本金によって異なり、3万~5万円(資本金100万円未満:3万円、100万円以上300万円未満:4万円、300万円以上:5万円)となります。

また、紙の定款の場合は収入印紙代4万円が別途必要ですが、電子定款なら印紙代は不要です。認証後の謄本手数料は1枚250円、通常2,000円程度かかります。

なお、合同会社の場合には定款認証は不要です。

参考:会社の定款手数料の改定 | 日本公証人連合会

【法人の場合】②法務局で登記

定款の準備が終わったら、法務局に設立登記申請を行います。登記に係る登録免許税は株式会社で最低15万円(資本金×0.7%または15万円の高い方)、合同会社では6万円以上になります。

司法書士に依頼する場合は、5~10万円程度の報酬が発生することがあります。

参考:商業・法人登記の申請書様式|法務局

【法人の場合】③税務署へ届け出

設立後、税務署へ「法人設立届出書」等を提出します。この届出書は、新たな会社の設立を税務署に知らせるための書類であり、提出することにより、法人として正式に税務管理や税金の課税対象となります。提出期限は、法人の設立から2か月以内です。

また、青色申告をする場合には青色申告承認申請書も提出します。さらに、個人のケースと同様、消費税源泉徴収関係等の書類についても必要があれば提出します。

他にも業態や業種等により種々の書類があるため税務署に聞きながら提出することもできますが、税理士等に依頼することもできます。

参考:C1-4 内国普通法人等の設立の届出|国税庁C1-19 青色申告書の承認の申請|国税庁

【法人の場合】④社会保険に関する手続き

社会保険に関する手続きとしては、次の手続き等があります。それぞれ期限があるため注意しましょう。

    • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
      法人が社会保険の適用事業所となることを届け出る書類であり、年金事務所に提出します。
    • 被保険者資格取得届
      役員や従業員が健康保険・厚生年金保険に加入する際に提出します。
    • 健康保険 被扶養者(異動)届
      被保険者家族を被扶養者とする場合に提出します。
    • 労働保険(労災・雇用保険)関係成立届・雇用保険適用事業所設置届
      従業員を雇用する場合には届出が必要です。

参考:
健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧|日本年金機構
労働保険制度(制度紹介・手続き案内) |厚生労働省

起業の手続き以外に必要なもの

登記などの手続き以外にも、起業する際には必要なものがたくさんあります。次に、会社設立関連以外に必要なものについて説明します。

人員体制を整える

人員体制の整備については、まず自社の事業や規模に応じた人員を明確にし、適切な人員配置を行うことが重要です。

現状の人材やスキルを把握し、ポジションや人数の必要数を考えましょう。個々の人材について職歴や保有資格、希望キャリアなどの情報を正しく収集し、適材適所を目指します。

求人については、求人サイト、ハローワーク、人材紹介会社、自社ホームページ、SNS、求人チラシや自社の説明会など多様な手段が考えられ、目的やターゲットに応じて使い分けましょう。

人員体制を整えた後は、体制の効果を定期的に見直し、必要に応じた対応をとることで、組織の柔軟性が確保できます。

営業戦略を考える

自社の営業戦略を考える上においては、まず市場調査や競合分析を行い、自社の強みやターゲット顧客を明確にしましょう。

次に、売上目標値や新規顧客獲得数など、具体的かつ定量的な目標を設定します。

ターゲット顧客のニーズを把握し、商品やサービスの訴求ポイントを明確にした上で、直接営業するのか、代理店を設けるのか、オンライン販売を考えるのか等のプロモーション手法を決定します。

また、営業活動の計画やKPI(重要業績評価指標:目標達成に向けたプロセスが適切に進んでいるかを評価するための指標)を設定して、営業活動の進捗を管理しましょう。目標を明確化し、プロセスを可視化することで、組織のモチベーション向上につながります。

マーケティングツールを用意する

マーケティングツールは、営業の効率化、顧客の理解を深めるために不可欠な要素です。
いくつかのマーケティングツールを見てみましょう。

・ロゴマーク

ロゴマークは企業の象徴と言えます。ブランドイメージや信頼感を視覚的に伝える重要な役割を持っています。効果的なロゴとなるように、社名や理念を反映し、かつ、覚えやすく多用途に使えるデザインを目指しましょう。

ロゴを準備する場合、企業の価値観や将来性、使用するシーン(名刺・Web等)を考慮し、長期間使える「普遍性」「視認性」「展開性」等を意識した検討が欠かせません。

社員がいる場合は、ロゴを作成することで、社員全体の志気を高めるのにも一役買ってくれます。

・名刺

名刺は、第一印象を決定づける重要な営業ツールと言えます。氏名・会社名・役職・連絡先など必要情報を整理し、わかりやすく配置することが信頼感につながります。さらに、ロゴやWebサイトのQRコードを載せることで情報発信力が高まります。

名刺の作成にあたっては、読みやすいフォントや紙質、デザインの統一感に注意し、過不足なく正確な情報を記載することが大切です。

なお、記載された情報が変わる都度、名刺も忘れずに更新しましょう。

・ホームページ

ホームページは企業の情報発信の拠点として、信頼性や集客力の向上に一役買います。ホームページ作成にあたっては、SEO対策や実績掲載、問い合わせフォーム設置など目的に応じて設計するのが効果的です。さらに、目的・ターゲット・予算を明確にし、競合や参考サイトを調査した上で、わかりやすい構成や運用体制も検討する必要があります。

また、ホームページのメンテナンスについても定期的に考えましょう。ホームページ作成代行サービスは作成費用が安い代わりに、運営費用が高いサービスなどもあるので、注意が必要です。

・挨拶状、会社概要チラシ

挨拶状は、開業をはじめ役員の異動やイベント時などに、関係者への信頼構築や感謝を伝える手段として有用です。伝統的に時候の挨拶や近況報告、今後の抱負、連絡先などを簡潔かつ丁寧な文章でまとめると効果的です。

会社概要チラシは、企業の事業内容や強みを簡潔に伝え、認知拡大や集客に役立つツールになります。ターゲットや作成目的に合わせ、簡潔でわかりやすい構成と視認性の高いデザイン、目立つキャッチコピーが効果を高めます。

・その他(会社案内、パンフレット等)

会社案内やパンフレットは、企業の理念・事業内容・強みなどを体系的にまとめ、信頼性やブランド価値の向上を図る補助資料と言えます。

ターゲットや利用目的に応じた内容やデザインとし、ストーリー性や写真・図表の活用により「視覚的に」会社の魅力を伝えます。

これらのマーケティングツールを準備するにあたっては、当初よりしっかりとした会社やその事業のコンセプトを策定すべきであり、種々の情報を整理することや、フィードバックを活かしてブラッシュアップし続けることが重要でしょう。

起業にかかる費用

次に起業にかかる費用についてまとめます。

起業する前に用意しておくべき費用

会社を設立する場合には、起業する前にも費用が必要になります。最低限起業で必要になる費用は以下のとおりです。ここでは株式会社設立の例を挙げています。

会社設立登記にかかる費用

定款作成後、会社を設立するまでの費用は、主として次の表の項目から構成されます。電子定款を利用する場合は費用を抑えられ、紙の定款を利用する場合はやや高くなります。

必要項目金額の目安注意点等
定款認証手数料5万円前後公証役場における認証費用
定款用収入印紙代4万円電子定款なら印紙不要
定款謄本手数料2,000円程度1ページ250円×8ページ換算
登録免許税15万円以上資本金×0.7%、最低15万円
専門家への報酬5万円~15万円程度司法書士等に依頼した場合

会社設立を代行業者に依頼する費用

株式会社設立時に登記申請を代行業者に依頼した場合、報酬の相場は専門家に依頼するよりも、数万円安くなるでしょう。

しかしながら、登記申請そのものは司法書士しかできないので、事前の定款作成や一連の手続きの準備やサポートを代行業者に依頼することになります。また、登録免許税や定款認証手数料等の実費は別途必要です。

会社設立を代行業者に依頼すると、会社印の作成がセットになっていることもあります。しかし、会社の実印は、将来にわたって継続して利用するものであるため、よく考えて作成しましょう。

起業した後に必要になる費用

設立登記を終えたら、スムーズに事業に入れるようにしたいもの。そのためにはオフィスが必要です。オフィスといっても、選択肢はいくつかあります。

賃貸オフィス

ひとつは賃借オフィスです。一般的に多く見られるオフィス形態のひとつで、賃貸住宅と同じく、家主と賃貸借契約を交わしてオフィスとします。住宅と同じく大きさによって費用はまちまちです。仲介手数料や敷金、保証金、礼金や前払家賃など、住宅を借りるときと同じような費用が必要になります。

レンタルオフィス

起業直後は、資金繰りが大変ですので、固定費であるオフィスの費用は安いに越したことはありません。

初期費用が抑えられるレンタルオフィスは、短期間であれば比較的安い家賃で借りられます。物件にもよりますが、家賃以外に、仲介手数料、敷金や礼金などが必要になるため、家賃6か月分程度の資金は確保しておきましょう。仕事に必要な会議室やコピー機などの設備も借りられる点はレンタルオフィスの強みです。しかしながら、レンタルオフィスによっては法人の登記が不可となるところもあるため、事前の確認が必要です。

バーチャルオフィス

バーチャルオフィスは、登記するときに必要となる住所だけを借りるというものです。実際にその住所にオフィスを開くのではなく、住所だけをレンタルすることになります。東京都内など、オフィス街のバーチャルオフィスを利用するには、月に1〜5万円程度が相場です。

バーチャルオフィスは、使用料を払えば、会議室を一定時間借りられるケースも多くあります。常に会議室が必要というわけでなければ、バーチャルオフィスを借りて、必要なときだけ会議室を借りるほうが、コストが抑えられる可能性もあります。ただし、事業内容によっては許認可に影響が出たり、融資の際に問題視されたりするケースもあるので事前に確認しましょう。

自宅開業

自宅にて会社設立をするケースも考えられます。自宅開業の場合、賃借に係る費用は基本的に不要ですが、リフォームした場合などには費用等が発生します。

会社の所在地が自宅やバーチャルオフィスの場合、会社としての実態を掴みづらいため、金融機関において、審査が厳しくなり、口座開設に時間がかかることも考えられます。

事務用品関連費用

上記のオフィス家賃費用などの他にも、事務用品関連費用がかかります。事務机や椅子、パソコン、パソコンソフト、プリンター、文房具、ビジネスに利用する固定電話や携帯電話などその事業に必要な備品などが必要になります。

広告関連費

起業したら、仕事をもらうために最低限の広告関連費が必要になります。企業ロゴを作成したり、名刺を印刷したりすることは、最低限必要になる広告費用です。また、ホームページを持つことも重要です。

これらの費用は会社のブランディングにかかる費用として、予算を組んでから検討することをおすすめします。デザインや盛り込む内容などにより大幅に価格が異なってくるからです。外注に出す場合には最初に予算を明確にしてから依頼しましょう。

起業に関する費用、まとめるといくら?

上記の費用をすべて勘案すると、会社設立、企業にかかる費用は最低でも200万円程度は必要と考えておいたほうがよいでしょう。さらに事業内容によっては、上記に触れたものの他にも、設備が必要となる場合もあります。

日本政策金融公庫の2024年度の「新規開業実態調査」によれば、個人事業主の開業費用の平均値は985万円ですが、中央値は580万円でした。これは、一部の高額な事例が全体の平均を押し上げているものの、多くの個人事業主は580万円以下の費用で開業していることを示しています。また、開業時の資金調達額の平均は1,197万円であり、その約65%は金融機関からの借入となっていました。

今回紹介した種々の費用を参考に、自分が想定する起業において他にどんな費用が必要になるのか、試算してみるとよいでしょう。

参考:新規開業に関する調査2024年|日本政策金融公庫

起業の資金調達方法

次に、各資金調達方法の特徴とメリット・デメリットなどに触れていきます。

自己資金を準備する

自己資金とは、起業家自身が出資するものです。メリットとしては、出資の配分にもよりますが、企業オーナーとして采配がふるえて、自らの判断で使えることでしょう。金利の負担もないため、安心して使えます。

しかし、自己資金には限りがあります。万が一事業を清算すれば、自分の財産も失うことになります。

他企業から出資を受ける

株式を他企業から出資をしてもらうというケースもあります。他企業の出資比率が50%を超えてしまうと、事実上、経営権を渡したことになりますので、注意してください。また、他企業の出資比率が3分の1以上となれば、重要な経営判断は、その企業の了解なくは進められなくなります。ただし、出資者である企業の協力を得られるという点では、メリットにもなります。

ベンチャーキャピタルから出資を受ける

上場の可能性がある将来有望な企業であれば、ベンチャーキャピタルのような金融機関からの出資も視野に入れると良いかもしれません。ベンチャーキャピタルからの出資を受ければ、顧客を見つけたり、経営のアドバイスをもらったりすることもできます。

ただし、起業家の保有株比率は他企業から出資を受ける場合と同様に下がりますので、注意が必要です。

クラウドファンディング

最近は、クラウドファンディングによる資金集めも資金調達のひとつとして数えられるようになりました。クラウドファンディングとは、「Cloud(群衆)」と「funding(資金調達)」を組み合わせた言葉で、正式な定義はありませんが、中小企業基盤整備機構では次のように説明しています。

不特定多数の人が、インターネット等を通じて、他の人々や会社、各種団体に資金提供などを行うことを指す言葉
(引用:クラウドファンディングとは|中小企業基盤整備機構

資金を調達するには、資金調達のためのプロジェクトを立ち上げ、商品やサービスの内容、自社のアピール、事業実施計画をわかりやすく説明し、必要となる資金を割り出し、出資の募集をします。

クラウドファンディングにおいて最も重要なことは、インターネットを見た不特定多数の人からどれだけ共感を得られるかということです。掲載サイトの特性を考え、発信(PR)のしかたを熟慮する必要はありますが、新たな調達方法として有力視できるでしょう。

家族や知人からの借り入れ

家族や知人などから借り入れるメリットは、経営権を保持しやすい点にあります。資金融資を第三者から受ける際、事実上、その第三者に経営権を奪われる事態に発展することがあります。

親しい間柄であれば、足をすくわれるような事態には発展しにくいと言えますが、あくまでもビジネスライクに事を進めるほうが無難です。あまりにもこちらに有利な条件で融資してもらうことが税法上不利に働く場合もありますので要注意です。

また、身内にリスクを与えることにもなりかねません。多くは融資の専門家ではありませんので、きちんと経営状態を把握していないと、無計画な借り入れをしてしまう可能性もあります。事業の失敗が、個人的な関係にまで影響してしまう可能性もあるので注意が必要です。

銀行、信用金庫からの融資

大手銀行は会社を設立したばかりだと、会社の社会的信用度が低いため、まず融資が難しいケースが多いです。一方、地方銀行、信用金庫、信用組合などの場合は、大手銀行よりは融資の条件は厳しくないケースもあります。

これらの地域金融機関は、地域に密着して、顧客や協力業者を紹介してくれるケースもあり、会社を経営し始めてしばらくしたら、検討してみても良いかもしれません。

信用保証協会の制度融資

民間金融機関が中小企業者に貸しつける際に、信用保証協会が「信用保証」をつけることで、借り入れやすくなります。

融資制度とは、中小企業者や個人事業主に対し、地方自治体や金融機関と信用保証協会などが連携して実施する公的な融資制度のことです。行政が支払利息を一部負担してくれる「利子補給」や信用保証料の一部補助をしてくれるところもあり、一度検討する価値はあるでしょう。

制度融資の場合、立ち上げ直後の資金に充てることもできます。行政が支払利息などを補助してくれますし、相談制度なども利用できるので、経営相談をしたい経営者にもおすすめです。ただし、申し込みから融資実行までには1か月程度はかかりますので、注意して計画を立てましょう。また、支払利息とは別に保証料の負担も発生します。

日本政策金融公庫の創業融資

国民生活事業や中小企業事業があるのが日本政策金融公庫です。国民生活事業の「新規開業・スタートアップ支援資金」で融資を受けることが考えられます。新規開業・スタートアップ支援資金のメリットは、低金利での融資や、一定条件においては無担保・無保証人で利用できる点です。最長20年の長期返済や最大5年の据置期間が設定できるため、資金繰りがしやすいと言えます。運転資金としての借入上限は4,800万円です。借入上限の金額は事業計画や自己資金などから決定します。制度融資に比べると比較的早く、「融資実行」の結論が出ます。

開業資金の必ずしも全額を融資してくれるわけではないことや、一度返済が遅れるとその後の新規融資に大きな影響が生じる点は注意が必要ですが、きちんとした返済計画や事業計画が提出できていれば、デメリットにはあたらないでしょう。

参考:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

商工会議所や商工会などで経営指導を経て、推薦された商工業者が受けられる日本政策金融公庫の融資制度のひとつで、金利が低いのが特徴です。利息が低く、無担保無保証なのがメリットであり、デメリットである点は、創業後1年の経過が必要という点などになります。

参考:マル経融資(小規模事業者経営改善資金)|日本政策金融公庫

補助金、助成金

補助金は、返済の必要がない一方、常に募集してないことや、後払いになるため実際に支払うための資金は必要であることなどの使いづらさもあります。助成金を得たい場合は、まずは自治体独自の助成金制度にあたってみましょう。産業振興の一環で、助成金制度を設けている自治体があります。

先に紹介した「ものづくり補助金」「IT導入補助金」だけでなく、さまざまな補助金制度があります。該当するものがないか、一度起業する地域の自治体に確認してみることをおすすめします。補助金・助成金をはじめ各種資金調達については専門家への相談がおすすめです。

参考:補助金等公募案内 | 中小企業庁

起業に成功しやすい業種は?

個人が起業する場合に、「成功しやすい」業種は個々の事例によるでしょう。しかし、成功しやすい「業態」の例としてはBtoCサービス業や副業から始められるような業務が挙げられます。

BtoCサービス業

家事代行、ハウスクリーニング、学習塾、飲食店、小売店などは、BtoC(Business to Consumer)サービス業と言われ、一般消費者に対して商品やサービスを提供するビジネス形態をとります。これらは、初期投資や固定費が抑えやすく、個人でも始めやすい傾向があります。

在宅や副業から始められる業務

Webライターや動画編集、ECサイトの運営など、ITを利用した在宅・副業でできる業種も始めやすく、それゆえ成功にもつながりやすいと言えます。

個人の起業では「スモールスタート」が推奨されます。それは、初期投資やリスクを最小限に抑えられるからです。

小規模のビジネスは市場の反応を素早く確認できますし、当初の読みが違っていても損失を最小に抑えられます。その後、事業の成長に合わせて柔軟に方向転換や拡大が可能となり、無理なく経験やノウハウを積むことができるからです。

学生起業を成功に導くポイントは?

学生で起業を目指す人も増えました。この場合の成功のポイントを考えてみましょう。

市場調査と事業計画の徹底

学生起業を成功させるには、まず「誰に・何を・どう届けるか」というビジネスの基本を明確にした上、徹底的に市場調査を行うことが重要です。調査では、需要や競合を詳細に分析し、独自の強みを見極めて、現実的かつ具体的な事業計画を立てましょう。

客観的かつ具体的な計画性があることで、リスクを減らし、協力者や資金調達の際にも信頼を得やすくなるでしょう。

スモールスタートと支援制度の活用

個人の起業であることには変わりないため、最初から大きな規模で始めず、管理できる範囲での「スモールスタート」が成功への近道でしょう。失敗のリスクやコストを抑えつつ、実践や失敗を通じてノウハウを蓄積しましょう。

また、大学の起業支援制度や学割、助成金など学生ならではのリソースを積極的に活用することで、事業の成長を有利に加速させることができます。

起業したい人は事業計画書の作成から始めてみましょう

起業を考える人は、自分の意気込みだけでなく、客観的にその起業を見ることを心掛けましょう。事業計画書が客観的な視点で描け、かつ、提供したい商品やサービスへの熱い想いが伝われば、融資だけでなく、その先でも周りを動かすことができるのではないでしょうか?

したがって、起業したい人はまず、その想いを事業計画書にどのように落とし込むかに傾注し、第三者目線でチェックしてみましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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