• 更新日 : 2025年2月10日

副業する会社員も開業届は必要?デメリットや個人事業主になるには?

ゆとりのある生活やスキルの活用などを理由に、パートやアルバイトのほか、フリーランスや個人事業主など、さまざまな形態で副業する人が増えてきました。国による「働き方改革」の促進のほか、企業が主体となって多様な働き方を容認する傾向がみられるように、副業しやすい環境になったのも理由にあるでしょう。

ここで、疑問として挙がりやすいのが「会社員も個人事業主のように開業届が必要なのか?」ということです。この記事では、会社員の副業と開業届の関係、開業届を提出するメリット・デメリットなどを解説します。

開業届とは

開業届とは、事業を開始したことを税務署に届出するための書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、個人事業主が事業を開始したとき、あるいは廃業や変更があったときに提出します。

開業届の概要については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

副業の開業届が必要なケース

会社員として働きながら、副業で個人事業主として働く人が年々増えています。副業であっても、以下のような場合は「事業所得」として扱われる可能性が高く、開業届の提出を検討する必要があります。

事業所得になるケース
  • 投資用に賃貸物件を複数所有している(アパートであれば10室以上)
  • 会社と別にフリーでWebデザイナーの仕事を継続的に行っている
  • オンライン講師で複数の生徒を抱え毎週講義を行っている

一方、以下のような場合は「雑所得」として扱われる可能性が高いため、開業届の提出は不要です。

事業所得にならないケース
  • 不要になったもの(生活用動産等以外)をフリマアプリで売った
  • 年に何回かハンドメイド商品をネットで販売している
  • 趣味程度に動画サイトで広告収入を得ている

副業の開業届の書き方・提出方法

会社員が副業の開業届を作成するときのポイントを解説します。

本業と副業の開業届の違い

本業と副業で、開業届に違いはありません。どちらも「個人事業の開業・廃業等届出書」の必要な欄を埋めて、開業から1カ月以内に所轄の税務署長に提出します。

なお、青色申告を選択する場合は、同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出する必要があります。青色申告の申請は、1月15日までなら同年の3月15日、1月16日以降なら事業開始から2カ月以内で、開業届よりも期限は長いですが、申請を忘れないよう同時に提出するのがおすすめです。

自宅で副業を始めた場合の書き方

開業届_書き方

出典:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続

在宅ワークやアフィリエイト、動画広告収入など、自宅で副業を始めた場合、開業届の「納税地」に自宅の住所や電話番号を記入して、「住所地」を選択します。国内に住所がない人、国内に住所があるものの住所地とは違う場所で仕事をする人は「居所地」を選択します。

副業別の職業欄や事業の概要の書き方

開業届_書き方2

出典:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続

開業届には、「職業」や「事業の概要」を記入する欄があります。書き方に決まりはありませんが、職業には職業名を、事業の概要には仕事内容を書きます。会社員の副業を例に、書き方の例をいくつか紹介します。

Case1. 投資用にマンションを複数所有し運用している
  • 職業:不動産賃貸業
  • 事業の概要:賃貸マンションの経営・管理
Case2. フリーでWebデザインの仕事を副業にしている
  • 職業:Webデザイナー
  • 事業の概要:Webサイトのデザイン
Case3. 動画投稿サイトで広告収入を得ている(企業案件ありで事業的規模)
  • 職業:動画クリエイター
  • 事業の概要:企業案件含む動画制作

副業の開業届を提出するメリット

ここからは、会社員が副業の開業届を提出するメリットについて解説します。

経費の範囲が広がる

会社員の副業は、通常「雑所得」と考えられますが、開業届を提出することで、「事業所得」や「不動産所得」を選択できるようになります。

経費の範囲は基本的には同じですが、異なる部分もあります。例えば、生計を一にした親族や配偶者に支払う給与は通常経費にできませんが、事業所得の場合、青色申告なら「青色事業専従者給与」、白色申告なら「事業専従者控除」として経費にできます。

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

このように、開業届を提出して事業所得を選択すると、経費の範囲が広がり、節税対策につながります。

青色申告特別控除が受けられる

青色申告とは、開業届の所得の種類にあたる、事業所得、不動産所得、山林所得にのみ認められた制度です。青色申告を選択し、複式簿記で作成した決算書類を期限内に提出すれば、最大65万円を所得から控除できます。

損益通算ができる

損益通算とは、対象の所得(不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得)に赤字があった場合、損失分を総所得金額などから控除できる制度です。損益通算よって、総所得金額が少なくなり、所得税を節税できます。

雑所得は損益通算の対象に含まれないので、開業届の提出が必要な事業所得などを選択したほうが節税メリットがあるといえます。

損失の繰越控除ができる

青色申告の場合、損益通算でも控除しきれない損失があった場合、赤字を3年間繰越せます。繰越した分は翌年以降の所得から控除できるので、節税効果が期待できます。なお、雑所得には繰越控除がされないため、赤字が発生しても翌年以降に持ち越すことはできません。

青色申告のメリットについてはこちらの記事もご覧ください。

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副業の開業届を提出するデメリット

次に、会社員が副業の開業届を提出するデメリットについて解説します。

失業手当が受けらない

雇用保険では、会社の退職から過去2年間のうち一定期間の雇用保険被保険者期間があれば、基本手当を受給できます。ただし、次の就職までの安定した生活を目的とした制度なので、副業の開業届を提出している場合は、失業手当が受けられません。会社を辞めて収入が少なくなっても、失業手当を受けられないのはデメリットといえるでしょう。

青色申告の場合は手続きが煩雑

開業届を提出するメリットとして、青色申告を選択できること挙げました。青色申告には、青色申告特別控除をはじめとするさまざまな特典があるため、節税面でのメリットは大きいものの、手続きが煩雑になるというデメリットもあります。

これは、青色申告で最大65万円の控除を受けたい場合、複式簿記による厳密な会計処理が求められるためです。副業の経理にあまり時間を割きたくない場合や、収入がそこまで大きくない場合は、開業届をせず白色申告で確定申告したほうが手続きが簡単です。

副業の確定申告が必要なケース

会社員の副業では、開業届だけでなく確定申告書の提出が必要な場合があります。副業の確定申告が必要なケースは、以下の通りです。

  • 2カ所以上から給与を受け取っており、
    年末調整を受けなかった給与収入給与所得退職所得を除く所得金額の合計が20万円を超える場合(給与所得の額が一定以下でほかの所得が20万円以下であれば申告の必要なし)
  • 給与所得と退職所得を除いた所得金額の合計が20万円を超える場合

例えば、開業届で事業所得を選択している場合で、副業による事業収入200万円、必要経費100万円なら、事業所得100万円になるので確定申告が必要です。

同じく、副業による事業収入が200万円あっても、経費が185万円の場合は、事業所得15万円になりますので、確定申告の必要はありません。

ただし、所得税の申告の必要がなくても、所得が生じた場合は住民税の申告をする必要があります。

副業の確定申告をすると会社にバレる?

副業をしている場合、確定申告を行うことで会社に副業がバレるのが心配な方も多いのではないでしょうか。実際、確定申告をしたからといって、必ずしも会社に副業が知られるわけではありませんが、いくつかのケースで注意が必要です。

副業による所得がある場合、住民税が発生します。住民税が給与から天引きされる「特別徴収」の場合、税務署から会社に住民税の額が通知されます。この際、もし副業の収入がある場合、その内容が住民税の通知書に記載され、会社に知られることになります。

副業が会社にバレるのを避けたい場合は、住民税の徴収方法で「普通徴収」を選択することをお勧めします。普通徴収にするためには、確定申告時に住民税の納付方法を変更する申請を行う必要があります。

普通徴収

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

なお、会社によっては就業規則で副業を認めない旨を記載しているところもあります。就業規則に定められている副業禁止について、すべて法的に有効とは認められません。本業に支障をきたしている、競合他社で副業をしているなど、会社に重大な影響を及ぼさなければ、就業規則で副業禁止となっていても、副業はできるのです。

しかしながら、副業が法的に大丈夫と思われる範囲であったとしても、会社との関係もあります。トラブルに発展しない程度に事前に確認しておくなど、常識の範囲内で副業をすることをおすすめします。

副業の開業届を提出すべきか検討しましょう

会社員の副業は、基本的には開業届を提出する必要はありません。ただし、事業と認められるような規模で継続的に行っている仕事があれば、開業届を提出したほうがよいでしょう。副業が軌道に乗ってきた段階で、この記事を参考に開業届を提出するべきかどうかよく検討してみましょう。

よくある質問

開業届とは?

新たに事業を開始したとき、または事業用に事務所や事業所を新設したときなどに必要となる、所轄の税務署への届出です。詳しくはこちらをご覧ください。

開業届を提出するメリットは?

経費の範囲が広がること、青色申告なら青色申告特別控除が受けられること、損益通算ができること、損失の繰越しができることなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

開業届を提出するデメリットは?

失業手当が受けらないこと、青色申告を選択すると手間がかかることなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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