• 更新日 : 2025年5月15日

ネイルサロンは法人化すべき?売上目安としない方がいいケース

ネイルサロンは法人化することで経費の幅が広がったり、融資を受けやすくなったりするメリットがあります。ただし、個人事業と法人ではさまざまな違いもあるため、法人化する際には注意が必要です。

本記事では、ネイルサロンを法人化すべきかどうか、法人化するタイミングについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ネイルサロンが法人化するメリット

ネイルサロンが法人化するメリットを解説します。主なメリットは、次の5つです。

  • 経費の幅が広がる
  • 税金の負担を抑えられる
  • 信用力が上がり、融資を受けやすくなる
  • 取引の幅が広がる
  • 事業承継がしやすい

それぞれ詳しく見ていきましょう。

経費の幅が広がる

ネイルサロンを法人化すると、経費の幅が広がります。経費に損金として算入できるものが増えるため、結果的にも節税につながる点はメリットです。

法人にだけ認められているものは、以下が挙げられます。

  • 出張手当
  • 慶弔金
  • 家族専従者への退職金
  • 社長個人の退職金
  • 生命保険の保険料(被保険者:従業員、受取人:法人とした法人契約の場合)
  • 自宅の家賃(法人契約で役員の社宅とした場合)

税金の負担を抑えられる

法人化することで、個人事業主よりも税負担を抑えられる点もメリットです。法人と個人事業主とでは、課せられる税金の種類が違います。

  • 個人事業主:所得税
  • 法人:法人税

個人事業主に課される所得税は、累進課税制度のため所得が増えるほど税の負担割合も増加します。一方、法人税は累進課税制度が適用されていないため、税率はほぼ一定です。そのため、所得が一定以上になった場合、法人に課せられる法人税のほうが、税負担は軽くなります。

信用力が上がり、融資を受けやすくなる

法人化すると一般的に信用力があがるため、金融機関から融資を受けやすくなります。法人化して信用度が上がって融資につながれば、さらなる事業の展開もできるでしょう。

取引の幅が広がる

法人化することで信用力が向上するため、取引先の幅が広がるメリットもあります。なかには、個人事業主とは契約しないという企業もありますが、法人化にともないそういった企業とも取引が可能になります。

事業承継がしやすい

法人化は、事業承継や相続対策においてもメリットを持ちます。法人化することで、法人の財産を個人の資産とは切り離して管理できるため、事業承継がスムーズに行えます。

また、法人化して事業の権利を複数の株主で管理することも可能なため、特定の家族や親族以外にも経営権を引き継ぐことが可能です。法人化によって事業承継や相続対策で重要な役割を果たすため、長期的な視点で見ても経営安定に貢献します。

ネイルサロンの個人事業と法人の違い

個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことです。家族や従業員と事業を運営していても、法人を設立していなければ、個人事業主になります。

一方の法人は、法律で人と同じような権利・義務を認められた存在のことです。会社の代表者とは別の社会的存在の法人として法律行為などを行えるようになります。たとえば、契約する際に個人名(代表者や従業員など)ではなく、法人名で契約可能です。

個人事業主と法人では、さまざまな違いがあります。以下では、項目ごとに違いを解説します。

手続き

両者では、手続きにおいて違いがあります。

  • 個人事業主:税務署に開業届を提出する
  • 法人:定款の作成や登記手続きなど、複雑な手続きが必要

法人手続きには、さまざまな手続きがあるため、数週間〜数ヶ月かかることもあります。また、資本金のほかに、手続き費用も数十万円必要です。

開業後の経理手続きについても、以下のように違いがあります。

  • 個人事業主:確定申告が必要
  • 法人:決算が必要。専門的な知識が必要で税理士に依頼する必要があるため、その分のコストもかかる

税金

個人事業主と法人のどちらを選ぶかの選択で重要になってくるのが税金面です。前述したように、個人事業主が支払うのは所得税です。

所得税は、売り上げの合計額(1月1日から12月31日まで)から、必要経費を差し引いた、儲けに対して課税されます。税率は5〜45%で、所得に応じて変わるのが特徴です。

一方、法人が支払うのは法人税です。税率は15〜23.2%で、法人の種類や規模などによって定められた比例課税(固定税率)が適用されます。

また、赤字の場合にも違いがあります。個人事業主の場合は、所得税や住民税の負担はありません。法人の場合は、赤字でも法人住民税の均等割部分(最低7万円程度)がかかってきます。

経費

個人事業主の場合も法人の場合も、基本的に事業で使用した費用は、経費としてすべて計上できます。違いは認められる経費の幅です。個人事業主は幅が狭く、法人は幅が広くなっています。

個人事業主では給与という概念がないため、自分自身の給与を経費として計上できません。法人では、自分の給与(役員報酬)も経費として計上できます。

自身の給与には、給与所得控除が適用されるため、節税対策にも効果的です。そのほか、賞与や社宅の賃料、退職金なども経費とできるため、法人のほうが節税効果は高くなる傾向にあります。

信用

信用面においても違いが出てきます。法人と比較して個人事業主の社会的信用は、低いといえます。法人の設立には登記が必要で、その運営も会社法という法律に則って行う必要があるためです。

社会的信用が高くなると、取引先の開拓や金融機関の融資などの面で有利になるほか、求人の際にも求職者に対して信用力を訴求できるため、多くの人が集まりやすい傾向があります。

社会保険の加入

従業員が5人未満の個人事業主は、社会保険への加入は任意です。社会保険料は全額自己負担となるため、加入していない個人事業主も少なくありません。

しかし法人の場合は、たとえ従業員が代表者1人であっても社会保険の加入が義務づけられています。社会保険へ加入すると年金が増えることになるほか、従業員にとっても福利厚生の充実につながる点はメリットです。社会保険への加入を条件として仕事を探している人もいるため、採用の際のアピールポイントになるでしょう。

ただし、社会保険料のコストや手続きの負担が増えることは、あらかじめ理解しておきましょう。

ネイルサロンが法人化するタイミングはいつ?

ネイルサロンが法人化するタイミングについて解説します。主なタイミングとしては、次の4つが考えられます。

  • 年間売上が1,000万円以上になったとき
  • 従業員やパートを雇う必要が出てきたとき
  • 事業拡大や融資を検討しているとき
  • 取引先との信頼を高めたいとき

年間売上が1,000万円以上になったとき

1つめのタイミングとして、年間売上が1,000万円以上になったときが挙げられます。課税売上高が1,000万円を超えた2年後から課税事業者となり、消費税を納税することが義務づけられています。

そのため、売上が1,000万円を超えた翌年に法人化すれば、課税事業者になるのはそこから2年後となるわけです。ただし、インボイス制度において売上1,000万円以下でも課税事業者となっている場合は、法人化後すぐに課税事業者となるため注意しましょう。

従業員やパートを雇う必要が出てきたとき

2つめのタイミングとして、従業員やパートを雇うときが挙げられます。法人の場合は、代表者1人であっても社会保険の加入が義務づけられています。社会保険に加入すると、社会保険料のコストや手続きの負担は増えるため、それらのコストを抑えたいのであれば、従業員を雇う必要が出てきたタイミングで法人化するとよいでしょう。

事業拡大や融資を検討しているとき

3つめのタイミングが、事業拡大や融資を検討しているときです。法人化すると社会的信用力が上がって資金調達がしやすくなるため、事業拡大(多店舗展開)もスムーズに行えるでしょう。

取引先との信頼を高めたいとき

4つめが、取引先との信頼関係を強化したいときです。法人を設立することで、社会的信用を高められるため、個人としか取引しないような企業とも取引が可能になります。

取引先との信頼を高めて、より多くの取引先と取引したい場合には、法人化がおすすめです。

ネイルサロンの法人化は合同会社、株式会社どちらが良い?

法人には、合同会社や株式会社があります。ここでは、どちらを選ぶのがよいかを解説します。合同会社と株式会社のどちらを選ぶかは、事業規模や将来の展開計画によって異なります。

合同会社の特徴

合同会社を設立するメリットは、設立費用が安く済むうえ手続きが簡単な点です。また、柔軟な経営に対応しているため、初めての法人化や小規模なサロンを経営したい方に向いているといえるでしょう。

株式会社の特徴

株式会社の特徴は、社会的信用が高いため資金調達がしやすい点です。そのため、大規模な事業や多店舗展開を検討中の場合に適しています。

ネイルサロンの法人化の流れや費用の目安

ネイルサロンの法人化の流れや費用の目安について解説します。ネイルサロンの開業資金の目安は、自身が開業する形態によって異なるため注意しましょう。

ここでは、店舗型と自宅型の開業にかかる開業資金の目安を紹介します。それぞれの目安は、以下の通りです。

<店舗型>

  • 物件取得費:100万円
  • 内装・外装工事費:100万円
  • ネイル用品・家具:50万円
  • 合計額:200万円

<自宅型>

  • 物件取得費:0円
  • 内装・外装工事費:0~10万円
  • ネイル用品・家具:50万円
  • 合計額:50万~60万円

法人化の手続きは、次の通りです。

  1. 会社の基本事項を決める
  2. 会社用の印鑑を用意する
  3. 定款を作成し、認証を受ける
  4. 資本金を払い込む
  5. 登記申請をする

法人化後の手続きは、次の通りです。

  1. 会社名義の銀行口座を開設する
  2. 個人事業の廃業手続きを行う
  3. 登記事項証明書、印鑑証明書を取得する
  4. 法人設立届出書を提出する
  5. 社会保険、労働保険の加入手続きを行う

会社設立の流れや必要書類、会社設立の登記に必要な書類は以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてください。

ネイルサロンが法人をスムーズに運営する方法

ネイルサロンをスムーズに法人運営するおすすめの方法は、次の5つです。

  • 会社設立は「自分で手続き」か「オンライン」を活用する
  • 会計ソフトで経理作業を簡単にする
  • 役員報酬は慎重に決める
  • 廃業時のコストを事前に把握しておく
  • 税理士への依頼も検討する

会社設立は「自分で手続き」か「オンライン」を活用する

会社設立に関する手続きを自分で行うかオンラインで行えば、費用を抑えられます。

会社設立にあたって必要な定款の作成方法としては、書類と電子の2通りがありますが、定款を電子作成した場合は収入印紙代(4万円)を削減可能です。

ただし、電子定款をするにあたって次のような機材が必要になることは覚えておきましょう。

  • 専用ソフト
  • ICカードリーダライタ

また、手続きを専門家に依頼すると費用がかかるため、自分ですべて行えばコスト削減につながります。

会計ソフトで経理作業を簡単にする

法人化後の経理作業は、個人事業主のそれとは異なり、さまざまな作業が必要です。その際、会計ソフトを導入することで経理作業を効率化できるかもしれません。

会計ソフトを駆使して帳簿づけを行えば、入力データを集計して損益計算書貸借対照表などの決算書を自動作成可能です。作業の効率化はもちろん、帳簿を保管する手間や人的ミスの低減にもつながります。

役員報酬は慎重に決める

法人化する際には、役員報酬を慎重に決めるようにしてください。法人設立することで役員報酬を設定できるようになります。

定めた役員報酬に対して所得税と住民税がかかりますが、個人事業のときよりも所得税と住民税を大きく下げられ、結果的に節税効果が期待できます。

たとえば、役員報酬を少なくすると所得税や住民税は下がりますが、その代わりに会社の利益が大きく残るため、法人税分の負担が増える可能性があるでしょう。総合的に考えて報酬額を決めるようにしてください。

廃業時のコストを事前に把握しておく

法人化する際には、廃業時のコストも事前に把握しておくことが重要です。廃業する際には、登録免許税が必要になるだけでなく官報公告も必須です。

そのほか、雇用保険廃止の手続きなども行わなければなりません。それらにどれくらいの費用がかかるのかは、あらかじめ把握しておきましょう。

税理士への依頼も検討する

開業後にもさまざまな手続きが必要です。費用がかかっても事業に集中したい場合は、税理士へ相談することも検討しましょう。税理士であれば、専門的な知識を有するため、自分で行った際に発生しがちな作業のやり直しなどの心配がありません。

法人化をきっかけに業務へ集中したいと考える場合は、税理士への依頼もおすすめです。

マネーフォワードでは、税理士・社労士の無料紹介サービスも提供しています。ご希望の条件に合致した税理士・社労士のご紹介が可能です。税理士・社労士への依頼を検討中の場合は、ぜひご活用ください。

ネイルサロンで法人化しない方がいいケース

ネイルサロンを法人化しない方がいいケースを解説します。法人化しない方がいいケースは、次の3つです。

  • 売上が不安定で、事業の見通しが立たない
  • 会社設立や維持にかかるコストが負担になりそう
  • 会計や税務の手続きが難しく、専門家に依頼できない

法人化して後悔しないように、あらかじめ理解しておきましょう。

売上が不安定で、事業の見通しが立たない

売上が不安定で、事業の見通しが立たない場合は、法人化を見送りましょう。法人化すると赤字でも税金の支払いが発生します。また、従業員を雇えばその分の給料と社会保険料の負担も発生するでしょう。

安定的な利益が出せる状態にない場合は、法人化しない方が無難です。

会社設立や維持にかかるコストが負担になりそう

法人を設立する際には、手間だけでなく費用もかかるため、それらのコストが負担になりそうな場合は法人化はやめた方がいいでしょう。

法人を設立する際の費用は次の通りです。

  • 株式会社:約22万~25万円
  • 合同会社:約10万~11万円

手続きを税理士に依頼する場合は、さらに費用がかかります。ある程度まとまったお金が必要になるため、コスト負担を考慮するのであれば法人化しない方がよいでしょう。

会計や税務の手続きが難しく、専門家に依頼できない

法人化すると会計や税務処理において、さまざまな手続きが必要です。自分でそれらの業務に対応できない場合は専門家に依頼する必要がありますが、コストがかかります。

自分で対応できない、かつコスト負担も抑えたいのであれば法人化はやめた方がよいでしょう。

ネイルサロンの法人化に役立つひな形・テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、ネイルサロンの法人化(会社設立)に役立つひな形やテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。

個人と法人の違いを理解してネイルサロンを法人化しよう

ネイルサロンを法人化することで、節税になったり信用力が向上して融資を受けやすくなったりするなどのメリットがあります。法人化するタイミングとしては、年間売上が1,000万円以上になったとき、従業員やパートを雇う必要が出てきたときなどです。

また、スムーズな法人運営をするためには、会計ソフトの導入や税理士への依頼などが挙げられます。マネーフォワードでは、税理士・社労士の無料紹介サービスも提供しています。希望の条件に合致した税理士・社労士をご紹介可能なため、ぜひご検討ください。


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