- 更新日 : 2023年8月29日
独立や起業前に!フリーランスの所得税計算方法ポイント3つ
目次
所得税とうまく付き合おう!
人脈、信用、能力、経験……フリーランスに必要なものはたくさんありますが、所得税の計算方法を知っておくことも同じくらい大切です。
独立や起業を考えはじめたら、「所得税」とうまく付き合う方法を考えないといけません。
今回は、経営者の中でも初心者さんに向けて「知っておきたい所得税の計算方法」を紹介します。
所得税とは?

所得税の基本
はじめに所得税の基本をおさらいしておきましょう。
所得税は国税のひとつで、所得に対して課税される税金です。所得にはいくつか種類がありますが、個人が得た所得は基本的に課税対象だと思っておいて間違いありません。
つまり、一定以上の所得を得ているすべての個人に納税義務があるということです。
税額は毎年1月1日から12月31日までの総所得から算出され、例年3月15日(土曜日・日曜日の場合は翌月曜日)までに納税することになっています。
会社員であれば毎月の給料からの天引きと年末調整によって実質的な納税手続きは完了できます。しかし、フリーランスとなるとそうはいきません。税額の計算から申告、納付までをすべて自分で行う必要があります。
所得の種類
一口に「所得」といいますが、全部で10種類に分類することができます。
| 所得の種類 | 説明 |
|---|---|
| 利子所得 | 預貯金の利子や公社債の分配金などによるもの |
| 配当所得 | 株式の配当や投資信託の分配金などによるもの |
| 不動産所得 | 賃貸業など不動産の貸付けによるもの |
| 事業所得 | 小売業・卸売業・サービス業といった事業によるもの |
| 給与所得 | 給与・俸給・賞与など雇用契約によるもの |
| 退職所得 | 退職金や退職金共済制度などによるもの |
| 譲渡所得 | 固定資産や車両などの譲渡によるもの |
| 山林所得 | 山林に関連するもの |
| 一時所得 | 懸賞金・公営競技の払戻金・保険の満期返戻金など臨時のもの |
| 雑所得 | ほかの9種類に属さないもの |
このうち、フリーランスの労働による所得は、一般的に事業所得(一部は雑所得)に該当します。
所得税の計算方法

1:「収入」と「所得」を明確に区別
会社員ではあまり意識していない人も多いかもしれませんが、フリーランスの場合は「収入」と「所得」を明確に区別する必要があり、意味合いも異なってきます。
また、所得のすべてに税金がかかるわけではありません。所得税額を算出する際には、次の3つの計算を順番に行うことになります。
・収入-経費=所得
・所得-各種所得控除=課税所得
・課税所得×税率=所得税
・所得税-各種税額控除=納付税額
なお、所得税の税率は消費税のような一律ではなく、累進課税方式がとられています。
ただし、課税所得全体にその税率が適用されるわけではない点に注意しましょう。課税所得が100万円の人も1億円の人も、195万円以下の部分については同じく5%しか課税されません。
フリーランスの方は、給与所得のみの方には適用できない青色申告という制度があります。青色申告の主な特典として、青色申告特別控除が挙げられます。複式簿記により記帳を行い、貸借対照表と損益計算書を作成するこで、課税所得から65万円の控除を受けることができます。これ以外の青色申告者については、10万円までの控除が受けられます。青色申告を適用したい場合は、事前に申請を行い、税務署長からの承認を受ける必要があります。きちんと記帳を行い、申告書を提出期限までに提出することで、経費として認められる金額が増え、節税につながります。
※令和2年の申告から、青色申告特別控除額は、原則55万円に引き下げられますが、電子帳簿保存もしくはe-taxによる電子申告を行っている場合に限り、65万円の控除が受けられます。
ここで、具体例を挙げて計算してみましょう。
「所得600万円、配偶者なし、社会保険料70万円、生命保険料12万円」の人が青色申告をした場合を考えると、次のような計算方法となります。
2:課税所得の計算例
所得600万円-青色申告特別控除65万円-(基礎控除48万円+社会保険料控除70万円+生命保険料控除5万円(旧契約の場合))=412万円
3:所得税額の計算例
・195万円以下の部分
195万円 × 5% = 9万7500円
・195万円超 330万円以下の部分
(330万円 - 195万円) × 10% = 13万5000円
・330万円超 695万円以下の部分
(412万円 - 330万円) × 20% = 16万4000円
・合計
9万7500円 + 13万5000円 + 16万4000円 =39万6500円
結果、39万6500円を納税することになります。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
累進課税方式の考え方に基づくと、上のような計算になりますが、実務的には、上記の速算表を用いて計算すると、すぐに納税額が求められます。
計算例
4,120,000 × 20% – 427,500 = 39万6500円
「所得税」における会社員とフリーランスの違いは?
特有の控除
それでは、会社員とフリーランスとではどちらが所得税がお得なのでしょうか?
この疑問を解くカギは、それぞれに特有の控除があるという点です。
会社員には、「給与所得控除」というものが存在します。これは給与収入額によって55万円から195万円まで(令和元年以前は65万円から220万円)の控除を受けられるもの(たとえば、年収600万円の場合では164万円の控除)で、フリーランスには存在しないものです。一方で、給与所得のみの方は、青色申告控除は受けられません。
この点をふまえて、上の計算と同じ条件の人で考えてみましょう。
給与所得
収入600万円 – 給与所得控除164万円
= 436万円
課税所得
給与所得436万円 - (基礎控除48万円 + 社会保険料控除70万円 + 生命保険料控除5万円)
= 313万円
所得税額
・195万円以下の部分
195万円 × 5% = 9万7500円
・195万円超 330万円以下の部分
(313万円 - 195万円) × 10% = 11万8000円
・合計
9万7500円 + 11万8000円 = 21万5500円
なんと、フリーランスよりも20万円以上も所得税額が少なくなりました。これだけを見ると、会社員のほうがお得だといえそうです。
ただし、フリーランスでは青色申告者になることや、経費を漏れなく把握することで、節税することが可能です。
マネーフォワード クラウド確定申告であれば、簡単に記帳を行うことができます。
まとめ
所得税の計算は基本さえ押さえれば、難しいものではありません。
特にフリーランスにとって重要なのは、「収入」と「所得」の違いを明確に理解しておくことと、課税所得金額によって税率が変わってくるという点です。
また、独立したてのころはうっかり忘れがちですが、天引きされないということは毎年3月になると所得税の支払いがやってくるという点も大事です。(振替納税を選択すると、翌月4月の支払いになります。)
お金を準備しておらず「大慌てしてしまった!」ということのないようにしましょう。
よくある質問
所得税とは?
国税のひとつで、所得に対して課税される税金です。詳しくはこちらをご覧ください。
所得税の計算方法は?
所得税を算出する際には、次の3つの計算を順番に行うことになります。詳しくはこちらをご覧ください。
所得税における会社員とフリーランスの違いは?
会社員は給与所得控除が受けられるのに対して、フリーランスは青色申告控除が受けられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
新着記事
零細経営とは?中小企業との違いや支援制度、成功のコツを解説
零細経営とは、一般に中小企業基本法の「小規模企業者」がイメージとして最も近く、製造業・建設業・運輸業等は常時使用する従業員20人以下、卸売業・小売業・サービス業は5人以下の小規模な事業運営を指します。迅速な意思決定が強みですが資金繰りや人材…
詳しくみる法人登記は郵送でできる?申請方法や封筒の書き方、必要書類を解説
法人登記は、法務局の窓口へ行かずに郵送で申請を完結させることが可能です。そのため、遠隔地にいても、日中の業務が多忙でも、会社の設立や役員変更などの手続きを進められます。 しかし、郵送ならではの書類の準備や封筒の書き方にはルールがあり、これを…
詳しくみる【テンプレ付】役員の住所変更の法人ガイド!自分で行う手続きや費用まとめ
会社の代表権を持つ役員の住所が変更された場合は、変更の生じた日から2週間以内に、変更の日から2週間以内に法務局で法人登記の変更申請を行う必要があります。特に、代表取締役(株式会社)や代表社員(合同会社)など代表権を有する者の住所は登記事項と…
詳しくみる訪問看護の許認可とは?開設に必要な要件や申請の流れを解説
訪問看護事業を開設するには、介護保険法にもとづく都道府県知事などからの「指定」が必要です。この指定を受けるためには、法人格の取得、専門スタッフの配置、事務室の確保といった人員・設備・運営に関する基準をすべて満たす必要があり、計画的な準備が求…
詳しくみる創業融資が返せない場合はどうする?6つのリスクや対処法を解説
創業融資の返済が困難になった場合、何よりも先に融資を受けた金融機関へ相談することが最善の策です。放置してしまうと、延滞損害金の発生や信用情報への悪影響、最悪の場合は資産の差し押さえといった深刻な事態につながりかねません。 事業を始めたばかり…
詳しくみる創業融資後に倒産したらどうなる?自己破産後でも融資は可能か解説
一度事業に失敗し倒産を経験しても、日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」などを活用すれば、再び創業融資を受けられる可能性があります。そのためには、過去の失敗を分析し、それを乗り越えるための具体的な事業計画と、再起に向け…
詳しくみる