- 更新日 : 2023年1月4日
2023年版 – 青色申告とは?やり方・申請方法を個人事業主向けにわかりやすく解説

個人事業主が開業届や青色申告の申請を提出したあと、初めての確定申告においてどのようなことをすればよいのでしょうか?
この記事では、申告のやり方全般を網羅的にご紹介します。白色申告と青色申告の違いやそれぞれのメリット、確定申告書の書き方、提出に必要な書類や提出期限などとともに、確定申告ソフトを使うとどのように違うのかも解説します。
目次
個人事業主が知っておくべき青色申告とは?
青色申告制度とは、毎日の取引を会計帳簿に記帳し、記帳に基づいて申告をすることで、所得計算などで税務上有利な取扱いが受けられる制度を言います。
青色申告をしようとする場合には、その年の3月15日までに税務署へ「青色申告承認申請書」を提出します。その年の1月16日以降に開業した場合は開業の日から2ヶ月以内に申請書を提出します。
青色申告の特典はたくさんありますが、特に節税効果の高いもの2つを紹介します。
- 青色申告特別控除
所得金額から、最高10万円又は最高55万円(e-Taxによる申告又は電子帳簿保存の場合は最高65万円)を控除することができます。 - 青色事業専従者給与の必要経費算入
青色申告者と生計を一にしている配偶者、や15歳以上の親族がその事業に専従する場合には、支払った給与はその事業の必要経費とすることができます。
ただし、あらかじめ税務署に届出が必要です。
青色申告と白色申告との違い
白色申告は、青色申告でない場合の申告方法を言います。
青色申告には多くの節税につながる特典を適用できる代わりに、守るべきルールがあります。
しかし、平成26年1月からは白色申告であっても収入にかかわらず会計帳簿を作成し、会計帳簿や書類の保存が義務づけられました。したがって、それ以前ほど青色申告と白色申告の手間の差はなくなりました。
青色申告と白色申告における保存が必要な帳簿書類とその期間を比較すると次のようになります。業務取引で発生する場合は、これらの保管の義務が発生します。
【青色申告】
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | |||
決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など | ||
現預金取引等関係書類 | 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など | ||
その他の書類 | 請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など |
※前々年分所得が300万円以下の場合は5年
現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳は青色申告の中でも簡易帳簿(青色申告特別控除額最高10万円)の標準的な帳簿を示しています。
【白色申告】
収入金額や必要経費を記載した帳簿 | ||
業務に関して作成した上記以外の帳簿 | ||
決算に関して作成した棚卸表その他の書類 請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 |
青色申告と白色申告についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
個人事業主の青色申告のやり方・申請方法
個人事業主が青色申告の承認を経て、初めて確定申告書を提出する場合に気を付けるべき点を解説します。
青色申告の提出書類
青色申告をするための提出書類は、次の3つです。
- 青色申告決算書
- 確定申告書(原則として第一表、第二表)
- 添付資料
添付書類については、所得控除や税額控除の内容によって変わってきます。
青色申告をする年分の純損失については、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除を受けることができます。この場合には、申告書第四表が必要です。
青色申告の必要書類の書き方
次に、青色申告の必要書類の書き方について解説します。
青色申告決算書(全4ページ)
青色申告決算書は、基本的には作成した会計帳簿から転記します。
各勘定科目の最終残高を1ページ目の損益計算書及び4ページ目の貸借対照表に転記します。
2、3ページ目は、損益計算書の内訳として、次の項目を記載します。
など
青色申告決算書の書き方の詳細は、こちらの記事もご参照ください。
確定申告書(第一表、第二表)
確定申告書を書くためには、まず資料集めから行わなければなりません。
たとえ1ヶ月でも給与があれば源泉徴収票は必要です。また、得意先から送付された支払調書、所得控除関係の資料など、事業だけでなく個人として支払いをしたものも含め、収集しておきます。
事業の収入金額や所得金額は、青色申告決算書から転記します。
引用:令和4年分以降 所得税及び復興特別所得税申告書|国税庁
その他の不明な点は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などで調べたり、税務署に直接問い合わせたりして、確認しましょう。
また、利用期間が限られているのですが、国税庁のサイトにはチャットボット(ふたば)というAI(人工知能)を活用した、税務申告の自動回答サイトもあります。
確定申告書の書き方の詳細は、こちらの記事もご参照ください。
添付資料
年々、確定申告書に添付する資料は簡略化されてきています。
平成31年4月以降は源泉徴収票の添付が不要となりました。国民年金の支払証明についても添付を省略し、5年間手元で保管することも可能になりました。さらに、生命保険料控除などについても控除証明書を電子データで交付する動きが進んでいます。
しかし、医療費控除など明細書や資料の添付を必要とするものも残っていますので注意しましょう。
青色申告に必要な書類についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
2023年(令和4年分)の青色申告で気を付けたい変更点は?
2023年の確定申告ではいくつか変更点があります。準備の際に対応できるよう、理解を深めておきましょう。主な変更点は以下の通りです。
- 確定申告書Aが廃止
- 第一表に「修正申告」欄が追加
- 収支内訳書が「雑所得(業務)」の申告に対応
- 住宅ローン控除の適用期限・借入限度額等の見直し
- 居住用財産の買換え等に関する特例等の見直し
- 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除に関する確定申告手続きの見直し
変更内容を詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
個人事業主が青色申告を行うメリット・デメリット
個人事業主が青色申告を行うメリットとデメリットについてまとめてみました。
さらに青色申告を行うメリット・デメリットについて詳しく知りたい場合には、以下の記事をご参照ください。
青色申告のメリット
青色申告の特典として、節税効果が高い「青色申告特別控除」「青色事業専従者給与の必要経費算入」を挙げましたが、これら以外の青色申告メリットとして次のものがあります。
必要経費に算入できるものが白色申告より多くなっているものや、年度をまたいで節税できるものなどです。
- 一括貸倒引当金の繰入
期末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額について繰り入れた貸倒引当金は、必要経費として認められます。 - 純損失の繰越しなど
事業所得などに赤字があり、損益通算してもなお控除しきれない金額があるときは、翌年以後3年間にわたって損失額を繰り越して、各年分の所得金額から控除できるなどの特典があります。
また、租税特別措置法という時限立法では、青色申告を前提に新たな税務上の特典が加えられることが多いです。
- 少額減価償却資産の必要経費算入
取得価額30万円未満の固定資産は、年間計300万円まで必要経費として計上できます。 - 特別償却(割増償却)
次の場合にも減価償却費を普通償却分以外に、特別償却として認めるなどがあります。- 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合
- 特定機械等を取得した場合(機械装置では160万円以上など)
- 特定の情報通信技術活用設備等を取得した場合(いわゆる5G投資促進税制)
- その他
所得控除と税額控除について
ここで、「控除」について補足しておきます。控除は差し引くという意味ですが、税金の計算をする場合、所得税に限らず「所得控除」と「税額控除」があります。
「所得控除」とは、課税所得を減らすことができる制度であり、「税額控除」とは計算した所得税からさらに減らすことができる制度です。
青色申告のデメリット
青色申告のデメリットとして挙げられるのは、やはり正規の簿記の原則(一般には複式簿記)に従った記帳の煩雑さでしょう。さらに、貸借対照表の提出が求められ、一層ハードルが高く感じられるのかもしれません。
しかし、白色申告であっても記帳は必要です。青色申告のデメリットが貸借対照表の作成だけであれば、さほど大きなデメリットにはならないと考えられます。
個人事業主は開業届を提出すべき?
個人事業主においては、開業届を提出していない人もいるかと思います。
もともとは給与所得者で副業で始めて事業を拡大した場合などは、開業日の特定が難しいと言えます。気付いた時点では開業届の提出期限を超えていたというケースもあるかと思います。
開業届は提出しなくても特に税務上のペナルティはありません。しかしながら、「青色申告承認申請書」には、開業日の記載が必要です。さらに、屋号による銀行口座の開設時には開業届の控えが必要となります。したがって、青色申告をする場合には、提出が遅れたとしてもやはり開業届を提出するほうがよいでしょう。
開業届の提出方法には、窓口持参、郵送、e-Taxなどの方法がありますが、どのような方法で提出するにせよ、控えを取得して提出した証拠を持っておきましょう。e-Taxで提出した場合には、「データを受け付けました」という文言が入ったメール文書が、受付印の代わりになりますので、保管しておいてください。
開業届の書き方・提出方法についての詳細は以下の記事をご参照ください。
青色申告の帳簿付けには確定申告ソフトがおすすめ
繰り返しますが、青色申告のためには正規の簿記の原則(一般には複式簿記)に従った会計帳簿が必要です。そのためにはすべての取引内容を仕訳しなければなりません。
手書き帳簿も不可能なことはありませんが、事業を運営する過程では取引内容を分析したり、資金繰り表を作成したりと、会計データを駆使して次の一手を考えるという場面に出くわします。それには、個々の取引をデータ化しておかなければなりません。将来の自分を守るためにデータ化するといっても良いでしょう。
最近のクラウド型の確定申告ソフトには、入力をサポートするさまざまな機能があります。慣れてくれば、銀行の入出金データとの連携機能を使うと、帳簿を付けることから幾分か解放されます。確定申告ソフトの中でもクラウド型のものは、月額費用のみなので導入しやすくなっています。
青色申告の帳簿付けについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
個人事業主も確定申告ソフトを使用して青色申告しましょう
確定申告時期になると、どのような状況であっても個人事業主は1年間の取引を決算書にまとめなければなりません。開業届と青色申告承認申請を出したら、次は会計帳簿のことを考えましょう。
手書きで始めて途中から確定申告ソフトに移ることもできますが、月の仕訳が数十件を超えたら確定申告ソフトを検討するときだと思います。
よくある質問
青色申告とはなんですか?
青色申告とは、毎日の取引を会計帳簿に記帳し、記帳に基づいて申告をすることで、所得計算などで税務上有利な取扱いが受けられる制度を言います。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告のメリットはなんですか?
節税効果が高い「青色申告特別控除」「青色事業専従者給与の必要経費算入」などの特典があります。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告のデメリットはなんですか?
白色申告でも帳簿が必要であるため、特にデメリットはありません。強いて言えば、複式簿記を理解する手間が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
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