- 作成日 : 2025年5月1日
経営手法はどれがおすすめ?目的別にやり方を解説
経営手法は戦略面や財務面、管理面の3つの側面において重要な要素です。経営手法には目的別にさまざまな方法があるため、自社にあった手法を選ぶ必要があります。
本記事では、経営手法の重要性や戦略・財務・管理面でそれぞれ役立つ手法を解説します。どのような手法を選択する必要があるのか悩んでいる経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
経営手法の重要性
経営が悪化するという観点では、株式会社だけでなく個人事業主にもあり得るものです。経営を維持するためには、経営手法の問題点を早期に発見し改善を図ることが重要です。
ここでは、経営手法の重要性について戦略面、財務面、管理面の3つの切り口で解説します。
戦略面
戦略面における経営改善とは、抜本的に経営戦略面を改善することです。経営戦略には、差別化や資源配分などの成長戦略が含まれます。
たとえば、経営悪化の理由が市場の成長性が低さにあるのであれば、戦略面の抜本的な改革によって効果が得られるでしょう。現状にとらわれない改善であるため、戦略面の経営改善は経営者の考え方によるものが大きいともいえます。
戦略面における経営改善手法としては、SWOT分析やPPMなどがあります。
財務面
財務面での経営改善とは、利益構造や収益性、財務諸表上にある問題点を改善することです。財務面から経営改善を図れば、資金繰りの安定につながり収益性もアップします。
財務面における経営改善手法には、「収益性分析」「安全性分析」「生産性分析」「成長性分析」の4種類があります。
管理面
管理面での経営改善とは、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の管理方法を改善することです。いくら経営戦略や財務計画が立派なものでも、それを実行できなければ意味がありません。経営戦略や財務状況に問題がないのに経営が悪化しているのであれば、管理面での経営改善が必要です。
管理面での経営改善では、KPIやミシガンモデルなどの手法が有効です。
経営戦略の立案に役立つ手法
経営戦略の立案に役立つ手法について解説します。代表的な経営戦略の立案に役立つ手法は、次の5つです。
- SWOT分析
- ファイブフォース分析
- PEST分析
- バリューチェーン分析
- PPM分析
それぞれ詳しく見ていきましょう。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社が置かれている現状を把握する分析手法です。次の4つの視点で内部環境と外部環境を洗い出します。各英語の頭文字をとって、SWOT分析と呼ばれます。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
強みと弱みが内部環境に、機会と脅威が外部環境に含まれています。ポジティブ、ネガティブ両面に着目することで、現状把握と戦略の改善が可能です。
SWOT分析は、客観的視点で進めることが重要なため、主観が入りすぎないように注意しましょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、市場や競合他社の状況・収益構造を明らかにしたうえで、自社の優位性や利益性を分析する手法です。
ファイブフォース分析におけるフォースとは、脅威(競争要因)を指します。具体的な脅威は次の5つです。
- 業界内の競合の脅威
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
経営戦略を検討する際には、個別の企業ではなく業界全体の構造を理解することで解像度の高い内容に仕上がります。ファイブフォース分析は、新ブランドの立ち上げ、新規参入、新製品開発時などに役立つ手法です。
PEST分析
PEST分析は、マクロ環境を分析するための手法です。マクロ環境とは、政治や経済、社会、技術など、自社でコントロールできない外部環境のことを指します。
前述したSWOT分析で行う外部環境分析に対して、PEST分析を活用することで将来的なマクロ環境の変化で自社が被る脅威を洗い出せます。PEST分析では、消費者行動の変化や市場の将来性などを予測し、不測の事態に備えられるのが利点です。
バリューチェーン分析
バリューチェーンとは、購買・製造・出荷・マーケティングなど付加価値を生み出すプロセスのことです。バリューチェーン分析では、自社のビジネスを主活動と支援活動に分けて分析します。
各活動における工程を可視化して個別に分析することで、どこにどのような付加価値があるのかを視覚化できます。
PPM分析
PPM分析とは、効率的に経営資源を配分する方法を探るための分析手法です。自社の製品を次の4つの象限に分類して整理していきます。
- 花形:市場占有率と市場成長率の両方が高い製品
- 金のなる木:市場占有率は高いが市場成長率が低い製品
- 問題児:市場成長率は高いが市場占有率が低い製品
- 負け犬:市場占有率と市場成長率の両方が低い製品
自社だけでなく競合他社の製品も分類することで、自社と競合他社の売上や製品にどのような差があるのかが理解できます。
財務分析に役立つ手法
財務分析に役立つ手法について解説します。財務分析の手法は、次の4つです。
- 収益性分析
- 安全性分析
- 生産性分析
- 成長性分析
目的によって、それぞれを使い分ける必要があります。
収益性分析
収益性分析は、企業が利益をどのくらい上げられているか(企業の稼ぐ力がいくらあるか)を数値化して確認する方法です。多角的に利益を分析することで、効率性を確認できます。得られた数値が高いほど、少ない資産または費用で利益を効率的に出しているといえます。
収益性分析で重要な指標例は、次のようなものです。
安全性分析
安全性分析は、企業の支払能力や倒産リスクを確認するために行います。企業における短期的・長期的支払能力を分析することで、企業の倒産リスクを評価可能です。
<短期的な支払能力を分析する指標>
- 流動比率
- 当座比率
<長期的な支払能力を分析する指標>
- 負債比率
- 固定比率
安全性分析は、次のような状況で行われることが一般的です。
- 自社の安全性を確認するとき
- 金融機関や投資家が融資や投資を検討するとき
- 新規取引先企業の支払能力を確認するとき
生産性分析
生産性分析とは、経営資源を投入したことで得られた付加価値や労働生産性を示す指標です。生産性分析には、付加価値額や労働生産性、労働分配率などの指標があります。
成長性分析
成長性分析とは、一定期間における企業の成長度合いを示した指標のことを指します。1年間でどれだけ成長したかを分析することが、一般的です。
成長性分析を行うことで、企業の伸びしろを判断できます。企業における成長は売上高や利益だけでは判断できません。売上高成長率、経常利益成長率、総資本成長率などの指標を用いて成長性を算出し、得られた数値が高いほど、成長率が高くなります。
経営資源の管理に役立つ手法
経営資源の管理に役立つ手法を2つ紹介します。
- KPI
- ミシガンモデル
KPI
KPI(key performance indicator)とは、設定した目標の達成度を評価するための指標です。KPIに設定する指標や目標には、経営戦略や財務計画などに関連していることや実現可能性の高いものを設定するようにしましょう。
KPIに設定するとよいものには、次のようなものが挙げられます。
- ROE(自己資本利益率)
- 原価差異
- 顧客満足度
- 月間の成約件数 など
ミシガンモデル
ミシガンモデルとは、米国・ミシガン州にある大学が発祥となるHRMのモデルです。ミシガンモデルは、次の4つの機能で構成されています。
- 採用
- 人事評価
- 人材開発
- 報酬体系
戦略的マネジメントに4つの機能を組み込み、人的資源の最大化を目指しつつ、会社の戦略と足並みが揃うように実務レベルに落とし込んでいくのが特徴です。
経営手法の見直しを検討するタイミング
経営手法の見直しを検討するタイミングには、次のようなものが挙げられます。
- 内部環境の変化
- 外部環境の変化
それぞれのタイミングについて理解を深めましょう。
内部環境の変化
1つめが内部環境の変化です。内部環境とは、次のようなものを指します。
- 自社が保有する資産:人材、資金、設備など
- 自社が提供する価値:商品、サービスなど
これらの内部環境が変化したときが経営手法を見直すタイミングといえます。見直しのタイミング例は、次の通りです。
- 人員体制の変化やビジネス環境の急速な変化などにより、策定した目標を達成できない場合
- 予想以上の売上減少などで資金繰りが悪化した場合
- ビジョンや具体的な方向性が変わることによって、計画が変わった場合
- 想定外の新たな設備投資の予定が必要になった場合
外部環境の変化
2つめが、外部環境の変化です。外部環境とは、文字通り自社を取り巻く外部の環境のことを指します。外部環境の変化として、次のようなことが当てはまります。
- 取引先の環境変化
- トレンドの変化
- 法改正・税制改正
- 人口動態
- 経済状況の変化
- 時代背景 など
これらは、社内でコントロールできない事象です。しかし、事業継続のためには外部環境の変化にも対応しなければなりません。日頃から市場や経済の変化を把握し、計画を練り直すなどの工夫が必要です。
経営手法の効果を最大化するポイント
経営手法の効果を最大化するためのポイントは、現状把握と目的・目標の設定です。
現状把握
まずは、自社が置かれている現状を把握することが大切です。SWOT分析を行って自社が置かれている現状を把握しましょう。そのうえで、ファイブフォース分析で自社の戦略が適切なものなのかどうかを確認してください。
目的・目標を定める
効果を最大化するためには、目的や目標を決めることが重要です。目的や目標を設定するうえでは、KPIの活用が有効です。KPIを適切に設定し、それに向かってできる施策を検討しましょう。
経営手法を適宜見直そう
経営が悪化する可能性は、どのような会社にもあり得ます。そのような状態に陥った際にも対処できるように、目的に応じた経営手法を把握しておくことが大切です。
経営手法を改善するときは、経営戦略の立案や財務分析、経営資源の管理の3つの視点から目的にあった手法を選択する必要があります。本記事で紹介した手法を参考に、適宜、経営手法を駆使しながら健全な企業運営が行えるようになりましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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