- 更新日 : 2025年11月6日
ウーバーイーツで法人化すべき基準は?メリット・デメリットや手続きを解説
ウーバーイーツの配達で報酬を得ている方の中には、法人化した方がいいのか迷っているという方もいるのではないでしょうか。そこで、法人化を検討している方のために、法人化するのに最適なタイミングやメリット・デメリットをご紹介します。
また、法人化しなくてもできる節税対策についても解説しますので、ぜひご覧ください。
目次
ウーバーイーツはいつ法人化すべき?
ウーバーイーツの配達で報酬を得ている方が法人化する場合、代表者一人で事業を行う「マイクロ法人(一人社長)」という方法もあります。マイクロ法人と個人事業主の違いを確認しておきましょう。
また、法人設立タイミングについてもご紹介します。どこを見て法人化を決めればいいのかを考えていきましょう。
個人事業主とマイクロ法人(一人社長)の主な違い
マイクロ法人とは、従業員を雇わず、代表者1人で事業を行う法人です。1人で事業を行う点は個人事業主と同様ですが、以下のような違いがあります。
届出が異なる
個人事業主は税務署に開業届を提出しますが、マイクロ法人は法人設立手続きとして法務局で法人登記をするか、オンラインにて申請を行います。
かかる税金が異なる
利益に対してかかる税金ですが、個人事業主は「所得税」、法人は「法人税」になります。そして、法人の場合、個人事業主にはない税制優遇が受けられる場合があります。
法人化を検討すべきタイミング
法人化を検討すべきかどうかに関しては、まず年収を見て判断します。年間の事業所得が800万円を超えてきたら法人化を考え始めるのを検討しましょう。年間の事業所得800万円未満であれば、個人事業主でいた方が税金を抑えられます。
なお、法人化には所得額や年収についての決まりはありません。年収がゼロであっても手続きすれば法人化は可能です。
ウーバーイーツが法人化するメリット
ウーバーイーツが法人化するメリットをご紹介します。
税制優遇
法人を設立し、役員として報酬を受け取る立場になると、給与所得控除が受けられ、所得税を抑えることができます。
信用力の向上
一般的に法人は個人事業主よりも信用度が高くなります。よって、取引先を増やす場合や金融機関からの融資を受ける際、個人事業主よりも有利になる可能性が高くなります。
責任の限定
会社の形態を「株式会社」または「合同会社」にすると、出資者は間接有限責任を負う人だけになります。資金繰りが悪化し、倒産した場合でも出資者まで破産することはありません。
社会保険の適用
個人事業主の場合、社会保険は国民健康保険や国民年金になります。しかし、法人の場合は、法人の健康保険、厚生年金になります。また、役員報酬を低く抑えることで、社会保険料を抑えることも可能です。
事業承継が容易
法人の事業承継は株式の引継ぎで行えます。一方、個人事業主の事業承継は全資産の引き継ぎが必要です。将来、誰かに事業を引き継ぐことと考えるのであれば、法人にしておいた方がよいでしょう。
経費にできる幅が増える
法人は個人事業主が計上できる経費だけでなく、報酬や賞与に関する費用、法人契約の生命保険料も経費にできます。経費の幅が増えるため節税対策にもなります。
ウーバーイーツが法人化するデメリット
ウーバーイーツの法人化にはメリットだけでなくデメリットもあります。こちらも確認しておきましょう。
設立費用
個人事業主が事業を始める場合、開業届を提出するだけで費用はかかりません。しかし、法人の場合、株式会社の設立で25万円ほど、合同会社の設立で10万円ほどの設立費用が必要です。
運営コスト
法人の経理は個人事業主の経理と比較すると煩雑になりがちです。日常業務の片手間にできないことも多いため、税理士に顧問料を支払い依頼するケースも出てくるでしょう。このように、運営コストは法人の方がかかる点には注意が必要です。
行政手続きの増加
個人事業主と比べ煩雑な確定申告や社会保険関連など、法人になると行政の手続きが増え、複雑になります。
社会保険料の負担
株式会社を設立すると、原則として社会保険に加入し、会社として社会保険料を負担する必要があります。
利益分配の制限
事業で利益が出た場合、個人事業主であれば全て自分で受け取れますが、株式会社といった法人の場合は、債権者への支払い分を確保しておく必要があります。全ての利益を株主に配れません。
法人税の納付
個人事業主は1年間の利益が出ていない場合、所得税がかかりません。しかし、法人の場合は利益が出ていなくても年間7万円以上の法人住民税が課税されます。
法人化する際の会社形態はどう判断すべき?
ウーバーイーツを法人化するのであれば、会社の形態を決めなければなりません。ここでは合同会社と株式会社の特徴をご紹介します。どちらが自分のニーズに合うかを考えてみましょう。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 信用度 | 高い | 株式会社と比較すると低い |
| 設立に関する費用 | 25万円ほど | 10万円ほど |
| 決算公告 | 公告義務がある | 公告義務はない |
| 税金 | 同じ | |
| 経営についての意思決定者 | 株主 | 出資者 |
ウーバーイーツが法人化する際に必要な手続き
ウーバーイーツで働く個人事業主が法人化する際に必要な手続きは以下のとおりです。ここでは簡単にご紹介します。
会社設立(法人化)に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
ウーバーイーツが法人化する際の注意点
ウーバーイーツで働く個人事業主が法人化する際の注意点も押さえておきましょう。
資本金を高くしすぎない
資本金が高いと信用力が上がり、金融機関の融資が受けやすくなるというメリットがあります。
一方で、資本金が高くなると設立の際にかかる登録免許税もそれだけ多く課税され、資本金が1,000万円を超えると1期目から消費税が課税対象となるのです。
役員報酬を適切な金額にする
役員報酬を抑えることで、社会保険料を抑えることができます。報酬を適切な金額にし、保険料を節約しましょう。
「ペーパーカンパニー」にならないよう注意する
売上がゼロでも法人の設立は可能です。ただし、売上がない状態が続くと税務署からペーパーカンパニーとみなされ、脱税や租税回避を疑われる可能性もあります。
法人化以外に考えられる節税方法
ウーバーイーツで働く人が個人事業主のままでできる節税についてご紹介します。
青色申告で確定申告する
開業届を出さずに個人事業主として働き、白色申告で確定申告することも可能です。一方、開業届を出して青色申告で確定申告すると、最大で65万円の特別控除が受けられますが、白色申告の場合、特別控除はありません。
青色申告の場合、赤字になった年度に確定申告を済ませれば、長くて3年間にわたり赤字の繰り越しができます。なお、繰り越しを利用して赤字状態になる場合があっても所得税がかかりません。
「経費」を上手に活用する
ウーバーイーツの仕事で使った費用を経費にすることで所得額を抑えることができます。例えば、以下の費用は経費として認められます。
- 配達に使った自転車やバイクに関する費用
- 連絡に使ったスマートフォンに関する費用
ただし、仕事に使っているものをプライベートでも使っている場合は100%経費とは認められません。仕事の記録をもとに、費用を仕事で使った部分とプライベートで使った費用の2つに分け、仕事で使った部分のみを経費として申告することになります。
ウーバーイーツ配達員の法人化における経営者の傾向
ウーバーイーツで法人化を検討する際、実際の法人設立者がどのような経路を選んでいるのか、参考となるデータを見ていきましょう。
半数以上が個人事業主から法人成りを選択
マネーフォワード クラウドで実施した調査によると、会社設立者1,040名のうち57.8%が会社設立前に個人事業主として事業を行っており、法人成りの形で会社を設立していることが明らかになりました。
特に設立間もない企業ほどこの傾向が顕著で、設立1年以内の企業では68.5%、設立2~3年以内の企業では75.2%と、近年では個人事業主からのステップアップとして法人化を選ぶケースが主流となっています。
出典:マネーフォワード クラウド、先輩起業家が一番困ったことは?【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)
ウーバーイーツ配達員における段階的な法人化アプローチ
このデータは、ウーバーイーツ配達員の法人化を考える上でも参考になります。多くの経営者が個人事業主として事業基盤を固めてから法人成りを選択しているという傾向は、ウーバーイーツ配達員にとっても有効なアプローチといえるでしょう。
まず個人事業主として配達業務を開始し、年間の事業所得が800万円を超えるタイミングで法人化を検討することで、リスクを抑えた事業展開が可能になります。個人事業主の期間に青色申告での確定申告や経費管理のノウハウを蓄積し、売上が安定してから法人化することで、給与所得控除による節税効果や社会保険の適用など、法人化のメリットを最大限に活用できるでしょう。
ウーバーイーツで法人化を検討する場合はメリット・デメリットも確認しよう
ウーバーイーツの配達で報酬を得ている方が個人事業主から法人化することは可能です。法人化すれば、社会保険料や税金の節約ができるため、売上が多くなり、税金などの負担が大変という方は検討してもよいでしょう。
法人化する場合は手続きに費用がかかり、会計処理や確定申告、社会保険料の手続きなど個人事業主のときよりも煩雑な手続きもあります。メリットだけでなくデメリットも理解してウーバーイーツの事業の法人化を検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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