- 作成日 : 2022年9月22日
子供・未成年は個人事業主になれる?税金や保険の扶養についても解説!
個人事業主とは、法人でなく個人で事業を行っている人のことです。税務署に開業届を提出する際、年齢制限はありませんから、子供や未成年でも個人事業主となることが可能です。
この記事では子供、未成年者が個人事業主となった場合の税金や社会保険の考え方について解説します。
目次
子供(未成年)は個人事業主になれる?
未成年者である子供であっても、個人事業者になれます。個人事業主になるための年齢制限はないものの、未成年者(18歳未満の者)が働くためには条件があります。
まず、民法第5条では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」とされ、この法定代理人とは一般にその子供の親が該当します。
そして、民法第820条では「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」とされています。さらに民法第823条では「子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。」とされています。
引用:民法 | e-Gov法令検索 第5条、第820条及び第823条
したがって、子供が職業に就くことを親が許可した場合に限り、その子供は個人事業者になれます。反対に親の同意がない場合には、子供は個人事業主にはなれません。
個人事業主になれる年齢は?
個人事業主になれる年齢は、特に定められていません。
しかし、18歳未満の場合、上記の民法第5条にもあるように契約を締結するなどの行為をする場合には、親など法定代理人の同意書や親が法定代理人であること証明する戸籍謄本などの提出が求められます。
個人事業主になっても、契約が交わせないと商取引は難しいため、親の同意と証明書提出は必須です。つまり子供は個人事業主にはなれても、単独では契約や取引は難しいと言えます。
子供(未成年)が個人事業主になる場合の手続き
個人事業主となる場合、まず税務署に開業届を提出します。開業届は正式名称「個人事業の開業・廃業等届出書」と言い、個人で行う事業に対していつから、どこで、どのような所得を得るのかなどを記載したもので、開業から1カ月以内に税務署に提出します。
参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁、個人事業の開業・廃業等届出書
また、地方税についても開業届にあたるものがありますので、税事務所などに提出しておきましょう。東京都の場合は、「事業開始等申告書(個人事業税)」という名称となっています。
参考:東京都主税局 事業を始めたとき・廃止したとき、(条例第26条関係)事業開始等申告書(個人事業税)
国税(所得税)は税務署、地方税(事業税)は税事務所と管轄が異なるので注意しましょう。
また、法律上(商法第5条)は、「未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。」とされています。
この前条とは、商人の定義がありますので、商人として営業する場合という意味です。
 しかしながら、この未成年者登記は2021年度においては全国で11件となっており、実際の登記件数は非常に少ないものとなっています。
開業届についての詳細は、以下をご覧ください。
子供(未成年)は扶養家族のまま個人事業主になれる?
一般に未成年者の場合の扶養とは、親などから経済的な支援を受けることです。扶養には、税務上の扶養や社会保険上の扶養などがありますので、個人事業主となった未成年者の扱いについて見てみましょう。
税金計算上の扶養
個人事業主である子供の親がサラリーマン、個人事業主のどちらであっても、確定申告時には所得控除を受けます。所得控除には、基礎控除、社会保険控除などとともに「扶養控除」があります。個人事業主となる子供であっても、要件を満たせば税務上の扶養を受けることは可能です。
親が扶養控除を適用するためには、その子供が16歳以上で、次のすべての要件を満たす必要があります。
税金計算上の扶養についての詳細は、以下をご参照ください。
社会保険上の扶養
この項目でいう社会保険とは、健康保険が該当します。すなわち、親の扶養家族となれれば健康保険に加入でき、健康保険料を支払わなくて済みます。親の健康保険の被扶養者要件については、加入している健康保険の組合などに問い合わせましょう。
ここでは、親がサラリーマンで全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している例を挙げておきます。協会けんぽでは、同居要件がないため、主として次のような要件を満たせば被扶養者となります。
- 配偶者・子・孫・兄弟などで、主として被保険者の収入によって生計を維持している場合
- (同居の場合)
 年間の収入が130万円未満*で、かつ、被保険者の年間収入額の2分の1未満である場合
 (同居でない場合)
 年間の収入が130万円未満*で、かつ、被保険者から援助された収入額より少ない場合
*ただし、個人事業主の年間収入について、収入から控除できる経費は、減価償却費などが差し引けないなど所得税の計算の必要経費とは異なりますので注意が必要です。
参考:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
開業後も扶養のままでいるべきか、外れるべきか
開業した子供が親の扶養にいるべきかどうかはケースバイケースです。例えば、学業優先としている場合などで、収入よりも経験値を積むことを考えた個人事業主であれば、親の扶養のまま様子を見ても問題ないでしょう。
しかし、高校生などでビジネスモデルも確立し、社会保険の収入基準を超えることが予定されているのであれば、国民健康保険への加入も考えなくてはなりません。親の年末調整の時期になって慌てなくてもよいように収入の目安は把握しておきましょう。
子供(未成年)であっても確定申告は必要?
個人事業主は支払うべき所得税額がある場合には確定申告しなければなりません。これは、年齢には関係ありません。「支払うべき所得税がある」とは、年間の所得から所得控除を差し引いた金額がプラスになる人という意味です。
青色申告者の場合には、「年間の所得から所得控除を差し引いた金額」は、事業の収入から必要経費を差し引いた後、「青色控除特別控除額」を差し引くことができます。確定申告には青色申告と白色申告がありますが、節税の観点から考えると青色申告が有利です。
また、業種によっては源泉徴収されている場合もありますので、還付申告によって払い過ぎの所得税が還付されることもあります。
詳しくは、以下をご参照願います。
子供が個人事業主になる場合の手続きや注意点を知って、開業しよう!
子供が個人事業主となった場合であっても、その子供の所得税や住民税に関することは、大人と同じと考えてよいでしょう。
また、その子供の親の確定申告などにおいては、扶養控除の可否は年末時点で判断することになりますし、社会保険上の扶養についても年間の収入などで決まりますので早めに把握できるようにしておきましょう。
よくある質問
未成年は個人事業主になれますか?
未成年でも個人事業者にはなれますが、未成年者が契約締結などの法律行為をするためには親の同意や証明などが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
未成年が個人事業主となる手続きは?
開業から1カ月以内に税務署に開業届を提出しますが、地方税についても開業届にあたるものがありますので税事務所に提出しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
未成年は扶養家族のままでよい?
その未成年の収入などによって、扶養家族としていられるかどうかが決まりますので親の確定申告・年末調整の前に見極めましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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