- 更新日 : 2025年7月25日
自宅開業のやり方とは?女性や主婦におすすめの起業アイデアと具体的な手続きを解説
近年は、感染症や多様な働き方へのニーズ、ICTの発展などによりテレワークをする人が増えました。テレワークによって自宅で仕事をすることのメリットに気付き、在宅起業を考えるようになった人も多いのではないでしょうか?
本記事では、自宅開業のやり方について説明しますので、必要な手続きも含めて知っておきましょう。
目次
自宅で開業できる仕事・起業アイデア
ここでは、具体的な自宅起業のアイデアをカテゴリ別にご紹介します。特別なスキルがなくても簡単に起業できる仕事から、専門性を活かす仕事まで様々です。
Web・IT系の仕事
パソコン一台あれば始められる仕事が多く、未経験から学習してスキルを身につける人も増えています。
- Webライター:企業サイトの記事やブログなどを執筆します。
- Webデザイナー:Webサイトのデザインや制作を行います。
- ITエンジニア・プログラマー:システム開発やアプリ制作を請け負います。
- 動画編集者:YouTubeなどの動画編集を代行します。
- ブログ・アフィリエイト:自身のブログで広告収入を得ます。
- オンラインアシスタント:企業の事務作業や秘書業務をオンラインで代行します。
- データ入力:指示されたデータをパソコンで入力する仕事です。
サロン・教室系の仕事
自宅の一室を利用して開業できるため、特に女性に人気の分野です。自宅サロンは初期投資を抑えられるのが魅力です。
- ネイルサロン:施術スペースがあれば開業可能。資格や実務経験があると有利です。
- マッサージ・セラピー:リラクゼーション、アロマテラピーなど。お客様がリラックスできる空間作りが重要です。
- エステサロン:フェイシャルやボディトリートメントなどを提供します。
- 料理教室:自宅のキッチンで少人数向けの教室を開きます。
- ピアノ・音楽教室:楽器のスキルを活かせます。防音対策が必要です。
- 書道・ペン字教室:字の書き方を通じて日本の伝統文化を教えます。
- 学習塾・家庭教師:子どもたちに勉強を教えます。オンライン指導も可能です。
制作・販売系の仕事
趣味や特技を活かして、自分の作品を販売する仕事です。
- ネットショップ:ハンドメイドアクセサリーやオリジナルグッズを販売。BASEやSTORESといった無料プラットフォームで手軽に始められます。
- イラストレーター:オリジナルのイラストを制作・販売します。
- カメラマン:商品撮影やプロフィール写真などを請け負います。
- ハンドメイド作家:アクセサリー、雑貨、洋服などを制作・販売します。
- フードクリエイター:自家製のパンやお菓子を製造・販売。菓子製造業許可など保健所の許可が必要です。
コンサルティング業・代行業
自身の経験や専門知識を活かして、顧客の課題を解決する仕事です。
- 各種コンサルタント:経営、Webマーケティング、SNS運用など専門知識を活かします。
- 家事代行・掃除代行:顧客の自宅を訪問してサービスを提供します。
- 翻訳・通訳:語学力を活かして活躍できます。
- ナレーター:自宅の録音環境を整え、音声コンテンツを制作します。
その他
- リサイクルショップ・古物商:自宅で商品を仕入れ、ネットで販売します。警察署から古物商許可を得る必要があります。
- ペットシッター:顧客のペットを預かります。動物が好きな方に向いています。
- 占い師:電話やオンラインツールを使って鑑定します。
- 便利屋:日常の小さなお困りごとを解決するサービスです。
自宅開業のメリット
ここまで見てきたとおり、自宅開業が可能な仕事はたくさんあります。では、自宅で開業するメリットとしては具体的にどのようなことがあるでしょうか?
少ない資金で開業できる
開業のために店舗や事務所を借りるとなると、保証金や敷金の支払いが発生しますし、机や応接セットなどもそろえなければならないでしょう。自宅で開業すれば、開業にかかる費用を抑えられます。
通勤に時間をかけなくてすむ
個人事業主は限られた時間内で段取りよく事業をすすめなければなりません。どこかへ通勤しなければならないとなると、そのための時間が無駄になってしまいます。自宅にいるまま仕事をすれば、通勤に使うはずの時間を有効活用できます。
好きな時間に仕事ができる
自宅開業の場合、自分の都合でスケジュールを組みやすくなります。昼間に時間が取れなかった日は、夜に仕事をするといったことも可能になります。
家事・育児・介護との両立が可能
小さい子どもがいる主婦にとっては、子どもの世話をしながら自宅で仕事ができると安心でしょう。介護が必要な家族がいて、外に働きに行くのが難しい人などにとっても、自宅開業は魅力です。
家賃などの固定費を抑えられる
開業による経費のうち、家賃は大きな比重を占めます。自宅開業の場合、店舗や事務所を借りた場合に必要となる家賃や光熱費がかかりません。毎月の固定費を削減できるので、その分利益が大きくなります。
自宅開業にデメリット
自宅開業はメリットばかりではありません。デメリットや注意点についても知っておきましょう。
店舗は改装が必要になることがある
自宅開業の場合、サロンや教室ならそれほど問題ないかもしれません。しかし、飲食店などの店舗を始めるとなると、自宅を改装する必要がある場合があります。
賃貸では開業できないことがある
自宅が賃貸住宅の場合、開業には基本的に家主の許可が必要です。賃貸借契約で事務所利用が不可となっている場合、勝手に開業すると契約違反になってしまうので注意しましょう。
住宅ローン控除が受けられなくなる可能性がある
住宅ローン控除の適用条件には、次のようなものがあります。
住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること
引用:No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
したがって、少なくとも床面積の1/2は居住目的でなければならないため、事業専有面積の割合が多くなると、住宅ローン控除を受けられません。
仕事とプライベートの区別がつけにくい
好きな時間に仕事ができるのはメリットにもなりますが、仕事とプライベートの境目がなくなり、家族に迷惑がかかることもあります。自宅だと気持ちがゆるみ、だらだらと仕事をしてしまう可能性もないとは言い切れません。自宅開業には、自己管理能力が必要になります。
対外的な信用が得にくい
事務所を借りずに自宅で仕事をしている場合、企業などからは信用されにくいというデメリットがあります。これは、事務所を借りられるほどの収益がないと判断されてしまうからです。
業種や地域にもよりますが、名刺に記載する住所がビルである方が、信用度は高い傾向があるでしょう。
自宅開業するまでの手続きと流れ
メリットとデメリットを考慮したうえで、「やはり自宅で開業したい!」と考える人は多いでしょう。以下、自宅開業の一般的な流れを説明します。
1. 事業計画を立てる
たとえ自宅開業でも、行き当たりばったりの起業では成功しません。開業を決めたら、事業計画を立てましょう。
事業計画では、コンセプトやターゲットを明確にします。資金が必要な場合にはどのようにして調達するかを考え、毎月の売上を予測し、利益がどれくらいになるかを計算しましょう。
2. 必要な資格や許認可を取得する
例えば、マッサージをするには「あん摩マッサージ指圧師」、まつげエクステの施術を行うには「美容師」等の資格が必要です。サロン系起業の場合、施術の内容が無資格でも問題ないかどうかを事前に確認しましょう。
その他にも、飲食店は「食品衛生法に基づく営業許可」取得のために保健所の許可が、リサイクルショップには「古物商許可」取得のために警察の許可がそれぞれ必要になります。事前に手続きを行っておきましょう。
3. 備品等をそろえる
仕事をするためのパソコンやプリンター、専用の電話などを用意します。お客さんを呼ぶ場合には、専用のスペースを設けましょう。
4. 集客の準備をする
集客のためのチラシを印刷したり、ホームページを制作したりします。
5. 税務署に開業届を提出する
開業したら1カ月以内に税務署に開業届を出す必要があります。確定申告で青色申告をしたい場合には、青色申告承認申請書も提出しましょう。
6. 銀行口座を開設する
プライベートのお金と事業資金が混同しないように、事業用口座は別に作っておきましょう。銀行によっては、開業届の控えを提出することで、屋号が入った口座を開設できます。
自宅開業に必要な資金の目安
「初期費用」と「運転資金」に分けて、自宅開業に必要な資金の目安を算定します。
初期費用
業種や事業規模によって大きく異なりますが、初期費用としては一般的に数万円から数百万円程度が目安です。
主な内訳は、必要に応じた自宅のリフォーム費用、事業用パソコンやソフトウェア、事務机・椅子といった設備機器、名刺やホームページなどの広告宣伝費、通信費用などが挙げられます。業種によっては専門機材、初期在庫の仕入れ費も必要です。
目安を立てる場合は、事業計画に基づき「いつ何が必要か」「どこまで投資を抑えられるか」を具体的に洗い出し、複数の見積もりを取ること等が重要となります。
運転資金
開業後の事業継続に必要な運転資金は、主として毎月の固定費(通信費、水道光熱費、消耗品費、広告宣伝費、外注費など)や、売上回収までの資金不足を埋めるために使います。
自宅開業では、家賃や高額な人件費はかかりませんが、目安としては月々の必要経費を算出して、最低でも3〜6ヶ月分を確保するのが一般的です。売上が安定するまでの期間や、回収までの期間を考え、余裕を持った資金計画を立てることがリスク回避につながります。
なお、初期費用、運転資金とも、生活費と事業費を分けて管理することが大切です。
自宅開業に必要な資金調達の方法
自宅開業における資金調達の方法としては、次のような方法があります。
金融機関からの融資
日本政策金融公庫や銀行、信用金庫などの金融機関から融資を受ける方法です。
計画的な返済が必要であり、審査に通過する必要がありますが、まとまった資金を調達でき、事業計画の審査を通じて事業の妥当性も確認できます。
補助金・助成金の活用
国や自治体が公募・実施する補助金・助成金制度を利用する方法です。
返済不要である点が大きなメリットですが、申請手続きや審査が必要で、交付までに時間がかかります(補助金は後払いとなります)。また、事業がそれぞれの制度目的に合致している必要もあります。
自己資金・親族や知人からの借入
自己の貯金や、家族や知人からの借入で資金を調達する方法です。
一般に返済や利息の負担が少なく、柔軟な条件で調達できる点が利点ですが、金額には限界があります。また、トラブルを避けるためにも契約内容を明確にしておくことが重要です。
自宅開業した場合の確定申告の注意点
自宅開業で利益が出ると、税金を支払う義務も生じます。自宅で開業するなら、確定申告のことも考えておきましょう。
開業後は毎年確定申告が必要
確定申告義務が生じるのは、原則として、事業所得から所得控除を差し引いた残額がある場合です。しかし、開業届を出した後は、所得にかかわらず、確定申告をした方がよいでしょう。
特に、青色申告の場合には、事業の赤字を3年間は繰り越しできるので、赤字でも確定申告するメリットがあります。通常2月16日から3月15日の間に確定申告しなければなりませんので、手続きを忘れないようにしましょう。
帳簿付けをして領収書類は保存しておく
事業を始めたら、日々の取引について帳簿に記録しておく必要があります。白色申告の場合には単式簿記(簡易簿記)で、青色申告の場合には複式簿記で記帳を行わなければなりません。忘れずに請求書や領収書を保存しておきましょう。
家賃や光熱費も経費に含められる
自宅開業の場合には、家賃や光熱費も仕事のためにかかる経費と考えることができます。ただし、プライベートで使用する分と事業で使用する分を分けて考え、確定申告時には、事業で使用する分のみを経費にすることができます。この区分わけのことを「家事按分」といい、時間や床面積などに基づいて適切な割合を使用する必要があります。になることを知っておきましょう。
家族が既に開業していても問題ない
他の家族が既に自宅で開業している場合、同じ住所で開業しても特に問題はありません。ただし、家賃や光熱費をそれぞれが二重に経費にすることはできませんので注意しましょう。
自宅のメリットを活かして開業しよう
起業するとなると、資金を用意したり店舗を探したりしなければならず、なかなか思うようにはいかないこともあります。自宅開業なら起業のハードルは大きく下がるため、検討してみましょう。
もちろん、自宅開業の場合でも、計画的に進めることが大事です。必要な手続きも怠らないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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