- 更新日 : 2021年5月6日
起業を考えているなら!知っておきたい開業費の節税ポイント10選
目次
開業費の定義
開業費は、会社設立後(設立登記手続終了後)から営業を開始するまでの期間に支払った諸費用です。
開業費には「会計上の開業費」と「税務上の開業費」の2種類があります。会計上の開業費の定義は広い意味での開業費ですが、税務上の開業費の定義は会社設立後から営業開始までに特有の支出です。
税務上の開業費には繰延資産として計上が可能という大きなメリットがあります。
今回はQ&A式に、節税するなら知っておきたい開業費についてご紹介します。
Q1.新しい名刺の作成費用は開業費に含まれるの?
印刷代やデザイン料など
新しい名刺の作成費用は開業費に含まれます。印刷代はもちろんですが、デザイン会社などに依頼して作るのであれば、その際のデザイン料なども開業費です。最初の名刺作成は会社設立後から営業開始までの特有案件です。それに伴う支出も特有の支出と言えます。そのため、この支出は税務上の開業費としての計上が可能なのです。
Q2.打ち合わせにかかった費用は開業費に含まれるの?
打ち合わせ費用も開業費
打ち合わせにかかった費用は開業費に含まれます。例えば飲食代や、会議室をレンタルしたのならそのレンタル料も、開業費として計上が可能です。打ち合わせにかかる費用の定義ですが、営業をすでに始めている企業であれば交際費や会議費などの勘定科目で計上される支払いになります。開業前であれば、これを開業費として計上できます。
ただし、この場合も重要なのは、その支出の特有性です。営業開始後の取引のための交際費や会議費、接待費などは特有性があるので狭義の開業費として計上できますが、社内における懇親会などの場合はできません。この懇親会の費用を開業費として計上したいのであれば、広義の開業費として計上するしかありません。
Q3.チラシなどの広告費は開業費に含まれるの?
営業開始前であれば開業費
チラシなどの広告費は開業費に含まれます。ただし、あくまで設立後かつ営業開始前であるのが条件です。
営業を開始してもチラシやポスター、パンフレットに職種によってはサンプルなど、広告に使うお金はたくさん出てきます。この場合の勘定項目は広告宣伝費となります。開業前の特別な広告宣伝費は、開業のために特別に支出した費用として認められるので、税務上の開業費としての計上が可能です。
Q4.調査費は開業費に含まれるの?
調査費も開業費として計上可能
調査費は開業費に含まれます。調査費は損益計算書では販売費および一般管理費に計上される勘定項目です。
調査費と一口に言っても内訳は色々です。商品・製品の販売状況、消費者の使用状況を調べる際に支払う業者への手数料も調査費(市場調査費)に当たります。あるいは新聞図書費といって、前述のような市場調査の名目で購入した書籍、業界紙なども調査費として処理ができます。これらも会社設立から営業開始にあたって、とても重要な支出ですので、狭義の開業費としての計上ができます。
Q5.Webサイトの構築費は開業費に含まれるの?
広義の開業費として計上
Webサイトの構築費は開業費に含まれます。しかし、広義である会計上の開業費に含まれます。
Webサイト構築の外注にかかる費用は本来であれば外注費か広告宣伝費に計上される経費です。また10万円以上のソフトウェアは減価償却資産と見なされますので、それ以上のプログラムを含んだサイト構築をすると、減価償却費として計上しなければなりません。
減価償却資産の購入等には会計上の開業費も適用されません。もしソフトウェア単体では10万円未満なのであれば、発注先にその他の料金と分けて領収書を発行してもらいましょう。これは会計上の開業費として処理が可能です。ただし狭義である税務上の開業費としての計上は出来ないので注意しましょう。
Q6.業務に使う備品は開業費に含まれるの?
備品は恒常的な支出
業務に使う備品は広義の開業費に含まれます。会社を設立してもボールペンもセロハンテープもコピー用紙もなかったら、なかなか仕事になりませんよね。
確かに設立後、営業開始前の経費は開業費ですから、この支払は開業費に計上されます。しかし、これらの消耗品の代金はこれからも使う恒常的な支出ですので、特別な支出とは言えません。よって広義では開業費であるものの、狭義では開業費ではないのです。
Q7.電話やインターネットなどの通信費は開業費に含まれるの?
通信費は広義の開業費
電話やインターネットなどの通信費は広義の開業費です。情報社会である現在、会社で事業を始めようとするときに、電話やインターネットがなければ多くの場合、経営はかなり厳しい事態を迎えるでしょう。つまり、会社を設立後から営業開始前までに必要な経費ではあります。
しかし、通信費は営業開始後も経常的に支出される費用です。そのため狭義の開業費とは認められないのです。これは、電話工事費用やインターネットを引くための工事費用なども同様です。
Q8.電気・ガス・水道などの費用は開業費に含まれるの?
恒常的な支出として計上
電気・ガス・水道などの費用は狭義の開業費に含まれません。もちろん営業開始前にも水は使いますし、ガスコンロも使うかもしれませんし、電気も使わなければ仕事にはなりません。ですが、これも経常的な支出です。会社設立後から営業開始までに特有な支出のみが税務上の開業費としての計上を許されるのです。水道光熱費は広義の開業費であっても、狭義の開業費にはなりません。
Q9.保険に関する費用は開業費に含まれるの?
保険も恒常的な支出
保険に関する費用は広義の開業費です。これは通常の勘定科目ですと保険料に含まれます。
企業は掛け捨て、期間1年以下の保険に役員や従業員を加入させるのが普通です。保険の種類は生命保険や損害保険などが一般的です。従業員がトラブルに巻き込まれた際の、セーフティーネットを用意するためです。この保険料は経常的に支払われるため、広義の開業費ですが、狭義の開業費にはなりません。
Q10.開業費に含まれないものの例は?
創立事務所の貸借料
広義の開業費ではあるものの、やはり狭義の開業費にはなれない支出の中で、よく混同されるのが創立事務所の貸借料でしょう。
ただし、事務所の家賃というものは、営業開始後もずっと支払っていくものです。そのため会社設立後から営業開始までに特有な支出とは言えないため、税務上は開業費として計上できないのです。
まとめ
狭義の開業費であるメリット
狭義の開業費は繰延資産として計上が可能です。これは開業費として発生した損金を、任意の事業年度に任意の金額を償却して、課税所得の低減に活用できます。
繰延資産には他にも創立費や開発費、株式発行費に社債発行費、新株予約権発行費なども含まれます。これを利用すれば黒字化した後も節税効果を期待できるでしょう。
広義の開業費は、事業開始初年度に全額償却するか、均等償却することになります。税務上の開業費と会計上の開業費、この2つの違いをしっかりと理解したうえで、税金対策に役立てましょう。
よくある質問
開業費の定義とは?
開業費は、会社設立後(設立登記手続終了後)から営業を開始するまでの期間に支払った諸費用です。詳しくはこちらをご覧ください。
新しい名刺の作成費用は開業費に含まれるの?
新しい名刺の作成費用は開業費に含まれます。印刷代はもちろんですが、デザイン会社などに依頼して作るのであれば、その際のデザイン料なども開業費です。詳しくはこちらをご覧ください。
打ち合わせにかかった費用は開業費に含まれるの?
打ち合わせにかかった費用は開業費に含まれます。例えば飲食代や、会議室をレンタルしたのならそのレンタル料も、開業費として計上が可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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