• 作成日 : 2025年9月16日

新NISAで節税するには?個人事業主・会社員の賢い使い方を解説

NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益に税金がかからない仕組みで、効率的な資産形成と実質的な節税を実現できる制度です。2024年からは新NISAとして制度が拡充され、非課税期間の無期限化や年間投資枠の拡大、生涯非課税枠の導入など、長期投資に適した設計となりました。

本記事では、NISAが節税につながる理由や制度の基本、個人事業主・会社員それぞれの活用法を解説します。

NISAによる節税の仕組み

NISA(少額投資非課税制度)は、投資による利益に課される税金を非課税にすることで、効率よく資産を増やすことができる制度です。運用益がまるごと手元に残ることから、実質的な節税効果が期待できます。ここでは、NISAがなぜ節税につながるのか、基本的な仕組みとルールを解説します。

運用益が非課税になる

NISAの最大の特徴は、投資によって得られる利益に税金がかからないことです。通常、株式や投資信託などで得た売却益や配当金には約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が課されます。しかし、NISA口座内で運用した場合、その利益には一切課税されません。たとえば、100万円の運用益を得た場合、通常であれば約20万円の税金が引かれますが、NISAを利用すればこの20万円がそのまま自分の資産となります。これにより、実際の手取りが増え、資産形成を有利に進めることが可能になります。

利用できる投資商品と投資上限額のルール

NISAには、非課税対象となる金融商品や投資できる金額に制限があります。2024年から始まった新NISAでは、年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税で投資が可能です。生涯の非課税保有限度額は1,800万円とされており、そのうち成長投資枠の上限は1,200万円までと定められています。これらの投資枠を利用して購入した商品から得られる利益は、非課税期間中であればどれだけ増えても税金がかかりません。また、非課税期間に売却した場合、翌年以降に売却額分の投資枠が再利用できるという柔軟な仕組みも導入され、長期的に節税メリットを得られる制度へと進化しています。

新NISAと旧NISAの違い【2024年制度拡充】

2024年からスタートした新NISA制度は、従来のNISA(一般NISA・つみたてNISA)と比べて制度が拡充されています。ここでは旧制度との違いを整理し、節税効果がどう進化したのかを解説します。

非課税期間が無期限に

旧NISAでは、一般NISAは最長5年間、つみたてNISAでも20年間という非課税期間が設定されていました。これに対して新NISAでは、非課税で保有できる期間が無期限となり、制度の終了期限も撤廃されました。つまり、投資後にいつ売却しても、その間の値上がり益や配当金が非課税のまま保たれる仕組みです。制度が恒久化されたことで、短期的な売買を前提とせず、将来に向けてじっくりと資産形成に取り組める安心感が得られます。

年間投資枠の拡大と併用が可能に

新NISAでは、年間に非課税で投資できる金額が最大360万円まで拡大されました。この枠は「つみたて投資枠」120万円と「成長投資枠」240万円で構成されており、両方を同一年に併用できるという柔軟な制度設計になっています。例えば、月々一定額を投資信託で積み立てながら、別枠で個別株式への投資も行うことが可能です。これにより、リスク分散や運用目的に応じた資産配分がよりしやすくなっています。

生涯非課税枠1,800万円の新設

さらに、新NISAでは生涯非課税投資枠(生涯投資枠)として1,800万円の上限が新たに導入されました。そのうち、成長投資枠は最大1,200万円までという制限がありますが、投資を続けていく中でこの枠を埋めた場合でも、NISA口座内で保有していた商品を売却すると、その商品を取得した際の価格(簿価)にあたる投資枠が翌年以降に復活して再利用できる仕組みになっています。

つまり、一度きりの投資ではなく、枠を使い回しながら長期的に非課税運用を継続できるという点も大きな変更点です。旧制度(2023年まで)のNISA口座で保有している商品は、新NISAの非課税投資枠とは別枠で、当初定められた非課税期間が終了するまで非課税で保有し続けることができます。

各金融機関から届く通知や説明資料を確認し、新制度に合わせた運用計画を立てていきましょう。

個人事業主がNISAを活用して節税するメリット

個人事業主にとって、NISAは事業とは別に資産形成を進めながら、運用益を非課税にできる制度です。所得控除は受けられませんが、手取りの増加や長期的な資産効率の向上という形で実質的な節税につながります。ここでは主なメリットを見ていきます。

運用益が非課税で手取りが増える

NISA口座で得た株式や投資信託の売却益・配当金は、通常かかる約20%の税金が非課税になります。たとえば100万円の利益を得た場合、通常であれば20万円程度が税金として差し引かれますが、NISAではこれがそのまま手元に残ります。事業収入とは別の収益として、可処分所得の向上に役立ちます。

iDeCoとの併用でライフプランに応じた節税が可能

NISAは自由に引き出せる反面、所得控除の対象にはなりません。一方、iDeCoでは掛金が全額所得控除となる一方で、原則60歳まで資金を引き出せないという制限があります。両制度をうまく使い分けることで、流動性と節税効果を両立できます。短期・中期の資産形成にはNISA、老後の備えにはiDeCoという併用が有効です。

所得が増えたら法人化も視野に入る

課税所得が800万円を超えるようになった個人事業主は、法人化によって税率を下げる選択肢も見えてきます。法人税所得金額に応じて税率が変動しますが、所得水準によっては個人の所得税よりも税負担を低く抑えられる場合があります。また、資本金1,000万円未満で設立した場合など、一定の要件を満たせば設立から最大2年間は消費税の納税が免除される制度もあります。

NISAによる非課税投資と法人化による所得圧縮を併せて活用すれば、より高い節税効果が期待できます。

個人事業主がNISAで節税する際の注意点

NISAは税制上優遇された制度ですが、事業と私的資産運用の線引きや、法人化に伴う制度の違いなど、いくつかの注意点もあります。

NISAの拠出は経費にならない

NISA口座への投資は、個人の資産運用とみなされるため、事業の必要経費としては計上できません。帳簿には載せず、個人の支出として区別する必要があります。税務処理を誤ると申告ミスとなる可能性があるため、注意が必要です。

法人化した場合はコストや手間が伴う

NISAはあくまで個人向けの制度です。法人化した後もNISAを利用する場合は、事業主個人として口座を継続することになります。法人での資産運用には別の制度が適用されるため、節税方針の見直しも必要になります。

法人化には節税効果がある反面、社会保険の加入義務や法人住民税の均等割、会計処理の煩雑さといったデメリットもあります。小規模事業者の場合、むしろコストが増えることもあるため、収益状況や事業の安定性を見極めて判断することが大切です。

会社員がNISAを活用して節税するメリット

会社員は給与から自動的に源泉徴収が行われるため、日常的に節税を意識する機会が少ないかもしれません。しかし、NISAを活用すれば、投資によって得た利益に対する税金を抑えることができ、結果として手取り資産を増やす効果が期待できます。ここでは、会社員がNISAを利用することで得られる節税効果を紹介します。

運用益が非課税で資産が効率よく増える

NISAを使う最大のメリットは、投資で得た利益に税金がかからないことです。通常の課税口座で株式や投資信託を運用した場合、得られた利益には約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。しかしNISA口座であれば、この税金がすべて非課税になります。

100万円の売却益が出た場合、課税口座では約20万円が税金として差し引かれますが、NISA口座を使えばその全額が自分の手元に残ります。給与からの税金を減らすのは難しい会社員でも、NISAを活用することで、運用益に関する税金を抑えながら実質的な節税が可能になります。運用次第では、給与以外の手取り収入を効率よく増やせる手段になります。

少額投資から始められるため初心者でも安心

NISAは金融機関によっては月々100円や1,000円といった少額からでも始められるため、投資初心者でも取り組みやすい点が魅力です。新NISAの「つみたて投資枠」では、年間120万円(月最大10万円)の非課税枠が設定されており、長期的な資産形成を目的とした積立投資が推奨されています。

銀行預金の利息が低い中で、NISAを活用して投資信託などを運用すれば、将来的なリターンに大きな差が出る可能性があります。また、NISA口座で得た運用益については確定申告が不要で、源泉徴収も行われないため、会社員でも税務面での煩雑さを感じずに運用できるのも大きな利点です。

会社員がNISAで節税する際の注意点

NISAは便利な制度ですが、誤解や見落としも起こりやすい点があります。

所得税や住民税を直接減らす制度ではない

NISAの節税効果は、運用益や配当金が非課税になる点にあります。あくまで「利益に対する課税を回避する制度」であり、ふるさと納税やiDeCoのように所得控除によって所得税や住民税そのものを減らす制度ではありません。そのため、投資利益が出なければ節税効果も実感しにくいという側面があります。

また、NISAは1人1口座であることや、年間および生涯の投資上限額が決まっているため、無制限に非課税運用できるわけではありません。短期売買を繰り返すというよりは、長期的な資産形成に向いている制度であることを理解して利用する必要があります。

投資リスクを踏まえた商品選びが必要

NISAは税制面で有利な制度ですが、元本保証はありません。運用先の商品によっては、元本割れのリスクもあるため、商品選びには慎重さが求められます。とくに株式やハイリスクの投資信託を選ぶ場合は、価格変動リスクを理解したうえで無理のない範囲で投資することが大切です。

NISAで損失が出た場合でも、課税口座と違って損益通算や損失の繰越控除はできません。そのため、NISA口座の運用は基本的に「余剰資金での長期投資」を前提とした使い方が推奨されます。

NISAとiDeCo・小規模企業共済の併用による節税効果

NISAは運用益が非課税となる制度ですが、iDeCoや小規模企業共済のように掛金が所得控除の対象となる制度と組み合わせることで、節税効果をさらに高めることが可能です。

NISAは運用益の非課税、iDeCo・共済は所得控除が魅力

NISAは、投資で得られた利益がすべて非課税になる点が最大のメリットです。これに対し、iDeCoと小規模企業共済は、拠出した掛金が全額所得控除の対象となります。控除額の上限は、iDeCoでは加入者の区分によって異なり年間14.4万円~最大81.6万円、小規模企業共済では年間最大84万円です。節税インパクトは大きく、特に高所得者ほどその効果が顕著になります。

資金の拘束性と目的に応じた使い分けを

iDeCoと共済は原則60歳まで資金を引き出せないため、老後資金の準備に適しています。一方NISAはいつでも引き出せるため、中長期の資産形成や将来のライフイベントに備える目的に向いています。したがって、生活に余裕があり、長期での運用を見込める場合はiDeCo・共済の活用を優先し、ある程度の流動性を持たせたい場合はNISAを併用するというバランスが理想的です。目的と期間を明確にして、制度を効果的に組み合わせましょう。

NISAを活用して、賢く節税と資産形成を進めよう

NISAは、投資で得た利益に税金がかからないという特徴を持ち、少額からでも始められる手軽さと、長期的な資産形成に適した制度設計が魅力です。2024年からは新NISAとして非課税期間が無期限化され、年間投資枠や生涯非課税枠も大きく拡充されました。個人事業主にとっては事業とは別の資産運用の手段として、会社員にとっては給与以外の手取りを増やす選択肢として、NISAは効果的に活用できます。長期的な視点を持ち、無理のない範囲でNISAを活用していきましょう。


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