• 作成日 : 2025年3月3日

個人事業主SEとは?開業までの流れや経費、確定申告のやり方について解説

個人事業主SEは収入の増加や自由度の高さなどのメリットがありますが、収入の不安定さなどのデメリットもあります。本記事では、個人事業主SEの業務内容や平均年収、働き方、検討すべきタイミング、経費、個人事業税を支払う必要があるかどうかなどを解説します。

個人事業主SEとは

個人事業主SEと会社員SEは、働き方が変わっても大きく仕事内容が変わることはありません。

そもそもSE(システムエンジニア)は、システム開発における幅広い工程に携わる職種のことです。個人事業主SEとは、会社員として勤務するのではなく個人事業主として働くSEを指します。特定の組織に属さずにフリーランスとして働くため、フリーランスSEとも呼ばれることがあります。

会社員として勤務するSEの方のなかには、一定の経験を積んだ後、将来的に独立を考えている方もいるでしょう。ここでは、個人事業主SEとして働いた場合の業務内容や平均年収を解説します。

業務内容

個人事業主SEは、システム開発において「要件定義」から「基本設計」「詳細設計」「テスト」「保守運用」に至るまでのさまざまな工程に携わります。それぞれの業務内容は、以下のとおりです。

<要件定義>

顧客の現状や問題を聞いてどのようなシステムを作るかを具体化します。必要な作業期間・作業人数・動作環境などを算出し、見積もりを作成します。

<基本設計>

顧客が求める要件を設計書にまとめる工程です。設計する内容は、画面レイアウト・基本機能・帳票レイアウトなどがあります。

<詳細設計>

決定したシステムの概要の実現に向けて、コンピュータ側で必要な処理や仕組みを考える工程です。

<テスト>

プログラマーがプログラミング開発をしてから、完成したプログラムをテストしてバグがないかなどを確認する工程です。バグがあれば、SEがプログラムを修正するケースもあります。

<保守運用>

顧客にシステムを納品後、トラブル対応や定期メンテナンスを行います。システムに関係する変更がある場合には、それにも対応が必要です。

ただし、実際に任される仕事は個人事業主SEのスキルや経歴などでも異なります。

平均年収

個人事業主SEの年収は、対応する案件の内容や受注件数などで変化します。本人のスキルや経験・年齢・案件の内容によって違うものの、独立したSEに対する1プロジェクトあたりの報酬の相場は50万~100万円程度のようです。個人事業主SEの平均年収は、600万〜960万円ほどだと考えられるでしょう。

一方、会社員SEは約500万〜550万円が平均年収だといわれています。会社勤務のSEと比較すると、個人事業主SEのほうが高収入を狙えるケースが多いようです。

年齢別で見ると、40代の個人事業主SEの平均年収が860万円前後と、とくに高額です。ただし、20~30代でも多く稼ぐ個人事業主SEがいるなど、自分の技術力や経験が年収に直接的に反映されやすいといえるでしょう。

とくに、優れたスキルを持つ方であれば、個人事業主SEとして独立することで、さらなる年収アップを期待できます。

個人事業主SEの働き方

個人事業主SEとなるならば、多くの場合個人事業主としての開業届を提出し、業務委託として仕事を請け負います。個人事業主SEの働き方の種類は「準委任契約を締結して客先常駐する」か「請負契約を締結して自宅で働く」かが基本です。

それでは、個人事業主SEの働き方である「客先常駐」と「在宅」の2つのパターンに分けて、メリット・デメリットを確認しましょう。

準委任契約を締結して客先常駐する

客先常駐する場合、「委託先の企業と準委任契約を締結して働く」ケースと「フリーランスエージェントと準委任契約を締結して働く」ケースがあります。

どちらにしても自宅ではなく客先で働くこととなりますが、異なるのは準委任契約を締結する相手です。また、客先常駐ではなく客先に出向するケースもあります。

客先常駐するメリットは、上流工程を含むさまざまな案件に対応できる点です。仕事内容によっては在宅で作業できなくもないものの、情報漏洩のリスクが高まるため、大企業の案件ほど客先常駐するパターンが多いです。また、上流工程の案件はメンバー同士でのコミュニケーションが大切であることもあり、客先で仕事する傾向にあります。

デメリットは、客先に行かなくてはならない点です。自宅で働く場合に比べれば自由度が低くなるといえるでしょう。

請負契約を締結して自宅で働く

近年、リモートワークが推進されたことでフリーランスをこころざす方が増えました。リモートワークで働きたい方にとっては、請負契約を締結して自宅で働く方法は魅力的な働き方だといえるでしょう。

この場合のメリットはもちろん、客先に向かわなくても在宅で作業を行えることです。ワークライフバランスを重視したい方におすすめです。

一方、在宅での作業は情報漏洩のリスクが高まるため、対応できる案件が減ってしまうことがデメリットだといえるでしょう。対応できる案件が少なくなることにより、自分がやりたい仕事が請け負えない可能性があります。

なお、在宅型の案件はプログラミング作業の案件が多い傾向にあります。

個人事業主SEとして働くメリット・デメリット

会社員SEとしてではなく、独立して個人事業主SEとして働くメリット・デメリットは以下のとおりです。

<個人事業主SEとして働くメリット>

  • 会社員時代よりも高収入を得やすい
  • 仕事や時間の自由度が高い
  • SEとしての経験値が上がる
  • 使ったお金を経費にできる
  • 自分の裁量が増える

<個人事業主SEとして働くデメリット>

  • 収入が不安定になる
  • 労働基準法で守られない
  • 福利厚生が充実していない
  • 社会的信用を得ることが難しい
  • 本業以外の業務を行う必要がある
  • 受注する仕事が偏りすぎると、トレンドに取り残される可能性がある

個人事業主SEとして働くほうが、会社員時代よりも高収入を得やすいといわれています。また、仕事の内容や仕事相手、働く時間などを、自分で好きに選択可能です。たとえば「無理難題をいうような相手であれば、案件を受注しない」という選択もできます。

同じ分野の案件を集中的に受注できるため、専門的なスキル・経験値を得やすいです。リモートワークが広まったため、以前よりも自由度の高い働き方を実現しやすくなったのもメリットだといえるでしょう。

一方で、労働基準法の対象外であるため、報酬の支払いや業務範囲などの契約内容は自分で慎重に確認しなければなりません。自由な働き方ができる分、法定福利厚生を受けられなかったり、契約期間終了後に自分で新たな案件を探さなければならなかったりします。

個人事業主SEとして働くと社会的信用を得にくいため、ある程度の収入があってもクレジットカードの審査に落ちる可能性が高まってしまうのもデメリットです。また、営業活動や経理作業など、SEとしての仕事以外の業務も自分で行うことになります。

SEが個人事業主として働くことを検討すべきタイミング

一般的に、個人事業主SEとして働く際には、システム開発における上流工程の業務をすぐに担えるようなスキルや経験が求められます。未経験でいきなり個人事業主SEとして働こうとするのは難しいでしょう。

基本的には、ある程度の経験を持っている方のほうが、多くの案件を受注しやすくなります。要件定義・基本設計・詳細設計などの上流工程以外に、コーディング・テスト・デバッグ・保守・メンテナンスといったプログラマーの領域も含めた経験やスキルを手に入れてから検討するケースが多いようです。

具体的には、会社員として5年以上のSE経験を積んだタイミングで独立を検討すると、安定して仕事を請け負いやすくなるでしょう。

個人事業主SEになるまでの流れ

それでは、実際に個人事業主SEになるまでの流れを確認しましょう。

案件獲得のための準備

個人事業主SEになるまでに、独立後の案件獲得のために準備しておくべきこととして、人脈の確保やスキルアップ、ポートフォリオの作成などが挙げられます。幅広い人脈を持ち、それを活かせる人間関係があれば、独立したあとも仕事をもらいやすくなるでしょう。

SEは会社員として勤務しているときからクライアントと関わることが多いです。会社員SEのうちから独立後を見越して、信頼してもらえるような仕事をして人脈を築けるように心がけましょう。

また、個人事業主SEとして案件を獲得するには、スキルアップや営業力・交渉力、コミュニケーション能力、自己管理能力なども必要です。自分の能力を磨き、うまく実績などを企業にアピールできるように、ポートフォリオの作成やスキルの棚卸しをしておきましょう。ニーズの高い分野の開発を経験する、資格を取得するなどの取り組み次第で、個人事業主SEになってから高単価な案件を受注しやすくなるでしょう。

社会保険に関する手続き

退職後は、自分で社会保険に関する手続きをする必要があります。社会保険から国民健康保険への変更手続きと、厚生年金から国民年金への変更の手続きを行いましょう。

開業届の提出

個人事業主として開業するため、開業届などの提出も必要です。

所轄税務署に、「個人事業の開業届・廃業届」と「青色申告承認申請書」を提出します。同時に提出可能ですので、どちらもあわせて提出しておくとよいでしょう。

個人事業主SEが経費として計上できるもの

個人事業主SEが経費として計上できる項目の例は、以下のとおりです。

  • セミナーへの参加費用
  • 書籍の購入費用
  • 交通費
  • 交際費
  • (自宅で作業している場合)家賃や光熱費・インターネット代の一部

これらのように、事業に関わることに使ったお金であれば経費として計上できます。

個人事業主が経費にできるものの詳細は、以下を参考にしてください。

個人事業主SEは個人事業税を支払う必要がある?

個人事業税とは、地方税法などで定められた事業をする方が各都道府県に納める地方税のことを指します。一般的に、準委任契約による個人事業主SEなどは非課税です。

個人事業税の支払いに関してさらに詳しく確認したい場合は、各都道府県が設置している窓口に問い合わせてみましょう。

個人事業主SEの確定申告

最後に、個人事業主SEの確定申告の必要書類や手続きの流れを解説します。確定申告書を提出できる時期は、例年であれば2月16日~3月15日です。確定申告では、自分で収入を計算し、納税する手続きを行います。

必要書類

確定申告では、帳簿・領収書・レシートなどの証拠書類、源泉徴収票マイナンバーカード、金融機関の口座情報などが必要です。控除を受ける場合には、保険料控除明細書・医療費控除の明細書・寄附金の受領証なども用意しておきましょう。

手続きの流れ

これらのような必要書類を用意したら、確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書、固定資産台帳を作成します。青色申告決算書と収支内訳書は、それぞれ以下の場合に必要となる書類です。

<青色申告決算書>

青色申告をする場合に必要な書類

<収支内訳書>

白色申告をする場合に必要な書類

その後、作成した書類などを税務署に提出し、実際に納税や還付の手続きを行います。

確定申告の手続きの詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

個人事業主SEになることも検討してみよう

会社員として勤務するSEの方のなかには、個人事業主SEとしての働き方が気になっている方もいるでしょう。

個人事業主SEとして働くことには、メリットもデメリットもあります。メリットは「会社員時代よりも高収入を得やすいこと」「仕事や時間の自由度が高いこと」などです。たとえば、もしも仕事を受けたくないと感じるようなクライアントがいた場合に、自分の裁量で断れます。

一方、個人事業主SEとして働くデメリットは、「収入が不安定になること」「労働基準法で守られないこと」などがあります。

今回ご紹介した内容を参考にして、個人事業主SEになることも検討してみましょう。


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