- 作成日 : 2024年9月20日
海外FXで法人化は可能?法人口座の作り方やメリット・デメリットを紹介
FXで利益を安定的に得られるようになると、法人化を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、海外FXの場合、果たして法人化はできるのでしょうか。
この記事では海外FXで法人化を検討すべきタイミングや法人化のメリット・デメリット、法人口座を開設する際の注意点についてご紹介します。
目次
海外FXで法人化は可能?
結論からいうと、海外FXで法人化することも可能です。ただし、法人化した方がいいケースと、個人事業として展開した方がいいケースがあります。まずは法人化を検討するタイミングについて考えてみましょう。
法人化を検討すべきタイミング
海外FXで、ある程度安定的に利益が得られるようになったタイミングで法人化を検討してみましょう。個人の場合は所得税を支払っており、所得税の税率は5%~45%で課税所得によって決まる累進課税となっています。一方、法人の場合は法人税を支払うことになり、税率は原則23.2%です(※普通法人の場合)。
所得が低い状態であれば法人税よりも所得税の方が税率は低いですが、所得が高くなると所得税の方が法人税よりも税率が高くなってしまうという逆転現象が起こります。毎年の課税所得がおおむね800万~1,000万円くらいになったタイミングで法人化を検討してみましょう。
法人口座に対応した主な海外FX業者
法人として取引を行う場合、法人口座を開設する必要があります。しかし、全ての海外FX業者が法人口座の開設に対応しているわけではありませんので注意が必要です。
今使っている業者が対応していない場合は、個人のまま取引を継続するか、法人口座の開設に対応している業者に変更する必要があるでしょう。以下の海外FX業者であれば法人口座が開設できます。
- FXGT
- Titan FX
- BigBoss
- AXIORY
- HFM
- Vantage
- Three Trader
(※2024年8月8日の時点の情報)
海外FXで法人化するメリット
海外FXで法人化するメリットには以下のような事柄が挙げられます。
税負担を軽減することができる
前述のとおり海外FXの所得税率は累進課税が適用されるため、利益が多くなれば所得税よりも法人税の税率が低くなるという逆転現象が起きます。
なお、国内FXで発生した利益は、「先物取引に係る」雑所得として扱われ、一律で申告分離課税20%(内訳:所得税15%+住民税5%)が発生します。そのため、国内業者を使っている場合は利益が出ていても個人のままの方が適切というケースがあるのです。
また、法人の場合は役員報酬や社宅の家賃、出張費用など、計上できる経費の領域が広いのも特徴となっています。
厚生年金に加入できる
個人事業主の場合は、1階部分の国民年金だけに加入しますが、法人化すれば2階部分の厚生年金にも加入するため、将来の年金額はその分、多くなります。
赤字を10年間繰り越すことができる
個人事業主の場合、青色申告をしていれば欠損金を3年間繰り越すことができます。たとえ赤字が出たとしても、3年しか控除を受けることができません。一方、法人の場合も個人事業主と同様、青色申告が要件ですが、欠損金については10年間計上することが可能です。
含み損も計上できる
個人の場合、課税されるのは利益確定して得た利益のみであり、法人の場合は含み益や含み損も課税対象です。そのため、含み損を抱えたポジションを保有している場合は税負担を軽減できます。
社会的な信用が向上する
法人化すれば社会的な信用が高くなります。例えば、融資の審査が通過しやすくなる、人材を採用しやすくなる、新しいビジネスを始める際に取引先を見つけやすくなるなど、さまざまな面で個人事業主よりも法人化した方が有利に進む可能性があります。また、クレジットカードを作ったりローンを組んだりする際にも、やはり法人化した方が有利です。
海外FXで法人化するデメリット
海外FXで法人化することで上記のようなさまざまなメリットが得られますが、デメリットも少なからずあります。
開業に手間や費用がかかる
個人事業主で開業する場合は税務署に開業届を出すだけで済み、手続きに費用もかかりません。一方、法人を設立する場合は法務局に法人登記の手続きを行う必要があります。定款や登記申請書などの複数の書類をそろえなければなりません。また、登録免許税や定款作成費用、印紙代、司法書士への報酬などで、約20万円~30万円程度の費用が必要となります。
保険料の負担が重くなる
法人の場合、社会保険の強制適用事業所であり、従業員を雇用する場合、事業主も保険料を負担しなければなりません。
お金を自由に使えなくなる
個人事業主は事業を行うのが個人単位であるため、得られた利益は自由に使えます。法人化すれば、経営者と法人は別の扱いになるため、経営者であっても会社のお金を自由に使うことはできません。そのため、経営者の生活費やプライベートな支出は法人から支払われる役員報酬から賄う必要があります。実際に法人化するよりも自由に使えるお金が減ったという経営者の方も少なくないようです。
含み益にも税金がかかる
前述のとおり法人の場合は含み損益にも課税されます。含み損を計上することで所得を圧縮できる一方で、含み益が出ていればその分税金を支払わなければなりません。個人事業主であればたとえば含み益が出ているポジションを利益確定しないことで、その年の利益を圧縮するという手段がありますが、法人の場合はそうした調整ができません。
海外FXで法人化すべきか検討するポイント
まずは海外FXで年間どれくらいの利益が出ているかを検討しましょう。前述のとおり、国内FXであれば利益は雑所得扱いになって所得税率は一律15%ですが、海外FXの場合は累進課税が適用され、税率は5%~45%となります。詳しい税額は下表にまとめました。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
出典:No.2260 所得税の税率|国税庁をもとに表を作成
例えば、課税所得が694万円の場合は税率が20%なので23.2%の法人税を支払うよりも税金は安くなります。一方、900万円の場合、所得税率は33%なので法人税を支払った方が節税できるのです。おおむね所得が800万円くらいになったら法人化を検討してみてもいいかもしれません。
ただし、FXはいつも利益が出るとは限りません。ある年は1,000万円以上の利益が出たとしても、その翌年は為替の急変動などで大損が頻発して赤字になってしまう可能性もあります。また、前述のとおり含み損益も課税の対象となります。これらのリスクも踏まえて法人化を検討しましょう。
また、国内FX業者で取引すれば所得税率は一律15%なので、利益が増えてきたら国内FX業者に切り替えるという方法で節税することも可能です。
法人口座を開設する際の注意点
海外FXでは法人口座が作れる業者と作れない業者があるので、今取引している業者が対応していない場合は、法人口座が開設できる業者に移る必要があります。
また、海外FX業者で法人口座を開設する場合、個人口座の開設と比較して準備すべき書類が多く手間もかかります。具体的には以下のような書類が必要です。
- 定款
- 株主名簿
- 法人登記簿
- 代表者の身分証明書など
どのような手続きを行えばいいか、書類を準備すればいいかは、業者に確認してみましょう。
また、海外FX業者の中には、金融商品取引法に基づく登録を受けていない業者や、日本語でのサポートが十分でない業者が存在します。また、FX業者を装った詐欺的な業者にも注意が必要です。自分自身の大切な資産を守るためにも、信頼がおける業者を選びましょう。
海外FXでの法人化は慎重に検討しよう
海外FXで利益が安定的に上げられている場合、法人化することで税制面や経営面で有利になります。一方、法人設立の手間やコストがかかる、保険料の負担がかさむ、含み損益にも課税されるなど、デメリットもあるのです。
また、海外FX自体、損失やトラブルに巻き込まれるなど、リスクが高い投資となります。メリットとデメリット、リスクを考えたうえで、法人化を検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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