- 更新日 : 2023年9月8日
経営資本とは?計算式や無形資本・6つの資産も紹介!
経営資本とは、企業が本業のために実際に活用した資本のことです。総資産から建設仮勘定、投資その他の資産、および繰延資産を差し引いて算出します。この記事では、経営資本の意味や計算式、および経営資本回転率や資本利益率の種類について解説します。併せて、無形資本や製造資本、6つの資本についても紹介しますので参考にしてください。
目次
経営資本とは?
経営資本とは、企業が固有の活動である本業のため、実際に活用した資本のことです。具体的には、総資産から建設仮勘定と、投資その他の資産、繰延資産を差し引いて求めます。
必ずしも本業のために使用されたといえない、建設仮勘定や投資その他の資産、繰延資産を総資産から差し引いた経営資本の金額を、資本利益率などの経営指標の算定に使用することで、本業における資本の効果がより明確にわかります。
計算に必要な要素①総資産
総資産とは、会社が保有するすべての資産の金額です。貸借対照表にある流動資産と固定資産、繰延資産の合計額となります。
計算に必要な要素②建設仮勘定
建設仮勘定とは、自社ビルや新規工場などの建物・設備の、建設中に発生する費用を計上するための勘定科目です。建物や設備が完成し、実際に使用されるようになったとき、固定資産に移されます。未完成の有形固定資産であり、まだ本業のために使用されていないため、経営資本には含めません。
計算に必要な要素③投資その他の資産
投資その他の資産とは固定資産の一つであり、企業が利殖のために投資した長期資金のことです。投資有価証券や関係会社株式、出資金、長期貸付金などが該当します。本業の営業外の資産であるため、経営資本には含めません。
計算に必要な要素④繰延資産
繰延資産とは、長期にわたる継続的な効果が見込めるため、年度をまたいで費用化することが認められる支出のことです。会計上は創立費や開業費、株式発行費、社債発行費、開発費が該当し、資産として計上したうえで、数年をかけて償却することで費用化します。単に資産として計上して費用化の先延ばしをしているだけで、実質的に何かが存在しているわけではないため、経営資本には含めません。
経営資本回転率とは?
経営資本回転率とは、企業が保有する経営資本をどれだけ効率的に活用し、売上高を計上できたかを示す指標です。具体的には、以下の計算式で計算されます。
保有資産の活用効率を示す指標として、経営資本回転率とは別に、総資産回転率と呼ばれるものもあります。これは、売上高を総資産で割ったもの(総資産回転率=売上高÷総資産)です。
ただし、前述のとおり総資産には、本業のために使用されるのではない、建設仮勘定や投資その他の資産、繰延資産が含まれます。そのため、総資産回転率ではなく、経営資本回転率を使用した方が、資産運用効率のより厳密な評価が可能です。
資本利益率の種類
資本利益率とは、投下した資本を活用して、どれだけ効率的に利益を獲得したかを表す指標です。資本と利益の種類により、以下の4つが代表的に用いられます。
ここでは、これら4つの資本利益率の概要を解説します。
経営資本営業利益率
経営資本営業利益率(%)は、経営資本がどれだけの営業利益を生み出したかを示します。営業利益を経営資本で割り、100をかけて算出します。
上の式で、経営資本は前述のとおり、本業のために投下された資本のことです。また、営業利益も、営業外の金融・投資などによる利益は含まれません。そのため、この両者を使用して算出する経営資本営業利益率は、企業の本業である営業活動の収益性をより厳密に示せます。
自己資本利益率
自己資本利益率(ROE:Return On Equity)は、株主が出資した資本を元手に、企業がどれだけの利益を上げたかを示します。具体的には、以下の計算式で計算します。
上の式で、自己資本とは株主が出資したお金など、返済の必要がない資産のことです。また、当期純利益は、会社が1事業年度の営業活動で上げた利益となります。したがって、自己資本利益率は、出資者である株主や、出資を検討する投資家にとって重要な指標といえるでしょう。
総資本経常利益率
総資本経常利益率は、経常利益の総資本に対する割合を示し、以下の計算式で計算されます。
上の式で、総資本とは他人資本(負債)と自己資本(純資産)の合計額です。また、経常利益とは売上高から売上原価と販売費および一般管理費、営業外損益を差し引いて求められます。両者から求められる総資本経常利益率は、企業の総合的な収益性を計る尺度となっています。
総資本事業利益率
総資本事業利益率は、事業利益の総資本に対する割合を示し、以下の計算式で計算されます。
上の式で、総資本は上述のとおり他人資本(負債)と自己資本(純資産)の合計額、事業利益は営業利益に受取利息および受取配当金を加えたものです。
上述の経常利益が営業利益に、金融などの営業外の収益と費用を加えたものであるのに対し、事業利益は経常利益に営業外費用を足し戻したものであり、あるいは営業利益に営業外収益を加えたものともいえます。総資本事業利益率により、株主と債権者の双方に対する収益性の評価が可能です。
経営資本に似た用語・関連する用語
経営資本に似た用語・関連する用語はほかにもいくつかあります。ここでは、「製造資本」と「無形資本(無形資産)」、および「6つの資本」について解説します。
製造資本とは?
製造資本とは、製品の生産やサービスの提供にあたって企業が利用可能な建物や設備、インフラなどのことです。また、製品の設計情報や、生産のためのソフトウエアやデータなども含む場合もあります。
ただし、製造資本は、貸借対照表などの財務諸表には記載されない、非財務資本の一つとして扱われます。そのため、製造機械や設備などの物的側面だけではなく、その裏にある形式知や暗黙知などに注目することが重要です。
無形資本(無形資産)とは?
無形資本(無形資産)とは、知識・技術や人的資本などの、財務諸表には表れない資産のことです。革新的資産(研究開発など)、情報化資産(ソフトウエアなど)、経済的競争力(人材・経営組織改革など)の3つから構成されます。
近年、主要先進国では、有形資産に対する投資より無形資産に対する投資の方が、伸び率が大きくなっています。日本は無形資産に対する投資の伸び率がまだ低いため、今後それをどう増やせるかが課題となっています。
6つの資本とは?
6つの資本とは、国際統合報告評議会(IIRC)が公表する非財務情報開示のフレームワークで、財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本のことです。財務資本以外の5つの資本が、非財務資本といわれます。
海外では、さまざまな基準設定団体などが、非財務開示の枠組み・基準を示しています。国内では、金融商品取引法と会社法に基づく制度開示が定められているほか、統合報告書などの任意開示のフレームワークとして、経済産業省が価値協創ガイダンスを示しています。
経営資本の概念を自社の経営に活かしていこう
企業が本業のために実際に活用した資本である経営資本は、総資産から建設仮勘定、投資その他の資産、繰延資産を差し引いて求めます。経営資本の金額から、経営資本回転率や経営資本営業利益率などの経営指標も算出されます。
企業が成長するためには、さまざまな経営指標を算出し、経営状態を分析することが重要です。経営資本の概念を、自社の経営に活かしていきましょう。
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