- 更新日 : 2023年9月27日
資本金の増資とは?方法やメリット・デメリットを解説!
資本金の増資とは、資本金額を増やすことです。資金調達方法の1つで、第三者割当増資などの方法があります。そのほかにもどのような方法を利用できるのか、資本金を増やすメリットやデメリット、具体的な手続きについて紹介します。
目次
資本金の増資とは?
増資とは、資本金を増やすことです。資本金は、自由に増やせます。資金に余裕があるときや、会社の信用を高めたいときなどには増資を検討しましょう。
融資との違いは?
融資とは、お金を借りることです。金融機関などから融資を受けると、負債が増えます。
貸借対照表では、融資の増加は負債の増加、増資は資本金(純資産)の増加として表示されます。
資本金を増資するメリットは?
増資をすることには、次のメリットがあります。
- 返済不要の資金調達ができる
- 会社の信用が高まる
それぞれどのようなメリットか説明します。
返済不要の資金調達ができる
資本金は負債ではないため、返済不要です。
例えば、株式を新たに発行して出資を募り、増資できます。この場合、資金を借りたわけではないため返済は発生しませんが、資本金は増えるため資金調達を実現できます。
会社の信用が高まる
資本金が多いと、取引先から信用を得やすくなります。金融機関からも信用を得やすくなるため、融資を受けやすくなります。
資本金を増資するデメリットは?
資本金を増やすことにはデメリットもあるため、注意が必要です。主なデメリットとしては、次の2つが挙げられます。
- 法人税などの税金が増える場合がある
- 増資の手続き費用がかかる
それぞれのデメリットについて説明します。
法人税などの税金が増える場合がある
会社設立時の資本金が1,000万円未満のときは、最大2年間消費税の納税が免除されます。しかし、資本金が1,000万円以上になると、消費税の納税義務が発生します。消費税の節約を目指すなら、設立から一定期間は資本金が1,000万円以上にならないように調整しておきましょう。
法人住民税(都道府県民税、市町村税)の均等割は、資本金額などに応じて高くなります。増資をする前に、増資がどの程度の増税につながるのか計算しておきましょう。
増資の手続き費用がかかる
増資をすると、法人登記の書き換えを行わなくてはいけません。このとき、増資額×0.7%と3万円の多いほうの金額を、登録免許税として納付する必要が生じます。
登記手続きを専門家に依頼する場合は、専門家報酬も必要です。増資の手続きにかかる費用も考慮したうえで、資本金を増やすようにしましょう。
資本金を増資する方法は?
増資をするという点も重要ですが、どのように増資をするかという点も重要です。増資の主な方法としては、次のものが挙げられます。
それぞれの方法の特徴や手順を説明します。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、特定の第三者に株式を発行し、その対価として出資を受ける方法です。一般的に取引先や取引金融機関、役員などが第三者になります。
第三者割当増資は、次の手順で実施します。
- 株主募集条件を決める
- 募集事項の決定・通知
- 株式の申し込みを受ける
- 株式の割当に関する決議を取る
- 出資の受け入れ
第三者割当増資は、会社側が出資者を指定できる点が特徴です。例えば、偏りなく株式を発行することで、特定の取引先や役員などが会社に対して発言権を持ちすぎないように調整できます。計画的に増資をしたいときなどに、第三者割当増資を検討しましょう。
公募増資
公募増資とは、不特定多数の投資家に株式を発行して出資を受ける方法です。証券会社を通じて出資を募るため、非上場企業は利用できません。
公募増資は、次の手順で実施します。
公募増資では割安な価格に株価を設定するため、広く出資者を募ることが可能です。
株主割当増資
株主割当増資とは、既存株主に対して、持ち株比率に応じて新株を発行し、出資を得る方法です。出資割合が変わらないため、支配関係に変化が起こらないという特徴があります。
株主割当増資は、次の手順で実施します。
- 募集株式の内容決定
- 募集株式と株主総会を通知する
- 株主から出資申し込みを受ける
- 出資の受け入れ
ただし株主が多い場合、すべての株主から出資の同意を得られない可能性があります。その場合は、出資割合が変わったり、増資自体が実現できなくなったりすることがあります。
利益を組み入れる
過去に蓄積した利益を資本金に振り替える方法でも、増資を実現できます。株式を発行せずに増資できるため、手順もシンプルです。
- 株主総会で利益の資本組み入れの決議を取る
- 利益から資本金への振り替え
資本金を増資する手続きは?
増資方法には第三者割当増資や株主割当増資、利益の組み入れなどのさまざまな方法がありますが、どの方法で資本金を増やしても、増資したときの手続きは同じです。
いずれも株式会社変更登記申請書を準備し、法務局で登記手続きを行います。
必要書類を準備して登記手続きをする
株式会社変更登記申請書に必要事項を記入し、法務局の窓口に提出します。書類提出時には、登録免許税も同時に納付しなくてはいけません。増資額×0.7%と3万円の多いほうの金額を準備してから法務局に出かけましょう。
株式会社変更登記の手続きは、司法書士などの専門家に依頼することもできます。この場合は登録免許税の実費に加え、司法書士報酬も準備しておくことが必要です。
資本金を増資した後に必要な手続きは?
増資の手続きを行い、法務局で株式会社変更登記を実施した後、株主資本等変動計算書を作成します。株主資本等変動計算書とは、特定の事業年度における純資産の変動を明らかにするための書類です。増資により、純資産が増えたことを記載しておきます。
株主資本等変動計算書を作成する
株主資本等変動計算書は、株主資本がどのように変動しているかを示す書類です。資本金と新株予約権、資本余剰金、利益余剰金の4つに分けて記載します。
- 資本金:株主から受けた出資金
- 新株予約権:一定の条件で株式を取得する権利
- 資本余剰金:株主から受けた出資金のうち、資本金として計上していない資金
- 利益余剰金:利益の累積によって生まれた資金
利益余剰金は「利益準備金」と「その他の利益余剰金」で構成されます。「その他の利益余剰金」は、「任意積立金」と「繰越利益剰余金」に分けることが可能です。
なお、株主資本等変動計算書は、英語では「Statements of Shareholders’Equity」と記載します。そのため「S/S」と表記したり、「エスエス」と読んだりすることもあります。
メリット・デメリットを把握し計画的に増資をしよう
増資には信用度が高まるなどのメリットがありますが、税金が増える可能性があるだけでなく、手続きに手間がかかる点を理解しておくことが必要です。
メリットが多いと思われるときは、適切な方法を選び、計画的に増資を実施していきましょう。また増資後は速やかに株主資本等変動計算書を作成することも、大切なポイントです。
よくある質問
資本金の増資とは?
資本金を増やすことを指します。資本金が増えると取引先や金融機関から信用を得やすくなります。また、資金調達方法の1つとして、増資を行うこともあります。詳しくはこちらをご覧ください。
増資にはどのような方法がある?
株式を発行する方法としては、第三者割当増資や公募増資、株主割当増資があります。また、株式を発行しない方法としては、利益を資本金に組み入れる方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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