• 作成日 : 2025年10月24日

投資信託で節税するには?税金のしくみや節税術を解説

投資信託は、少額から始められ、プロによる分散投資ができることから、初心者にも人気の資産運用手段です。さらに、NISAやiDeCoといった非課税制度と組み合わせることで、運用益にかかる税金を大きく抑えることが可能になります。

本記事では、投資信託の仕組みから、利益に課される税金のしくみ、節税術などを解説します。

投資信託とは?

投資信託は、少額からプロの運用によって複数の資産に分散投資ができる金融商品です。初心者でも始めやすく、NISAやiDeCoにも対応しているため、長期の資産形成手段として注目されています。

投資信託はお金をまとめてプロが運用する仕組み

投資信託とは、投資家から集めたお金を一つのファンドとしてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資する仕組みです。投資家は「口数」を購入し、運用益に応じて分配金や値上がり益を受け取れます。自分で銘柄を選ぶ必要がなく、少額で始められる点が特長です。

インデックス型とアクティブ型の2つの運用スタイルがある

投資信託は、指数に連動する「インデックス型」と、市場平均を上回る成果を目指す「アクティブ型」に分かれます。インデックス型は手数料が低く、アクティブ型は高い運用成果を狙える反面、コストも高めです。

少額・分散・プロ任せの手軽さが魅力

投資信託は商品や金融機関によって異なりますが、100円から1,000円程度の少額から始められるものが多く、複数の資産に分散して投資できる仕組みを持つファンドもあります。

運用は専門家が担うため、初心者でも手間なく始められ、NISAやiDeCoを通じて節税効果も得られます。長期投資にも適した金融商品です。

投資信託の利益にかかる税金は?

投資信託で得た利益には、基本的に所得税と住民税がかかります。分配金と売却益の両方に約20%の税率が適用され、多くの場合は証券会社が源泉徴収します。

分配金には約20.315%の税金がかかる

投資信託の分配金には、所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%の税率で源泉徴収が行われます。これは上場株式と同様に「申告分離課税」に分類され、金融機関が支払い時に自動的に税額を差し引きます。そのため、通常は確定申告が不要ですが、後述の配当控除を活用したい場合などは申告を選ぶことも可能です。

なお、分配金には課税対象となる「普通分配金」と、非課税扱いの「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があります。特別分配金は運用益ではなく元本の一部を返還する仕組みであるため、税金はかかりません。分配金明細で「元本払戻金」と表示されていれば非課税対象です。

売却益(譲渡益)にも同様の税率が適用される

投資信託を売却して得た譲渡益にも、分配金と同様に20.315%の税金が課されます。これは株式と同様の申告分離課税で、他の所得と合算せず、独立して課税されます。例えば100万円の利益が出た場合、約20万3,150円が自動的に引かれます。

証券口座が「特定口座(源泉徴収あり)」であれば、確定申告の必要はありませんが、「一般口座」や「源泉徴収なし口座」の場合は申告が必要になります。また、売却損が出た場合には、他の譲渡益や配当と損益通算することで課税額を減らすことができます。損益通算や損失の繰越控除などを活用するには、確定申告を行う必要があります。

NISAを使えば投資信託の利益は非課税になる?

NISA(少額投資非課税制度)は、投資信託を含む金融商品の利益に対して税金がかからない制度です。2024年から始まった新NISAでは非課税枠が拡充され、年間360万円、生涯で1,800万円までの投資が非課税対象となり、保有期間も無期限となりました。これにより、長期の資産形成を効率的に行うことができます。

新NISAの非課税枠は年間360万円・生涯1,800万円

新NISAでは、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの枠が設けられており、年間の非課税投資枠は最大360万円です。成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円で、この2つを組み合わせて運用できます。生涯の非課税限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠は上限1,200万円までと定められています。非課税で運用できる金額が大きく、幅広い投資戦略が可能です。

参考:NISA特設ウェブサイト|金融庁

非課税保有期間は無期限になっている

これまでのNISA制度では非課税期間に制限がありましたが、新NISAでは非課税で保有できる期間が無期限となりました。これにより、一度購入した投資信託を長期にわたって非課税で運用し続けることができ、分配金や値上がり益に対しても課税されません。長期投資による複利効果を最大限に活かせる設計となっており、資産形成において有利です。

利益・分配金が非課税になるのが最大のメリット

通常、投資信託で得た売却益や分配金には20.315%(所得税と住民税)の税金がかかりますが、NISA口座内で得た利益は非課税です。たとえば、課税口座で10万円の利益が出た場合には約2万円が税金として差し引かれますが、NISAを利用すればその全額を手元に残せます。これが長年続けば、運用成果に大きな差が生まれます。

非課税枠の再利用や枠管理に注意点がある

新NISAでは、非課税枠を使って購入した商品を売却すると、その取得金額分が翌年以降の枠として再利用可能になります。ただし、年間360万円の上限および生涯1,800万円の非課税枠を超えての投資は課税対象となるため、自身の投資計画と残りの枠を正確に把握しながら運用することが求められます。

iDeCoで投資信託を運用すると節税できる?

iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後の資産形成を目的とした制度でありながら、掛金・運用中・受取時のすべての段階で税制優遇が受けられます。投資信託と組み合わせて活用することで、効率よく節税しながら将来に備えることが可能です。

掛金拠出時に全額所得控除が受けられる

iDeCoの最大の特徴の一つは、掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になる点です。たとえば毎月1万円、年間で12万円の掛金を拠出した場合、その12万円分が課税所得から差し引かれます。拠出額が多いほど、また所得が高いほど控除効果は大きくなります。

参考:iDeCo公式サイト

運用益も非課税で再投資できる

通常、投資信託の運用益や分配金には20.315%の税金がかかりますが、iDeCo口座内で得た利益はすべて非課税となります。運用中に発生した売却益や分配金はそのまま再投資され、税金による目減りが発生しません。長期間にわたり複利で運用できるため、課税口座と比べて資産の成長効率が高くなります。

なお、特別法人税が制度上存在していますが、2025年9月時点でも引き続き課税は凍結されており、実質的な影響はありません。

受取時にも控除が適用される

iDeCo資産は60歳以降に「年金形式」または「一時金形式」で受け取れます。年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用され、一定額までは非課税となります。一時金受取の場合、加入年数(拠出年数)に応じて控除額が増えるため、長期間iDeCoを続けた人ほど節税効果は高まります。

課税口座で投資信託の税金を減らす方法はある?

NISAやiDeCoを利用していない場合でも、通常の課税口座で投資信託を運用する中で、確定申告を活用すれば税負担を軽減できる手段があります。損益通算や損失の繰越控除、配当控除などを正しく使うことで、支払う税額を減らすことが可能です。

損益通算で利益と損失を相殺できる

投資信託の売却益や配当には20.315%の税金がかかりますが、年間の運用成績によっては損益通算で税負担を抑えられます。たとえば、ある口座で50万円の利益が出て、別の口座で50万円の損失が出ていれば、確定申告でそれらを相殺することで課税対象額はゼロになります。源泉徴収ありの特定口座であっても、確定申告によってこれを適用することが可能です。複数の証券口座を使っている人や、同一年内で複数の投資結果がある場合に有効です。

損失の繰越控除で翌年以降にも節税効果が続く

1年の間で損失が利益を上回った場合、確定申告を行うことで「損失繰越控除」が適用され、最大3年間まで損失を繰り越して、将来の利益と相殺できます。たとえば2025年に30万円の損失が発生し、2026年に40万円の利益が出た場合、その30万円を相殺して課税対象を10万円に抑えられます。損失を繰り越すには連続して確定申告を行う必要があるため、適用を希望する場合は忘れず毎年申告しましょう。

配当控除を活用して総合課税で税負担を抑える

配当控除とは、配当所得総合課税で申告することにより、所得税・住民税の一部を差し引ける制度です。投資信託の普通分配金を源泉徴収ではなく総合課税で申告し直すことで、配当控除の対象になります。年間の合計所得が330万円以下の人は、状況によっては総合課税を選ぶことで税率が低くなり、控除効果が高くなる場合があります。ただし、総合課税を選ぶと投資所得が他の所得と合算されるため、扶養控除社会保険料への影響が出る場合もあります。状況に応じた選択が求められます。

高齢者や退職後の投資信託運用と税負担を抑える方法は?

退職後や高齢期は所得が減少する一方で、投資による資産運用が生活の支えになる場面が増えます。このような時期には、税率の変化や控除制度を踏まえて投資信託を活用することで、実質的な税負担を軽くすることが可能です。

配当控除と総合課税で税率を抑える

退職後の所得が年金中心になると、課税所得が下がるため、投資信託の分配金を「総合課税」で申告し、配当控除を適用することで税負担を軽減できる場合があります。所得税率が5%または10%の範囲であれば、通常の源泉分離課税(20.315%)よりも有利になる可能性が高いです。

非課税枠や控除を最大限に活用する

2025年12月の税制改正では、基礎控除額が従来の48万円から58万円〜95万円に引き上げられました。これにより、年金受給者や高齢の方の課税所得が少なくなるケースが増え、投資信託の利益や分配金が実質的に非課税になる可能性があります。

たとえば、65歳以上の高齢者が公的年金のみで年間120万円を受給し、その他に少額の投資信託から分配金10万円を得た場合でも、基礎控除・年金控除・配偶者控除などを合算すると、課税対象となる所得がゼロになることがあります。

配偶者控除や扶養控除を維持したい場合には、投資信託の利益をあえて申告しない(または申告分離課税で済ませる)という選択も有効です。ご自身と家族の控除枠や所得状況を見ながら、申告方法(総合課税 or 分離課税)の選択が節税に直結することを覚えておきましょう。

投資信託の税制優遇を活用して賢く資産形成を

投資信託の利益にかかる税金は決して軽視できない負担ですが、NISAやiDeCoといった非課税制度を上手に活用し、さらに損益通算や配当控除などの節税策を駆使することで税負担を減らすことが可能です。課税口座で運用する場合でも、状況によっては確定申告による損失繰越や配当控除で払い過ぎた税金を取り戻せます。

最新の税制も踏まえ、自身の投資状況に合った節税方法を検討してみてください。税金の知識を味方につけて、効率的で賢い資産形成を目指しましょう。


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