• 更新日 : 2025年10月21日

造園業(造園工事)の許認可とは?建設業許可の要件や資格、注意点を解説

造園業(造園工事)の許認可は、事業開始そのものに必須の許認可はありませんが、一件あたり500万円以上(税込)の工事を請け負う際に必須です。しかし、どのような場合に必要で、どうすれば取得できるのか、わかりにくい点も多いのではないでしょうか。

この記事では、造園業に求められる許認可の基本から、中心となる「建設業許可」の取得要件、必要な資格、手続きの流れ、費用までを網羅的に解説します。事業計画を立てるうえで、

造園業(造園工事)に許認可は必要?

造園業の事業開始そのものに必須の許認可はありませんが、事業を成長させ、より大きな工事を手がけるためには、建設業許可など特定の許認可が求められます。

許認可が不要な造園業務の具体例

建設業法上の「建設工事」に該当しない作業や、ごく小規模な工事であれば、許認可なしで請け負うことができます。

専門的な技術や大規模な管理を必要としない作業までを規制の対象とはしていません。たとえば、以下のような業務は、原則として許認可がなくても行えるでしょう。

  • 樹木の維持管理
    • 庭木の剪定、草刈り、草取り、除草
    • 樹木の伐採(※ただし、伐採した樹木の運搬・処分方法によっては後述の「産業廃棄物収集運搬業許可」が関わってくる場合があります)
  • 土地の維持管理
    • 除雪、融雪剤の散布
    • 落ち葉などの清掃
  • 調査・設計業務
    • 庭園設計、作図
    • 工事前の現地測量
    • 地質調査、調査目的のボーリング
  • その他
    • 年間契約などの保守、点検、管理といった委託業務
    • 造林(森林を育てる作業であり、庭園などを「築造」する建設工事とは区別されます)

これらの業務は、景観を「築造」する建設工事とは性質が異なるため、建設業許可の対象外とされています。

許認可が必要になる造園工事の具体例

庭園や公園などをつくる「造園工事」に該当し、かつ一定規模以上になる場合は、後述する「建設業許可」が必要です。

これらは単なるメンテナンスではなく、土地に工作物を設けたり、景観を新たに創り出したりする行為であり、「建設工事」と見なされるものです。どのような工事が該当するのか、より具体的に見てみましょう。

  • 公共工事の例
    • 自治体から発注される市立公園の新設工事
    • 県道や国道の道路緑化工事、街路樹の植栽
    • 公共施設の敷地内における緑地造成工事
  • 民間工事の例
    • 大規模マンションの共有スペース(中庭など)の作庭工事
    • 商業施設の屋上緑化工事
    • 工場敷地内の緑地帯整備工事
    • 個人邸であっても、池の造成や大規模な景石の配置替えなどを含む、請負金額500万円以上(税込)の庭園改修工事

軽微な建設工事の基準は、建築一式工事以外なら1件500万円未満(税込)の範囲なら許可は不要ですが、超える場合は許可が必須です。

これらの工事を請け負うためには、専門的な技術力や経営基盤が求められるため、法律に基づく許可制度が設けられています。

建設業許可における「造園工事」とはどんな工事?

建設業法における「造園工事」とは、「整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事」を指します。この法律上の定義に該当するかどうかが、建設業許可を判断する重要な基準です。単なる手入れではなく、景観を「築造する(つくりあげる)」という点がポイントです。

「造園工事」に含まれる工事の種類

建設業許可の業種としての「造園工事業」には、以下のように景観を形成する多様な工事が含まれ、相互に関連して一体の造園空間をつくります。

工事の種類具体的な工事内容の例
植栽工事敷地内に高木、中木、低木といった樹木を、設計意図に沿って植え付ける工事。
地被工事地面を芝生、コケ、タマリュウ、草花などで覆い、景観を整えたり土壌の侵食を防いだりする工事。
景石工事庭石や岩などをクレーン等で吊り上げて配置し、庭園の骨格や趣を創り出す工事。
地ごしらえ工事植栽に適した土壌にするための客土や土壌改良、水はけを良くするための暗渠排水などを行う工事。
公園設備工事公園にベンチ、パーゴラ(日陰棚)、遊具、水飲み場、花壇、サイン(案内板)などを設置する工事。
広場工事広場をレンガや自然石、インターロッキングブロックなどで舗装する工事。
園路工事庭園や公園内の利用者が歩く通路(遊歩道)を、砂利敷きや石張り、木道などで整備する工事。
水景工事池、滝、せせらぎ、噴水などを設置する工事。循環装置の設置なども含みます。
屋上等緑化工事建築物の屋上や壁面に、防水や土壌流出対策を施したうえで庭園を築造する工事。
緑地育成工事植栽した樹木や芝生が健全に生育し、景観が維持されるよう、一定期間、灌水や施肥、剪定などを行う工事。

出典:業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)|国土交通省

造園工事と他の工事との違い

「造園工事」は景観を築造する工事であり、土地の基盤形成を担う「土木一式工事」などとは区別されます。

たとえば、大規模な公園を新設する場合、山を切り拓き、造成して公園の敷地そのものをつくるような工事は「土木一式工事」に該当します。そして、その造成済みの敷地に植栽や園路、水景等を施して苑地を築造する工程が「造園工事」となります。

このように、土木工事が土地の基盤をつくり、造園工事がその上の景観をつくる、という役割分担がなされることが多くあります。

許可を申請する際は、自社が請け負う工事がどの業種に該当するのかを正確に判断しなくてはなりません。

なぜ造園業に建設業許可が必要になるのか?

造園業で建設業許可が必要になるのは、1件当たりの請負金額が一定規模を超える工事を請け負うためです。許可制度は、規模の大きい工事の品質確保と発注者保護を目的に設けられています。

500万円未満の「軽微な工事」は許可が不要

建築一式工事以外の工事では、1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事は「軽微な建設工事」とされ、この範囲内であれば建設業許可がなくても請け負うことが可能です。この基準は、建設業法 第3条に定められています。

したがって、個人宅の庭づくりなど、比較的小規模な工事を専門に行うのであれば、必ずしも許可は必要ありません。しかし、裏を返せば、請負金額500万円以上(税込)の造園工事を受注するには、建設業の許可が必須となります。これは、高額な工事には相応の技術力と財産的信用が求められるためです。無許可で500万円以上(税込)の工事を契約・施工すると、厳しい罰則の対象となるため注意が必要です。

なお、建設業法、建設業法施行令及び建設業法施行規則の規定中にでてくる「請負代金の額」その他の個々の取引に係る請負代金に係る用語は、すべて消費税及び地方消費税の額を含む額となっています。

参照:建設業許可(建設業法第3条)|国土交通省

建設業許可を取得するメリット

許可取得は、高額な工事を受注できるだけでなく、社会的信用の向上や公共工事への参加など、事業経営においてさまざまなメリットをもたらします。

  • 事業規模の拡大:
    これまで受注できなかった高額な工事に挑戦できるようになり、売上向上の機会が広がります。
  • 社会的信用の向上:
    許可業者は、法律で定められた要件をクリアした事業者であることの証明になります。取引先や金融機関からの信用が高まり、融資を受ける際にも有利に働くことがあります。
  • 公共工事への参加:
    国や地方自治体が発注する公共工事の多くは、入札参加の条件として建設業許可を求めています。
  • コンプライアンスの証明:
    許可を取得し、維持していることは、法令を遵守して事業を運営している証です。企業のイメージアップにもつながります。

建設業許可の種類

建設業許可は、営業所の場所による「知事許可・大臣許可」の区分と、下請契約の規模による「一般建設業許可・特定建設業許可」の区分があります。

自社の事業内容に合った許可を取得しなくてはなりません。

営業所の場所による区分:「知事許可」と「大臣許可」
  • 知事許可:1つの都道府県のみに営業所を設置する場合。たとえば、本社が東京にあり、営業所も都内にしかない事業者が、神奈川県で工事を行う場合でも、取得するのは「東京都知事許可」です。
  • 大臣許可:2つ以上の都道府県にまたがって営業所を設置する場合。たとえば、本社が東京に、支店が大阪にある場合は「国土交通大臣許可」が必要になります。
下請契約の規模による区分:「一般建設業許可」と「特定建設業許可」
  • 一般建設業許可:下請契約をしない、または下請契約をする場合でも、一次下請けとの契約額の合計が5,000万円未満(建築一式工事は8,000万円未満)の場合。多くの事業者は、まずこの一般建設業許可を目指します。
  • 特定建設業許可:元請として受注し、下請に出す契約額の合計が5,000万円以上(建設一式工事は8,000万円以上)になる場合。下請保護の観点から、より厳しい財産要件や体制整備が求められ、監理技術者の配置や施工体制台帳の作成など、関連する金額要件もこの基準に連動します。

参照:建設業の許可とは|国土交通省

造園業で建設業許可を得るための要件

建設業許可の取得には、法律で定められた6つの要件(経営管理能力、技術力、誠実性、財産的基礎、欠格要件の非該当、社会保険加入の要件化)をすべて満たす必要があります。これらは事業者に適正な工事を遂行する能力があるかを判断するための基準です。

1. 経営業務の管理責任者がいること

建設業の経営を適切に統括できる体制が社内に整っていることが求められます(令和2年改正)。体制の満たし方は次のいずれかです。

  • (イ)常勤役員等の一人が、以下のいずれかに該当
    • 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験
    • 建設業に関し「管理責任者に準ずる地位」で5年以上の経営業務管理経験
    • 建設業に関し「管理責任者に準ずる地位」で6年以上、管理責任者を補助した経験
  • (ロ)組織としての管理体制で補完
    • 常勤役員等が中心となり、直接補佐する者や外部人材の活用等を含め、継続的に経営業務を管理できる体制を構築していること(各許可行政庁が体制の実効性を確認)

いずれの場合も、経験の裏づけは工事請負契約書・請求書・入出金記録などの客観資料で証明します

2. 専任技術者を営業所ごとに置いていること

営業所ごとに、造園工事に関する国家資格または一定の実務経験を持つ技術者を配置しなくてはなりません。 この「専任技術者」は、契約内容が技術的に適切かなどを判断する重要な役割を担います。詳細は次の章で解説します。

3. 誠実性があること

請負契約の締結や履行に際して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます。これは、過去の営業活動において、詐欺、脅迫、横領といった法律に触れる行為をしていないことなどを指します。

4. 財産的基礎または金銭的信用があること

工事契約を履行できるだけの財産的な基盤があることを証明する必要があります。 一般建設業許可では、以下のいずれかを満たしていることが求められます。

  • 自己資本の額が500万円以上ある(直前の決算における貸借対照表で証明)
  • 500万円以上の資金調達能力がある(取引金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書で証明)

残高証明書で証明する場合、申請直前の特定の日付(通常は申請日の前2週間以内など)のものである必要があります。

5. 欠格要件に該当しないこと

法人の役員や個人事業主本人が、建設業法で定められた欠格要件に該当しないことが必要です。 たとえば、許可申請書に虚偽の記載があったり、成年被後見人であったり、禁錮以上の刑に処せられてから5年が経過していなかったりする場合などが該当します。

6. 社会保険等への適切な加入があること

健康保険・厚生年金保険雇用保険等の適正加入が許可要件化されました。新規・更新いずれも加入状況を確認されるため、対応が必要です。

主任技術者や監理技術者とは

「主任技術者」「監理技術者」は、許可要件である「専任技術者」とは異なり、工事現場に配置される技術者のことです。

  • 専任技術者:営業所に常勤し、営業活動を技術面から支える役割。
  • 主任技術者・監理技術者:工事現場に配置され、施工管理を行う役割。

建設業の許可業者が工事を施工する場合は、元請・下請や金額の大小を問わず、各現場に主任技術者(または要件該当時は監理技術者)を置く必要があります。さらに、元請として締結する下請契約の合計額が一定額以上となると、主任技術者に代えて監理技術者の配置が必要です。この「一定額」は2025年2月1日施行の改正で引き上げられ、現在は建築一式=8,000万円以上/建築一式以外=5,000万円以上が基準です。

主任技術者・監理技術者になるための基本的な枠組みは、専任技術者と同様に国家資格や実務経験を基礎としますが、監理技術者はより厳格な資格要件(1級施工管理技士 等)が求められる点に留意が必要です。

造園工事業で専任技術者の要件を満たすには?

専任技術者の要件は、「国家資格の保有」「指定学科の卒業+実務経験」「10年以上の実務経験」という3つのルートのいずれかで満たします。専任技術者は営業所に常勤する技術責任者であり、許可取得の鍵となる重要なポジションです。

1. 対応する資格で満たす

造園工事業に関する定められた国家資格などを持っている場合、専任技術者として認められます。 実務経験の年数を問われずに要件を満たせるため、最も明確な方法です。

資格名特定建設業一般建設業
1級造園施工管理技士
技術士(建設部門、森林部門)
2級造園施工管理技士×
技能検定「造園」(1級)×
技能検定「造園」(2級)+合格後3年の実務経験×

出典:建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧|国土交通省

2. 指定学科の卒業と実務経験で満たす

造園工事業に関連する指定学科を卒業し、その後に一定期間の造園工事に関する実務経験を積んでいる場合も、専任技術者になることができます。

  • 指定学科の例:造園学・園芸学・緑地環境、土木工学、建築学、都市工学、林学に関する学科(学科名は学校ごとに多様のため、最終的には所管庁の手引きに従います)
  • 卒業後に必要な実務経験期間
    • 大学・高等専門学校の卒業者:3年以上
    • 高等学校・中等教育学校の卒業者:5年以上

実務経験の範囲と証明に関しては、造園工事の施工・施工管理・積算・工程/品質/安全管理等の技術的業務が対象で、単純労務のみは含まれません。証明は、請負契約書・注文書/請書・請求書と入金の通帳写し・工事写真・工事台帳等を組み合わせて、連続性・従事内容が分かるよう整えるのが確実です。

3. 10年以上の実務経験で満たす

資格や指定学科がなくても、造園工事に関する通算10年以上の技術的実務(施工・施工管理・積算・工程/品質/安全管理等)があれば、専任技術者の要件を満たせます。

実務の立証は、契約書・注文書/請書・請求書と入金通帳写し・工事台帳・工事写真・在籍証明(社会保険の資格取得記録 等)を組み合わせ、年度ごとに従事内容と期間が分かる形で整えるのが確実です。

なお、この方法で充足できるのは一般建設業のみで、特定建設業は別途指導監督的実務経験等の上乗せ要件があります

造園業の許認可(建設業許可)に関する注意点

建設業許可は取得後も、5年ごとの更新や毎年の事業年度終了報告(決算変更届)など、維持のための手続きが義務づけられています。これらを怠ると更新が受理されない/許可が失効するおそれがあるため、計画的な管理が重要です。

許可の有効期間と更新手続き

建設業許可の有効期間は5年間であり、期間満了の30日前までに更新申請を行う必要があります。 更新を忘れて許可が失効した場合、500万円以上の工事を請け負うことはできなくなり、もう一度新規で申請し直す手間と費用、時間がかかってしまいます。

毎年の事業年度終了報告(決算変更届)

許可業者は、毎事業年度が終了してから4ヶ月以内に、「決算変更届」を提出する義務があります。 この届出を怠っていると、5年後の更新申請が受理されません。毎年、忘れずに提出することが重要です。

その他の変更届

商号・所在地・資本金・役員・営業所・専任技術者などに変更があった場合は、原則として変更後30日以内に変更届を提出します。とくに経営業務の管理責任者や専任技術者が退職し欠員となった場合は、速やかに届出のうえ早期に後任を選任しないと、許可要件不充足に該当するリスクがあります。

許可取得はどこに相談すればいい?

許可取得の手続きは、無料で相談できる行政の窓口か、有料で代行まで依頼できる行政書士に相談するのが一般的です。

  • 各都道府県の建設業担当課:公的な窓口であり、無料で手続きに関する基本的な質問に答えてくれます。まずは話を聞いてみたいという場合に適しています。ただし、書類作成の代行や、個別の事情に踏み込んだアドバイスは期待できません。
  • 行政書士:許認可申請の専門家です。費用はかかりますが、要件の確認から膨大な書類の作成、行政窓口への提出代行まで一貫して依頼できます。本業に集中したい方や、手続きに不安がある方にとっては、頼れるパートナーとなるでしょう。

造園業の許認可は事業拡大に必須!取得要件と流れを再確認

この記事では、造園業の事業運営に関わる許認可、とくに「建設業許可」について、その必要性から取得の要件、流れ、費用までを解説しました。500万円以上(税込)の工事を請け負ううえで建設業許可は不可欠であり、取得には経営体制や技術力、財産的基礎といった複数の要件を満たす必要があります。

自社の状況をふまえ、事業計画に合った許可取得を目指すことが、公共工事への参入や企業の信頼性向上につながり、今後の成長を支えるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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