• 作成日 : 2024年6月28日

建設業許可を個人事業主(一人親方)が取得するには?申請方法や取得しないリスクを解説

建設業を営むには、工事の規模によって建設業許可が必要となりますが、個人事業主(一人親方)のままでも建設業許可を取得することは可能です。ただし、個人事業主が建設業許可を取得するためには、一定の要件や資格が必要となります。この記事では、個人事業主が建設業許可を取得するための要件や手続き方法、自分で申請する際の注意点について解説していきます。

建設業許可を個人事業主(一人親方)のままで取得できる?

建設業の許可は、法人だけでなく個人事業主(一人親方)でも取得することができます。

建設業を営むには、工事の規模によって建設業許可が必要となります。建設一式工事の場合は1件当たり1,500万円以上(延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事を除く)、専門工事では500万円以上の工事が許可の対象となります。これらの基準を下回る契約でも、1件の工事の完成を複数の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額が上記の基準に達すると、建設業許可の取得が必要です。

個人事業主が建設業許可を取得することで、より大きな工事を請け負うことが可能となり、事業の幅を広げることができます。また、公共工事の入札に参加する機会も増え、事業の拡大や利益増加につながります。さらに、顧客からの信頼も高まります。

ただし、建設業の許可には、いくつかの要件を満たす必要があります。次の章より、要件や必要な資格について解説していきます。

建設業許可を個人事業主が取得するための要件

個人事業主が建設業許可を取得するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 経営業務の管理責任者を設けること
  • 専任技術者の確保
  • 誠実性があること(過去5年間に建築士法違反などで許可や免許を取り消されていないことなど)
  • 財産的基礎等があること(自己資本が500万円以上あることなど)
  • 欠格要件(不正に建設業許可を受けて許可を取り消されてから5年以内の者など)に該当しないこと

経営業務の管理責任者とは、建設業の経営に関する業務を総合的に管理する者のことです。個人事業主の場合、事業主本人がこの役割を担います。

なお、専任技術者は工事現場ごとに専任で設置しなければならない技術者を指します。工事の請負契約を適切に締結し、契約通りに工事が進むように注文者とやり取りをするポジションです。
この2つの要件については、この後の章で詳しくみていきましょう。

建設業許可をとるための「経営業務の管理責任者」になる方法

個人事業主の場合、事業主本人を「経営業務の管理責任者」とする必要があります。経営業務の管理責任者となるためには一定の実務経験が求められるので、この要件を満たすことで、建設業の経営に必要な知識と能力を有していることが証明されます。

経営業務の管理責任者になる要件

個人事業主の場合、次の要件のどれかを満たすことで経営業務の管理責任者となるケースがほとんどです。

  • 建設業に関する経営業務の管理責任者としての経験が5年以上
  • 建設業に関する経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験が5年以上
  • 建設業に関する経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験が6年以上

実務経験の証明方法

経営業務の管理責任者になるためには、上記の要件を満たすだけの実務経験があることを証明しなければなりません。その証明書類として、以下のようなものが求められます。それぞれ、該当する年数分が必要です。

  • 確定申告書の写しを提出することとされています。
  • 工事請負契約書
  • 注文書
  • 請求書
  • 通帳(工事代金の入金を証明するため)

建設業許可をとるための「専任技術者」になる方法

建設業許可を取得するためには、「専任技術者」の要件も満たす必要があります。「専任技術者」になるためには一定の実務経験を積む方法もありますが、次のような国家資格を取得することによっても要件を満たすことが可能です。

専任技術者の要件を満たす国家資格(一例)

  • 建築士(1級または2級)
  • 土木施工管理技士(1級または2級)
  • 建築施工管理技士(1級または2級)
  • 管工事施工管理技士(1級または2級)
  • 電気工事施工管理技士(1級または2級)

これらの国家資格を有する人は、それぞれ対応する工事の専任技術者になることができます。例えば、1級建築士の資格を持っていれば、建築工事の専任技術者になることができます。
国家資格を取得するには、所定の実務経験を積んだ上で、国家試験に合格する必要があります。

実務経験による要件

国家資格を持っていない場合でも、一定の実務経験を積むことで「専任技術者」の要件を満たすことができます。一般建設業と特定建設業(下請代金が一定の金額以上の場合)のどちらの許可を受けるかで要件は異なりますが、一般建設業における実務経験の主な要件は以下のとおりです。

  • 指定学科修了者で高卒後5年以上または大卒後3年以上の実務の経験を有する
  • 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して10年以上実務の経験を有する

※指定学科とは、建設業法施行規則第1条で規定されている学科のことであり、建設業の種類ごとに密接に関連する学科として指定されています。

この場合、実務経験の内容を証明する書類(卒業証明書、実務経歴書等)を提出する必要があります。

建設業許可を個人事業主が自分で申請する際の注意点

申請書類の準備と確認

建設業許可の申請には、様々な書類が必要です。個人事業主が申請する際の主な必要書類は以下の通りです。

  • 建設業許可申請書
  • 経営業務の管理責任者出あることを証明する書類
  • 専任技術者であることを証明する書類
  • 身分証明書
  • 登記されてないことの証明書
  • 社会保険領収書
  • 財産要件に関する書類
  • 経営業務の管理責任者、専任技術者になる方の健康保険証
  • 営業所の写真
  • 直近の確定申告書
  • 個人事業税の納税証明書

必要書類が不足すると許可が得られないので、漏れがないよう確実に書類を収集するすることが重要です。

申請先の確認

建設業許可の申請先は、建設業を営む場所(主たる営業所の所在地)を管轄する地方整備局または都道府県の建設業許可担当部署です。個人事業主の場合、事業主の住所地ではなく、営業所の所在地が基準となります。
申請先を間違えると、許可の取得が遅れる可能性があるため、事前に確認しておくことが大切です。

審査手数料の納付

建設業許可の申請には、審査手数料が必要です。手数料の金額は、申請する建設業の種類や営業所の数によって異なります。
個人事業主の場合、審査手数料は1業種につき9万円(都道府県に申請する場合)または15万円(地方整備局に申請する場合)です。手数料は、申請時に納付する必要があります。

審査の期間

建設業許可の申請から許可取得までには、一定の審査期間が必要です。標準的な審査期間は、申請書類が整っている場合で30日程度です。
ただし、申請書類に不備がある場合や、追加の説明を求められた場合は、審査期間が延びる可能性があります。許可取得までの期間を考慮して、申請のタイミングを計画することが重要です。

建設業の許可取得後の手続き

建設業許可を取得した後は、以下のような手続きが必要です。

  • 建設業許可票の掲示
  • 決算変更届の提出(4月末日まで)
  • 建設業の各種帳簿の備え付け
  • 建設業の業務に関する苦情処理体制の整備
  • 5年ごとに建設業許可の更新申請

これらの手続きを適切に行わないと、建設業法違反に問われる可能性があります。許可取得後の義務についても、十分に理解しておく必要があります。

建設業許可なしで個人事業主が工事を請け負うリスク

建設業許可を取得せずに建設工事を請け負うと、建設業法違反に問われるリスクがあります。罰金は数百万円にも上る場合があり、最悪の場合、事業の停止命令が下されることも考えられます。

また、契約トラブルに巻き込まれるリスクが高くなります。例えば、工事の品質に問題があった場合や、工期が遅延した場合に、発注者との間で紛争が生じる可能性があります。建設業許可がない場合、建設工事紛争審査会による紛争解決の対象にならないため、トラブル解決が難しくなります。

上記のようなトラブルにあわないためにも、適切な手続きを踏んで建設業許可を取得することが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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