- 更新日 : 2025年9月3日
個人事業主の開業前後のチェックリスト!経費・補助金リストも
開業を決めたものの、何から手をつければよいかわからないという方も多いでしょう。事業をスムーズに軌道に乗せるには、事前の準備と計画が欠かせません。
本記事では、開業準備から開業後の手続きまで、やるべきことを網羅したチェックリストを時系列でわかりやすく解説します。個人事業主や小規模な会社を設立する方向けの、費用や資金調達のポイントもまとめていますので、ぜひご活用ください。
目次
開業前の準備チェックリスト
事業の成功は、準備段階にかかっているといっても過言ではありません。事業の骨格となる計画を練り、必要な資金や許認可の見通しを立てます。具体的な手続きに入る前の、最も重要なフェーズといえるでしょう。
分類 | チェック項目 | 備考 |
---|---|---|
事業計画 | 事業内容・コンセプトの決定 | 誰に、何を、どのように提供するかを具体化 |
事業計画書の作成 | 融資や補助金申請時に必要となる場合がある | |
屋号(会社名)の決定 | 覚えやすく、事業内容が伝わる名称 | |
資金計画 | 開業資金の洗い出し・調達 | 自己資金の確認、融資・補助金の検討 |
許認可 | 必要な許認可の確認 | 飲食店営業許可など、事業に必要な許認可を調査 |
場所・設備 | 物件探し・インフラ整備 | オフィス・店舗の契約、電気・ガス・インターネット回線の手配 |
備品・設備の購入 | パソコン、デスク、什器(じゅうき)など業務に必要なものを準備 | |
提携先 | 仕入先・業務提携先の確保 | 商品の仕入先や、税理士など専門家を選定 |
この段階では、頭の中で思い描いたアイデアを具体的な計画書に落とし込むことが目標です。特に事業計画書は、金融機関から融資を受ける際や、補助金を申請する際に提出を求められる重要な書類です。時間をかけてしっかりと作り込みましょう。
開業時の手続きチェックリスト
事業の準備が整ったら、いよいよ法的な手続きに移ります。個人事業主として始めるか、法人を設立するかで手続きが大きく異なります。ご自身の状況に合わせて、必要な手続きを確認してください。
対象 | 手続き名 | 提出・手続き先 | 提出期限の目安 |
---|---|---|---|
法人 | 健康保険・厚生年金の新規適用届提出(事業主だけの場合も) | 管轄の年金事務所または事務センター | 事実発生日から5日以内 |
法人 | 定款の作成・認証 | 公証役場 | 登記申請前 |
法人 | 法人登記の申請(会社設立) | 法務局 | – |
個人事業主 | 個人事業の開業届出(開業届) | 税務署 | 事業開始から1ヶ月以内 |
共通 (退職者) | 国民健康保険・国民年金の切り替え | 市区町村役場 | 退職日の翌日から14日以内 |
共通 | 税務関連の届出(青色申告承認申請など) | 税務署・都道府県税事務所など | 各書類の期限内 |
会社員から独立する場合、何よりも先に自身の健康保険と年金の手続きを行いましょう。退職日の翌日から14日以内という期限があるため、それが遅れると不利益が生じる可能性があります。
その後、個人事業主は「開業届」を、法人を設立した場合は「法人設立届出書」などを税務署に提出します。節税メリットの大きい「青色申告」を希望する場合は、関連書類の提出も忘れてはいけません。
開業後の運営チェックリスト
事業を実際に動かし、成長させていくためには、運営の仕組みづくりが欠かせません。ここに挙げる項目は、開業前から計画し、開業後すぐに本格化させるべき重要なタスクです。事業を軌道に乗せるためのチェックリストを確認しましょう。
分類 | チェック項目 | 備考 |
---|---|---|
従業員関連 | 労働保険関係の成立手続き及び従業員の労働保険(労災保険・雇用保険)、社会保険の加入手続き | 従業員を雇用した場合に、労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所で手続き |
経理・会計 | 会計ソフトの導入・帳簿付け | 日々の取引を記録し、確定申告に備える |
事業用銀行口座の開設・活用 | プライベートのお金と事業用のお金を明確に分ける | |
見積書・請求書・領収書の管理 | 書類のテンプレート作成やファイリング方法を確立 | |
集客・販売 | ホームページやSNSの運用 | 情報発信を継続し、顧客との接点を設ける |
マーケティング活動の計画・実行 | 広告出稿やキャンペーンなどを計画的に行う |
事業を長く続けるには、日々の運営をスムーズに行う「仕組みづくり」が欠かせません。特に経理業務は、お金の流れを把握し、健全な経営判断を下すための基礎となります。会計ソフトなどを活用して、負担を減らしながら正確な記録を心がけましょう。
開業費用の経費に関するチェックリスト
開業準備にかかった費用は、経費として正しく計上することで税負担を軽くできます。しかし、全ての支出が同じ扱いではありません。ここでは、税法上の「開業費」として認められるものと、そうでないものを明確に解説します。
開業費として経費にできるもの
「開業費」とは、事業を開始するまでに特別に支出した費用のことです。会計上は「繰延資産」として扱われ、数年に分けて償却(経費化)することも、利益が出た年に一括で償却することもできるため、節税対策として柔軟に活用できます。
分類 | 具体例 |
---|---|
調査・コンサル費用 | 市場調査費、セミナー参加費、書籍代、専門家(税理士など)への相談料 |
事務所・店舗契約 | 事務所や店舗の仲介手数料、礼金(返還されないもの)、鍵の交換費用 |
広告宣伝費 | 名刺作成代、印鑑作成代、チラシ・パンフレットの印刷費、Webサイト制作費、開業前の広告費 |
各種手続き費用 | 許認可取得のための行政書士への報酬、法人設立時の登録免許税 |
交通費・通信費 | 打ち合わせのための交通費、開業準備期間中の通信費 |
交際費 | 仕入先や提携先との打ち合わせ時の飲食代 |
開業費に計上できないもの
ここに挙げる費用は、開業費には含まれません。しかし、その多くは「経費にならない」わけではなく、「開業費」とは別の勘定科目で適切に処理する必要があります。
項目 | 具体例 | 理由・正しい処理方法 |
---|---|---|
10万円以上の備品など | パソコン、コピー機、車両、店舗の設備など | 「固定資産」として計上し、耐用年数に応じて減価償却費として経費化 |
仕入代金 | 販売するための商品、製造のための原材料 | 「売上原価」として、売上が計上されるタイミングで経費になる |
敷金・保証金 | 事務所や店舗の契約時に支払う敷金・保証金 | 退去時に返還されるため、費用ではなく「資産(差入保証金)」として扱われる |
人件費 | 開業前に雇用した従業員への給与 | 開業後の「給料手当」として処理するのが一般的 |
事業に無関係な税金 | 個人の所得税、住民税、国民健康保険料 | 事業運営に直接必要な税金(事業税など)とは異なり、経費にはなりません。 |
開業時に活用したい補助金・助成金
開業時の資金計画を支援する目的として、原則として返済が不要な補助金や助成金はぜひ活用したい制度です。数ある制度の中から、特に創業者にとって活用しやすい代表的なものを3つ紹介します。
小規模事業者持続化補助金
小規模な事業者が、地域の商工会議所や商工会と連携して経営計画を立て、販路開拓や業務効率化に取り組む費用の一部を支援する制度です。
- 特徴:チラシ作成、Webサイト制作、店舗の改装など、集客や販促に関する幅広い経費が対象
- 申請タイミング:原則として開業後に申請します。補助金は後払い形式
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者がITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や売上アップをサポートする制度です。
- 特徴:会計ソフトや決済システム、顧客管理ツールなどが対象、インボイス制度への対応を見据えたツールの導入に手厚い支援枠がある
- 申請タイミング:原則として開業後に申請、「IT導入支援事業者」と連携して申請を進めることが必要
自治体による創業者向け支援制度
各都道府県や市区町村が、地域経済の活性化を目的として独自に展開している創業者向けの支援制度です。家賃や事務所の改装費、設備購入費の補助など、内容は自治体によって多岐にわたります。そのため、事業を行う予定の自治体のWebサイトの確認が必要です。「(市区町村名) 創業 助成金」などのキーワードで検索することをおすすめします。
自治体の支援例:
創業助成事業|TOKYO創業ステーション
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業|(公財)東京都中小企業振
開業チェックリストで事業のやるべきことを整理
本記事では、事業のスタートまでを「準備」「手続き」「運営」の3つのステップに分け、やるべきことをチェックリストで解説しました。
開業には、事業計画の策定から法的な手続き、日々の運営体制の構築まで、数多くのタスクが存在します。そのため、何から手をつければよいか迷う方もいることでしょう。
本記事に掲載されているチェックリストを基本に、ご自身の事業に合わせて項目を調整し、オリジナルの計画を立ててみてください。特に、社会保険の切り替えや青色申告の申請といった期限の定められた手続きは、事前にしっかり確認しておくことが重要です。
やるべきことを適切に整理し、一つひとつ着実に実行することが、事業の確実なスタートにつながります。
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