- 更新日 : 2026年2月24日
フリーランスが開業届を出すメリットは?
フリーランスが本業・継続前提なら開業届の提出が有利です。
- 青色申告が使える
- 経費・損益通算が可能
- 信用・利用可能な制度の選択肢が広がる
仕事開始時に出すのがベストです。青色申告を使うなら「開業から2か月以内」の申請期限が重要です。
フリーランスの個人事業主として仕事を開始する場合、自分次第でいつでも働き始められます。しかし「仕事を始めるにあたって開業届の提出は必要なのか?」「提出が必要な場合はどう書いたらいいのか?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
そこで今回は、開業届の書き方について解説します。開業届についてしっかりと理解してスタートを切りましょう。
目次
そもそも開業届とは?
個人で事業を始める際に、まず考えるべきなのが「開業届」の提出です。開業届は、税務上の正式なスタートを国(税務署)に知らせるための重要な書類であり、今後の確定申告や節税にも関わる手続きです。ここでは、開業届の意味と提出対象について解説します。
開業届は事業開始を税務署に知らせる届出書
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。これは、個人が事業を開始したことを税務署に報告するための書類で、所得税法に基づいて提出が求められています。飲食業、フリーランス、ネット販売など、業種を問わず「継続して収益を得る意思」があれば、原則として提出の対象です。
開業届を提出するタイミングは?
個人事業を始める際、開業届の提出は法律で義務付けられている手続きのひとつです。ここでは、開業届の提出時期と注意点を解説します。
原則は事業開始から1か月以内に提出
開業届は、事業を開始した日から1か月以内に、納税地を管轄する税務署へ提出するのが原則です。ここでの「事業開始日」とは、実際に収益が発生した日ではなく、「事業としての活動を始めた日」と解釈されます。たとえば、仕入れや営業活動を開始した日、開業準備で契約を結んだ日などが該当することもあります。
青色申告の申請期限にも注意
青色申告を希望する場合は、開業届とは別に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。こちらの提出期限は、原則として青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをしたりした場合には、その事業開始等の日から2月以内)になります。つまり、青色申告を受けたい場合には、開業届もできるだけ早めに提出することが望ましいといえます。
フリーランスと個人事業主の違いは?
「フリーランス」と「個人事業主」は似たような文脈で使われがちですが、意味合いや法的な位置づけが異なります。
フリーランスは「働き方」個人事業主は「税務上の区分」
フリーランスとは、特定の会社や組織に所属せず、自らのスキルや専門性を提供して自由に働く人のことを指します。ライター、デザイナー、プログラマー、動画編集者などが代表例です。あくまで働き方を示す俗称・スタイルであり、法的な定義や登録制度は存在しません。
個人事業主は、税務署に「開業届」を提出したうえで事業を営む個人のことを指します。税務上の正式な区分であり、確定申告・青色申告・消費税の取り扱いなど、制度上の扱いが明確に定められています。
フリーランスでも開業届を出せば個人事業主になる
多くのフリーランスは、仕事を継続的に受けて収入を得ているため、開業届を提出して個人事業主として登録することが推奨されます。そうすることで、青色申告による節税や事業経費の明確化、保育園入園や融資申請時の信用にもつながります。
ただし、副業として単発で収入を得ている場合など、事業性が認められないケースでは、開業届を出さなくても「雑所得」扱いになることがあります。
フリーランスが開業届を出すメリットは?
開業届を提出することで得られる具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
青色申告特別控除の適用
青色申告承認申請書を提出する最大のメリットは、青色申告特別控除を受けられることです。青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除を受けることができ、所得税や住民税の大幅な節税効果が期待できます。
例えば、年間所得が300万円のフリーランスが青色申告特別控除65万円を適用した場合、課税所得は235万円となり、所得税だけでも数万円程度の節税効果があります。
屋号での銀行口座開設
開業届を提出することで屋号を登録でき、屋号名義での銀行口座開設が可能になります。これにより、事業用とプライベート用の口座を明確に分けることができ、経理処理が格段に簡単になります。
屋号口座を持つことで、取引先からの信頼度向上にもつながります。個人名よりも事業としての印象を与えることができるため、ビジネスの発展に寄与します。
事業所得としての損益通算
開業届を提出し、事業所得として申告することで、事業で発生した損失を他の所得と相殺できる損益通算が可能になります。これは特に事業開始初期において、設備投資などで赤字が発生する場合に有効です。
また、事業所得として認められることで、必要経費の範囲も広がります。事業に関連する支出を経費として計上できるため、課税所得を抑えることができます。
各種制度の利用
開業届を提出することで、小規模企業共済や経営セーフティ共済などの制度を利用できるようになります。これらの制度は節税効果があるだけでなく、将来の事業資金確保にも役立ちます。
フリーランスが開業届を出すデメリットは?
開業届の提出にはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。
配偶者控除の適用除外
開業届を提出して個人事業主として事業申告を行う場合、配偶者(納税者)が配偶者控除を受けるためには、扶養に入る個人事業主(扶養親族)のその年の合計所得金額が58万円以下であることやその他の要件を満たす必要があります。
これは、給与所得者の場合の「給与収入103万円の壁」と同様の概念ですが、事業所得の場合は「売上額」ではなく、売上から必要経費を引いた後の「所得金額」で判断されます。たとえば、事業所得が60万円でも、必要経費が10万円あれば所得は50万円となり、配偶者控除の要件(58万円以下)に該当します。
配偶者控除が適用されるかは、合計所得金額(給与以外の所得も含む)で判断されます。給与所得のみの人と違い、個人事業主の場合は経費が控除される分、収入(売上)自体が控除要件の判断基準ではない点に注意してください。
失業保険の受給制限
会社員からフリーランスになった場合、開業届を提出していると失業保険の受給ができなくなります。開業届を提出することで事業を開始したと見なされ、失業の状態ではないと判断されるからです。
詳しくはハローワークに相談することをお勧めします。
帳簿作成の義務
開業届を提出すると、青色申告・白色申告に関わらず、帳簿の作成と保存が義務付けられます。特に青色申告特別控除を受ける場合は、複式簿記による詳細な帳簿作成が必要となります。
これまで家計簿程度の記録しかつけていなかった場合、会計処理の負担が大きく増加する可能性があります。ただし、現在は会計ソフトの普及により、この負担は大幅に軽減されています。
フリーランスで開業届を出さないのは違法?
所得税法229条では、開業届の提出について規定されています。しかし、結論としては「違法ではないが、提出が推奨される」といえます。
開業届を出さなくても罰則はない
開業届の提出は、所得税法に基づく“義務”とはされているものの、未提出による罰則はありません。そのため、出していないからといって即違法とはなりません。ただし、提出していない場合、収入は「雑所得」と見なされやすくなり、前述のとおり、青色申告が使えないなどのデメリットがあります。
フリーランスで収入なしだが、開業届の提出は必要?
フリーランスとして活動していても、収入がない期間や、事業が軌道に乗っていない段階では「開業届を出す必要があるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
収入ゼロでも継続的な事業意思があれば提出対象
たとえ収入がまだ発生していなくても、継続して仕事を受ける意思があり、準備や営業活動をしているなら、税務署からは「事業を開始した」と見なされる可能性があります。この場合は、開業届の提出が推奨されます。
準備段階のみなら提出時期を見極めてもよい
まだ具体的な案件の受注や営業活動も始めていない「準備段階」の場合は、開業届を急いで出す必要はありません。実際に活動を開始する見込みが立った段階で提出しても問題はなく、開業日として申告した日から記帳・申告が必要になります。
フリーランスで開業届を出していないときの確定申告はどうすればいい?
「開業届の有無」と「確定申告の要否」は別です。ここでは、開業届未提出時の確定申告の考え方を整理します。
開業届がなくても確定申告は必要
開業届を出していなくても、一定額以上の所得があれば確定申告は必要です。会社員の副業で雑所得が20万円を超える場合や、専業フリーランスで基礎控除を超える所得がある場合は、申告義務が生じます。申告しないと無申告加算税などのリスクがあります。
原則は「白色申告」で申告する
開業届を提出していない場合、原則として白色申告で確定申告を行います。収入から必要経費を差し引いた所得を計算し、確定申告書に記載します。ただし、青色申告は開業届と事前申請が必須のため、未提出のままでは利用できません。
開業届の提出に必要な書類は?
開業届の提出に必要な書類は以下の通りです。
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- 青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認印で可)
開業届の記入方法は?
開業届の主要な記入項目について詳しく説明します。
基本情報
提出日、納税地(住所地または事業所所在地)、氏名、生年月日、マイナンバーなどを記載します。納税地は住所地を選択するのが一般的です。
事業に関する情報
職業欄に具体的な業種を記入します。例えば「Webデザイン業」「システム開発業」「コンサルティング業」など、実際に行う事業内容を明確に記載しましょう。
フリーランスにおける職業欄の書き方も、それ以外の働き方と同じです。「フリーランス」などと働き方を記載するのではなく、フリーランスの美容師であれば「美容業」「美容師」など、フリーランスのカメラマンであれば「写真業」「カメラマン」などと仕事内容が分かるように記載します。
屋号は必須ではありませんが、事業用の名称を使用したい場合は記入します。屋号は後から変更も可能なので、現時点で決まっていなければ空欄でも問題ありません。
事業の開始等年月日は、実際に事業を開始した日付を記入します。すでに事業を開始している場合は開始日を、これから開始予定の場合は予定日を記載します。
フリーランスの開業届の提出方法は?
ここからは開業届の提出方法についてご紹介します。
①オンラインで提出
開業届はe-TAXで提出することができます。e-TAXを利用すれば開業届を紙で印刷したり、税務署に行ったりする手間を省けるため、オンラインでの提出をおすすめします。
②郵送で提出
紙で開業届を提出するときは、郵送でも提出が可能です。自身の所轄税務署を確認して投函しましょう。なお、開業届を郵送で提出する場合は、本人確認書類の写しの添付が必要です。
③持ち込みで提出
紙で開業届を提出するときは、税務署に持参することもできます。税務署の開庁時間は、平日の8時30分から17時までのため、その時間帯であれば窓口に提出することが可能です。この時間に提出できない方は、税務署の時間外収受箱に投函すれば24時間365日提出できます。
なお、開業届を持ち込みで提出する場合は、本人確認書類の提示が必要となるため注意してください。
フリーランスの開業の手続き・流れは?
フリーランスとして開業する際の全体的な手続きの流れを時系列で説明します。
事業準備段階
開業前の準備として、まず事業計画の策定が重要です。どのような事業を行うのか、ターゲット顧客は誰か、収益見込みはどの程度かなどを明確にしておきましょう。
事業用の銀行口座開設を検討している場合は、開業届提出前に金融機関の要件を確認しておくことをお勧めします。金融機関によっては、開業届の控えだけでなく、事業実態を証明する書類の提出を求められる場合があります。
開業届提出とその後の手続き
開業届を提出した後は、青色申告を希望する場合は青色申告承認申請書も併せて提出します。この申請書は開業から2ヶ月以内または青色申告を受けたい年の3月15日までに提出する必要があります。
給与支払事務所等の開設届出書は、従業員を雇用する予定がある場合に提出が必要です。家族を従業員として雇用する場合も対象となります。
各種保険の手続き
国民健康保険と国民年金の手続きも重要です。会社員からフリーランスになった場合、健康保険の切り替え手続きが必要になります。国民健康保険への加入または任意継続被保険者制度の利用を検討しましょう。
国民年金については、第2号被保険者から第1号被保険者への変更手続きが必要です。市区町村役場で手続きを行います。
会計処理の準備
帳簿作成の準備として、会計ソフトの選定と導入を行います。現在は多くのクラウド会計ソフトが提供されており、初心者でも使いやすい機能が充実しています。
銀行口座やクレジットカードとの連携機能を活用することで、取引の自動取り込みが可能になり、経理処理の負担を大幅に軽減できます。
フリーランスの開業費用は?
フリーランスとして開業する際に発生する費用について、項目別に詳しく説明します。
初期費用
開業届の提出自体は無料ですが、開業に伴って発生する初期費用があります。
事務用品・設備費
パソコン、プリンター、デスク、椅子などの基本的な事務用品が必要です。業種によって必要な設備は異なりますが、一般的には10万円から30万円程度の初期投資が必要になります。
ソフトウェア費用
会計ソフトの導入費用が発生します。クラウド会計ソフトの場合、月額1,000円から3,000円程度の費用がかかります。年間契約をすることで割引が適用される場合が多いです。
印鑑・名刺作成費
事業用の印鑑や名刺の作成費用が必要です。印鑑は数千円から1万円程度、名刺は100枚で2,000円から5,000円程度が相場です。
月次・年次費用
開業後に継続的に発生する費用についても把握しておく必要があります。
会計ソフト利用料
月額または年額で発生します。機能や利用者数によって料金が異なりますが、個人事業主向けのプランであれば月額1,000円から2,000円程度が一般的です。
各種保険料
国民健康保険料と国民年金保険料が発生します。これらは前年の所得に基づいて計算されるため、初年度は比較的低額になることが多いです。
税理士費用
確定申告を税理士に依頼する場合に発生します。自分で申告する場合は不要ですが、複雑な取引がある場合や節税対策を検討したい場合は、税理士への相談を検討しましょう。
経費として計上できるもの
開業に関連する費用の多くは、事業の必要経費として計上できます。
開業前に支出した費用についても、開業準備のために要した費用として「開業費」に計上し、任意の年度に償却することができます。これにより、開業初年度の税負担を軽減することが可能です。
事業で使用する設備や備品、ソフトウェアなどは減価償却または一括償却により経費計上できます。10万円未満の固定資産は、全額を取得年度の経費として計上することができます。
データで見るフリーランスが開業届を出すメリットと実態
手続きの壁は「作業」より「判断」
フリーランス開業成功のための重要なポイント
フリーランスとして開業し、継続的に成功するためには、適切な準備と計画的な事業運営が不可欠です。
開業届の提出は、フリーランスとして本格的に事業を開始する重要な第一歩です。青色申告特別控除をはじめとする税制上のメリットを最大限に活用し、適切な経理処理を通じて健全な事業運営を心がけましょう。
開業に伴う手続きは複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ確実に進めることで、安心してフリーランス活動に専念できる環境を整えることができます。不明な点がある場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
事業の成長とともに、新たな手続きや届出が必要になる場合もあります。常に最新の情報を収集し、適切な対応を取ることで、長期的に安定したフリーランス活動を続けることができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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