- 作成日 : 2022年1月7日
個人事業主が融資を受けるためのポイント
中小企業や個人事業主は、金融機関からの融資が困難だといわれています。しかし、適切な金融機関を選択し、書類をきちんと作成すれば中小企業であっても個人事業主であっても融資は受けやすくなります。
そこで、今回は、融資を受けるためのポイントについて解説します。
目次
融資を受けるための基本
個人事業主が融資を受けるのが困難な理由に、事業内容、事業計画、事業の見通し、市場と事業との関係など、事業を継続的に行うための分析が曖昧なことが多いというのが挙げられます。そのため、融資を受けたい場合、融資担当者からの質問にしっかりと答えられることが大事です。聞かれる内容としては、次のようなものがあります。
(1)いつまでにいくらの金額が必要か
金融機関が融資をする場合、内部決裁をとらなければならず、融資実行するまでに時間がかかるものもあります。いきなり、「明日までに融資して欲しい」といっても難しいので、余裕をもった希望融資日を設定することが重要です。
また、融資金額が低額の場合には支店長決裁で済みますが、高額になると、本部決裁が必要になりますので、より審査が厳格になります。
(2)なぜ融資が必要になったのか
融資の希望日や金額が妥当なものでも、単に「お金が足りない」などの理由では、まず融資はされません。「受注が集中して入ったので、資材仕入れのための資金が必要なため」とか、「需要の拡大により生産設備を拡大するために機械を購入する資金が必要なため」といった事業のための前向きな理由によることが重要です。
(3)返済はどのようにするのか
毎月入ってくる金銭がいくらあり、それで十分返済できることを提示できれば融資の可能性が高まります。それが無理でも、融資してもらえば毎月のどれくらいの売上がアップするかなど、具体的な数字を提示することが重要になります。
(4)保証や物的担保はあるのか
金額が大きくなると、基本的に物的担保ないし保証人が必要になります。担保のついていない不動産などを所有していれば問題ありませんが、それがない場合には、機械や特許なども担保にできる場合がありますので、融資担当者から担保について聞かれたら相談してみるといいでしょう。
融資を受けようとする場合に必要な書類
(1)決算書
企業の財政状態を表す書類であり、融資担当者が審査をするときに最も重視するものです。個人事業主の場合は確定申告時に必要な帳簿などを事業主自身もよく把握していることが大切です。こうした財務状況を説明できるようにしておきましょう。
(2)試算表
期中の業績推移が分かるものですが、常に計数を把握していることをアピールするためにも、常に最新のデータを提供できるよう管理しておくことが必要です。個人事業主の場合は特に市場の変動に影響を受けやすく、不安定になりやすいと思われます。常に安定したデータを示せれば問題ありませんが、そうでない場合でも、変動の理由とそれへの対策が打ち出せていることが大切です。
(3)資金繰り表
資金繰り表は、返済可能かをみるうえで重要な書類なので、正確に内容を把握しておきましょう。経理だけに任せて、融資先からの質問に答えられないということを避けるために、経営者は内容を理解しておかなければいけません。個人事業主の場合は、経理自体も自分自身が把握していることも多いかもしれませんが、論理的な計画を持っておくようにしましょう。
(4)事業計画書
事業計画書は工夫できる資料なので、よく考えて作りましょう。特に、会社の理念や目標については必ず書いてください。また、中小企業や個人事業主への融資は経営者に貸すのと同じことになるので、経営者の略歴や個人資産も重要になります。さらに、安定している仕入先や販売先を多く提示することができれば、融資担当者は安心します。
金融機関の選択
中小企業や個人事業主については、地元に密着した信用金庫や信用組合の方が親身になって相談に応じてくれることが多いと思います。また、政府系の金融機関である日本政策金融公庫や商工中金は、中小企業や個人事業に積極的な支援を行っています。民間金融機関に比べて手続きがややこしく、融資されるまでが長いというデメリットはありますが、金利が低いので急ぎでない場合にはまずは検討してみると良いと思います。
融資担当者が財務諸表を見るポイント
財務諸表ではいろいろと見るポイントはありますが、以下の項目はとくに見られる科目なので、金融機関に提出する前に確認しておくことをおすすめします。
・棚卸資産(商品、原材料など):不良在庫がない
・貸付金および仮払金:回収可能か、実体はあるのか
・借入金:借入残高が多すぎないか
・経常利益:経常利益が黒字になっているかどうかが1番重要
・営業利益:本業で赤字だとマイナスに評価される
・減価償却費:減価償却をしないで黒字にしていると、マイナスに評価
まとめ
以上、融資してもらうための基本、必要な書類、金融機関の選択、財務諸表を見るポイントを解説してきました。個人事業主が金融機関との交渉は緊張するものですが、よい信頼関係が築ければ心強い存在になってくれます。ここでの内容を頭に入れながらリラックスして交渉に挑んでみてください。
よくある質問
中小企業や個人事業主は融資を受けられる?
はい。適切な金融機関を選択し、書類をきちんと作成すれば中小企業であっても個人事業主であっても融資は受けやすくなります。詳しくはこちらをご覧ください。
保証人や担保は必要?
金額が大きくなると、基本的に物的担保ないし保証人が必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。
融資の際に必要な書類は?
決算書、試算表、資金繰り表、事業計画書です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
開業資金の関連記事
新着記事
節税に役立つ本は?初心者から法人経営者まで使える書籍を紹介
節税は、税金対策という意味だけではなく、事業の健全な成長と資金繰りの要となる重要な経営スキルです。 本記事では、初心者が税の仕組みを理解するための入門書から、フリーランスや個人事業主に実務で役立つ本、さらには法人経営者や上級者向けの専門書ま…
詳しくみる車にかかる税金とは?車の購入や維持で活用できる節税方法を解説【個人事業主・法人別】
車を購入・保有するには、消費税、自動車税、重量税などさまざまな税金がかかります。一方で、車の使い方や選び方によっては、それらの税金を軽減したり、購入自体が節税につながったりすることもあります。 特に事業用として車を導入する場合には、費用を経…
詳しくみる持株会は節税になる?給与天引きの仕組みや従業員が知るべきリスク・メリットを解説
従業員持株会は、自社株を給与天引きで購入・積立できる制度として、多くの企業で導入されており、資産形成を目的に加入する従業員も増えています。 本記事では、持株会の基本や給与天引きの仕組み、発生する税金の種類やNISA・iDeCoとの違いなどを…
詳しくみる結婚後に使える節税策は?活用したい控除制度を解説
結婚をきっかけに、税金面で得をすることがあるのをご存じでしょうか。 結婚によって適用できる「配偶者控除」や「配偶者特別控除」などの制度は、条件を満たせば所得税・住民税の負担を軽減できます。さらに、夫婦で住宅ローン控除を分け合ったり、将来に向…
詳しくみる経営セーフティ共済で節税できる?仕組み・課税タイミング・加入方法を解説
中小企業が取引先の倒産による資金難に備える制度として注目されているのが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」です。万一の事態に備えた共済金の貸付だけでなく、掛金を全額経費にできることから節税対策としても活用されています。 本記事…
詳しくみる繰延節税とは?仕組み・リスク・活用できる制度を解説
税金の負担を減らしたいと考えたとき、「繰延節税」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、税額を減らすのではなく、納税のタイミングを将来にずらすことで、今ある資金を有効活用する節税の考え方です。企業はもちろん、個人でもiDeCoや…
詳しくみる