• 作成日 : 2025年10月24日

ビットコインの節税方法や注意点は?個人・法人別に解説

ビットコインで利益を得た場合、その裏には避けて通れない「税金」の問題があります。日本では所得が増えるほど税率が上がる総合課税が適用され、最大55%もの税負担が発生するケースもあります。

この記事では、個人でできる節税方法、法人化のメリット、税制見直しの動向などを解説します。

目次

ビットコインの利益にかかる税金は?

ビットコインの売却や使用による利益には税金がかかりますが、その課税方法は他の金融商品とは異なります。ここでは、基本的なルールを解説します。

仮想通貨の利益は「雑所得」に分類され、総合課税される

ビットコイン取引で得た利益は、原則「雑所得」とされ、給与など他の所得と合算されて総合課税の対象になります。

但し、年間収入300万円超で帳簿保存がある等の要件で事業所得に区分される場合があります。

所得税と住民税は累進課税方式が採用されており、課税所得が多くなるにつれて税率も上がります。所得税は195万円超〜4,000万円超まで7段階に分かれており、最高税率は所得税が45%、住民税は一律10%です。

たとえば、課税所得が4,000万円を超える場合、その超過分には合計55%(所得税45%+住民税10%)の税率が適用されるため、高額の仮想通貨利益を得た際は大きな税負担となります。現行制度では暗号資産の所得は総合課税で、株式やFXのような一律20.315%の申告分離課税は未導入です(金融庁は分離課税導入を含む見直しを要望中です)。

雑所得同士の損益通算は可能だが、他の所得との通算や繰越は不可

仮想通貨で出た損失は、同じ年の仮想通貨取引による利益と相殺することが可能です。しかし、株式や事業所得との損益通算はできず、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」も認められていません。

そのため、年内の損益調整が節税のポイントとなります。年末前には含み損の通貨を見直すなどの対応が重要です。

副業で得た仮想通貨利益が20万円以下なら申告不要となる場合がある

給与所得者が副業で仮想通貨取引をしている場合、給与以外の所得(仮想通貨を含む雑所得等)の合計が20万円以下なら所得税の確定申告不要の場合があります。ただし、住民税については申告が必要です。また、20万円を超えた場合は全額について申告義務が生じ、累進課税が適用されます。

少額の取引であればこの特例を活用することも可能ですが、利益を意図的に複数年に分散させて申告を回避するような方法には限界があり、現実的な節税手段としてはあまり実用的ではありません。

個人でできるビットコインの節税方法は?

ビットコインの利益に対して個人が行える節税には、経費計上や損益通算、利益確定の時期調整、さらには各種控除の活用など複数の方法があります。以下では、個人が実践しやすい節税策を紹介します。

取引にかかった費用を経費として差し引く

ビットコインの利益計算では、利益を得るためにかかった費用を必要経費として差し引くことができます。主な対象としては、取引所の手数料、ウォレットの導入費用、仮想通貨取引に関する書籍やセミナー参加費、さらには専用端末の一部費用などが挙げられます。

ただし、どこまでが「必要経費」として認められるかは税務上明確な基準がないため、仮想通貨専用に使っていることを示す客観的な資料(レシート、利用履歴、写真など)を整えておくと安心です。不確実な経費を無理に計上すると、税務署から否認される可能性があるため、慎重な判断と場合によっては税理士への相談が望まれます。

利益確定の時期を分散させて課税を抑える

所得税は1年間の所得額に応じて税率が決まるため、ビットコインの売却による利益が少額であれば、利益確定のタイミングを分けることで税金の発生を抑えることができます。

たとえば40万円の含み益がある場合、利益を年をまたいで分割確定すれば、給与以外の所得の合計が20万円以下となる年は所得税の申告不要となる場合があります。

給与所得者で副収入が20万円以下の場合は、所得税の申告義務が免除されるため、有効な節税になります。ただし、住民税は別途申告が必要です。また、価格変動のリスクを踏まえて、無理のない範囲で行うことが重要です。

利益確定を避けて含み益のまま保有を続ける

仮想通貨は、売却や使用などの「課税イベント」が発生しない限り、含み益に対しては課税されません。そのため、ビットコインを保有し続けること自体が、結果的に課税の繰り延べにつながり、節税となります。

ただし、仮想通貨で商品やサービスを購入した場合や、他の仮想通貨への交換を行った場合も「処分」と見なされ、売却と同様に課税される点に注意が必要です。単に日本円に換金しなければ非課税というわけではないため、何が課税イベントにあたるかを正確に理解することが重要です。

年内に損失を確定し利益と相殺する

同じ年に利益と損失がある場合、その年の仮想通貨取引内で損益通算することが可能です。たとえば100万円の利益と90万円の損失が確定していれば、課税対象となる所得は10万円に抑えられます。

ただし、仮想通貨の損失は翌年以降に繰り越すことができないため、「含み損」を年内に確定させる必要があります。このようなタイミング調整による節税は「損出し」とも呼ばれ、実際の取引損益に加えて税金の最適化にも活用されます。

所得控除を活用して課税所得を圧縮する

仮想通貨の利益は他の所得と合算されるため、各種の所得控除を活用すれば、結果的に課税所得を減らすことができます。たとえば、ふるさと納税による寄付控除やiDeCo(個人型確定拠出年金)への拠出は、控除対象として広く利用されています。

その他にも、医療費控除生命保険料控除配偶者控除など、自分のライフスタイルや家族構成に応じた控除を活用することが可能です。仮想通貨特有の対策だけでなく、こうした一般的な節税策を組み合わせることで、トータルでの税負担を抑えることが期待できます。

ビットコイン取引で法人化すると節税になる?

ビットコイン取引で継続的に高額な利益が出る状況では、法人を設立して運用することで、個人よりも税率・経費処理・損失繰越の面で有利になることがあります。法人化には設立や管理の手間がかかるものの、一定の利益規模を超える場合は税負担を軽くできる可能性が高いです。

個人と法人では税率構造に大きな差がある

法人税率は原則として23.2%ですが、資本金1億円以下の中小法人で所得800万円以下の部分については軽減税率15%が適用されます(本則は19%)。2025年の税制改正で、この軽減15%の措置は令和9年(2027年)3月31日まで延長されることが決まりました。ただし、年10億円を超える所得を持つ事業年度では、800万円以下の部分の税率が17%に引き上げられています 。

対して個人は、所得税が累進課税制度で、課税所得が4,000万円を超える部分には所得税45%が適用されます。その上に住民税10%が加わるため、合計で最大55%の税率となる可能性があります 。

法人化による税務上・制度上の優遇措置

法人化すると、税率面だけでなく制度の優遇措置も多数活用できます。まず、法人が事業で上げた損失は最長10年間繰り越して、後年度の利益と相殺できます。これは令和4年度税制改正などで見直され、法人の税務計画を立てやすくするための制度です。

また、法人は事業に必要な支出を経費として認められる範囲が広いです。取引に使うパソコンや通信費・事務所費等を費用にできるため、利益を圧縮し、課税対象を低く抑えることが可能です。

さらに、暗号資産の含み益について、法人が保有する場合には、未実現利益(売却していない利益)に対する期末時価評価課税について、自己発行暗号資産や譲渡制限があるものなど一定要件を満たす暗号資産に限り、原価法を選択できるなどの緩和が導入または検討されています。

法人化を検討する際のコスト・リスク

法人化には節税メリットだけでなく、コスト・管理負担・再課税のリスクも伴います。法人設立には登録免許税など初期費用がかかり、決算申告や帳簿の保存などの会計処理が発生します。

また法人で得た利益を個人が取り出すには、給与や配当の形を取る必要があります。特に配当には法人税後の利益からの支給となるため、結果的に個人所得税等がかかり、トータルでの税負担が増す可能性もあります。

さらに、軽減税率15%を受けられる中小法人の要件(資本金1億円以下・特定の支配関係にないことなど)や、所得が10億円を超えると適用除外となることなど、制度適用の条件を満たすかどうかを事前に確認する必要があります 。

仮想通貨の税制見直しの動向は?

暗号資産への課税方式について、政府や金融庁は株式・FXと同様の申告分離課税の導入に向けて動いており、投資家にとって負担軽減と制度改善の可能性が広がっています。

申告分離課税への移行が本格的に検討されている

2024年末に公表された与党税制改正大綱には、「暗号資産を国民の資産形成に資する金融商品として再定義する」方針が盛り込まれました。これを受け、2025年8月には金融庁が正式に申告分離課税(税率20.315%)の導入を要望しました。2026年度税制改正での実現を目指す動きが進められています。業界団体も、税率の引き下げに加えて、損失の3年間繰越控除や損益通算の導入を要望しています。

参考:金融庁の令和8年度税制改正要望について|金融庁

分離課税が実現すれば税負担は軽減される

現行の総合課税では、最大55%の税率が適用される可能性があり、高額所得者の負担は大きくなります。申告分離課税が導入されれば、所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%に一本化される見込みで、大幅な軽減が期待されます。さらに、株式などと同様に他の金融所得と損益通算が可能になれば、より柔軟な資産管理が可能となります。

制度変更による新たな課題にも注意が必要

導入時期は早くても2026年以降とされ、今後の法改正の行方に注目が集まっています。また、仮想通貨が「金融商品」と明確に定義されると、出国時に含み益に対して課税される「国外転出時課税(出国税)」の対象となる可能性があります。現時点では対象外ですが、将来的には1億円超の評価額を保有する場合に課税リスクが生じる可能性もあります。

海外移住(仮想通貨長期保有)による節税の可能性とリスクは?

仮想通貨の大きな含み益を抱えている場合、「税金のかからない国」への移住を検討する投資家も増えています。海外居住によって日本の税制を回避し、利益確定時の課税を免れる戦略は魅力的ですが、近年は制度の厳格化も進んでおり、慎重な対応が求められます。

移住によって日本の課税対象外となる可能性

日本では、仮想通貨の売却益は「居住者」に対して課税されます。そのため、国外へ移住し「非居住者」として認定されれば、日本の所得税の対象から外れる可能性があります。また、ドバイやポルトガルなどには、個人の仮想通貨キャピタルゲインに対して課税しないか軽減する仕組みを持つ場合があり、移住すると売却時の課税負担を軽減または回避できるケースがあります。

ただし、「単に海外に住むだけ」では不十分です。住民票を抜き、年間183日以上を国外で生活するなど、税法上の「非居住者」の要件を満たす必要があります。

なお各国制度は更新が続いているため、最新の現地法を必ず確認しましょう。

出国時には「出国税」がかかるケースもある

2025年9月時点では、仮想通貨は「国外転出時課税(出国税)」の対象資産には含まれていませんが、将来的に制度が変更される可能性があります。仮に金融商品と再定義されれば、評価額1億円を超える含み益を持った状態で海外転出する際、売却していなくても課税されるリスクが発生します。

これはすでに株式などには適用されている制度であり、2026年度以降の税制見直しで仮想通貨にも波及する可能性が議論されています。長期保有による節税を狙うなら、この点を十分に考慮しておく必要があります。

節税効果とリスクを見極めた戦略が必要

海外移住による節税は、確かに合法的な方法ですが、各国の居住者要件、日本の課税基準、将来の制度改正リスクなど、複数の要素を慎重に検討しなければなりません。税理士や国際税務に精通した専門家のサポートを受けながら、戦略的に移住プランを立てることが重要です。

ビットコイン取引の注意点は?

ビットコインを含む仮想通貨取引が一般化するなか、税務署もその動向を注視しています。特に利益が大きい場合や申告内容に不備があると、税務調査の対象になる可能性が高くなります。

税務調査の対象になりやすい取引パターン

仮想通貨に関する税務調査は、以下のようなケースでリスクが高まります。

  • 高額の利益を出しているのに申告がない、または少ない
  • 国内外複数の取引所を利用し、履歴が煩雑
  • 商品購入やNFT取引など、実体経済との関わりがある
  • 出金先の銀行口座と申告内容が一致しない

ブロックチェーン上の履歴や、取引所との情報連携が進んでいる現在、過去よりも調査精度が高まっています。

調査に備えて記録・証拠を整備しておく

仮想通貨の税務調査では、申告内容の裏付けとなる「取引履歴」や「経費の証明資料」の有無が重視されます。取引所のCSVデータは必ず保管し、クラウド型の損益計算ツールで管理するのが有効です。

また、ウォレットアドレスごとの送金履歴や、使用した取引ツール、手数料、ガス代の証拠も合わせて整理しておくことで、万一の調査時にスムーズな対応が可能になります。

不安がある場合は早期に税理士へ相談する

過去に遡って修正が必要な場合や、すでに税務署からの問い合わせがあった場合には、自分で対応せず仮想通貨に詳しい税理士に相談しましょう。早期対応によって重加算税などのリスクを軽減できる可能性があります。

ビットコインの節税策を活用して賢く利益を残そう

ビットコインをはじめ仮想通貨の利益に対する税金は高負担ですが、適切な節税対策を講じることで手元に残る利益を最大化できます。経費計上や利益タイミングの調整、損失の有効活用といった基本策から、利益規模によっては法人化まで含めて検討すると良いでしょう。最新の動向に注意しつつ、合法的な節税策をフル活用して賢く資産運用を行いましょう。


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